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2021年03月11日

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,78


「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,78



それから再びシュレムスカヤ夫人の話、ダンスの話、語学の話、音楽の話、・・・・・・ベトオヴェンのソナタが何だとか、第三シンフォニーがどうしたとか、何々会社のレコードは何々会社のレコードより良いとか悪いとか、私がすっかりしょげて黙ってしまったので、今度は女史を相手にしてぺらぺらやり出すその口ぶりから推察すると、このブラウン氏の夫人というのは杉崎女史のピアノの弟子ででもありましょうか。



そして私はこんな場合に、「ちょっと失礼いたします」と、いい潮時を見計らって席を外すというような、器用な真似が出来ないので、この饒舌化の婦人の間に挟まった不運を嘆息しながら、いやでも応でもそれを拝聴していなければなりませんでした。



やがて、髭のドクトルを始めとして石油会社の一団の稽古が終わると、女史は私とナオミとをシュレムスカヤ夫人の前へ連れて行って、最初にナオミ、次に私を、これは多分レディーを先にするという西洋流の作法に従ったのでしょう。



極めて流暢な英語で以て引き合わせました。その時女史はナオミの事を「ミス・カワイ」と呼んだようでした。



私は内々、ナオミがどんな態度を取って西洋人を応対するか、興味を持って待ち受けていましたが、普段は己惚れの強い彼女も、夫人の前に出てはさすがにちょっと狼狽の気味で、夫人が何か一と言二た言言いながら威厳のある眼元に微笑を含んで手を差し出すと、ナオミは真っ赤な顔をして、何も言わずにコソコソと握手をしました。



私と来てはなおさらのことで、正直のところ、その青白い彫刻のような輪郭を、仰ぎ見る事は出来ませんでした。

そして黙って俯向(うつむ)いたまま、ダイヤモンドの細かい粒が無数に光っている夫人の手を、そうっと握り返しただけです。





引用書籍

谷崎潤一郎「痴人の愛」

角川文庫刊



次回に続く。
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