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2021年01月22日

江戸川乱歩「生腕」本文ラストvol,8(全8記事)

「一寸法師」生腕 VOL,8



雷門ででんしゃを降りると、吾妻橋を渡ってうろ覚えの裏通りへはいって行った。その辺一帯が夜中と昼とでは、まるで様子の違うのが、ちょっと狐につままれた感じだった。

同じような裏町を幾度も幾度も往復しているうちに、でも、やっと見覚えのある寺の門前に出た。
その辺はごみごみした町にかこまれながら、無駄な空き地などがあって、変に寂しいところだった。

門前にポッツリと一軒きりの田舎めいた駄菓子屋があり、お婆さんが店先でうつらうつらと日向ぼっこをしていたりした。

紋三はさえた靴音を日々かさながら、門の中へ入って行った。そしてゆうべの庫裏の入り口に立つと、思い切って障子をあけた。ガラガラとひどい音がした。


「御免ください。」
「ハイ、どなたですな。」
十畳ぐらいのがらんとした薄暗い部屋に、白い着物を着た四十恰好の坊さんがすわっていた。

「ちょっと伺いますが、こちらに、あのう、からだの不自由な方が住んでいらっしゃるでしょうか。」
「エ、何ですって、からだの不自由と申しますと?」
坊さんは目をパチクリさせて問い返した。

「背の低い人です。確かゆうべ非常におそく帰られたと思うのですが。」
紋三は変なことを言い出したなと意識すると、いっそうしどろもどろになった。

来る道々考えておいた策略なんか、どこかへ飛んで行ってしまった。
「それはお間違えじゃありませんかな。ここには人を置いたりしませんですよ。背の低いからだの不自由な者なんて、いっこう心当たりがございませんな。」

「たしかこのお寺だと思うんですが、附近にほかにお寺はありませんね。」
紋三は疑い深そうに、庫裏の中をじろじろ眺めまわしながらいった。

「近くにはありませんな。だが、おっしゃるような人はここにはおりませんよ。」
坊さんは、変な奴だといわんばかりに、紋三をにらみつけて、不愛想に答えた。

紋三はもう持ちこたえられなくなって、そのまま帰ろうかと思ったが、やっと勇気を出して続けた。
「いや、実はね、ゆうべここのところで変なものを見たのですよ。」
彼はそう言いながら、ズカズカと中へはいって、上がり框(あがりかまち)に腰をおろした。

「よく見世物などに出る小人(こびと)ですね、あれが或る品物を持って、ここの庫裏に入るところを見たのですよ。もっとも向こうの杉垣のそとからでしたがね。まったくご存じないのですか。」
紋三はしゃべりながらますます変てこになって行くのを感じた。


引用書籍
江戸川乱歩「一寸法師」講談社刊

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