2016年08月29日
十三月の翼・いふC 中編C (天使のしっぽ・二次創作)
どうも〜。天使のしっぽ二次創作「いふ」、4話掲載です。
何とか、終わりが見えてきた。
次回あたりで終わらせられそうです。
それでは皆さん、いましばしお付き合いの程を。
――5――
ガヤガヤガヤ……
周りは、沢山の人ごみと人熱れに満ちている。
場所は、とある国のとある都市。
様々な行楽目的のビルと、その用途を示す色とりどりの看板に彩られたその場所は、やはり色とりどり服装で着飾った人々に溢れていた。
まあ、日本の秋〇原を想像してもらえば、ほぼ間違いない。
そんな街中を、ひと組のカップルが連れ立って歩いていた。
その二人の、一際一目を引く風体に、すれ違う人々のほとんどが目を奪われる。
中には、足を止めて携帯のカメラを向ける者までいる。
当然といえば、当然か。
カップルと言えば、大概男性と女性のコンビだろうが、その姿はまさに容姿端麗。
男性は、何処か中性的な雰囲気を漂わせながらも、男らしい精悍な顔立ち。布越しでも分かる逞しい体躯を、野性的でカジュアルな服装でまとめている。
対して、女性の方はスラリと細い身体に、白磁の様に白い肌。艶やかに長い黒髪。幼さを残した美貌には、怪しげな艶が漂い、見る者全てを魅了する。纏う服装は変わった意匠をしており、ゴスロリ風の白衣から長く伸びたレースが、その半身を隠す様に揺れている。
正しく、文句のつけようのない美男美女のカップルであった。
ただし、一つだけ問題があった。
たった一つの問題なのだが、それが大問題でもあった。
明らかに青年である男性に対し、連れそう女性の方は、妙に小柄。
否。小柄とかそう言う話ではない。どう見ても、子供である。
いい歳した青年が、年端もいかない少女を性愛の対象として連れ歩いているとしたら、真面目に大問題である。
お巡りさんこっちです事案である。
しかし、幸いかな。道行く人々の視線は温かい。
その理由は明白。
二人のやり取りときたら……
『このクレープ、美味しいですの。ねぇ、青の君♡』
「……俺は甘味は嫌いだ……」
『もう。そんなお連れにならない事おっしゃって。照れてるですの?』
「どこをつつけば、そんな結論が来る……?」
『ウフフ。その苦味走ったお顔も、素敵ですの♡』
「………」
『あら、そんな一気に頬張って。お顔に似ず、いやしんぼさんですのね』
「……意外か?なら、遠慮せずに幻滅してくれ……」
『いいえ。とってもチャーミングですの♡』
「………」
『あら?お顔にクリームが……。もう、がっつくからぁ♡ほら、腰をお屈めになって……』
「おい……。何をする気だ?」
『拭いて差し上げますの。唇で♡』
「いらん!!自分で拭く!!」
『もう。お照れにならないで。ほ・ら……♡』
「いいと言うに!!」
こんな具合。
満面の笑みを浮かべて絡みつく少女に対し、青年の顔はあからさまにウザそうである。
どう見ても、持て余してる様にしか見えない。
つまり、彼らが他者にどう見えているのか。
「少女(愛)⇒青年(迷惑)」である。
先にも述べた様に、大人の男性が年端のいかない少女にアプローチすると「キモい!!」「死ね!!」「お巡りさん、こっちです!!」となる。しかし、逆の場合だと「あらあら、大変ねぇ(微笑)」等と、割と生暖かい目で見てもらえたりする。
これを当然と思うか、理不尽と憤るかは個人の自由である。
自由だが表に出すと危険人物なので、思うだけにしとけ。
これが、世の理である。
残念だったな。お前ら(笑)
まあ実際、この場においても「リア充爆発しろ☠」とか「幼女ペロペロ♡」的な視線を向ける一部野郎もいるが、そういう訳なので気づかない事にしよう。
とにかく、数多の人々の好意的解釈に支えられながら、件の二人は街中遊歩を楽しんで(主に片方だけ)いた。
と、その二人の後を、人混みを縫ってついて行く影が三つ。
この陽気の中、三人そろってトレンチコートに帽子姿。おまけにサングラスにマスクまで装着している。そして、足元には何故かミニチュアダックスフンドが一頭ずつ。
怪しい事、この上もない。
「……どんな具合ですか……?」
「とりあえず、今のところは上手く行っている様ですが……」
「ムガムガ……けどよ……ムシャ、兄者、すげー仏頂面してんぜ?ムガ……大丈夫なのかよ……モグ……」
「……ガイ、食べ歩きしながら話すのはやめなさい。はしたないですよ」
「……と言うか、何ですか?僕の横でフライドチキンなぞ食すとは……。嫌がらせですか?貴方に恨みをかう覚えはないんですけどねぇ……(怒)」
「ああ、ガタガタうるせぇな!!たまに街に降りた時くらい、好きなもん食わせろよ!!」
本人達は隠密に尾行してるつもりなのだろうが、あからさまに怪しい格好+やかましい会話のコンボで、全く人目を忍んでいない。
『『『喧嘩はよしなよ。人目が悪いなぁ』』』
そんな一行に、また別の声がかけられる。
ただし、こちらは声ではない。
脳内に直接響く、”念話”である。
見れば、三頭のミニチュアダックスがそろってこちらを見上げている。
一見、愛らしい光景だが異なる点が一つ。
その目。
よく見れば、黒みがかった眼差しに見えるそれは、眼球ではない。
昏い、昏く落ち込んだ、穴。伽藍堂である。
六つの闇が震え、三人の脳漿を揺らす。
『『『鶏の揚げ物くらいで、揉めないでおくれよ。全く、面倒くさいなぁ』』』
呆れた様な声で、三頭のミニチュアダックスが同時に溜息を漏らす。
……賢明な読者諸君は、もうお分かりだろう。
この三頭のミニチュアダックス、まとめて魔王ナベリウスの化身である。
四聖獣の三人だけでは心許ないと言う事で、こんな格好になってついてきたのだ。
まるで信頼されてない。まあ、この有様ではさもありなんと言うしかないが……。
しかし、そんな魔王の嘆きもフラストレーションの高じた二人の若神の猛りは収まらない。
「うるせぇ!!黙ってろ!!こちとら長い修行暮らしでストレス溜まってんだ!!チキン(これ)ばっかりは譲れねぇ!!」
「ストレス解消の方法なら、他にもあるでしょう!!何故よりにもよって、翼ある者の王である僕の眼前で鶏なぞ食べる必要があるのです!!嫌がらせ以外の何ものでもないでしょう!!」
「何言ってやがる!!それならテメェだって、さっき豚まん食ってたろうが!!毛のある動物は白虎(オレ)の管轄だぞコノヤロウ!!」
「何を言ってるんですか!!アレは加工されてる上に半分以上は野菜です!!貴方のはダイレクトでしょう!!ダイレクト!!」
「テメェに都合のいい屁理屈吐いてんじゃねぇ―――!!!」
「何ですかぁ――――!!」
『『『おい、君!!ちょっと止めておくれよ!!このままだとお前のカーチャンでべそ!!とか言い出しかねないぞ!!』
一抹の不安を感じた魔王が、自分のリードを握る玄武の若者に声がける。
「やれやれ……。全く、みっともない」
一つ溜息をつくと、シンはギャアギャア言い合う二人の間に割って入る。
「ほらほら、いい加減にしなさい。そんな事では、四聖獣の名が泣きますよ?」
「うっせぇ!!一人この手の問題に縁遠いからって澄ました顔しやがって!!」
「そうです!!何なら貴方も同胞を食されてみますか!?スッポンとか松葉ガニとか!!」
ヒクッ
シンの米神に浮かぶ、青筋一本。
ちなみに、玄武は甲羅のある生き物の王だったりする。
「ふ……ふふ……。何を意味のない挑発を……!!貴方達の懐具合で、スッポンやカニが食せるとお思いですか!?」
「ぐむ!!」
「そ、それは……」
的確に痛い所を突かれたらしい。
言葉に詰まる二人を前に、勝ち誇るシン。
「ふ……。所詮、我が眷属達は貴方達のそれとは格が違うのです!!貴方達はせいぜい、ジャンクフードとしてモブの皆さんの小腹を満たしていればよろしい!!」
「い……言わせておけば……!!」
「おい!!こいつ抑えてろ!!寸胴鍋に突っ込んで出汁とってやる!!」
「あ、こら!!何をするんです!?」
「うるせぇ!!大人しく海亀のスープになりやがれ!!」
「スープの出汁だったらそっちの管轄でしょう!!鶏ガラとか豚骨とか!!」
「まだ言いますか!!」
「大衆食堂のラーメンスープと高貴な亀のスープを一緒にしないでいただきたい!!」
「てめぇー!!さっきから聞いてりゃ、お高く止まってんじゃねぇぞ!!」
「顕然たる事実を述べたまでです!!」
「それを言うなら”こっち”にもフォアグラという奥の手が控えています!!」
「A5ランクの松坂牛で勝負すっか!?こら!!」
果てしなくどうでもいい口論をしながら、とうとう取っ組み合い始める三人。
何だ何だと集まり始める人ごみ。その中から転げでて来た、三頭のミニチュアダックスが悲鳴を上げる。
『『『ああ、もう!!何とかしておくれよ、バアル!!』』』
『――やれやれ。しょうがないねぇ。ナベリウス公、少し人目を”止めて”くれたまえ――』
”彼”の耳にだけ届く、虚ろな声。とたん、三頭のミニチュアダックスの目が、紅く輝く。
途端――
ピシィッ
凍りつく様な音とともに、世界がセピア色に染まる。
薄い琥珀の中、集まってきた人ごみが、否、世界の全てが、その動きを止める。
ただし、群衆のど真ん中で取っ組み合いをしている三人を除いて。
三頭のミニチュアダックスが、声を揃えて言う。
『『『紀元前256年前の午後11時23分13秒に起こった、時間停止禍を現世(こちら)にダウンロードしたよ。これでしばし、この世界は動かない』』』
『――それは重畳――』
そんな言葉とともに、空間がグニャリと歪み、虚無色の衣がまろび出る。
ドロリと垂れ落ちたそれが、ポカスカやっている三人の横で伸び上がる。
グルンッ
蠢く虚無が反転し、白い仮面が現れる。
『――こらこら、汝達、いい加減にしたまえよ。いい歳をして、みっともない――』
足元の三人を見下ろしながら、バアルはそう声をかける。
しかし――
ポカスカポカスカ
喧嘩に夢中になっている三人には、聞こえない。
『――これ、汝達――』
ポカスカポカスカ
『――話を聞きたまえ――』
ポカスカポカスカ
『――……――』
しばしの沈黙。
やがて、虚無の衣がザワリと蠢き、三本の触手がスルルと出てくる。
それらの先端には、鈍く光る金づちが三つ。そして――
ガンッ ゴンッ ゴキンッ
「「「!!??」」」
声もなくぶっ倒れる三人。
バアルは言う。
『――いい加減にしないと、殴るよ――』
言いながら、見下ろした先には無言で転がる三人の姿。
見開く、紅い目。
『――しっかりしたまえ!!誰にやられた!?――』
「「「てめぇ(あんた・貴方)だ――――――!!」」」
思わず飛び起きながらツッコむ三人。
それを見たバアルが、禍禍禍と嗤う。
『――よしよし。収まった様だね。やはり、場を和ますには気の利いたジョークが一番だwww――』
「て……てめぇなぁあああ……!!」
頭にデカイたんこぶを作った三人が、憤怒の表情でバアルににじり寄ろうとしたその時――
『『『……おーい……』』』
呼びかける声に、皆が視線を向ける。
そこには、いつの間にか元の姿に戻ったナベリウス。
彼は、静止している人ごみの向こうを指差す。
『『『あの二人、いなくなってしまったんだけど……』』』
「へ?」
「な!」
「しまっ……!!」
『――おやおや――』
なるほど。そこにあった筈のゴウと少女の姿は、綺麗さっぱり消えていた。
続く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/5375648
この記事へのトラックバック
ゴウトゥヘルのデートはどっちかってーと子供を連れてお出かけって感じかw
男⇔幼女については確かに不公平だが、感覚的にそうなのだから仕方がないorz
かつてのG3‐XXもドン引きされていたしw
で、仲間たちとしては当然様子が気になるだろうが、
トレンチコートの時点で尾行というものを勘違いしているなw
たしかこの手の食べ物の喧嘩は本家にもあったような。
まあゼクシアが食物連鎖を撲滅すれば解決だなw
そして特筆すべきはやはり何といってもミニチュアダックスフンドだろうwwwww
ナベリウス可愛すぎwww
もしこの姿でゼクシアに見つかったらきっと再起不能にされるなw
ミニチュアダックスはゼクシアが最も好む犬種なのだ。
最近ではロングコートチワワも加わったが。
止めようとしたシンも詰めが甘い。
「〜食せるとお思いですか?」で止めておけばよかったものを、
その後余計な挑発で話をこじらせてしまったわけで。しょせん四聖獣だなw
バアルはバアルで金槌とは古典的なw
「しっかりしたまえ!!誰にやられた!?」はかなりうけるw
で、肝心の二人がいなくなってて草が生えるオチw
でわ