2016年04月30日
スラムドッグ$ミリオネア(2008イギリス)
監督/ダニー・ボイル
脚本/サイモン・ビューフォイ
原作/ヴィカス・スワラップ『ぼくと1ルピーの神様』
出演者/デーヴ・パテール、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピントー、アニル・カプール、イルファーン・カーン
about the movie
インドの大都市ムンバイの中にあるスラム、ダーラーヴィー地区(Dharavi)で生まれ育った少年ジャマールは、テレビの人気クイズ番組『コウン・バネーガー・カロールパティ』("Kaun Banega Crorepati"、原題は『フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア』、日本版は『クイズ$ミリオネア』)に出演する。
そこでジャマールは数々の問題を正解していき、ついに最後の1問にまで到達した。しかし、無学であるはずの彼がクイズに勝ち進んでいったために、不正の疑いがかけられ、警察に連行されてしまう。そこで彼は生い立ちとその背景を語る。(wikipediaより引用)
review
オスカーで気になっていた作品。公開日に見ることに。
スラムを題材にした映画って、見ていてどうしても悲痛な部分があるというか、ものすごい罪悪感に苛まれるものが多いんだけど、これはテレビの華やかな世界と交互に編集することで、両極端な現実世界を行ったり来たり。そのバランスが絶妙で、物語に入り込むことができた。脚本と構成が上手い!時系列の交差は1パターンだけだったけど、飽きる事無く。シティ・オブ・ゴッドほど入り組んでなくて、分かりやすい。あーあの続編見なくちゃ…でも自宅でレンタルで見ると落ち込みそうかも…
んで、この映画は、狙いもあってスラム街の現実を考えされるというところまで劇中では辿り着きにくいんだけど、この映画に関するニュースが公開後にいくつか出ており、それを目にして改めて、ハリウッドという特別な世界がスラム街に入り込んでしまったという状況の及ぼした影響を感じた。
まずは、子役の子がメディアのインタビュー中、公衆の面前で父親に殴る蹴るの暴行を受けたという事(子供が受け答えを途中で拒否した為)。そして、一家が住んでいる家が政府によって立ち退きを要求されて、急いで映画の制作側が送金したら、ブローカーが持ち逃げした事。最近出ていたニュースでは、子役の女の子が父親に、4000万円で養子へと売りに出されようとされていた事。
この3つの事件は、きっと彼らの中では別段驚くことでもなく、生きて行く中で本能に従ってしたことだと思う。映画の中で切り取られた目を背けたくなるような光景よりも、もっと生々しい、スラム街に住む人たちの現在を浮き彫りにしていた。「なんでそんなことをするのか」と、責める気持ちにはまったくなれないのが、辛いことだと思った。善悪の感情以前に、きっとそれが自然の行動だったのだろうと思う。
「4000万円で養子に売りに出されようとした」とだけニュースで聞く私たちは、ひどい親だという印象を与えられる。でも、スラムから抜け出して、裕福な家族の元で暮らすことができ、そして親の生活も潤うということが、家族一緒で暮らすという幸せよりもずっと高い位置にさせているのは、彼らの心が貧しいからでもなんでもなく、彼らの置かれる状況がそうさせてしまっているだけなのか?人のものを盗んで売り、それで生計をたてる。その行為を、単純に「私たちよりも心が貧しい人々」という基準で見るべきではない。
こうした報道はスラム街の人々が、人の心を持っていないという印象を与えるだけの報道になっていないだろうか。
同時に制作側は、お金を送るよりアパートを買い与えた方が早いと考え、彼らに与えた。ギャラとして、成人になるまでの生活費等、高額な費用で彼らの人生を豊かなものにした。スクールバスなどを提供し、街の状況が少し変わった。
この対応も、ハリウッドの姿勢を表していると思う。これも彼らにとって、してあげられることをしたまでであり、批判することはできない。それをすぐに出来る状況に彼らは居る。
出演した彼らもスラム街の人々も、メディアに巻き込まれた一員で、その世界が一転することはない。映画や報道を見た人たちの心にどう変化が起きて、そしてどうそれを伝え、どう動くのか。
映画や報道は伝えるだけではなく、何かを投げかけながら、常に答えを求めている。
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