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2017年09月03日

下界の旅

お天道さまとお月さまと雷さまを下界におろして
旅行させたという話があります

おはようございますお天道さま

おはようございますお月さま

雷さまはどうしました

あれは昨夜遅くまでお酒を飲んで
宿の女中さんを困らせてましたよ

しょうがありませんねぇ・・・根がごろつきですから
じゃあれに構わずに出立しましょう


お天道さまとお月さまがおたちになって
ほどなくして雷さまが目を覚まし


お〜い!ねぇちゃん
来ておくれ

なにか御用ですか

おいらの連れはどうした?

お天道さまとお月さまですか
とお〜にお発ちになりました

ふ〜ん月日がたつのは早いもんだなぁ

それで雷さまはいつおたちになりますの?

おいらはゆっくりゆうだちにしよう


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2017年09月02日

欠伸指南(あくびしなん)

おい俺に付き合ってくれないか

嫌だよ
おまえに付き合うの懲りるよ
ろくなことじゃないからな

稽古しようと思うんだ

およしよ
お前は何やっても駄目だよ
お前の声は人間の声じゃないよ
なんて言うのかな
ウワバミが焼き殺されるような声を出すからな

よせよ
その歌じゃないんだ

踊りは良くないぜ
よろけちまって
周りにいるもんが危なくってしょうがないよ

そうじゃないよ

なんだい

俺は欠伸を習おうってんだ

なにを?

欠伸を稽古しよう

あくび??ってなんだい

欠伸ってあぁ〜あって奴だよ

あんなもん稽古することねぇじゃねぇか

それが難しいんだってよ
上品なもんで茶の湯から出たもんだって
この先に欠伸指南所って看板が出てるから稽古しようと思うだ
一緒に来てくれ

嫌だよそんな馬鹿馬鹿しい

いいじゃねぇか
友達じゃねぇか一緒に来なよ


待ってなよそこに
・・・こんにちは、、、こんにちは!!

はいはい案内がありますよ


誰もいないのか?
困ったもんだな
申し訳けございません
今、取次の者がいないのでどうぞこちらにお入り下さい


おい、奥が深いだろ
誰もいないからお入りくださいと声がかかる所が奥が深いね


こんにちは
あの、、、表の看板を見て入ったんだけどこちらは欠伸を教えてくれる所ですか?

はいはい、欠伸を教えるのは手前どもです

そうですか
私はお稽古を願いたいと思って入ってきたんですが

えぇ今取次の者がおりませんので
どうぞそこへお入りになって下さい
そちらのお連れさんもお入りになって下さい
どうぞ、どうぞ入って下さい
・・・あちらはお連れさんですよね?

え?
別におつれさんって言うほどの者じゃないよ
一緒に来ただけだよ

じゃお連れさんですよね

おい、お前はおつれさんだってよ
こっちに入れよ

よせよ、おつれさんって変な濡れ衣を着せるなよ

だって先生がそう言っているから入れよ
あのね、お稽古するのは私だけなんですよ

そうですか
どうぞお布団をお当てください
これはよくおいで下さいました。
唄や踊りの稽古なら手ぬぐいの一つも持って町内のあいさつ回りを行うのですが
何しろ欠伸の稽古ですからね、あいさつ回りもせず失礼いたしました
それではお稽古にかかることになりますが
あなたはお下地はございますか?

えぇ、そうですね。。
何しろあれがないとですね寿司や刺身を食べる際に生臭くってね

下地ってね、お醤油じゃございませんよ
今まで欠伸の稽古をしたことがございますか?

へ?
これは他でやってるところがあるのですか?
私は珍しいなっと思ってね
聞いたことが無いです初めてです。

そうですか、それでは初心者という事ですね。

しょしんしゃ?
いやいやそんな偉い者じゃないですよ

別に偉くはないですよ
それではあなたはどういう欠伸の稽古をなさいますか?

どういう?え?
あれ?欠伸って退屈の時に出るあ〜あって奴じゃないんですか?

あれも欠伸ですが、まぁなんて言いましょうか欠伸に違いありませんが
退屈の時に出てくる時の欠伸は惰欠伸(だあくび)ですな

惰欠伸・・・。世の中には惰欠伸以外の欠伸があるんですか?

手前どものでお稽古するのは実のある欠伸でございます。

あぁそうですか
一つよろしくお願いします。

それでは初心の方ですから四季の欠伸をお稽古しましょう
四季の欠伸とは、春・夏・秋・冬がございますね
秋の欠伸はこれは名月ですね
名月の前にお団子やススキやそのほかの物をお供えして名月を見る
その時に欠伸がでて、つまり涙越しの月となりますか
なかなか風流なものでございます。

冬の欠伸はこたつでございます。
こたつに入っていてとろんと眠くなる
向きかけのミカンが乗っており、うとうとして
急に猫が出てきて、伸びをした後に欠伸をする
それを見ていて、こちらも欠伸が誘われる
これは四季の欠伸でも一番難しい

いや一番難しいのは勘弁してくださいよ
一番易しいものでおねがいしますよ

うむ、どれもこれも難しい易しいと言ってもやってみたら
さほどの事でもないのですが
それでは如何でしょうか、夏の欠伸
これからお稽古しましょうか

易しければそれからお願いしたいのですが

私がやってお見せしますので
夏の欠伸というのは船遊びです。
隅田川に船を雇いまして船頭と差し向かい
あの隅田川と言う物は、船を上り下りさせますとうまく日を避けることが出来ます
船を舫いまして夏の昼下がりにとろんとした、そんな気怠い感じですね

まず煙草入れから、煙管(きせる)に煙草に火をつける所
船の場合は火箱ですね。

ゆっくりと煙草をくぐらしていただいて


ふぅ〜

あの、最前から私の身体が揺れると無く揺れているのをお気づきですか?
さざ波にあおられまして揺れている
こういう芸の細かいところも良く見ていてくださいね


台詞でございます

おい船頭さん
船を上手へやっておくれ
堀から上がって一杯やって晩には中にでも行って新造(しんぞう)を買って粋な遊びをしよう
船もいいが一日乗っていると
退屈で、退屈で・・・・あ〜〜ぁ・・・ならない

難しいな
おい、見ただろ!
奥が深いってこれの事だよ
先生、拝見しておりましたがなかなか一遍で出来るものではありません
私は物覚えが悪く不器用なので、もう一遍

えぇ大丈夫ですよ
けれどもそんな対して長い物ではございませんので
なるべく早く覚えてくださいまし
これを覚えて頂いたら次に秋・冬と参りますので


ふぅ〜



おい船頭さん
船を上手へやっておくれ
堀から上がって一杯やって晩には中にでも行って新造を買って粋な遊びをしよう
船もいいが一日乗っていると
退屈で、退屈で・・・・あ〜〜ぁ・・・ならない


だんだん難しくなってきているように思うのですが
さっきも言ったのですが私は不器用なのでね・・・
こんなに難しいと思わなかったんですよ
欠伸の稽古って言うから一列に並んで「あぁ〜あ」って一遍に言うのかと思っていました
どうですかね、私に向かないようでしたら引き下がったほうが

いやいや、みなさんそう仰いますが、案ずるより産むが易し
ちょっとやってご覧なさいまし
これは私の煙草盆をお貸ししましょう

そうですか?
こんなに難しいとは思わなかったからなぁ


ふぅ〜( ´―`)y-~~、
これは良い煙草ですね、安くないでしょ
煙草やるんですけどねこんないい煙草吸ったことないよ


ふぅ〜( ´―`)y-~~
なんていうのでしょうか香りが違いますね


ふぅ〜( ´―`)y-~~
これはうまいよ

あの、煙草は一服だけで

あ、すみません一服ですね
ふぅ〜
え、身体揺らす?あそうだ


あのうちは盆踊りのお稽古をしているわけではございませんので
身体は揺らすともなく揺れるという具合でお願いします

揺れるともなく揺れる??
そんな難しい事を言われたら困るんですよ
江戸っ子ですからね
揺れるなら揺れる、揺れないなら揺れない!
どっちかにして欲しいな
・・・どうですかこんな感じで
初日ですからねこれで勘弁してください


えっと、なんて言うんでしたっけ

おい船頭さん

おう!船頭っとくら!

あの、、、そういう言葉ではいけませんよ
夏の昼下がり、とろんとした船遊びをする方ですからね
物持ち鷹揚(おうよう)な感じでお願いしますよ

物持ち鷹揚なって弱ったなぁ
そうですか、

おい船頭さん
それから?

船を上手にやっておくれ

船を上手にやっておくんねぇ

違いますね
船を上手にやっておくれ

船を上手にやっておくれ
それから?
・・堀から上がって一杯やって晩には中にでも
行って新造を買って粋な遊びをしようじゃねぇかっと
船もいいが一日乗っていると退屈で、退屈だと、退屈でしょうがねぇやっと
退屈でしょうがないから、そろそろ欠伸でもしようじゃないかと
・・・ふうぅ

何ですかあなた
ため息をついてはいけませんよ
あの宜しいでしょうか?
あなたは台詞の後にうまく欠伸をしようと考えているでしょ
そういう風にすると出ませんよ
台詞の言い終わりから欠伸と言うものは自ずと湧き上がる

そんなこと言われてもねぇ
自ずと湧き上がるって言われても
そうですか?もう一遍やってみましょうか

ふぅ〜(-。-)y-゜゜゜
これは上手い煙草だぁ

えぇっと、おい船頭さん船を上手にやっておくれ
堀から上がって一杯やって晩には中にでも行くと馴染みな女がいて
「お前さんこの頃ちっとも来ないじゃないか、何してたんだよ。
噂によると他にいい女が出来たて聞いたよ。
浮気ばっかりしてほんとにあたしって者が在りながら。ほっぺたこっちへお貸」
って言うとほっぺたをきゅっとつねって痛てぇ

なんですかあなたは
そんな台詞どこにもありませんよ!
第一欠伸はどうしたんですか?!

あ!欠伸?
あぁ〜あ〜あっと



いい加減にしろよ
お前たちは良いよ
好きな事をやってるんだから
そもそも、こんな事を教わる野郎も教わる野郎だが
銭とって教える方も教える方だよ
何を考えているんだよ

船に乗っていると退屈で退屈でって、何を言ってるんだ?
渡し船一つ満足に乗れねぇ野郎が船遊びの了見が分かるか?
お前たちはいいけどよ
クソ面白くも無いものを見せられてこっちでぼんやりと待たされる
俺の身になってみろよ
俺の方がよっぽど退屈で、、退屈でぇ、、、あぁ〜あ、、ならねぇよ

お連れさんの方がご器用でいらっしゃる





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posted by 落語の世界 at 10:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年08月28日

焼き塩

昔の農村の女性は、学問は要らないと言われて字は教えて貰えなかったそうです。
今の歳で十二歳くらいになると奉公に出されてしまいます。
字を知らなくっても奉公先で手習いをさせてくるところもありますが
大概はそんなもの知らなくてもよいとされてしまいます。

所が田舎から手紙が参ります。
これはやっぱり読まないとしょうがない
誰かに読んで貰いますが、やっぱり家の恥を知られてしまいますので
内緒ごとや縁談なんか誰にでも読んで貰う訳にはいかない
その為、女子さんは読んで貰う人を決めていて
その人には家の事情もきちんと話してあるそうです。

しかしその人がいないときに届いた手紙は困ります。
心配な事があるというのは、先だって村の人にばったり会って母が病気寝込んでいると聞いていたからです。
心配でしょうがないのですが誰にでも読んで貰う訳にはいかない

ふと面を見ると若い侍、身なりからすると浪人者だろうけれども
この人に読んで貰おうと、、、普段なら侍に声もかけないのですが母親のことが気になってしょうがない。


ちょっとお願いが御座います。

なんじゃ?

実は田舎の方から手紙が参りました。
心配事があり一刻も早く知りたいのですが、
いつも読んでいただく方があいにく留守でこれを読んでいただけないでしょうか


若い女子が手紙を出されまして往来の真ん中でそれは開く
二、三度目を走らせていたかと思うとぽろっと涙を流した


母が病気と聞いておりましたがそのことが書かれているのでしょうか?

・・・残念な事だがもう間に合わない

あぁああやっぱり悪い知らせで御座いましたか


うわぁって泣き出してしまう


おい、あそこで侍と女子が泣いているんだ

けったいな取り合わせだな
あれはあそこの女子さんだ
あの侍と泣いているのはどういう訳だ?


近所の者が不思議そうな顔をしてみていると

焼き塩〜
  焼き塩〜

塩売りの親父が通りかかった

なんじゃあれは?
侍と女子が泣いている
あぁ身分違いの恋だな。浪人者みたいだけど、
こんな女子風情との縁談を認めるわけにはいかない
国元からの手紙が来たんだ
男の方も泣いている、、、本物の恋なんだな
ひょっとしたらあの女のお腹には子供がいるかもしれない
心中かな・・・わしは身分や家柄なんて、、、認めてやればいいのに可哀想に

うわぁっともらい泣き


おい、また一人増えたぞ

なんや?

あそこの塩屋の親父が泣いている
どう考えてもおかしい

ちょっと行って聞いてみようか?


ちょっと女子さん

これはご近所のおじさん

なんで泣いてるの?

うちの村の治郎兵衛さんに会って私の母が病気で寝込んでいるって聞いて
そこに手紙が届いて、読めないのでこのお侍さんに読んで貰いました
手紙を見るなりぽろっと涙を流して残念な事だがもう間に合わないと!!
私は間に合わなかったと思い泣いております

それはお前が泣くのはもっともだ
お侍様、やっぱりそう書いてありましたか?

いやいや、そうではない
実は親の代からの浪人者で何とか武芸をもって世に出んと思い
幼少の頃より剣一筋、一生懸命一刀流に励んでおりました。
亡き父は文武両道と申すこともある読み書きも習わなければいけないと言うて下さったが
この歳で今更、宮使いも城勤めもあるまいと思い読み書きを一向に身を入れなかった
しかしこの女中が文を読んでくれと言われた
若い女子の文だったら仮名の拾い読みもできると思って広げてみたが
見慣れない四角文字が並んでおる
父上のいう事を聞かなったために往来の真ん中で恥をかいた
しかし残念な事だがもう間に合わない

あぁなるほどな
あんたが仰ることももっともでございます。
文をお貸しください。
えぇ、全文御免下され候、、ふんふん
女子さん心配しなくってもいい、
治郎兵衛さんに会ってお前さんが案じているのではないかと思って手紙を書くとある。
えぇっと間もなく床離れも近く相なるべく・・どうぞご放念くだされたく
もう大丈夫だから安心しなされ

そうでございましたか!
ありがとうございます。

・・・分からんのはこの塩屋の親父さんだ
この二人が泣くのは分かるぞ
なんでお前がないてんだ?

いや!私は・・・
商売が泣き症(焼き塩)〜


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posted by 落語の世界 at 07:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年08月27日

しゅっちょう

いいかい坊
今日お金を取りに来るおじさんが来るから
来たらお父さんは?って聞いてくる
そうしたらお父さんは出張だって言うんだぞ
一回言ってみ

おとうちゃんはしゅっちょうや

そうだ
それじゃ二階で寝てるからな



ごめんください

はーい

おや坊か
今日はお父さんに用があるだけど
お父さんはどこかな?

おとうちゃんはしゅっちょうや

そうなのか?!
そうすると坊一人で留守番か、偉いなぁ
ところで出張ってなんだか分かるか?

二階で寝ること

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posted by 落語の世界 at 15:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

出来心

まったくなぁ
お前はしょうがないな
仲間は見込みがないって言ってるんだよ
足を洗って堅気にした方が良いってよ
どうする?堅気に戻るか?

もう少し置いて下さいよ
親分子分の杯を頂戴したんですから、
これからですね心を入れ替えて悪事に励みます

お前もな、心を入れ替えて泥棒に励むなら置いてやないことは無いけど
少しは褒められる仕事でもして来いよ
庭でもあるような大きな家に行って

あっ!こないだですね大きな庭のある家に入りましたよ

そうか!

柵を飛び越えましてですね
花壇が在ったり、鶴の噴水があったりと

それはどこのお屋敷だ?

よくよく見たらですね
親分大笑い

なんだ?

よくよく見ましたら日比谷公園でした

そんな所に入ったってしょうがねぇだろ
そんな仕事ばっかりしてるから見込みねぇって言われるんだ
今日はな、空き巣を教えてやるから

空き巣って何ですか?

留守の家を探すんだよ

あぁ空き家をね

そこに住むわけじゃないんだから空き家じゃねぇよ
人が住んでいて留守の家を探すんだよ
亭主は稼ぎに出ていて、かみさんは買い物に行っている
すぐに帰るからと思い締りをしないで出かける
そこを忍び込むんだよ
でも始めからそこの家が留守かどうかは分からない
だからちょっと当りを付けろ

提灯を持って行ってね

明かりじゃない、当りだ
言葉をかけて見ろ「御免下さい」っと言って返事が無ければ留守だ
中に入って仕事をしてしまえ
ただな、返事がないからってぬぅっと入るなよ
憚り(はばかり)に入っていないとも限らない
確かにいないって確信が持てたら入れよ

慌てるなよって言ってものんびりもしていられない
まずは逃げ道から調べておけよ
表から帰ってきたら裏から出ようとか裏から来たら表から出ようって考えておけ
お前みたいなやつは捕まらないとも限らない

そういう時は逃げ口上も用意してある
「泥棒!!」って言われても急いで表に出るなよ
盗んだものをそこに放り出して
「どうも申し訳ございません。長い事失業しております。八つを頭に四人の子供がございます。
七十になる老婆が永の患いで薬一つ飲ませることが出来ません。貧の末の出来事で御座います。」
と涙ながらに哀れっぽく持ち掛けて見ろ。
出来心じゃしょうがないっと勘弁してくれる。
上手くいけば小銭を持たせて逃がしくれるよ

あぁなるほど
表から言葉をかければいいんですね
返事が無ければいないんですからね
返事があったら「どうもすみません、貧の末の出来心」

馬鹿野郎
そこで謝ってどうするよ?
そういう時は別にあるんだよ
何丁目何番地の何屋何兵衛さんは近所におりませんか?
知っていても知らなくっても別にいいんだよ
教えて貰ったら有難う御座いますと言ってその場から離れればいいんだ

そうですね
有難うございます
それでは風呂敷の大きいのありませんか?

どうするんだ?

盗んだものを包むんです。

良いよ別に
入った家のを使えよ

いや、返しに行くのが面倒なので

馬鹿野郎
わざわざ返しに行く必要はねぇよ
しっかりしろよ

それでは空き巣狙いに行ってきます!

大きな声を出すよな



ごめん下さい!

おい、隣の家でやるな!
町内からを離れろよ



ごめん下さい

そこは空き棚だよ

あぁほんとだ
貸家って看板が立っていた

あのね表の伊勢谷が大家さんなんだよ

いえいえ宜しいんです

なんで空き家を探してるんだろ?

いえ留守の家を探しているんです。

へ?何ですかあなたは?

あっごめんなさい
さようなら



ここら辺で良いかな?
ごめん下さい

はい!待ってろ

居るんだねぇ・・・
留守の家ってそうそうあるもんじゃないな

なんだい?

少々伺いたいのですが、この近所に何屋何兵衛さんをご存じありませんか?

なに?

何丁目何番地といいますとねぇ、あの辺はあの・・

あ゛ぁ!?
なに言ってやがんだ?
ぐずぐず言ってるとはったり倒すぞ

いやいやいやそうじゃない
ここの近所にさいご兵衛さんてご存じないかなって

そんな奴知らねぇよ!

そうですか
さようなら!!



いやいや驚いたね
はったり倒すって、でもさいご兵衛は良かったな
あんな変な名前なんていないもんな

あれ、このうちは少し開いてるな
ごめん下さい、ごめん下さい
どなたもいらっしゃいませんか?
ここに泥棒が入りかかってますよ・・・

箪笥や鉄瓶もいいね
煙草入れもあるからちょっと一服するか
親分も慌てちゃいけねぇって言ってたもんな

ふぅぷはぁあ

落ち着いて来たな
菓子盆があるな
羊羹(ようかん)が入ってるな、また薄く切ったね

もぐもぐ

なかなか美味しいね

おい!誰か来ているのか?

うぐ!

何をしているんだ?

すみません喉に詰まっちゃって
背中叩いて!!

二階に上がっていたんですか?

おう、片付けするためにな
ところで誰だいお前は?

少々ものを伺います

よせよ
なんで尋ねる人が座敷に上がって羊羹食ってんだよ

この近所にございますまいな

なにが?

この近所にさいご兵衛さんはいらっしゃいますかね

・・・なんだよ驚かすなよ
さいご兵衛はおれだ

えぇ!
貴方ではないさいご兵衛さんですよ
ずっと男前の

なんだと?!

宜しく言っていました

だれが?!

私が、、、

何だこの野郎!

さようなら!!!



逃げろ!逃げろ!!
あぁ驚いたね
間抜けな名前もいたもんだな

まぁいいや羊羹食べてたばこ飲んでこっちの儲けだ


下駄を忘れてきた





タグ:泥棒
posted by 落語の世界 at 10:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年08月21日

二階の釣り

二階の窓から釣りの真似をしている人がいます
そこの下を通っている人は
目の前に針が来ているのでびっくり


おい見てみ
釣りのやりすぎや、おかしくなってる
いっぺんなぶったろ

もし大将!どうです
かかりますか?

あんたで四人目です



タグ:釣り
posted by 落語の世界 at 07:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

くせもの

浅草の観音様に泥棒がはいったお話で
あそこは参詣人も多いので一日のお賽銭も多いだろう

夜になったら忍びこんで賽銭箱を叩き殺して
風呂敷を広げてどっこしょっと

裏から逃げれば何事もなかったのですが
仲見世の通りをトコトコと歩いていたら
仁王様が門番ですからこんな奴を通す訳わない

とんでもねぇ野郎だ!!
俺がいるのを知らねぇのか!
見てやがれ!

泥棒の襟首をぐっと捕まえて目より高く持ち上げ
パッと手を放した

泥棒が四つん這いになった所を仁王様の足で背中をぐっと踏みつけた
堪える拍子に下っ腹に力が入った

大きいやつをブ〜っやってしまった

くせぇもの!!

へへへ
におうか?




タグ:泥棒 おなら
posted by 落語の世界 at 07:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

2017年08月19日

お見立て

喜瀬川花魁、
喜瀬川花魁どちらでらっしゃいますか?

はいはい
なんだい喜助?入っておいで

花魁良い方がお見えになっておりますよ

えっ?良い人誰だい?
徳さんかい?

徳さんでは御座いません。

良い人って言ったらあの人じゃないですか

竹さんかい?

竹さんじゃ御座いません
ってあなた良い人っていっぱいいますね
違いますよ千葉の杢兵衛(もくべえ)大臣がお見えになっております。

なに杢さん、、、
なんだよあんなのはちっともいい人じゃないよ

ひどいこと言いますね
着物をこしらえてもらったり、帯を買ってもらったりしたじゃないですか
そんな事を聞いたら卒倒しますよ
もう来ちゃってますからね
私はそんなこと知りませんから花魁気に入ってると思ってしまったから
花魁はお待ちかねでございますよって言って二階に上がって頂いているんです
すみませんが顔を出していただきたいんです

いやだ、いやだよ
なんでお前の尻拭いをしないといけないんだよ
一度聞いてくれればいいじゃないか
こういう人が来てるんですがどうしましょうかってなんで聞けないんだい?
いやだよ、しつこい男で田舎者なんだから
出ないよ

出ないよって、それじゃ困るんでございます
二階に上がって頂いてるんですから
それではこうして下さいよ
花魁が顔をちょっと出していただいて他のお客さんがついているの
今日はごめんなさい、また来てくださいねっと言われたら
あぁまた来るってそういう事になるじゃないですか
花魁が自分で言ってくださいよ

いやだ、いやだ、いやだ
顔を見るだけで蕁麻疹が出るんだから
出ないよ

出ないと私が困ります

お前が困ったって別にいいじゃないか
もう面倒くさいからこうしよう
えぇこの頃寒い日が続いたり、暑い日があったりと天候不順で御座いましたら
花魁は体調を崩しており病の床に就いております。
ですからこちらに参ることは出来ません。
誠に申し訳ございませんって謝って来てくれよ

ひどい方ですねぇ
千葉からわざわざ花魁一本やりで通っていただいてるんですよ
ちょっと顔を出せば済むんじゃないですか
良いんですか?
その嘘が気が付かれちゃったらもう二度と来てくれませんよ
それじゃ行ってきます。


えぇお大臣、お大臣
失礼いたします。

あぁ喜助か
喜瀬川はまだ来ねぇでねぇか
随分と待たせるでねぇか
そこでは話が出来ねぇからこっけこ
だからこけっこたら、こけっこ

いつもありがとうございます。

ありがとおぉございますってお前の面を見に来たわけではねぇ
あぁどおした喜瀬川は?
まだ来ねえだかかぁ?

実はあのお大臣が嬉しそうに入って頂いており
私はついつい言いそびれてしまいまして

あんだ?なぬを言いそびれただ?

えぇ・・・実は
この頃寒い日が続いていたり、暑い日があったりと天候が不順でございました。
実は花魁風邪をこじらしてしまいまして、いま病の床に臥せっております。
ですのでこちらには出ることができないのでございます。
ついつい私がこのような嘘をついてしまいまして誠に申し訳ございませんでした。

あんだ?喜瀬川が患ってるだぁ?風邪をこじらせて。
あぁそりゃそうだこの頃寒い日が続いたり暑い日があったりと
これは仕方ねぇこっちゃな
風邪をこじらせているなか、無理して出てこぉなんて言うほどおらは野暮な男でねぇ

そうなんです
もっと早く言えば良かったんですが
お大臣のあまりにも嬉しそうな顔を見てしまいましたら
ついつい嘘をついてしまいました。

そりゃ仕方がなねぇ
病の床に臥せってんだったらなぁ見舞ってやっぺ
部屋だどこだ?

へぇ、、はぁ、、あのお見舞いして頂だけでけるんですね
えぇっと、あの
あっお大臣昔から吉原には法が、花魁が患っている時は
どんなに仲のいいお客様でもお見舞いは出来ないと決まっております。
吉原の法、決まりごとになっておりますのでお見舞いは出来ないのでございます。

あんだぁ?吉原の決まりかぁ
そうか決まりなら仕方ないなぁ
それを破ってまで花魁に会わせろっと言うほど野暮な男ではねぇからなぁ
そうか喜助、客は見舞いがぶてねぇか
喜助あまり大きな声で話せねぇからな耳をこっちへ貸せ

何でございますか?

実はなおらと喜瀬川はただの間柄ではねぇだよ

えぇ喜瀬川花魁は一番大好きだと言っておりますよ

あぁそうだろうな
あまり大きな声では言えねぇが・・・
おらと喜瀬川は末にはひいふ(夫婦)なる約束ぶっただ!!

はぁ?

おら、夫婦(めおと)になるだ!

夫婦になるだ?!
えっ?と言いますとご結婚なさる?

あぁそうだおら約束ぶっただ
喜瀬川の亭主となる
ただの客じゃねぇ亭主が見舞いをぶつならできるべぇ

成程、えぇええっとそういう話は今まで聞いたことが御座いませんので
私一人ではどうも判断が、、ご内所に伺ってまいりますのでしばらくお待ちくださいまし。



花魁行ってまいりました。

どうだい?帰ったかい?

それがですね途中まで上手く言ったんですよ
花魁が病の床に臥せっておりますって言ったら、だったら見舞をぶつって

そういう人なんだよ。気味が悪いねぇ
すぐに帰ればいいじゃないか
嫌だよお見舞いなんかされた日にはしつこい男だからさ
いくら目をつぶっていても鼻息がかかるくらい顔を近づけて
「大丈夫かぁ?大丈夫かぁ?おらの面を見たら元気になる」って
顔を見たら余計具合が悪くなっちゃんだから

いえ、そこはね私も長年勤めておりますので機転が利きました
実は吉原には法が御座いまして花魁が患っている時は
どんなに仲の良いお客様でもお見舞いは出来ないのでございますと言ったんです
これで帰ると思ったんです。
そしたら驚きました・・・
「喜助近くにこ、あまり大きな声では言えねぇが」って言って私の耳元で大きな声で
おらと喜瀬川はただの間柄じゃねぇ。末にはひいふの約束ぶったらしいですねぇ!

なに?!そんなこと覚えていたの
嫌な男だね、気持ちが悪い
そんなの酒の上のことじゃないか
こんな世界に居るんだからお客を喜ばせる嘘なんて幾つもつくよ
それを未だに覚えていて本気にしているんだから、野暮な男だねぇ

ですから亭主になるんだから見舞はぶてるだろって
ご内所に伺ってきますと言って戻ってきました。
如何なさいますか?

如何なさいますかじゃないだろ
嫌だよお見舞いなんかされちゃ嫌だからさ
もう面倒くさい。お前が上げなければこんなことにならなかったのに
面倒くさいからさ、死んだことにしよう

あなた自分で言ってること分かりますか?
最初に来たときは花魁お待ちかねですと言って二階に上がって頂いたんですよ
さっき行って実は病の床に臥せっております。
今度行ったら花魁死でしまいましたって・・・こんな嘘誰が信じるんです?

信じるように持っていくんじゃないか
何のためにお頭(おつむ)があるんだい?
その中に味噌が入ってるんだろ?
あたしが死んだことにしてあいつを喜ばすんだよ

あのね花魁、あなた一辺倒で通っているんですよ
死んでなんで喜ぶんですか?

喜ぶように持っていくんじゃないか
このところあいつ来なかっただろ?

そう言えば二ケ月以上になりますね

そうだよ、狙い目は
最後に来て次の日から花魁は大変で、いつになったら杢さんは来てくれるのかしら
明日になったら来てくれるのかしら?杢さんは?杢さんは?大変な騒ぎでした
恋煩いというやつで、これが進みますとひと月なりますとおまんまが喉に通らなくなる
御白湯が通らなくなる、やせ細っていくばかり

そんなある日、私を枕元に呼びまして、いいかい?私ってお前のことだかね。
私を枕元に呼んで消え入る声で、うつろな目で私をじっと見ながら
「杢さんは何で来てくれないのだろうかね。ことによったらわきに若い女が出来たんじゃないだろうか?私は悲しいわ・・・」

これが花魁の元気な声を聞いた最後で御座いました。
二月(ふたつき)近くになりますとおまんまが喉に通らない、おかゆが通らない、御白湯が通らない、何にも通らなくなりがりがりにやせ細ってしまって帰らぬ人となってしまいました。
あなたに恋い焦がれて死んだのでございます。
もっと早く来ていれば花魁は死なずに済んだのに
あなたが殺したんです!
あなたが憎い!
あなたが・・・・・って言ってさぁ嘘の一つもついて涙の一つでも流すんだよ

またあなたは次から次へと嘘が出てきますね
あなたそんなに出来るんだったら自分でやったらどうです?
間に入って私が台詞を覚えてみんなやらなきゃならないんですよ?
それもいいんですけど、なんて言いました花魁?
最後の言葉が聞き捨てならなかったですよ
嘘の一つもついて涙の一つでも流してって、冗談を言っちゃいけない
嘘は付けますけど涙なんか洒落や冗談で出るものじゃ御座いませんよ!

そりゃそうだよ
何のためにお頭がついてるんだいって言ってるんだよ
こういう時に頭を使うんだよ
まだお茶を持ってってないんだろ?
向こうにお茶を持っていくんだ。自分の所にもお茶を置いておいてここだなって思ったら自分のお茶に指を突っ込んで頬の辺を湿らしておくんだよ
ねぇ信じるからさぁ、やってきておくれよ
ただじゃ頼まないから、羽織と十円でね

ひどい方ですね・・・
いやね私はあなたの為にやったら男として恥ずかしいです
もう自分の為にやらせて頂きます
自分にどのくらい演技力があるのかを試させて頂きます。



お大臣。

えぇから入ってこ
ご内所は何って言ってた?

お茶をお出しするのが遅れまして大変失礼いたしました。

あぁどうだ?
亭主ってことなら見舞がぶてるって言っていたか?

そのようにお話いたしましたところ
亭主となるのであればお見舞いは出来ると申しておりました。

そうだったら案内をぶて

案内はぶてるのでございますが、
今お見舞いをする相手がいないのでございます。

なんだ?病院にでも出かけているのかぁ?

病院で御座いませんで、
実はお大臣がうちに入ってくるときにあまりにも嬉しそうな顔をしているので
ついつい嘘を言ってしまいまして。

それはもう聞いた
病の床に臥せってるんだなぁ

そうではございませんで、先ほども正直に申し上げようと思っておりましたのですが、お大臣の顔を見てしまいましたら、このような事を言って急に卒倒してしまうのではないかと思いまして・・・。またまた嘘を重ねてしまいました。

なんだぁ?

実は喜瀬川花魁は死んでしまいました。

あんだ?
喜助!馬鹿野郎!!
人の生き死にを洒落や冗談で言うもんでねぇ!
こっちへ面を貸せぶってやる!

何で殴られるんですか?!
あなたが殺したんですよ!

馬鹿野郎!客に向かって指をさす奴がどこにいる!

あなたが殺したんでございますよ!
あなたが!

どうしておらが大好きな喜瀬川を殺さねばならねぇ

最後にお帰りになってどのくらい経つと思いますか?

そう言われるとちょっと困るけれども、、、もう二月以上になるかな
そりゃ村に帰ったらやらなければならない事が沢山あってなぁ

何を言っているのですか?
あなたはそれでいいですけど、待つ身の辛さを知っていますか?
花魁はあなたに恋煩いでございますよ

おらに恋煩い?

そうですよ
なんでそんなことも分からないのですか?
あなたがお帰りになった次の日からもう花魁は大変でした。
いつになったら杢さんは来てくれるのかしら?明日になったら来てくれるのかしら?杢さんは?杢さんは?杢さんは?誰の顔を見ても杢さん杢さん、、、、
我々働いている者は、あれを一目散(杢さん)と言うんだって言っていました。

恋煩いもひと月も立ちますとおまんまが喉に通らなくなる
御白湯が通らなくなる、重湯が通らない、どんどんやせ細っていくばかり
そんなある日、私を枕元に呼びまして、いいかい?私ってお前のことだよ。
・・・。私のことは私のことでございます。
私を枕元に呼んで消え入る声で、うつろな目で私をじっと見ながら
「杢さんは何で来てくれないのだろうかね。ことによったらわきに若い女が出来たんじゃないだろうか?私は悲しいわ・・・」

これが花魁の元気な声を聞いた最後で御座いました。
二月(ふたつき)近くになりますとおまんまが喉に通らない、おかゆが通らない、御白湯が通らない、電車が通らない、バスが通らない、、何にも通らなくなり
あなたに恋い焦がれて死んだのでございます。
もっと早く来ていれば花魁は死なずに済んだのに・・
あなたが、、あなたが殺したんです!
あなたが憎い!

喜助!涙を流しているのか?

泣いております。

涙なんざ洒落や冗談で出るものでねぇ
そうかぁ喜助、喜瀬川の為に涙を流し・・・喜助、目尻に茶殻が付いてるぞ

あぁあぁああ私あまりにも悲しいと茶殻が出るでございます。

そうかぁ喜瀬川はおっちんだかぁ
喜瀬川わぁあおらに恋い焦がれて死んだかぁ

そうなんです
お帰りになりますか?

当りめぇだ
喜瀬川のいない吉原にいつまでいてもしょうがね

帰りましょう

いつおっちんだ?

・・・・・・・・・はぁ???

いつだ?

そんな事を聞かれるとは思ってもみませんでした。
・・・あれは忘れはしません。

あぁいつだ?

・・・・・忘れてしましましたあぁ

先月の二十五日じゃなかったか?

そうです先月の二十五日です。

やっぱりそうか
その日も村の寄り合いが在ってなかなか帰って来れなくってなぁ
村の若い衆としこたま酒を飲んでうちに帰って庵端に横になっていると
気が付くと喜瀬川が綺麗な着物を着ておらの枕元に座っているだ
女子の足でもってこうだら遠くへ歩いてくることは出来ねぇ
さては狐か狸が化かしに来ていると思って「なにそっだらとこで悪さしてるだ!!」って
大きな声を出した途端に喜瀬川の姿も無くなった
あの時おらに別れを言いに来てくれたんだな

帰りましょう・・・

おめえに言われなくても帰る
帰る前に墓参りをぶつべ

な、な、なにを仰いました?!!
墓参り?墓参りは想定の排外で御座いましたぁ。。。

墓はどこだ?

墓は寺でございます

当たり前だ
場所はどこだ?山谷か?

山谷でございます

だったら近いから案内ぶて

・・・畏まりました。
案内をしたいのですが私もこういう所に勤めておりますので、体が開いているかをご内所に伺ってまいります。
暫くお待ちいただけますでしょうか



花魁戻りました。

どうした?上手く行ったかい?
帰ったかい?

それが途中まで上手く行っていたのですか
そこで帰ると思ったのに、、しつこい男だ、帰ればいいのに!
墓参りするそうです

墓参り?
しつこい男だねぇ
どうしたの?

墓参り、墓はどこだって言われたら頭が真っ白になって
向こうで山谷かって言ったから助け船だと思ってそうですって言ったら
近いから案内をぶてって
どうしましょう?

どうしてそういうことを言うんだよ
何のためにお頭がついてるんだって言ってるだろ?
墓はどこだって言ったら択捉って言っとけばいいんだよ
行けそうで行けないだろ
もう山谷って言ったんなら墓参りしておいで

花魁・・・自分で何言ってるか分かりますか?
あなたは死んでいないんですよ
あなたは生きてるんですよ?お墓は無いんですよ?

無いんですって言ってもお寺に行ったらお墓なんていっぱいあるだろ?
新しそうなものを見繕って適当に墓参りを済ましておいで

ぇえ分かりました分かりました、なんだかもうどうでも良くなってきました。



お大臣

おぉ喜助墓参りは案内をぶってくれるか?

ご内所にお話を致しましたら是非案内をしてくるようにと申しておりました。

すまねぇな
喜助、喜瀬川のいない吉原は二度と来ることはねぇ
少ないけどこれはとっておけ
喜瀬川はお花が好きだったから墓に行ったらお花を手向けてくれ

それではご案内をさせていただきます

あとひと月早く来ていれば死なずに済んだかもしれねぇな

そうでしょうか・・・
ひと月早く来ていたとしてもその時にお亡くなりになっていたかもしれません。



山谷に着いた
どこだ寺は?

どの様なお寺をお望みで?

馬鹿野郎、墓を選びに来たわけでねぇ

こちらでございました。
本堂のわきにお花とお線香を買ってまいります。

婆さん、お花とお線香をあるだけ頂戴
あと桶を貸してください。帰る時に返しますので
御足はおいておくので、お釣り入りませんよ


どうもお待たせいたしました。

すまねぇな

いえ、お安い御用でございます。
本堂の、、、ええっと、ございました
ございましたが花魁は素顔をお大臣の前で見せたことがございません
お化粧を致しますので、それからお呼び致します。


どこのどなたのお墓かは知りませんが、突然知らない人間が来まして涙を流しますが一つよろしくお願いいたします。お花とお線香はこのまま置いて行きますので。



お大臣、お待たせいたしました。

これか、これが喜瀬川の墓かぁ
喜瀬川ぁあ、こうだら冷たい石っころになってしまって・・・喜瀬川ぁああ
村に帰ったらやなねぇと行けねぇ事がいっぱいあってなぁ
おらに恋い焦がれて、、ごほぉごほぉ、喜助!
こんだら線香を松明みたいにつけて
花だってあげれば良いってもんじゃない
折角話をしているのに戒名も何も見えねぇだろ
「故・養空食傷信士(ようくうしょくしょうしんじ)」
信士って男の墓でねぇか!

あっ!!間違いました!
お隣で御座います、こちらでございます。

馬鹿野郎!
よりによって墓間違えるやつがいるか!
しかも大きい墓とこんだら小さい墓を間違いやがって!
喜瀬川、喜助が間抜けのせいで隣の墓で泣いてしまったぁ
ごほ、ごほぉ、さっきも言っただろ
松明じゃなねぇんだからこんなにつけてどうする?
線香の煙で戒名も何も見えねぇ
「天垂童子、享年三歳」
三歳って子供の墓でねぇか!!

間違いました!間違いました!
こちらでございます。

馬鹿野郎
今度は涙を流す前に戒名を確認する
「故 陸軍歩兵上等兵」
喜助!喜瀬川の墓はいったいどこだ?!

ずらりと並んでおります
宜しいのをお見立て願います。




タグ:花魁 廓話
posted by 落語の世界 at 10:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年08月18日

無筆の手紙

おい

え?

そこで何してるんだよ

何してるって久しぶりに兄に手紙を書いてるんだ

手紙を書いてるってお前は字が書けないだろ

いいんだよ
どうせ兄も読めないんだから


タグ:無筆
posted by 落語の世界 at 07:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小噺

酒の粕

おい赤い顔してどうした?

赤い顔してますか?

どうした

酒の粕を食ったんだ
あれも美味しいもんだな
二枚焼いて食べたんだ
黒砂糖を包んであぶって、焦げた所なんか旨いんだよ

情けないなぁ二十四、五にもなって
そんなんだから阿保って言われるんだ
酒の粕を食べたんじゃなく酒を飲んだって言え

酒飲んだ?

そうだ
その方が景気が良い

そうか、酒の粕より酒飲んだっていた方が男らしいか

男らしいって言うのも変だけど
威勢がいいだろ
酒を飲んだって言え

なるほどなぁ




よっさん

お、どうした

顔赤いだろ
酒飲んだんだ

そりゃそうだろうな
もうそんな歳になったんだな
今まで飲めないと思って誘わなかったんだけど
これから誘うからな
どれくらい飲んだんだ?

これくらいの大きさ二枚だ

酒の粕食ったな

分かるか?

分からいでか
二枚って、、、それを言うなら武蔵野で二杯飲んだって言え

武蔵野ってなんだ?

大杯、大盃のことだ
江戸時代武蔵野は広い広い野原だったんだ
野が見つくせない、飲みつくせないって意味だ

あぁなるほど大盃のことを武蔵野って言うんだ

そうだ
それで二杯やったとこう言ってみろ
二枚はだめだぞ
肴はなにでやったんだ?

黒砂糖

だめだ、だめだ、黒砂糖じゃ飲めないぞ
タコのぶつ切りにきゅうりのザクザクにちょっと酢を利かしたって言ってみろ
酒のみなら喉を鳴らしよるぞ

あぁなるほどな




たっちゃん

なんだ?

自分顔の色赤いだろ

まぁそうだな、走ってきたのか?

走ったりしない
酒を飲んできたんだ

えぇ!お前飲めるようになったん?
知らなかったな
どのくらい飲んだんだ?

これくらい大きな武蔵野で二杯

おいおいあまり無茶するなよ
肴はなにでやった?

肴は黒砂糖では飲めないぞ

当たりまだろ

あのな、きゅうりのぶつ切りにタコのサクサクや

タコを刻んでどうするよ
え、それに酢を利かして
ほぉ生意気を言うようになったな
けど冷酒は毒だぞ
ちゃんと燗して飲んだんか?

あぁちゃんと焼いて飲んだ


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posted by 落語の世界 at 07:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語
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