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2020年05月05日

「それなのに僕は其処に辿り着けない」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月22日投稿。




君の温もりにずっと抱かれていたい
君の温もりの中で眠ってしまいたい
僕は君に犯されている






タグ:2013

「君を殺す術が僕には判らない」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月19日投稿。




僕は君を殺してしまいたい
永遠の闇の中
ずっとずっと、ふたりぼっち
なのにねぇ
君を殺す術が
僕には判らないんだ






タグ:2013

「僕は水となってとけてしまいたい」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月17日投稿。




僕は水となって君とずっと永遠に融けてしまいたい











シャワー浴びるの愉しいですね。
水浴びの愉しい季節ですね、水着美女を視姦致したく候う。
視姦致したく早漏。
すみません。
タグ:2013

「君は水のように」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月16日投稿。




酸素が足りない
君は水のように僕を包み込むけれど
巡りきれない血液が
僕をそのまま殺してしまいそうで
なのに
僕はいつか
君の中に還っていきたい






タグ:2013

「優越感に支配されて」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月15日投稿。




優越感に支配されて全部全部忘れてしまえばいい






タグ:2013

「君に贈る御伽噺」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月15日投稿。




君は今、荒れ果てた海にいる
沈んだ世界
唄さえも聞こえない
なのに
見えもしない光に手を伸ばすんだ
自分のためだけの
フェアリーテイルを信じながら











いくつか関連つけた作品を詰め合わせて…、とか考えて早や半年放置したので諦めて投稿しておきます…。
タグ:2013

【禍因子育て企画】「大正妖怪異聞-廓座お仙-」【手習いの話】

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月12日投稿。




梅雨は長い。とてつもなく長い。
雨が降ると三味線の音も鈍るし、弾くではなく叩いて奏でる質の佐之助にとって、何とも憂鬱な季節であった。
何より、雨の時期は座長も鴉も機嫌と体調が悪くなるものだから、遊び相手がいないのである。一人遊びには慣れてはいるが、こうも毎日だとつまらない。
まだ梅雨に入り一週間も経たないのに、佐之助は既にうんざりしていた。
そんなとき、座長が長屋の奥に向かって歩いているのを目にした。珍しく化粧もせずに男物の着物を着ている。そして例に漏れず、不機嫌そうである。
佐之助は一瞬躊躇ったが、やっぱり何だか寂しかったので、とててててっ、走って座長に後ろから掻きついた。
「……、」
座長の反応がない。
不愉快に思われたかもしれない。機嫌の悪い時に掻きつきやがってと思われたかもしれない。そう思ってそっと離れると、座長がくるりと振り向いて、がしがしと乱暴に頭を撫でてくれた。
「どうしたんだい、佐之助」
どうしたもこうしたもない。寂しかっただけだ。
そう伝えたいけど佐之助は声が出せないもんで、しょんぼりと俯くしか出来ない。
そんな佐之助見て、あぁ、と、名案を思いついたとでも言うように、座長は手をぽんと叩いた。
「雨で毎日何処にも行けやしないし、つまらないだろう? 佐之助、お前、お紀伊に字を教えてやってくれよ」
そうだねぇ、お愁と一緒に教えてやったら、いつかあの子も喋れるようになるかもしれないねぇ。
そう言ってまた、座長はがしがしと頭を撫でてくれる。
「梅雨が明けたらお前の成果が楽しみだねぇ」
それを聞いて、佐之助の顔がぱぁあああぁっと明るくなった。そうしてくるりと踵を返すと、部屋へと急いで帰っていった。




佐之助が興行に出ることはない。謳いも出来ないし、見た目はただの人っ子と同じなので、一座には向かないのだ。
物珍しさに鴉に引き取られたのまでは良かったが、一座では特にやることもなく、つまらない毎日を過ごしていた。
そんな佐之助を見兼ねてか、座長はたまにお仕事をくれる。
手書きのチラシを作ったり、お得意様へのハガキを出したり、たまにお使いに立てたりしてくれた。
でも佐之助は、自分の馬鹿みたいに整っている字なんかより、座長のさらさらとした字の方が味があると思っていたので、自分に字書きの仕事をくれるのは嬉しいけれど、少しだけ、無理にくれてるんだと思うと、なんだか申し訳なかった。
だけれど今回は違う。
佐之助は古物の文箱をそのまま手にして、紙を鷲掴み、ばたばたとお愁の部屋へと向かう。
そう、今回は、整った字を書く自分が、適任なはずだ。
そう思うと何だか嬉しくなって、自然、足も弾むのだった。




佐之助は、気は長い方だと、自負している。
しかし、何度やってもいろは歌も書けぬ紀伊に、少し苛ついていた。
「お紀伊ちゃん、ひらがな、半分も書けないね」
二人で字を教え出して数日、とうとうお愁が言った。
今まで筆も何も持ったことがなかったのだから、字が汚いのはまだ仕方がない。佐之助の手本に準えて書くとそれらしいものは書けるようになったが、いざお愁がこの字を書けだの言うと混乱するのか半分も書けなかった。空でいろは歌も書けないし、佐之助は溜め息を吐いた。
自分の教え方が悪いのだろうか。
佐之助は俯いた。
声が出せない分は隣でお愁が口にしてくれている。今まで意思の疎通もこなしているのだから、言葉自体は解っているはずだ。
それでもいざ書こうとすると空では書けないもんだから、やっぱり字を準えて書かせたり、手本を見て書かせたりでは、覚えられないのだろうか。
そんな俯いた佐之助を見て、お愁はぽつり、ごめんなさい、と言った。
そうして二人とも俯き黙り込んでしまうもんだから、紀伊もしょぼくれてしまって、その日はもうお開きになった。




梅雨もそろそろ明ける。
佐之助は三味線を叩きながらぼんやり思った。
梅雨も明けるのに、折角座長にもらった役目も、全く進んでいない。ひらがなとカタカナを平行して教えてみたが、やっぱりいざ空で書かせると上手く書けないようだった。
これじゃあ、漢字なんて……。
そう考えると気が重くなって、自然と叩く撥も重たくなる。
佐之助は溜め息を吐いた。
今日はお愁と一緒に紫陽花を見に行くらしいから、手習いもない。ないから気晴らしに三味線を叩いているのに、やっぱり気分が乗らない。
自分には向いてないのかもしれない。佐之助は俯いた。声も出せないし、ひらがなでこんがらがっているだろうに、カタカナまで教え始めて。一緒に覚えた方が覚えやすいかと思ったのだけど、どうやらそうではないらしい。
佐之助はまた、溜め息を吐いた。
暫く溜め息は止みそうにないな、そう思うと余計気が重たくなるのだから、どうしようもなかった。




その日は月が出ていた。
夕餉の時はまだ雨音が聞こえていたのに。
そう思うと嬉しくなって、佐之助は三味線を手にとって、外へ飛び出した。




「おい、お前何処行くつもりや」
突然掛けられた声に、紀伊の肩がびくりと跳ねた。
そこには久方ぶりに見た、鴉の姿があった。
いつもと違い髪はそのまま垂れ流してあり、そしていつも以上に不機嫌そうであった。
一瞬、紀伊は答えるか迷うような素振りを見せたが、すぐに鴉の着物の引っ張ってなぁなぁと鳴いた。
すると、
「ちゃんと喋りよし!」
鴉がばちん、帳面のようなもので思いきり紀伊の頭を叩いてから、それと一緒に万年筆を差し出した。
「なんやの。喋らんならここに書きぃ」
紀伊はそれをふんだくると、使い慣れない万年筆に戸惑いながらも、がりがりと書いた。
さのすけどかいつちやつた
それを見た鴉は、面倒臭そうに息を吐いた。
「それで? 追い掛けてどないすんの、佐之助よりここらに詳しゅうないお前が」
「……、」
このままかえつてこなかたらきいのせい
しょんぼりと紀伊は書いた。
それを見て、鴉は鼻を鳴らす。
「佐之助が帰ってこんわけがねぇだろ」
それでも紀伊はそうは思わないらしく、必死で鴉を引っ張って、どうやら一緒に探しに行けとでも言っているようだ。
くそ面倒臭ぇな。
鴉は舌打ちをするが、あまりに紀伊が必死で引っ張るもので、それをいなすのも面倒だと思い、仕方なしに外へ行くことにした。
鴉には人ならざる力を行使すれば探し物はだいたい見つけられるのだが、今回はそうするまでもなかった。
なんとなく、佐之助の行きそうなところなど考えがつく。
ぽてぽてと紀伊を連れて歩きながら、新しくできた空き地へと、向かっていった。
その空き地は梅雨前に佐之助と一緒に見つけた空き地だった。後で家を建てるにしろ、どうせ今は梅雨で何にもしてやしないだろうと踏んでいたら、まさしくそうだった。空き地には瓦礫が積み重なっている場所があり、その上で黒い影が、撥を叩いている。
佐之助だ。
一瞬、紀伊はきょとんとして首を傾げた。
どうやら大きい佐之助が佐之助だと分からないらしい。そんな紀伊を尻目に、鴉は瓦礫へと近付いた。
「佐之助、帰るぞ」
言うと、影は驚いたように目を開き、撥を止めた。
そんな鴉の後ろから、とぼとぼと紀伊がやってくる。それを見て佐之助は、少しだけ目を逸らしてから、また撥を叩き始めた。
すると鴉は溜め息を吐いてから、舌打ちをする。
そして振り返って紀伊に一言、帰るぞ、と、声を掛けてから先々と歩き出した。
そんな鴉と大きな佐之助を交互に見ると、紀伊はどっちをどうすればいいのかなんて分からなくなって、なぁーなぁー、悲しそうに鳴きながら、鴉に渡された帳面にがりがりと書いて佐之助に差し出した。
するとそれを見て、佐之助は吃驚したように目を見開いてから、少し照れたように笑って、首を振ってから、さきにおかえり、と返してやった。そんな佐之助を暫く紀伊は待っているようだったが、鴉が不機嫌そうに呼ぶので、帳面を懐にしまって、その場を後にした。
雨上がりの月夜に、弦を叩くその音が、妙に心地好かったのだけ、覚えている。




次の日の朝、お愁と一緒に紀伊が佐之助の部屋を覗くとそこには誰もいなくて、二人顔を見合わせて俯いた。
「お紀伊ちゃん、今日は私と、お勉強ね」
そう言ってとぼとぼお愁の部屋へと戻ってると、嬉しそうに佐之助がばたばたと走ってきた。手には見たことのない、どうやら洋物の本のようだ。
佐之助がそれを開けると、そこにはいろんな玩具や道具の絵が描いてある。
それを見て、お愁と紀伊が目をきらきら輝かせていると、佐之助はそれに万年筆でがりがりと文字を書いていった。ひらがなカタカナに簡単な漢字も使い、物の名前を書き込んでいく。
「そうか、絵と一緒だと覚えやすいかもね」
お愁が嬉しそうに言うと、佐之助は笑ってそれを紀伊に差し出した。
紀伊はその本を大事に腕に抱えると、頑張るぞ、とでも言うように、なぁー、と一声鳴いた。
梅雨明けももうすぐ。
三人の頑張りは、まだまだ始まったばかりである。


続く






【禍因子育て企画】「大正妖怪異聞-廓座お仙-」【七夜目】

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月11日投稿。




雨の季節が過ぎ去って、暑い夏の気配がそこかしこに満ちてきた。
「ほれ、皆好きに書きな」
言いながら、ばさりっ、夕餉の席で座長が笹を放り投げて寄越すので、銀は首を傾げた。他の者は、配られた短冊を手にとって、思い思いの願いを口にして話に花を咲かせている。
「えっと、座長、これはどういう……、」
銀がきょとんと座長を見返すと、さも当然とでも言うように、座長は怪訝な表情を浮かべて言った。
「皆の短冊をくくりつけて、神社に奉納しに行くんだよ」
「神社?」
「そうさね」
銀は思い返す、去年のことを。そういえば鴉に連れられて大きな神社に笹を奉納しに行ったような気がする。そこは確か恋の神様だとかなんだとか。
「行けるのがお前とお紀伊しかいないからねぇ」
「……、」
銀は首を傾げる。確かに純粋な妖しの類は神域には入れない。妖力が高ければ高いほど、強い神気にあてられてしまう。
しかし、それは妖力が高ければの話だ。
この妖怪一座の中には、妖力を持たぬ者がもう一人いる筈だ。そう、鴉だ。
「座長、鴉は?」
尋ねると、座長はすごく不愉快そうな表情を浮かべる。それに面食らって、つい銀は、目をぱちくりとさせた。
鴉と座長は旧知の仲だ。多少の某はとんとんにさせてしまう程度には、気心も知れてるし、鴉が自由に動き回っても何も言わないのが座長だ。その筈だ。
「鴉はねぇ、もう暫く帰ってきやしないよ」
そう言った座長の声が吐き捨てるようだったので、銀は思わず肩を竦めた。
すると、後ろからお妲が銀に抱き着いてきて、
「銀の字、アンタは何て書くんだい? アタシはアンタと甘味屋行けますようにとでも書こうかねぇ、」
と嬉しそうに言った。
くすくすと笑いながら言うお妲に、銀は顔を真っ赤にして硬直する。それを見て座長が苦笑いしてから、お妲の髪を一度だけくしゃりと撫でてから、付け加えるようにまた、銀に言った。
「じゃ、皆の短冊、よろしく頼むよ」
そうして踵を返し、さっさと部屋へと帰って行ってしまった。
その様子をぽかんと銀が見つめていると、後ろから抱きついたまま、お妲がぼそりと言った。
「ケンカしたのさ。よくあることさね。鴉は家出しちゃって、今いないのさ」
「え……、」
「ま、そのうちひょっこり帰って来るだろうからねぇ、それまでお仙は、そっとしといておやり」
そんな、座長と鴉が喧嘩だなんて。
銀にはあまりその光景が思い浮かばなかったが、そういえば梅雨に入る前からずっと、鴉の機嫌が悪かったことを考えると、有り得ないことではないかもしれない。
そんな感じにぼんやり考えていると、目の前に紀伊がひょっこり、お愁と一緒にやってきた。手にはたくさん、短冊を持っている。
「銀の字がお姉ちゃんといちゃついてる間に、もう皆、短冊書いちゃったよ」
「いちゃつ……!?」
その言葉に銀は慌てるが、お妲は何ともない風で、更にぎゅっぎゅと抱きついてくるもんだから、もう銀はさっきまでの座長と鴉とのことなんて考えてられなくなって、自分の鼓動が速くなるのを感じた。
「姐さ……、あの……、胸……、」
しどろもどろで銀が言うのにお愁が呆れたように首を振ってから、笹を取り上げて言った。
「お紀伊ちゃん、だめ。銀の字は使いものにならない。短冊、結び方教えてあげるね」
そう言ってお愁は笹を持って部屋へととてとて帰っていく。それを見てから紀伊も、銀に呆れたかのように首を振ってから、短冊を持ってお愁についていった。
そうして広間を見渡してみると、もうお妲と銀が二人だけしかいなかった。
「ちょっ、お紀伊、おいっ、」
慌てて呼び止めるが、お妲がぎゅっぎゅと抱きついてくるもんだから、もう次第に抵抗する気もなくして、掻きついてくるお妲の手に自分の手を重ねた。
「ふふっ、あの二人仲良くなっちまって、本当、可愛いもんだねぇ」
アタシたちに気を遣ってくれたんだねぇ。
いやいやいや、呆れてるだけだって、っていうか、姐さん、もう、本当、もう、
嬉しそうに言うお妲に銀は心の中で言葉を返してから、はぁ、一つ溜め息を返してからぽつりと漏らした。
「敵わないなぁ」
そんな銀の心を知ってか知らずか、お妲はくすくす笑って皆の短冊よろしくたのむよ、なんて言うもんだから銀は、仕方ないな、敵わないな、ともう一度心の中で言いながら、暫くの間、その腕の中に甘んじるのだった。




朝、まだ日も顔を出したか出してないか、そのぐらいの時間、銀は紀伊の手を引いて、去年鴉に連れられて行った神社に笹を運んでいた。
右手に持った笹には、皆の様々なお願い事が書いてあり、ふと目をやるとひらがなの拙い字で、「たくさんたべる。きい」なんて短冊を見つけて銀は苦笑いした。
「お紀伊、お前そんなに食い意地張ってどうするんだ」
そう言いながら、いつの間にか字が書けるようになっていたのかと思うと何だか微笑ましかった。
そんな願いの詰まった笹を持って、開いたばかりの神社へと朝一で奉納してしまうと、銀は言いようのない達成感を覚えて、軽い足取りで家路についた。
そしてほとんど長屋に帰った頃、あ、と思い出して血の気が引くのを感じた。
「俺、短冊書いてないじゃん」
そんな銀を尻目に、紀伊はぽてぽて先に帰って行くもんだから、もう引き返すこともできなくて、銀はがっくり肩を落として帰らざるを得なかったとさ。


続く






【禍因子育て企画】「大正妖怪異聞-廓座お仙-」【六夜目】

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月10日投稿。




ざぁざぁと雨が長屋の屋根を打ち付ける。こんなに長く雨が続くのは初めてだからか、紀伊はここ最近、毎日毎日飽きもせず雨を眺めていた。
「あぁもう、梅雨は本当、困るなぁ」
銀は風呂場に洗濯物を干してしまってから、溜め息を吐いた。
「でもまぁ、お紀伊は雨が楽しいみたいだし、いいか」
そう言って部屋に戻ろうとすると、紀伊がお愁と傘一つ差して何処かへ出掛けようとしているのが目に入り、銀は慌てて後を追い掛けた。
「ちょっ、ちょっと待てよ! こんな雨の中何処行くんだよ」
紀伊の奴、ちょっと人に化けられるようになったからって。
「二人だけで出て行ったら危ないだろ」
はぁはぁ息を急ききらせ、何とか追いついた銀は傘を持ったお愁の手を掴んだ。するとお愁は、事もなげに返す。
「あぁ、銀の字。あのね、紫陽花をね、見に行こうと思ったの」
「紫陽花?」
するとお愁はとても嬉しそうな顔をする。
「そうよ、梅雨になる前にお兄ちゃんが教えてくれたの、紫陽花が咲く神社がね、ちょっと行ったところにあるの」
「神社?」
そうしていくらか考えたけれど、思い当たる節がない。そもそも、妖力の強い座長が、進んで神域に行くとは考えにくかった。
「神社?」
銀はもう一度尋ねる。
「そうよ。道は覚えてるから大丈夫よ」
「二人で?」
すると、紀伊がぎゅっと銀の着物の袖を掴む。そしてぐいぐいと引っ張るので、どうやら一緒に来いと言ってるようだ。
銀は頭を掻く。
まぁ、どうせ雨で出来ることは限られてるしな。
「分かった、俺も行くよ。二人じゃ危ないし」
だからちょっと待ってろ、用意してくるから。
そう言って銀は自分の傘を取りに行った。
と、その時、
「銀の字じゃないかい」
後ろから嬉しそうな声でお妲が声を掛けてきた。
「どうしたんだい、傘なんて持って」
「あ、姐さん……、あの、お紀伊がお愁と紫陽花を見に行くって言うんで、危ないし、俺も一緒にって……、」
「紫陽花!」
銀の言葉が終わるか終わらないか、お妲はぱぁあああぁっと顔を輝かせた。
「もうっ、それならアタシも誘っておくれよ! あぁ、大丈夫だよ、アタシは銀の字の傘に入るから」
「はぁああああぁ!?」
言うと、お妲はすっとんきょうな声を上げる銀から傘をふんだくると、ばさりと広げた。
「え、ちょっ、姐さんと相合い傘……、」
顔を真っ赤にする銀を尻目に、ほら、二人が待ってるよ、なんて手を差し出してくるもんだから、もう、本当にこの人には敵わないな、と、銀は苦笑いしながら同じ傘の下へ入った。
お妲と二人、紀伊とお愁に合流すると、ぼそり、お愁が、お姉ちゃんが傘持つのね、なんて言ったのが聞こえた気がするが、銀はそれどころじゃなかった。
そうして四人連れ立って、ぼたぼたと傘を打つ音を聞きながら、お愁の言う神社へとゆっくり歩いていく。
紀伊とお愁が前で何か話しているようだが、銀はそれどころじゃなく、下を向いたまま、顔を上げることも出来ない。
お妲はいつものようにゆったりと、何も言わずに、嬉しそうに前の二人に付いていく。その横顔をちらり垣間見て、銀は溜め息を漏らした。
届かないなぁ。
「銀の字? 着いたよ」
ハッとして銀は前を向く。
するとそこには、打ち捨てられた鳥居があって、もう何年も何十年も放ったらかしにされて緑が生い茂って、だからこそ、その先には紫陽花が色とりどりに咲き誇っていて。
「すげぇ……、」
銀はぽつりと声を漏らした。
と、同時に、何だか寂しくなった。
もう、ここには誰も、いないんだなぁ、と。
「まぁ、今年もまた綺麗だねぇ」
お妲が嬉しそうに言う。
紀伊とお愁は花のすぐ傍まで寄っていって、きゃっきゃとはしゃぎながら紫陽花を見ていて。
だけど、そうか、もうここには誰もいないんだな……。
「銀の字?」
お妲の声に、ハッとする。
「どうしたんだい?」
心配そうな表情で手ぬぐいを差し出してくるお妲に、一瞬戸惑ってから、気付いた。
あれ、泣いてる?
「ははっ、何でだろう」
照れたようにごしごしと目を擦ると、それを制するかのようにお妲の手が頬に伸びてきた。
ばさりっ、傘が落ち、小粒の雨が二人を叩く。
「銀の字、」
「姐さん、濡れちま……、」
「ここは明治になって棄てられた鳥居の成れの果てさ」
「え……?」
「廃仏毀釈だなんだってお上が神さんを奉って寺を潰した成れの果てさ。神仏集合で崇められ金を得ていた神社は立ち行かなくなり、神主は首を吊ったそうだよ」
「……、」
「自分の祀ってきた神さんより何より生活苦に嘆いた挙げ句に何もかも捨てちまうなんて、本当に、人間ってのはどうしようもないねぇ」
言いながら、ぎゅっとお妲は銀を抱き締めた。
「アタシはそんな人間は嫌いじゃあないけども、忘れられた神さんにしちゃあ、とんでもない話さね」
「……、」
銀はそれには答えなかった。答えない代わり、お妲を抱き返して、ぼそり、濡れちまうよ姐さん、聞こえるか聞こえないかの声を漏らした。
そうして暫く抱き合っていたのだけど、ハッとして銀は手を放す。
そして慌てて紀伊とお愁を確認したら、二人は飽きもせずに紫陽花に魅入っているようで、銀はほっと息を吐いた。
そんな銀に、お妲は少しだけ、寂しそうな顔をしてから、ゆっくり、傘を拾った。
「濡れちまったねぇ」
「……、」
傘を揺らし、中に入ってしまった水を払ってから、また、お妲は何事もなかったようにそれを差した。
「まぁ、洗濯するのはアンタだし、たまにはこういうのもいいもんだねぇ」
そう言ってくすくす笑うもんだから、銀もつられて顔が綻んだ。
すると、後ろから声がする。
「お姉ちゃん、銀の字、見て、かたつむり、」
二人は一度顔を見合わせると、次は苦笑いをして、声に応えた。
「見て、かたつむり、二人仲良し、仲良しね」
見てみると、紫陽花の陰に隠れて、二匹の蝸牛が寄り添うようにそこにいた。それを紀伊が興味深げに見ているもんだから、銀はまた、苦笑いを浮かべた。
暫くして、お妲が声を掛ける。
「そろそろ帰らないと、お仙が心配するだろうねぇ」
「えぇっ、あっ、うん……、」
お妲の言葉に一瞬戸惑ってから、お愁はこくりと頷いた。そして紀伊に声を掛け、
「お紀伊ちゃん、紫陽花、終わり、また今度ね、」
名残惜しそうに蝸牛を見つめる紀伊の手を引っ張った。
紀伊は少しだけ、まだ見たいとでも言うようになぁなぁ鳴いて抗議の声を出していたが、すぐにそれも止めて、銀の後ろにべったりとくっついた。
「な、何だよお紀伊」
銀が言うのに間髪入れず、お妲がくすくすと笑った。
「おぶっておやりよ。お紀伊は銀の字の背中がいいんだってさ」
えぇえ……、嫌だよ……。
言おうとしたが、言えるはずもなく楽しそうに笑うお妲を前に言えるはずもなく。
「傘はちゃんと、アタシが持ってあげるから」
……、いやもう濡れちゃってるじゃないか……、という言葉は、そっと心にしまいつつ。
銀は溜め息を吐いて、紀伊をそっと背負ってやった。すると嬉しそうになぁーなぁー後ろから声がするもんで、まぁいっか、と、銀はゆっくり歩き出した。
それに合わせて弾むように前を行くお愁と、ゆったり寄り添うように歩いてくれるお妲と。
こんな雨の日も、いいもんだな。
銀はぼんやり思いながら、家路につくのだった。




夕飯後、紀伊はお愁に呼び止められて振り向いた。
そしてまた前を向くと、銀は紀伊が止まったのにも気付かずに、先々歩いて行っている。
そんな銀を指差して、お愁はそっと耳打ちした。
「銀の字、今日、お姉ちゃんと抱き合ってたね、もっともっと二人がちゃんと仲良くできるように、私達、頑張ろうね」
そうしてぎゅっと紀伊の手を握り、あ、と、思い出したように付け加えた。
「お紀伊ちゃん、私達がこうして二人をくっつけようとしてるのは、私達だけの秘密よ。誰にも言っちゃあ、ダメだからね」
それを聞いて、紀伊は嬉しそうになぁーなぁー鳴いた。
そう、これは二人だけの秘密の話なのだ。
銀とお妲が上手くいきますように。そう言ってお愁と二人笑い合ってから、紀伊は急いで銀の後を追うのであった。


続く






「僕は永遠の奈落に沈んでみたい」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年07月10日投稿。




「no-title」

死ぬ前に
たった一度でいいから
一つの世界に埋没してみたい
あぁなんて欲張りで馬鹿馬鹿しい
世界はこんなに広いのに全てが欲しくって
それなのに
たった一つ
埋もれられる場所を探している




「no-title」

巡り巡って同じ場所にしか戻ってこれない
落ちることもできないから
僕は
馬鹿みたいにうたうんだ
手に入るわけもないのにさ




「no-title」

何処まで進めば僕は君の歌った世界にいけるだろう
あぁそんなの
いけるはずもないのにね
だって
もう
こんなに遠い、空




「no-title」

何にもないから歩くんだ
何にもないから進むんだ
空っぽ空っぽ何にもない
何にもないから
あぁ
君に会いたい




「no-title」

夜明けは僕にはおはよう言わないよ
だからばいばい
僕は世界にさようなら




「no-title」

全部全部愛して全部全部受け入れて
そんな
全部がいいなんて
結局何もいらないだけじゃないか




「no-title」

大好きな場所で始まりを
大嫌いな僕にさよならを
あぁ
夜が明ける
独りぼっちの世界が燃えていく











おはようございますー。
ちょっと脳味噌が沸いたので祇園から伏見稲荷行って龍大越えてぐるり回って烏丸から京都駅で夜明けを迎え、今、まさに帰還したところです(爆死)
そんな感じで、一時間ほどですが楽しかったです。愛チャ盗られてからまともにチャリ漕いでなかった気がするので、もっともっと遠くに行きたいです。
まぁ、愛チャ戻ってきてほしいですけど。戻ってきて、愛チャとサイクリング出来たら、それが一番幸せなのですけど。
そんな感じで。
さまにゃんこでした。











「no-title」

誰かに解ってほしいと言いながら
この衝動を知る人とは
きっと
同じ世界を保てやしない
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