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2021年01月10日

「痴人の愛」本文 角川文庫刊 vol,7


「痴人の愛」本文 角川文庫刊 vol,7

この「伯父さん」は好きな活動に連れて行って、時々ご馳走をしてくれるから、一緒に遊びに行くのだというだけの、ごく単純な、無邪気な心持でいるのだろうと、私は想像していました。



私にしたって、全く子供のお相手になり、優しい親切な「伯父さん」になる以上の事は、当時の彼女に望みもしなければ、素振りにも見せはしなかったのです。



あの時分の、淡い、夢のような月日の事を考え出すと、お伽噺の世界にでも住んでいたようで、もう一度あの罪のない二人になって見たいと、今でも私はそう思わずにはいられません。



「どうだね、ナオミちゃん、よく見えるかね?」

と、活動小屋が満員で、空いた席が無い時など、後ろの方に並んで立ちながら、私はよくそんな風に言ったものです。

するとナオミは、



「いゝえ、ちっとも見えないわ」

と言いながら一生懸命に背伸びをして、前のお客の首と首の間から覗こうとする。



「そんなにしたって見えやしないよ。この木の上へ乗っかって、私の肩に摑まってごらん」

そう言って私は、彼女を下から押し上げて行って、高い手すりの横木の上へ腰をかけさせる。



彼女は両足をぶらんぶらんさせながら、片手を私の肩にあてがって、やっと満足した様に、息を凝らして絵の方を視(み)つめる。

「面白いかい?」

と言えば、

「面白いわ」

と言うだけで、手を叩いて愉快がったり、跳び上がって喜んだりするようなことは無いのですが、賢い犬が遠い物音を聞き澄ましているように、黙って、悧巧そうな眼をパッチリ開いて見物している顔つきは、余程写真が好きなのだと肯かれました。



「ナオミちゃん、お前お腹が減ってやしないか?」

そう言っても、

「いゝえ、なんにも食べたくない」

と言うこともありますが、



減っている時は遠慮なく、

「えゝ」

と言うのが常でした。

そして洋食なら洋食、お蕎麦ならお蕎麦と、尋ねられゝばハッキリと食べたいものを答えました。



                          (以上、「一話」完)

                           次回に続く。




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