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2999年12月01日

落語演目一覧 〜簡単あらすじ掲載〜

落語演目一覧

ア行
欠伸指南(あくびしなん)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/34/0

あたま山(あたまやま)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/6/0

一国眼(いっこくがん)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/43/0

厩火事(うまやかじ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/21/0

太田道灌(おおおたどうかん)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/68/0

お見立て(おみたて)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/27/0


カ行
加賀の千代(かがのちよ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/67/0

喧嘩長屋(けんかながや)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/36/0

高野違い(こうやちがい)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/38/0

後生鰻(ごしょううなぎ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/19/0

子ほめ(こほめ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/50/0

権兵衛狸(ごんべえたぬき)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/11/0


サ行
酒の粕(さけのかす)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/25/0

猿後家(さるごけ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/74/0

持参金(じさんきん)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/17/0

死神(しにがみ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/59/0

死ぬなら今(しぬならいま)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/23/0

寿限無(じゅげむ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/7/0

粗忽長屋(そこつながや)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/46/0

そば清(そばせい)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/53/0

ぞろぞろ
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/76/0

タ行
短命(たんめい)【長命(ちょうめい)】
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/54/0

ちりとてち
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/16/0

つる
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/78/0

手紙無筆(てがみむひつ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/12/0

出来心(できごころ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/31/0

テレスコ
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/2/0

時そば(ときそば)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/5/0


ナ行
夏泥(なつどろ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/37/0

二人癖(ににんくせ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/44/0

猫の皿(ねこのさら)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/4/0


ハ行
半分垢(はんぶんあか)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/10/0

へっつい幽霊(へっついゆうれい)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/49/0


マ行
饅頭怖い(まんじゅうこわい)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/1/0

目黒のサンマ(めぐろのさんま)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/41/0

元犬(もといぬ)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/56/0

桃太郎(ももたろう)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/20/0


ヤ行
やかんなめ
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/24/0

焼き塩(やきしお)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/33/0


ラ行
ろくろっ首(ろくろっくび)
https://fanblogs.jp/rakugooo/archive/48/0


    
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2020年02月23日

はてなの茶碗

京都のお話ですが音羽の滝が御座います。
その滝の前に茶店が在ります。

そこに腰を下ろしてお茶を飲んでいたのは
歳の頃は五十前後のどっから見ても大店の主の格好をした方。
飲み終わった後に不思議そうに茶碗をひっくり返したり、日に透かして見たり首をひねって「はてな?」と言って茶碗をそこに、茶代を置いて出て行った。

横で同じようにお茶を飲んでいたのは電気の無い時代、行灯に入れる油を荷で担いで売る油屋さんです。

おやっさん

なんじゃいな油屋さん

ぼちぼち出かけるわ

もう少しゆっくりしていったらどうだ

こんな所で油を売っても一文にもならん
出て行って油を売らないと

面白い商売だな

頼みが在るだけどな。荷を担いでいると喉が渇く
得意先で湯を飲ましてほしいと頼むと気良く出してくれるんじゃが手が油まみれだ
茶碗に油がついてしまって水でゆすいでも落ちない
気兼ねなく自前の茶碗が欲しいんだ
悪いので構わないから安く一つ分けて貰おうと思って

そんな事かいな
籠の中に仰山ある持っていき

タダで良いの?

長年の馴染みだ

偉いすまんな
それじゃこれを貰っていくわ

あぁそれはあかん
こっちの籠に入っている方をもって行き

なんでだ?
同じじゃないか

あのな、その茶碗を大事に、丁寧に置きなされ
お前さんは知るまいが先ほど、この茶碗でお茶を飲んでいた方は
衣棚に住んでる茶道具屋の金兵衛っている人だ
人呼んで茶金さんという有名な方だ
京一の道具屋ってことは日本一って道具屋だな
あの人が目を付けて、「この品は」と指を一本差しただけで黙って十両の値打ちになる
どこが気に入ったのか最前から裏返したり、ひっくり返したりして首をひねって「はてな?」と言って置いて行った
ひょっとしたら千両の値打ち物かも知れないから、これはあげられん
こっちのはあげるから持っていき

なんや知ってたんか
茶金さんがえらいひねくり回しているさかいな
値打ち物かも知れんから上手い事を言って持って行ったれと思って

何を考えて、、、油断も隙も無い
あかんで

ばれたらしょうがない
ここにな小判が二枚ある
それで売ってもらいたい

申し訳ないが二両や三両では売らん
一つ間違えたら千両品物

そんなこと言うなよな
お前だって茶金さんこなかったら今日か明日にも割っていたかも知れないのに
小判二枚になったら御の字じゃないか

それはそうだがわしも運試し
これが千両になるか五百両になるか、それとも一文の価値も無い品か分からないが
ちょっと置いておきたいから堪忍して

わしから先に声をかけたんじゃないか
あるだけ出して頼んでるんじゃないか
もっとあったらもっと出す身代限りだ


そうか、もう良い諦めた
その代りお前も儲けさせない
この茶碗たたき割ってやる

おいおい無茶するな

無茶はそっちだ
こっちはこれだけ頼んでいるのに
・・え?願ごて出る?
あぁ願ごて出たらええ、こっちの手は油だらけ粗相で割ったと言ったら申し開きが立つ
黙って二両を貰うか、割ってしまうかどっちがええ?!

しかし二両は殺生だ・・・
あぁ!!待った待った売る!売る!
もう諦めた
儲ったら歩でも持ってこないとあかんで

みなまで言うな
わしはそんなケチな人間じゃない
儲かったら必ず挨拶に来るさかいな
それじゃこの茶碗確かに買うたぜ


乱暴な男が在ったもので強奪するように茶碗を持って帰ると
どっかから手をまわしましたか桐の箱へ右近の布に包んでこれを納めます。
この時分、更紗の風呂敷が流行ったものでこれを包み
自分も身なりを変えて道具屋の手代みたいな恰好をしてやってきました。

ちょっと茶金さんに見て貰いたくってやって参りましたが

へぇい
ちょっと主が手を離せませんもので番頭の私が代わりに拝見いたします。

あんたはここの番頭さん?
立派なものだな、これだけ大きなお店のご番頭なら立派な商人だけどな
この茶碗だけは茶金さんじゃなければ分からないと思うけどな
茶金さんに見せたら五百両、千両の値打ちに見てくれるんだけど
ほかの人が見たらただの安物ものだと

いやいやどのような品物でも一応店を預かります番頭の私が拝見いたしまして
目の届きません節に主の方に

規則ならしょうがない、見て貰おう
けどな、これを見たら笑ったらあかんで

笑いやしません

いいや、笑うかもわからん
笑いやがったらどつくさかい

笑いやしません
茶碗どすかいな
拝見いたします。

なかなかいい風呂敷ですな更紗もこの辺になりますと結構で

風呂敷を褒めいでもええねん
中の茶碗を褒めて

分かっております
拝見いたします



この茶碗ですか?お間違いはおまへんな?

偉い折角ですが手前どもでは目が届きませんでどっか他所さんへご持参を

だらかお前では分からんって茶金さん出したらええんや
茶金さんならこれを五百両、千両と!

いや、これは主を見せましても同じことで
左様ならば申し上げますが、これはなんぞのお間違えではおまへんか?
これはどこにでも転がっております清水焼でも一番安物の数茶碗
どこを見て五百両、千両と・・・
私かて商売人どすがな
そんな無茶を仰ったら(笑)

バシ!

何しなさる!

笑ったらどつくと始めっから言うてるやないか!
人の品物を見て!茶金さん出したらええんや!


店が騒がしいがどうした?

茶金さん、あんた見て欲しくて来てるのに
番頭のガキが横から出しゃばりやがって
人の品を見て鼻の先で笑ったりするさかい

人様のお品を拝見して笑うという事があるかいな
あんたもあんたじゃ
手をかけなさらいでも宜しい
私が拝見いたします。

あんたに見て貰ったら千人力だ
千両、五百両っていう品物さかいなこの茶碗

茶碗どすかいな
拝見を致します。



こ、この茶碗、、ふっ

あんさんに笑われたら心細いで
良く見ておくなされ

ちょいちょいあんたみたいなお方がお越しになる
妙なものを持ってきては五百両の千両言って
粗相でこっちが傷でもつけたらそれで因縁をつけて金にしようと
いやいや、あんさんがそうだって言うてんじゃない
ちょいちょいそういうお方があると申しております。
またそう思われてもしょうがない
番頭が笑ったのももっともな話どこにでも転がっている安茶碗

あんた箱から出しもせずそう言わはんな
もっと手にとて裏返したり、透かしたりしてみてなぁ
ほんまに値打ち無いの???
ただの安物か?

こら!お前さんくらいの人間になったらな世間の物はみんな知ってんねん
どこで迷惑する奴がおるか分からんのじゃ
ややこしい茶の飲みようさらすなよ

ややこしい茶の飲みよう??

あんたな、四、五日前に清水の滝の前の茶店で、この茶碗で茶を飲んでだろ

そぉか、どっかで見たようなお人じゃと思ってたら、傍におった人じゃ
もの言いましたがな、確か油屋さん

油屋さんやないわい
何でもない茶碗ならさっさと出て行かんかい
中のぞき込んだり、裏透かしたりして首ひねった後に
「はてな?」っと言って置いてったんや
あんたみたいな人が首にひねった後に置いてったんだから
これは掘り出し物だと思って茶店の親父と喧嘩までして・・二両

お前らはなぁ小判の二枚ぐらいどうってことないかも知らんがな
荷担いで、油売って回って小判二枚貯めようと思ったらな並大抵な事やないぞ
三年間食うもんも食わんでやっと貯めた小判放り出して来たんだ
何でもない茶碗ならなんで可笑しな真似しやがった

ちょっとお待ち
この茶碗どしたかいな
私お茶を頂いておりますと、茶がポタポタっと漏りますんでな
おかしいなぁ、ひび割れもあるかと見たら傷も無ければ
釉(うわぐすり)にもの何のさわりもない茶碗だけど茶が漏る
不思議な事があるもんだなぁと思い「はてな?」って言うて置いて帰った

・・・んなおかしな話ないでぇ
これ傷もんか?!
あ゛ぁエライことしたな
聞いておくんなされ実は大阪なの人間で極道が過ぎて親父に勘当された
しゃないさかい京に出てきて荷を担いで油を売って歩いてたけど
担ぎの油屋じゃうだつが上がらない

ぼちぼち親父も寄る年波や
久しぶりに顔を見せたいと思ってもまとまったものを握らな敷居が高くって
やっと貯めたこれで一山当てることが出来なか探していたら
あんたが茶碗をひねくり回している
これはと思って・・・誰も恨むわけにはいかんわ
博打はって目と出なかった
あぁ三年間棒の振ってもうたか
えらいすみません、そんなんさかい悪く思わんでくれ

まぁまぁちょっともう一遍お座りやす
あんさん大阪のお方?
そうでっしゃろうなぁ、京の人間はそんな真似は出来ん
やっぱり商いは大阪ですなぁ
たったそれでかの思惑で、失礼ながら二両と言ったらあなたには大金じゃろ
それを放り出しなさった
言わば茶金という名を買うて頂いた
あんたに損させてはわしの気が済まん
この茶碗、私が買わせて頂きます。

千両で?!

いやぁ千両では買わんがな
元での二両にもう一枚つけさせて頂きます
ここまでの足代、箱代、風呂敷代などとして納め下さい。
あんた一山当てようという気を犯したらあきません。
長年やっていても掘り出し物を探して損をするのはこの道や地道にお稼ぎやす。
親御さんだって憎くって勘当したわけじゃなかろう
あんたが三年間固く奉公し、一生懸命働いた
それが何よりも親御への土産じゃ
このお金をもって一日でも早く顔を見せに帰ってあげなされ

あほらしい、何を言ってなさる
己が勝手に思惑をはって当たったらわてが儲けて、外れたらあんさんが出してくれる。
そんな虫の良い、筋が通らん。
いやいや、そんな厚かましいことが出来まへん
いやぁあ、、
ねぇ・・・
なんぼなんでも・・

え?左様か?
実は明日油を仕入れる金もありませんのや
エライすみませんなぁ
そんならなぁこれはお借りいたしますわなぁ
いつ返せるか分からんが何とかなったらお礼と一緒に参上いたします。
この茶碗はどうぞ

こんなの要らんさかい持って帰りなされ

百貫のかたに笠一蓋ということも、まっまぁこれだけでも取っといて!
番頭はん堪忍しておくれよ
それではお騒がせいたしました
さようなら!!

逃げるように帰って行きました。

茶金さんくらいになりますと良い所にも出入りしております。
関白鷹司公のお屋敷に参上した折の話

茶金、最近世情で面白い話はないか?

この間手前どもの店でかようこのような事が御座いました。

それは面白い
麿(まろ)もその茶碗が見たい


早速人を走らせて茶碗を取り寄せました。
関白さんが水を注いでもやはりぽたり、ぽたり
覗いても調べても傷は無い

はてな?

面白茶碗だと短冊をとり
「清水の音羽の滝の落としてや茶碗もひびにもりの下露」

面白い狂歌がこれに添えられました。

公家さんたちの間これが評判になりその噂でもちきりです。
これが時も帝の耳に話が入りました。

朕も一度その茶碗が見たい

偉い事になりました。
茶金さんは桐の箱を新調致しまして、右近の布も更紗に変えて
精進潔斎して茶碗を御所へ持参いたしました。

どんな方の前に出ましても
茶椀に水を注ぐとぽたり、ぽたり

覗いても調べても傷は無い
面白い茶碗であると筆をとり箱の蓋に万葉仮名で
「波天奈」と箱書きが座った。

偉い値打ちものとして茶金さんの所に帰ってきた。
大阪の金持ち鴻池善右衛門がその話を聞いて

茶金さんその茶碗を千両で売って頂きたい。

有り難い事で御座いますがなぁ
尊い方の筆が染まったのでお売りする訳には参りません。

そんな事を言わんでなぁ
儂はその茶碗で一回茶会をやってみたいんじゃなぁ
その茶碗を一回預からして、あんたに千両を貸そうじゃないか
儂から千両借りてくれ、そして抵当としてとる。
質として千両貸すさかいはよ流せ。

偉い手間のかかる話ですが、早く言えば千両で売れという事です。
これをあの油屋に知らせてあげれば喜ぶだろうと思いますが
油屋は極まりが悪いので近所を通らないようにしています。

ある日の事

旦那

なんだい?

この間の油屋さんが隣の町内を歩いていましたよ

早く行って捕まえて来なさい!


え?!
誰や?引っ張ってくるのは?
ん?茶金さんところの子供さんじゃないか
え、旦那が会いたいって?
面目なくって会えるわけないじゃないか
そんなにひっぱたら油がこぼれるじゃないか

おぉ油屋さんこっちへ入ってきておくれ

茶金さん、こないだの三両返せって言ってももうないで

返せとは言わん、話があるんじゃ
まぁまぁそこへお座り
実はなあの茶碗

うわぁ!その話はせんように
茶碗と聞いただけで脇の下から冷や汗が出る

まぁ聞いておくれ
あれが千両で売れたんじゃ

・・・・え
そういうやつかお前は?!
京の人間はえげつないとは聞いていた
傷もんじゃ傷もんじゃと言って三両で値切って

まぁちょっと話を聞きなさい

え、
えぇ・・・
へぇ・・・
あの茶碗が・・・
鴻池さんが千両で!
恐れ入ったなぁ茶金さん
あんたは偉い人だなぁ
わしが持っていたら傷もんの茶碗、一文の値打ちも無いわ
あんたが持っていたからあれにそれだけの箔が付いた
仁徳でっせ茶金さん。良い話を聞いた
胸につかえていたんだけどその話を聞いてスーッとしたわ
これで気持ちよく商いが出来ます。
どうも有難う

ついてはわしはこの金を懐に入れるつもりはない
元はと言えばあんたがあんなものを持ち込んできたから起こった事
問い会えずは半分の五百両持って行ってもらおう
こんだけあったら大きな顔して大阪へ帰れるだろう
残った五百両は、この頃この京でも随分困っている方が大勢いるようになった
わしはこの金で出来るだけ施しを行いたい
取りあえずなこの五百両はあんたに持って帰ってもらわないと困る

何を仰ってるんです?!
渡した茶碗は三両貰った時に縁が切れております。
あれがこうなったのはあんたの仁徳でできたこと
筋が通らん

いやぁ五百両も貰えますかぁ

そんな厚かましい事・・・


左様か
それではこの中から、この間の三両を引いてもらって

三両くらいどうってことない

番頭さん小判五枚
この間頭を殴った膏薬代や
気にしてたんや、あんたが貰わんとわしもこの金貰いにくいんや
それとわしを見つけてくれた子供さん小判三両小遣いとしてとっておいて
それからお店に入る方に一枚ずつ

これこれ!小判をまきなさんな
大事にせなあかんで

これからな清水の茶店に行って親父さんを喜ばしてくる
有難う!


茶金さんも良い事をしてやった
これであの油屋さんも大阪に帰った事であろうと思っております

それから暫くたったある日のこと
表で騒がしくして何事かと覗いてみると
大勢の人が揃いの浴衣に向こう鉢巻でこっちに向かってきています。
一番前で扇子を広げて音頭をとっているのはあの油屋さん

偉いやっちゃ!偉いやっちゃ!
そこの家じゃ!担ぎこめ!

これ油屋さん

茶金さんか
十万八千両の金儲けじゃ

どうしたんじゃ

水がめの漏るやつ持って来たんじゃ



タグ:茶金 大阪 名作
posted by 落語の世界 at 16:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2019年01月09日

つる





こんにちは

めずらしいじゃないか
まぁまぁこちらへおあがり

ごちそうさまです
おかずはなんですか?

なんだいご馳走様って?

だって隠居が今言ったでしょう
飯(まんま)おあがりって・・・

飯じゃないって
まぁまぁこちらへおあがりって言ったんだ
お前も変わった人だ
遊びに来ると日に何べんも何べんも遊びに来る
来ないとぴたりと来なくなる
しばらく顔を見せなかったじゃないか
察するところ若い者と床屋で下らない話でもしていたんじゃないかい

隠居の前ですが最近は下る話をしていましたよ

なんだい下る話って

そうだこの前ね、若い者が床屋に集まったんだ
床の間に一年中ね鶴の絵が掛けてあるんだよ
そうしたら六んべの野郎がねその鶴の絵をじーっと見ていて
「鶴は日本の名鳥だ」ってこう言うんですよ
なんで鶴は名鳥なんだって聞くと訳はわからないそうだ
それで隠居さんは物知りだから聞いてみようって
今日聞きに来たんだ

これは驚いた私は六さんを見なおしたよ
八さんの前だけどその通り鶴は立派に日本の名鳥ですよ

どうして?

いや、どうしてって聞かれ方をしたら返事に窮するけど
ごくわかりやすく言うとあんなに日本に合っている鳥はない
姿かたちを思い浮かべて御覧
足がスッーと長くって胴が締まっていて
首が長くってくちばしが長い、おまけに頭に丹頂を頂いている
第一日本の名木に松って木があるだろう
松に鶴、画になるだろう

言われてみればそうだ
松に鶴!絵になるねぇ花札ではいい札だよ

なんの話をしているんだい

けど隠居さんの前だけどあれは随分首が長いね

あぁ長いな

扁桃腺をわずらったら治りが遅いでしょう

お前さんはつまらないことを気にするたちだね
けど首が長いって感心しているけどその通り
今は簡単に鶴って言っているけど
昔は首が長いところから首長鳥(くびながとり)って呼んでいたんだ
首長鳥がいつの頃か鶴になったんだよ

じゃあ隠居さんに改めて聞くけど
どういう訳で首長鳥が鶴になったんだい?

訳が聞きたいかい?

へぇ

今日中に?

出来れば今日中に願いたいねぇ
こんなこと聞くのに三泊四日は長すぎるからね

お前が分からないのであれば
私も退屈だらから教えてあげよう
どういう訳で首長鳥が鶴となったかと言うと
昔、一人の白髪の老人が
浜辺の岩頭の立って小手をかざし沖を見ていると
遥か唐土(モロコシ)の方角から一羽の首長鳥のオスが
つ―――――――――――っと飛んで来て浜辺の松にぽいっとまったんだ
後からメスが
る―――――――――――っと飛んで来て「つる」だよ

へぇ?隠居さん何か言った?
どういう訳で首長鳥が鶴に・・・

こういうことは二度も三度も言わせるもんじゃないよ
昔、一人の白髪の老人が
浜辺の岩頭の立って小手をかざして沖を見ていると
遥か唐土の方角から一羽の首長鳥のオスが
つ―――――――――――っと飛んで来て浜辺の松にぽいっとまったんだ
後からメスが
る―――――――――――っと飛んで来て「つる」だよ

面白い!ありがとうございました
まぁ良いじゃないかゆっくりして行きな

また来ます、さようなら〜


驚いたねあの隠居はよくものを知っているね
あそこに行くと一つ利口になるね
誰かに教えてみてぇなぁ・・・・
辰んべの所に行ってやってやろう
辰の野郎は人を馬鹿にしてやがるんだからね


おう!!
辰ちゃんいるかい?

いねぇよ

いねぇもんが返事する訳ないじゃないか
もう馬鹿にしてやがるんだ、開けるぞ!

辰ちゃんあれ知ってる?

知ってる

俺はまだ何も言ってねぇんだけど・・・

ほら鶴ね昔は首長鳥って言ってたんだ
どういう訳で首長鳥が鶴になったか辰ちゃん聞きたいだろう?

聞きたくねぇよ、そんなこと
俺は忙しいんだ

忙しんだってそこにボーと座ってるだけだろ
お聞きよ利口になるから
昔、一人の百八つの老人が
浜辺で浣腸しながらこてを振り回し沖を見ていると
遥かトウモロコシの方から一羽の首長鳥のオスが
つる――――――――――っと飛んで来て浜辺の松にぽいっとまったんだ
後からメスが・・・・・(゚◇゚;)
たっ、辰ちゃんおっ落ち着きましょう

落ち着いてるよ俺は!

どういう訳で首長鳥が鶴になったかと言うと
辰ちゃん良くお聞き
昔、一人の百八つの老人が
浜辺で浣腸しながらこてを振り回し沖を見ていると
遥かトウモロコシの方から一羽の首長鳥のオスが
つる――――――――――っと飛んで来て浜辺の松にぽいっとまったんだ
後からメスが・・・・・(゚◇゚;)
さようなら

何しに来たんだあいつは???



隠居さんどういう訳で首長鳥が鶴に?

お前どこかでやってきたな
目が上ずってるよ
良く聞かなくてはいけないよ

昔一人の白髪の老人が

白髪?!百八つじゃないの?

浜辺の岩頭に立って

浜辺の岩頭?
浜辺で浣腸していたんじゃないのか

小手をかざして沖を見ていると
遥か唐土の方から一羽の首長鳥のオスが
つ―――――――――――っと飛んで来て浜辺の松に・・・

ありがとうございました!


辰ちゃん

また来たのか

どういう訳で首長鳥が鶴になったかと言うと

まだやってんのかい?!!!

辰ちゃん良くお聞き
昔、一人の白髪の老人がだ
浜辺の岩頭に立って小手をかざして沖を見ていると
遥か唐土の方から一羽の首長鳥のオスが
つ―――――――――――っと飛んで来て浜辺の松にると止まったんだ
後からメスが・・・Σ( ̄□ ̄!)

後からメスが何と言って飛んで来たんだ?

黙って飛んできた



posted by 落語の世界 at 22:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2018年09月21日

取ってこようか

農家の男が畑仕事を終えた帰り道に
カラスの鳴き声が聞こえてきました

クワァクワァ

おぉそうだ!
鍬(くわ)を忘れた



鍬を取りに戻り、家ついたら鶏が

クゥクゥクゥ

全くお前は食うことばかり言いやがって
カラスはな、餌一つやらんのに
鍬を忘れたことを教えてくれたんだ
ちょっとは見習え

トッテコォーカァ

もう遅いわ






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posted by 落語の世界 at 12:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

2018年09月02日

ぞろぞろ

浅草田んぼの真ん中に太郎稲荷というお稲荷様が御座いました
これは江戸の始めからありますお稲荷様で大変参詣人も多ございましたが
どういう訳か最近はとんと参詣人も参りません
こうなってくると神社仏閣は経営が困難になりましてな
お賽銭の上げてが無いと諸寺困ります

華々しくのぼりが立っておりましたが一つずつ消えまして
今では古いのぼりポツンとたった一本
昭八お稲荷様と書いてある文字が雨風にさらされ薄れてしまいまして
どうにも読めやしません

諸寺も荒れて参りましたが、その前に茶店が御座います。
肝心のお社がこの様では、わざわざ茶店に来てお茶を飲んで帰ろうなんて風流人は御座いません。
ともどもさびれてしまい、茶店では成り立たないので傍らで荒物を並べ
傍ら飴菓子を商って年寄り夫婦が細々と暮らしております。

このお年寄りは心がけが良いのですな
以前の繁盛を忘れません
朝起きるとお社の掃除が先です。水を汲むとお鉢に備える
ご飯を炊くときはお洗米と言うので甲斐甲斐しく使えておりました

ある日の事夕立が御座いました。
田んぼ道ではありますが人通りが多いところ
当りを歩いている人がみんなおじいさんの茶店に雨宿りに来て
人でいっぱいになりました。


おじいさん
お宅が在って助かったよ
ホントに地獄に仏とはこのことですよ
ところでこの夕立は場違いだね
夕立はさっと振って上がるんだけどこの夕立はなかなか上がりそうもないな
お茶をくれ

はなはだ粗茶でございます



あぁ天気になった
ありがたい
おじいさんこれは僅かですがお茶代ですよ

すっと出て行った奴が

駄目だ

なんだい?

今の雨ですっかりぬかっちゃって滑るのなんの

歩くたびにつるっと来るかね

そんな生易しい滑り方じゃないよ
つるつるつる!!!って元に戻っちゃった
あぁおじいさんの所に草鞋はあるかい?

へい、八文でございますよ

おう、俺も貰うよ

こっちにもくれよ

雨宿りの人が残らず草鞋を買って入って帰ると

おばぁさんあれで品切れになったよ
また草鞋が雨宿りに人の分だけあったんだね
ありがたい神事だ
月に一辺は塩水につけて天気に乾かすから丈夫になっているが
あの売れたことのない草鞋がね

お稲荷様のご利益だ
おばぁさん明日はお礼参りだよ
まずお神酒を上げてくれ
それからね赤のご飯を炊いて、尾頭付きも
忘れっぽいから覚えておくんだよ

おじいさん

おぉ元さん
どうしてたんだ今の土砂降り

雨宿りをしていたんだけどここまでに来る途中に何度も足を取られたか
これから鳥越まで行くんだけど草鞋を売ってくれよ

お前さんが来るのを知っていたら一足取っておいたんだけど
雨宿りのお客が一足ずつ買って帰ると品切れになったんだ

いや、一足だよ

ねぇもんはねぇんだよ

どうして年寄りは強情なんだ
雁首をひんねじって天井を見てご覧
一足ぶら下がってるよ

どう首をひねろうとも売り切れた草鞋が・・・あれ??
あったよ

在るから頼んでんだよ
おいらには売らないのかい?

嫌事言っちゃやだよ
歳とてもうろくしてたんだ
八文だよ
お代はいつでもいいからなぁ


すっと草鞋を取ると新しい草鞋が後からぞろっと出てきた
おやっと思っていると新しい買い手が来てこの草鞋を取るとまた
後からぞろっと

もうこの茶店草鞋の買い出しはしません
天井裏からぶら下がっている草鞋を取ると後か新しい草鞋がぞろり
取ればぞろりっといくらでも出てくる
この評判が世間に広がると、あの年寄り夫婦は正直者で
太郎稲荷様のご利益だろうと言うと参詣人が増えました

納物も大変で天にまで届きそうになり、のぼりは林のように並び
縁日は出るし大変な景気
ほど近い田町にちっとも流行らない髪結い所が在り


親方、今日は暇かね

何言ってやがるんだ
入って来て店に誰もいないで、俺があぐらかいてひげを抜いてるんだ
暇かどうかなんて見て分かるだろ
なんだい?儲け仕事かい?

儲け仕事じゃないけど太郎稲荷の御利益だって
茶店の話聞いたかい?

聞いたよ
草鞋の一軒だろ
一足ぶら下がっていると後からぞろぞろ出る話だろ
太郎稲荷様のご利益だって
何言ってやがるんだろうなご利益も提灯袋もあるか
世の中には神仏の御利益なんてあってたまるものか
え?太郎稲荷に行くって
俺も暇だから一緒に行くよ



生涯草鞋を履かなくっても良い者でもお土産に買って帰るので茶店は大繁盛

へぇ凄いなぁこれがご利益か
種も仕掛けもねぇんだなぁ
世の中にご利益はある
在るとなれば俺も授かろう

今日が思い立ったが吉日、七日の裸足参りをしよう
この前の茶店同様の御利益をお願いいたします
南無太郎稲荷大明神様、茶店同様の御利益を


一心に七日の間願をかけまして

おかえりなさい
今日はお前、盆と正月が一緒に来たようだ
店が大反響だよ
早く仕事にかかり!

へぇこれは凄いねぇ
すぐに取り掛かるから大丈夫だよ

皆さまお待ち同様です
私がここの髪結いどころの主で御座います
自慢ではありませんが腕に覚えが在りますからお手間はとらせません
順にやらせて頂きますのでどなたがお先でしたか?

おぉ親方帰って来たか
俺が一番先に来ているんだ
ひげをやってくれ

畏まりました


その人のほっぺたを見ると熊の毛のごとくびっしりと生えている
腰掛椅子に座らせて、ひげを湿らせて自慢の剃刀ですっと剃ると
後から毛がぞろぞろ・・・






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posted by 落語の世界 at 13:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2018年06月01日

片方の目

昔から倹約とケチは違うと言われています。

必要以上にケチな人と無駄が多いから始末しないといけないとの考え方は根本的に違います。


ケチな人間が目が二つあるのが勿体無いと片方の目をしまってしまいました。

長年の間、片目で生活をして晩年この目を患います。
わしにはこういう時の為に予備があるだ

大切にとっていた目で見てみたら世間が知らない人ばかりだった。






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2018年04月15日

猿後家(さるごけ)

大きなお店の女将さんで旦那はもう亡くなりまして
何不自由なく暮らしております。
なんの因果か女将さんの顔が猿にそっくりという
表に出ると

おい、あの女を見て見ろよ
あれが猿後家って言われてる人だよ

え?でもいい女だぜ

それは後ろから見てるからだよ
前に回って見てご覧よ、ひどいから

へぇあれが猿後家かい

猿後家、猿後家・・・って言葉が耳に届くのでだんだん表に出なくなりました。
ここに勤めているの奉公人は猿という言葉が言えない
ああしなさる、こうしなさるって言えない
もしこんなことを言う者ならすぐにお暇が出てしまいます。
出入りの者が口を滑らしたら即座に出入り止めになる

定吉や

番頭さん御用ですか?

お前なちょっと悪いがさっきの所にもう一回使いを頼まれてくれ

へい

あっちょっと待ちな。お前はお使いが遅くって困るよ
この前遅いから様子を見に行ったら本を読みながら歩いてたな
なんでそんな事をするんだ?
お使いはさっと行って来て、さっと帰ってこないと意味がないんだよ
何の本を読んでいたんだ?

あれはですね、猿飛佐助って言うんですけど

お前!ちょっとこっちに来なさい
とんでもない事を言うんだな

何がですか?

何がじゃないよ
良かったよ女将さんが居なくって
ここの家は猿という言葉を言ってはいけないんだ
知っているだろ?

えぇ知ってますよ

じゃなんだい猿飛佐助って

あ!!!

お前はねぇ、うっかりでもお暇が出るんだから気を付けないと駄目だよ
あの本を捨てたんだろ?
え、まだとってあるのかい?
読み残しなんてどうでもいいから捨ててしまいなさい
他の本を読みなさい

分かりました
一緒に買ったヒヒ退治を読みます

馬鹿やろう
ヒヒは猿の親玉みたいな奴だろ
それを退治するって馬鹿だね
お前みたいな奴とかかわっていたらこっちが痩せる思いだよ

でも番頭さん世間で女将さんの事を猿に似ているって言うけど違いますよね

そうだな
お前も良い所もあるんだな
そうだよ、女将さんは猿になんか似てるものか

そうですよね
猿が女将さんに似てるんですよね

そうだよ
猿の方が女将さんに・・・
もういいから早く使いに行ってこい!


あぁあいつは駄目だな
とても長く奉公は勤まらないぞ

どうも、おはようございます

なんだい
善さんじゃないか
こっちに上がっておくれ
暫く来なかったけどどうした?

どうもご無沙汰しております。

お前が来ないから偉い目にあったんだぞ

何かありましたか?

聞いておくれよ
お前も知っての通り私は世辞が言えないたちなんだ
家の女将さんの顔があれだよ
表に出ないで家に閉じこもったまま
女将さんの楽しみはお前みたいな口達者な人にいい心持ちさせてくれる
それだけが楽しみなんだ

お前は三、四日来なかっただろ
機嫌が悪くってさ
昨日の事だよ喧嘩したよ

奥さん喧嘩したんですか?
だれと?

植木屋が庭の手入れをしていたんだけどさ
昨日、女将さんも退屈だったんだろ
自分で座布団と煙草盆をもって縁側に座って世間話をしていたんだ
「植木屋さんこの辺に木が欲しいんだけど何か無いかい?」って聞いたんだ
そしたらうっかりしていたのか「さるすべりの良いやつが在るからここに植えましょう」

さるすべりはまずいですね

あぁまずいさ
そこから芝居を見ているようだったよ
出ていけ恩知らず!!出入り止めだ!!って
植木屋も気が付いて始めは謝っていたけど、
女将さんが煙管(キセル)でもって頭を殴ったものだから

植木屋もふざけるなって、こっちは謝ってるじゃないか
なにも頭を殴ることないだろ!こうなったらここは出入りでもなんでもない
そんなにさるすべりが嫌なら柿の木を植えてやるから
それに登って渋柿でもかじっていろ!

また思い切ったことを言ったものですね

それから女将さんはおいおい、悔しい悔しいって泣いてね。
植木屋さんはそのまま帰ってしまったから未だに庭は散らかりっぱなし
ようやく今朝がた泣き止んだのは

そうですか

お前さんが来て機嫌を直してくれたら有り難いと思っていたんだよ
早速奥に行って機嫌を直しておくれよ
頼んだよ


おはようございます
善公で御座います
・・・あれ?
女将さん留守ですか?
また後程伺います

なんだい?善さんもう帰るのかい?

あの、どちら様ですか?

やだよ。私じゃないか

あの・・

やだよ
私の顔を忘れたのかい?

あれ?奥様ですか
すっかり見間違いをしました
なぜって会う度にどんどん若くなっているからね
てっきり私は京都の親戚のお千代さんと思ってましてね

やだよぉ〜
お千代は京都の水で洗いあげた本当の京美人じゃないか
あたしは五十近いおばあちゃんになってさ
そのおばあちゃんと十八の娘を間違えるなんてそそっかしいね

いえ、間違えますよ
いつ見ても美しいですからね
それに今日はことのほかにお化粧が上手く出来上がりましたからね

やだよぉ〜
まだ化粧前じゃないか

え?素顔なんですか?
それじゃお化粧をしたら後光がさすようでございましょうな

もうぉ〜やだよぉ
竹や!善さんが来たから鰻特上を頼んでおくれ、お酒もね

善さん暇なんだろ?
ゆっくりしておくれよ
それにしても暫く来なかったじゃないか
どうしてんだ?

実はですね
家の嬶(かかあ)の里から三人出て来まして
久しぶりに東京見学をしてい見たいって言うものですから方々を付き合いをしておりました。
その後田舎へ送って来ましてね

東京見物も田舎の人は足が丈夫なんですね
やたら歩くんですよ
もうへとへとになりまして、どうもすみません
すっかりご無沙汰になりまして

そうかい、それなら良いんだよ
お前さんが来なくなったから風邪を引いて寝てるんじゃないかって心配したんだよ
善さん、東京見物の話を聞かせておくれよ

まず東京って言うと二重橋を拝みました
足を延ばして日比谷公園に行って、年寄りのいく所じゃありませんね
若い者たちが仲良くやっているのを見て早々に退散いたしました
銀座通りを歩いて、新橋に行って大きな天ぷら屋がございますので
そこでもって皆さんにごちそうしました

まぁそれじゃお前さんが旦那になったのかい?

えぇ旦那になりました

まぁ偉いんだね

所ですがね、みなさん良く食べるんで一人あたり三人前くらいぺろぺろいくものですから
懐がさみしいものでどうのなるか心配で

なんだい
ここへちょっと寄ってくれればお小遣いをあげたのに
お前さんは皆さんにご馳走したから食べられなかったのかい?

いえ、私はちゃんと五人前食べました

なんだい、お前さんが一番良く食べたじゃないか(笑)
面白いねぇ

それからですね泉岳寺にお参りに行きましたがここへも歩きでしたので
もうそこへ行っただけでもヘトヘトになりました。
それでもなん百年もたったのか知りませんが大したものですね。
お線香の煙が煙ってましてねぇ
それから嫌がるのを無理やり電車に乗せて明治神宮にお参りして、
そこから新宿に出て靖国神社に行きました。

そうしたら歩いて上野公園まで行くって言うんですよ
歩いてってこっちは御免こうむりたいんですけどねぇ
でも何事も向こう様のお相手ですからね、上野公園にたどり着いたら足が棒みたいになりまして、
西郷様の銅像の所に茶店が在りまして腰を下ろすと脇の所に
江戸時代の俳諧で宝井其角の弟子で秋色(しゅうしき)っていう女の子が作った俳句ですかね。

その俳句の碑が立ってまして詳しくは覚えていませんが井戸端の 桜あぶなし 酒の酔とかなんとか
これがまだ子供のころに作ったって言うんだから大した物だなって思いましたね
脇に桜が立っておりまして、まぁこれはその頃のものではありませんがね

秋色の歳をとった時に作った俳句も御座いまして、
秋色もなんとかなりて姥桜(うばさくら) ・・ぁんてものも御座いまして、、
えっとここまで来たんだから上野動物・・・動物園はよそうなって、、、
それから、そうだ浅草の観音様にお参り致しまして、あそこはいつ行っても賑やかですね。
鳩に豆をやったりしましてね
それから裏手に行きますと大勢の黒山の人だかりになっておりまして
何だろうと思ってみて見ますと今に珍しい猿回しで芸が上手い物で私も奮発しまして三千円ばかり

お帰りよ
恩知らず

ちょっと待ってください
私何かまずい事を申し上げましたか?

おとぼけじゃないよ
観音様の裏手に大勢人がいたんだろ

えぇそうです。

その中に何が居たんだ?!

なにって今時珍しい猿まわ・・・あぁっとええっと

出ていけ!!
お前の顔なんか二度と見たくも無い、出入り止めだ!
帰らないのか!煮え湯を浴びせる!




番頭さん!!!!

なんだ騒がしいね

お願いが御座います。

どうしたんだい?

しくじっちゃたんです。
ですから奥に行ってお詫びしてくださいな

お前さんがかい?
なんでそんなことになったんだ?

それがですね東京見物の話をしているときにうっかり夢中になって
上野の動物園を上手く避けたんですが、安心しているすきに
観音様の裏手で人が大勢いたので、中を見てみると猿回しって

猿回し!!!
おいおいおい、それはまた一段ときつい事を言ったね
まぁとりあえず帰っておくれ

いえ、帰れません
今日はどうしても奥様のご機嫌を伺ってお小遣いを頂かないとお米買えないんです。

なんだい?お米が買えないって?
自分の商売をしたらいいだろ

商売って私は昔やっていた古本屋をやめて今は何もしていないんですよ

どうやってご飯を食べているんだ?

いえ、毎日こちらに伺って奥様のご機嫌を取ってお小遣いで

なにかい?ご機嫌取りを商売にしているのかい?
それだったらもう少し上手くやってもらわないと困るよ
お前さんがしくじると後は誰もいないよ
まぁ今日は帰っておくれ、日を改めて

いえ、、駄目なんです
そこの所を何とかしてください
番頭さんお願いです

困ったねぇ
それに比べると以前お出入りしていた仕立て屋の太平はお詫びの仕方が上手かったねぇ

仕立て屋の太平ってそんな人がいたんですか

いたよ

どんな人ですか?

どんなって、仕立て屋だよ
お前と同じようにご機嫌を取ってお小遣いをもらっていたよ
そういえば女の子がいたね
その子にねお師匠さんの方はお礼をするからって言って踊りを習わせていた
可愛がっていたんだよ

暫くするとね、踊りの方はって聞くと筋が良いと褒められております
今度のおさらいには靭猿(うつぼざる)をやりますって言ってしくじった

靭猿ですかぁ
それはうっかり出ますね

三ケ月ぐらい来なかったね
ある日、表でボロボロの汚い乞食が立っていたんだ
女将さんがそれを見て幾らかやってくれって
心が優しい方なんだ

私が小銭をもって渡そうとすると、実は太平で御座います。
とても伺えた義理では御座いませんが、あれからどこに行ってもあそこをしくじる様では
付き合えないと方々から断られてしまい今では仕事がなくなってしまいました。
親子三人首をくくって死のうと思っておりましたが、それを思いとどまりまして
四国巡礼の旅に出ようという事になりました。

在りもしない道具を売ろうとすると道具屋の前で娘が、
ここにお店のおばちゃんの絵が売っているから買ってちょうだい
言われて中を見ると瓜二つ。
それを買い求めまして、つきまして巡礼の守り本尊にしたくこの錦絵に魂をお入れ下さい
と言って見て私も驚いた
いやぁ水もたれる良い女さぁ

お詫びの仕方が上手いですね
それ錦絵が奥様に似ていたんですか?

馬鹿、、、似るわけないだろ
それでも女将さんの機嫌が直った
なんだい太平やそんな旅に出なくてもいいんだよ
これは私が買ってあげますからって言って上がらせて
お湯を沸かして風呂に入れたり、床呂屋を呼んで頭をきれいにして
着ている物も亡くなった旦那の着物や帯を着させて瞬く間に太平は見違えるようになった
女将さんは、錦絵を見て太平にご機嫌を取ってもらっている
いくらしたのか知らないけど随分な額でその錦絵を買っていたよ

上手くやりやがったなぁ

これだけ上手く言ったんだからお礼を言って早く帰ればよかったんだ

またしくじったんですか?

太平は本当に知恵が在るねって言ったら
ほんの猿知恵だって・・・それっきり来ないね

他人事じゃないな
番頭さんお願いですからお知恵を拝借

お知恵って言ってもな
昔に居た美女に例えたらどうだい?
小野小町や静御前、常盤御前、袈裟(けさ)御前なんか美人だったって言うだろ

そうですか
有難う御座います。

上手くやっておくれよ


善公ご機嫌伺い・・・

まだいるのかい?!
出ていけ!!

いったい何が気に入らなかったんです?

観音様の裏手に大勢人がいたんだろ

えぇそうです

その中に何が居たんだい?

ですから・・回しです。

もっとはっきり言い

ですから棒の先にお皿をまわしてくるくる回す「皿回し」です
話の途中でお皿回しって言いにくいから皿回しって言ったんです
その何がいけないんですか?

なんだい?
皿回しって言ったんのかい?

そうですよ

そうかい
それならいいんだよ
お前がはっきり言わないから聞き間違えるんだよ
竹や!早く鰻をお願いね
ゆっくり遊んでくれよ

えぇ有難う御座います。
でもね、番頭さんと話をしていたんですが日本に奥様程の美人はいませんねぇ

いやだよぉ
綺麗な人は沢山いるだろ

えぇ綺麗な人はいますけど奥様のように心に錦を着ている人はそういませんよ
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花なんて奥様の為にできた言葉です
昔で言えば静御前、常盤御前、今朝御前に晩の御前なんていう位のものでしょう

いやだよぉもう
お前さん生涯家に遊びに来ておくれよ
でもね、私の気になることは言っておくれでないよ

えぇそれは大丈夫です。
お宅様をしくじったら親子三人木から落ちた猿同様です・・・


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タグ:後家 動物
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2018年03月08日

手にかかったら

あるやぶ医者が急病人という事を聞きまして慌てて家を飛び出して
かどで子供が遊んでいるのを蹴飛ばしてそのまま行っちまいました。

何をわぁーわぁー泣いているんだよ
どうしたんだ?

うん・・・うんなるほど横町のやぶ医者がお前を蹴飛ばしていったって、、、
そうか泣くな泣くな
いいんだよあいつの足だから
手にかかってみろ命がねぇ

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タグ:医者
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2018年01月28日

下戸自慢

お酒が飲めない人がたちが集まって下戸自慢をしております

義理でビールを半分飲んだんだけど
あれは駄目で顔が真っ赤になるんだ

でも飲めるだけ偉いんよ
私なんかお猪口を一口含んだだけで暫くしたらカァーってなるよ

私なんか粕汁だけで酔います

私は奈良漬だけで反吐がでます

自分が一番かな
居酒屋の前を通っただけで、匂いを嗅いで酔います


そういう話をしていたら、隣の人が顔を真っ赤になって
ウィーー ((+_+))


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posted by 落語の世界 at 21:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

2018年01月08日

ケチな飲み方

ケチな人でもお酒が好きな人がいる

飲みたくなったら、銚子に酒が入っており、
そこに割り箸が放り込んでいる

それをスーッと持ち上げると一滴滴り落ちる
下から口を開き飲んで楽しむ

これ以上のケチな飲み方はおりませんな

息子も親の真似して割り箸を持ち上げてニ滴のんだら親が

こら!大酒を飲むな!


posted by 落語の世界 at 20:23 | Comment(2) | TrackBack(0) | 小噺
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