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2021年01月24日

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,27

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,27





並み居る婦人たちの中にはあっさりとした浴衣がけの人もいましたけれど、指に宝石を光らしているとか、持ち物に贅(ぜい)を凝らしているとか、何かしら彼等の富貴を物語るものが示されているのに、ナオミの手にはその滑らかな皮膚の外に、何一つとして誇るに足るものは輝いていなかったのです。



私は今でもナオミが極まり悪そうに自分のパラソルを袂の蔭へ隠したことを覚えています。

それもそのはずで、そのパラソルは新調のものではありましたが、誰の目にも七八圓の安物としか思われないような品でしたから。



で、私たちは三橋にしようか、思い切って海浜ホテルへ泊まろうかなどと、そんな空想を描いていたに拘わらず、その家の前まで行ってみると、まず門構えの厳しいのに圧迫されて、長谷の通りを三度も行ったり来たりした末に、とうとう土地では二流か三流の

金波楼へ行くことになったのです。



宿には若い学生たちががやがや泊まっていて、とても落ち着いては居られないので、私たちは毎日浜でばかり暮らしました。

お転婆のナオミは生みさえ見れば機嫌がよく、もう汽車の中でしょげた事は忘れてしまって、



「あたしどうしてもこの夏中に泳ぎを覚えてしまわなくっちゃ」

と、私の腕にしがみついて、盛んにぼちゃぼちゃ浅い所で暴れまわる。



私は彼女の胴体を両手で抱えて、腹這いにして浮かせてやったり、シッカリ棒杭を掴ませて置いて、その脚を持って足掻き方を教えてやったり、わざと突然手をつッ放して苦い潮水を飲ましてやったり、それに飽きると波乗りの稽古をしたり、浜辺にごろごろ寝ころびながら砂いたずらをしてみたり、夕方からは舟を借りて沖の方まで漕いで行ったり、そして、そんな折には、彼女はいつも海水着の上に大きなタオルを纏ったまま、或る時は艫(とも)に腰かけ、或る時は舷(ふなばた)を枕に青空を仰いで誰に憚ることも無く、その得意のナポリ舟唄、「サンタ・ルチア」を甲高い声で歌いました。





引用書籍

谷崎潤一郎「痴人の愛」

角川文庫刊



次回に続く。

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