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2017年08月25日

ソーシャルレンディング案件における不動産「以外」担保の評価ポイント(私の場合)



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はじめに

 不定期に書いていますソーシャルレンディング初心者向け記事になります。
 以前、以下のような記事を書きました。

  ・ソーシャルレンディング案件における不動産担保の評価ポイント5つ(私の場合)

 今回はこの記事の続きとして、不動産「以外」の担保の場合はどのように見ていけばいいのかについて
 まとめてみたいと思います。
 また、併せて「担保」だけではなく、「保証」についても取り上げます。

 ただ私は金融関係の公的資格や就業経験を持っているわけではありませんので、記事の内容については
 精度を保証するものではないことにご注意下さい。
 言葉の意味などについても、正確性より分かりやすさを重視して記事にしています。

担保と保証

 まず、担保と保証についてです。
 似たような意味で使われるこれらの言葉ですが、定義は異なります。

 ・担保
  貸付先が返済できなくなった場合に備え、貸付先から提供を受ける価値のある何か。
  不動産、動産、売掛債権、有価証券などがある。

 ・保証
  貸付先が返済できなくなった場合、貸付先に代わって返済する義務を負う契約のこと。
  代表者保証、関係会社保証、第三者保証、連帯保証などがある。

 そして、担保や保証を設定することで、貸付先からの返済ができなくなった場合にも回収できるような
 仕組みの総称を、保全と呼びます。

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不動産以外の担保

 ソーシャルレンディングにおいて、不動産以外の担保の一例と、私的なポイントを紹介します。


 @動産担保
  貸付先が保有する財産のうち、不動産以外のものを指します。
  一例を挙げれば、製造業なら設備、部品、材料。オフィスのPCや什器なども動産です。
  農業であれば、農作業機器から肥料や餌、畜産業であれば牛豚鳥も動産に相当します。

  動産担保による貸付は動産担保融資(ABL=Asset Based Lending)と呼ばれ、
  近年、不動産や第三者保証に頼りすぎな資金調達の方法としてだんだんと広まっているようです。
  (もっとも、大手金融機関はまだまだ不動産神話・第三者保証神話が強いようですが)

  一般的には不動産と比べて脆弱な担保であり、担保の質としては一段落ちると言えます。
  私が動産担保の判断をする際は、不動産と同様に

  「貸付金に対して妥当な額の動産担保が取られているか」
  「その動産担保は換価性(=すぐにお金に換えられること)に優れているか」
  「買いたたかれる種類の動産ではないか(=中古品が値崩れする動産ではないか)」


  というポイントで見る事にしています。


 A売掛債権担保
  その名の通り、売掛金を担保にする貸付の事です。これもABLと呼ぶ事があるようです。
  売掛債権を第三者(銀行など)に売却することで資金調達を行うファクタリングと似ていますが、
  ファクタリングは売掛先に債権譲渡を通知する必要があります(=資金繰りが厳しいのがバレる)。
  これに対し、売掛金に質権を設定して貸付を行う場合、債権譲渡ではないので通知は必要ありません。

  一般的には、より現金に近い売掛金という性質のため、動産担保より質は上だと思われますが
  どういう種類の売掛金なのか、その売り先の経営は盤石なのか、契約は既に締結されているのかについて
  評価する必要があります。

  それと、貸付先の規模と貸付金の規模が釣り合っているかどうかも確認する必要があります。
  例えば年商1億円の会社に売掛債権担保で5,000万円融資という案件があった場合、普通に考えて
  その売掛金は既に焦げ付いているんじゃないか、と疑うべきでしょう。

  参考までに、東京スター銀行での売掛債権担保の事例をご覧下さい。
  年商と貸付金のバランスが分かります。

  ・導入事例:スターABL (東京スター・ビジネス・ファイナンス)


 B持分への質権設定
  持分というのは一般的に、ある物を複数人数で共有している場合の分割された所有権の事ですが、
  担保でこういう表現がある場合は、だいたいの場合「その会社への出資持分」のことです。
  要は、「会社に対しての出資金」に対して質権を設定している、ということです。

  この場合の担保価値は、その持分会社の安定性に大きく影響されます。
  それなりの規模と実績のある会社なら良いのですが、社歴が浅く未公開株式しか持っていないような
  場合には、担保価値はほとんどないと言えるでしょう。

  ただし、貸付先の親会社が所有する、貸付先に対する持分に質権を設定するような場合は、
  「貸付先が吹き飛んだら親会社も困る」という条件のもとに、親会社と投資家の利害が一致します。
  逆に言えば、このような場合でも貸付先を計画倒産させる悪意があれば、担保は何の対抗要件にも
  ならない
、ということです。


 C経産省ID、系統連系、開発権譲渡
  これらの担保は主に、再生可能エネルギーの案件に登場します。それぞれ以下のような内容です。
  「経産省がその設備を認定して売電許可を出しています」
  「関係電力会社との接続OKです」
  「その土地で(再生可能エネルギー施設などを)開発・運営することができます」


  基本的にこの3つ(+土地使用権と設備)が揃えば、再生可能エネルギーで利益を得られます。
  これらの権利を担保として抑えていれば、貸付先が返済困難になった場合でも権利譲渡を行って
  別の再生可能エネルギーの運営者に売却することで、元本の弁済に充てられる可能性があります。

  気を付けるべきはまず、FIT法による売電価格がいくらかという情報。
  近年売電価格は下降の一途を辿っていますので、売電価格は施設の魅力に直結します。

  また、これらの権利が細切れにされて担保になっている場合にも注意が必要だと思います。
  例えば、太陽光土地、発電設備、経産省ID、系統連系、開発権が別個に所有されている場合、何が
  起こるかは考えなくても分かります。そんな案件、転売しても誰も買おうとしないでしょう。


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保証の種類

 次に保証です。こちらは担保に比べれば簡単です。


 @代表者保証、(個人)連帯保証
  基本的にはお守りだと思っておいた方がいいです。
  会社レベルでの損害が出るような状況で、個人連帯保証があっても焼け石に水です。
  そもそも、個人が破産したら連帯保証も何もありません。


 A関係会社保証、(法人)連帯保証
  個人保証に比べれば幾分マシですが、それでもあまり信用できません。
  現存するSL案件の中でほぼ唯一の例外はLCレンディングの「LCギャランティーファンド」で、この案件に
  ついてはジャスダック上場会社であるLCホールディングスの保証が入ります。

  つまりこの案件に関しては、貸付先の安定性はLCホールディングスの安定性で上書きできることになり
  実質的にはLCホールディングスの社債を購入していることと大差がなくなるわけです。


 B第三者保証
  一般には保証会社による保証です。スマートレンドなどでたまに出てくる案件です。
  保証会社というのはその名の通り、一定のコストを払って債権の保証をする会社です。
  保証を専門に行っているという性質上、Aの法人連帯保証に比べて安定性が高いように思えますが、
  保証会社の規模が分からない以上は過信は禁物だと思います。

  なお最悪のケースは、保証会社が貸付先とグル(関係会社)だった場合です。
  この場合、悪意による計画倒産(保証会社ごと吹き飛ばす)を防ぐ方法はありません。


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まとめ

 以上、不動産以外の担保や保証について、私なりのポイントをまとめてみました。
 誤りや見落とし、勘違いなどあればご指摘をよろしくお願いします。

 不動産は確かに強力な担保です。
 しかし、ソーシャルレンディング投資においては、あらゆる意味において「集中」(事業者、案件、
 貸付先、担保等)がリスクに直結する、と考えています。


 堅い案件に多めに投資するのは当然の戦術ですが、同時に(リスクがあっても)色々な案件に投資を
 行うことで、結果的にリスクを減らせるでしょう。
 デフォルトが起きない案件を選ぶより、デフォルトは起きるものだからそれに備えて資金を分散する、
 という方針の下に、これからも投資を続けていきたいと思います。


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