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2021年01月23日

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,26

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,26





その「洋服」という餌に釣られて、彼女はやっと納得が行ったのでした。

鎌倉では長谷の金波楼という、あまり立派でない海水旅館に泊まりました。



それについて今から思うとおかしな話があるのです。

というのは、私のふところにはこの半期に貰ったボーナスが大部分残っていましたから、本来ならば何もニ三日滞在するのに倹約する必要は無かったのです。



それに私は、彼女と初めて泊りがけの旅に出るということがゆかいでなりませんでしたから、成るべくならばその印象を美しくするために、余りけちけちした真似はしないで、宿屋なども一流の所へ行きたいと、最初はそんな考えでいました。



ところがいよいよという日になって、横須賀息の二等室に乗り込んだときから、私たちは一種の気後れに襲われたのです。

なぜかと言って、その汽車の中には厨子や鎌倉へ出かける夫人や令嬢が沢山乗り合わしていて、ズラリときらびやかな列を作っていましたので、さてその中に割り込んでみると、私はとにかく、ナオミの身なりがいかにもみすぼらしく思えたものでした。



勿論夏の事ですから、その婦人たちや令嬢たちもそうゴテゴテと着飾っていたわけではありません、が、こうして彼等とナオミを比べて見ると、社会の上層に生まれた者とそうでない者との間には、争われない品格の相違があるような気がしたのです。



ナオミもカフェエへいたころとは別人のようになりはしたものの、氏や育ちの悪い者はやはりどうしても駄目なものじゃないかと、私もそう思い、彼女自身もいっそうそれを感じたに違いありません。



そしていつもは彼女をハイカラにみせたところの、あのモスリンの葡萄の模様の単衣物が、まあその時はどんなに情けなく見えた事でしょう。





引用書籍

谷崎潤一郎「痴人の愛」

角川文庫刊



次回に続く。


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