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2021年01月22日

「お梅人形」本文vol,4(全10記事)

江戸川乱歩「一寸法師」より【お梅人形】VOL,4




だが、その日のお昼ごろになって、例の三階の呉服売り場に途方もない騒ぎが起こった。



桜の造花の下の三美人人形は、まだ最近飾られたばかりなので、三階中の人気を集め、そのまわりは、いつも黒山の人だかりがしていたにも拘わらず、不思議と誰もそこへ気付かなかった。



大人たちにとっては、おそらくその着想が、天利にも奇抜過ぎたのであろうか、それを発見したのは二人の小学生徒だった。



彼等はおそろいの紺サージの学生服をつけて、柵の一番前の所に立って人形を見上げていた。



「ねえ、兄さん、この人形はおかしいよ。右の手と左の手と、まるで色が違っているんだ者、この作者は下手だねえ」



一方の小学生が人形の作者を批評した。



「生意気おいででないよ」



兄の方は周囲の見物達に気を兼ねて弟をたしなめた。



「御覧よ。手提げを提げている方の手なんか色は少し悪いけど、細工が実に細かく出来ているじゃないか。

この作者は決して下手じゃないんだよ」



「だって右と左であんなに感じが違っちゃつまらないや。

そりゃ、細工は細かいけど・・・・・・でも、やっぱり変だな、右の手は小さな皺が一本一本書いてあるのに、左の手は五本の指がある切りで、皺なんか一本もない、のっぺらぼうだよ・・・・・・それから右の手には生毛(うぶげ)だって生えているんだし・・・・・・アラ、アラ、兄さん、あれ本当の人間の手だよ。

何だかプヨプヨしているよ。

ね、あの指輪があんなに食い入っているだろう。

きっと死人の手だよ」



彼は思わぬ発見に息をはずませて、叫ぶようにいうのであった。



「死人の手」という一言は、人形の衣裳や美貌ばかりに見入っていた見物達の目を、一せいにその問題の手首へと移らせた。



その不気味なものは一番若いお梅人形の右の袖口からのぞいていた。



注意して見れば、色合いといい、小皺の様子といい、生毛といい、もう死人の手首に相違はなかった。



だが、常識家の大人達は、まだ彼等自身の目を疑っていた。



そんな馬鹿馬鹿しいことが起こるはずはないと思いつめていた。







★引用書籍

江戸川乱歩著

「一寸法師」

1926(大正15),12/8〜1927(昭和2),2/21

「東京朝日新聞」・「大阪朝日新聞」

同時連載本文より引用。
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