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2021年01月22日

「お梅人形」本文vol,1(全10記事)

江戸川乱歩【一寸法師】より「お梅人形」VOL,1


午前二時、その百貨店の三階の卸服売り場を、若い番頭が一人の少年店員を伴って、見回っていた。



この店では毎晩、番頭、少年店員、警務さん、鳶(とび)の者など、数十人の当直員を定めて、広い店内を隅から隅まで、徹宵(てっしょう)見回らせることになっていた。



昼間雑踏するだけに、一人も客のない広々とした物売り場は、変に物すごい感じがした。



ほとんど電燈を消してしまって、階段の上だとか、曲がり角などに、僅かに残された光が、ぼんやりと通路を照らしていた。



売り場の陳列台はすっかり白布で覆われ、その大小高低様々の白い姿が、無数の死骸のように転がっていた。



若い番頭は、物の影に注意しながら、暗い通路を歩いて行った。



時々立ち止まっては、要所要所にかけてある小箱のかぎを取り出して、持っている宿直時計に印をつけた。



所々に太い丸柱が立っていた。



それが何か生きている大男のように感じられた。



少年店員は懐中電灯を点(とも)して、番頭の先に立って歩いて行った。



彼は虚勢を張って歩調を荒々しくしたり、口笛を吹いて見たりした。



だが、それらの物音が広間の隅々に反響すると、一層へんてこな気持ちになった。



一番気持ちの悪いのは、友禅類の売り場の中央に出来ている、等身大の生人形(いきにんぎょう)だった。



三人の婦人がそれぞれ流行の春の衣裳をつけて、大きな桜の木の下に立っていた。



店内ではその生人形に、お松(まつ)、お竹(たけ)、お梅という名前をつけて、まるで生きた人間の様に「お梅さんの帯だ」とか

「お梅さんのショールだ」とかいっていた。



お梅さんというのは三つの内でも一番綺麗で、若い人形だった。



この飾り人形については色々の挿話があった。



若い店員がある人形に恋をしたなどという噂がよく伝わった。



夜中にそっと忍んで来て、人形に話をしたり、ふざけたりしている男もあった。



今のお梅さんも、あんなに美人なのだから、ひょっとしたらだれかが恋をしていたかもしれないのだ。









引用書籍

江戸川乱歩著

「一寸法師」

1926(大正15),12/8〜1927(昭和2),2/21

「東京朝日新聞」・「大阪朝日新聞」

同時連載本文より引用。


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