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2021年01月22日

「お梅人形」本文vol,3(全10記事)

江戸川乱歩「一寸法師」より【お梅人形】VOL,3





しかし相手は答えなかった。答えの代わりに丸い光の中の半身像が、丁度活動写真のフィルムが切れでもした様に、突然見えなくなった。



つまり相手は逃げたのだった。



少年店員がやっとのことで、スイッチを探し当てて、一時にその辺が明るくなった。



だがその時分には、畸形児は鉄柵を越え、陳列台の間を通り抜けて、どこかへ見えなくなっていた。



無数の陳列台が縦横様々に置きならべてある、その間を台より低い、一寸法師が逃げて行くのでは、まるで追い駈けようがなかった。



間もなく番頭の非常信号によって、宿直員全部が三階に集まった。



そしてあるたけの電燈をつけて、非常に物々しい捜索が始められた。



陳列台の白布は一々とりのけられ、台の下や、開き戸の中なども、隈なく調べられた。



三階に隠れていないと分かると、全員が二隊に分かれて、一隊は四階以上を、一隊は二階以下を探すことになった。



だが、あの様に種々雑多の品物を、所狭く置き並べた百貨店の中で、小さな一人の人間を探し出すのは、不可能に近い仕事だった。



ほとんど夜明け方まで大がかりな捜索が続けられたが、結局分かったのは、何一品(ひとしな)盗まれていないこと、窓その他人間の出入り出来る場所は、凡て完全に戸締りがしてあって、外部から何者かが忍び入った形跡絶無なことであった。



盗まれた品物が無ければ、宿直員に落ち度は無く、罰棒を恐れることもなかった。



「あいつ臆病者だからね。

きっと何かを見間違えたんだよ」



という様なことで、捜索はうやむやの内におわってしまった。



その翌日所定の時間になると、百貨店のあらゆるドアが開け放され、いつに変わらぬ雑踏が始まった。



支配人は、一応出入り口の係員を呼んで一寸法師のお客を見なかったかと尋ねたが、昨日も今日もだれ一人そんあ不具者に気づいたものはいなかった。



結局昨夜の騒ぎは若い店員の幻に過ぎなかったのかと思われた。



盗まれた品物もなく、曲者の忍び込んだ箇所もない。



その上若い番頭が主張する様な不具者なんか、昨日閉店以前に入った跡形もなく、今日開店後出て行った様子もない。(そういう不具者なればだれかの目につかぬはずはないのだが)



だから若い番頭の見たのは、単に彼の幻覚に過ぎなかったか、それとも又、少年店員の中のいたずらものが、臆病な彼をおどかしてやろうと、熊と人形の真似なんかしていたのかも知れない。



と言う様な事で、結局発見者が同僚達の嘲笑をかったばかりで、この事件は落着しようとしていた。







★引用書籍

江戸川乱歩著

「一寸法師」

1926(大正15),12/8〜1927(昭和2),2/21

「東京朝日新聞」・「大阪朝日新聞」

同時連載本文より引用。




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