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2017年10月31日
有頂天な金魚
在る方が自宅に帰ると金魚鉢で飼っております金魚が飛び出て畳の上ではねている
あれ?
出かける前には飛び出していなかった
いつ飛び出したんだろう
それにしても金魚は水の中で生きているものだが
こういう畳の上でも生きていられるもんなんだな
あくる日から金魚を手ですくっては外に出して
金魚、記録を作れよ
あくる日は五分、次の日は六分と日ごとに伸びて行きまして
一年たつころには金魚が主人の後ろを夫散歩するまでになった
これが近所の評判になりまして
金魚偉いぞ〜
褒められた金魚はエラなんかを出して挨拶をする
有頂天になった金魚が橋の所でつまずいて
川に落ちておぼれ死にました
あれ?
出かける前には飛び出していなかった
いつ飛び出したんだろう
それにしても金魚は水の中で生きているものだが
こういう畳の上でも生きていられるもんなんだな
あくる日から金魚を手ですくっては外に出して
金魚、記録を作れよ
あくる日は五分、次の日は六分と日ごとに伸びて行きまして
一年たつころには金魚が主人の後ろを夫散歩するまでになった
これが近所の評判になりまして
金魚偉いぞ〜
褒められた金魚はエラなんかを出して挨拶をする
有頂天になった金魚が橋の所でつまずいて
川に落ちておぼれ死にました
価格:1,750円 |
タグ:動物
2017年10月29日
短命(たんめい)【長命(ちょうめい)】
ねぇ隠居さん
私は世の中にこんな訳の分からない話は無いと思ってるんだ
そう思うでしょ
何がだよ
表の質屋
伊勢谷の若旦那が三度死んだよ
八さん
そんな馬鹿な話は無い
人間が一度死んでまた死ぬかい
筋道を立てて話してごらん
言いますけどね
伊勢谷の旦那は遠の昔に亡くなったんだよ
後に残ったのは女将さんと家付きの一人娘さんだ
外に嫁出すことが出来ないから養子を迎えたんだけど
その養子が良い男でね
錦絵から抜け出た良い男なんだよ
・
この養子と家付きの娘が仲が良い
これに安心したわけではないけれども女将さんもお亡くなりになった
夫婦二人っきりで仲が良い
しかしね養子の顔色が悪くなってきた
青白い顔になったなとおもったら床について十日くらいで目を瞑った
・
葬式万端済ましたら親類が集まって、
まだ後家を通すには若いと言う訳で
二人目養子を迎えた
前の養子に懲りたのか丈夫一点張り
体なんかずんぐりむっくりして色なんか真っ黒け
顔なんか看板についてるってだけだ
・
娘さんって言っても今は女将さんだ
仲が良いんだよ
しかしねこの養子やろうの顔もだんだん悪くなってきた
前の養子は白かったから一目でわかったけど、
二人目の養子は顔が黒いから近くで見てはじめて分かった
妙な顔をしているなぁと思ったら床について十日経つか経たないかの内に死んじゃったんだ
で三人目に迎え入れた養子が昨日死んだんだ
これで伊勢谷の若旦那が三度死んだってことになるでしょ
そう言ってくれれば分かるけれども
いきなり飛び込んできて三度死んだって言うから
一人の人間が三度死んだっと思うでしょうが
・
じゃ何かい?八さん
伊勢谷に来る養子がみんなお亡くなりになる
そうなんだよ
あっしは弱ってるんだよ
別にお前が弱ることないだろう
養子に頼まれたわけじゃないだろ
そうなんですけど
その晩ね、みんな集まって厭味(いやみ)を言わないといけないんだよ
変わった家だね
厭味を言うのかい
この度はって
それは悔やみだよ
亡くなった人に厭味を言ってどうする
そうだよ、そのみだよ
来たって言うのはねご隠居さんに新しい悔やみを教えて貰おうと思って
悔やみに新しいも古いも無いよ
前にやったんだろ
前の通りで良いよ
同じでいいのか?
最初はどうやったんだ?
さてこの度は、、、
「この度は」は悔やみの決まりきった言葉だね
その後は?
ごちそう様です
・・・なんだい
いやね、この度はって頭を下げてね
ひょっと上げたらごちそうがいっぱい並んでいたからね
お前さんは食べ物に悔やみに行ったのかい
二度目は?
二度目はちょっと調子を変えようと思って腹の底から声を変えてね
さてこの度は
お前さんを見直した
良い声が出てるね
その後は?
ごちそう様です
同じじゃないか
八さんの前だけど悔やみと言う物は、相手に分からないように
口の中でごにょごにょ言っていれば良いんだよ
その分からないところが分からないから来たんでしょ
一番肝心な事はお辞儀の仕方だよ
見る人が見たらその人の気持ちが分かると言うよ
丁寧にお辞儀をしたら手を膝の上に置いて、相手の顔を見るような見ないような感じで
さて、この度はこちら様の・・・ご察し・・申し・・・
こんな感じでやってみなさい
これは面白いや
これ、悔やみを笑いながらやっていたら張ったり倒されるよ
でもまだ分からないんだよ
今度は何が分からないんだ
よく昔から良い事をしたらいい報いが在る
悪い事をしたら悪い報いが在るって言うよ
伊勢谷の旦那って人は大層できた人で、第一に商売が質屋で人に恨みを買っちゃいけないって言うんで町内の付き合いも進んでやっていた人だ。
・
この人の娘さんも出来て人で、長屋の女将さんが子供の物を持って質に入れに来る
子供の物のだから大した物は無いけれども嫌な顔しないで銭を貸して、
後でその家にこっそり品物を返してやったという位、気の優しい方だ
そこへ来る養子がみんな死んでしまうのはどういう事なんだ?
祟りかね??
祟りという事ではないけれども、娘と言っても今は女将さんかね
歳はお幾つだね
三十三だよ
では何かい伊勢谷の女将さんは美人かい?
あのね、ものすごく美人だよ
歳も二十七、八ぐらいに見える
そうかぁなるほどな
女将さんの歳が三十三で美人という事がご亭主は短命の元だな
なんです湯麺(たんめん)?
湯麺じゃない短い命で短命だ
長い命は拉麺(らーめん)かい
長い命は長命だよ
分からない話だな
女将さんが美人だったら頑張って働こうって思うじゃないか
どうして短命なんです
夫婦二人っきりだろ
隠居思い出した
世帯を持ちたて時は、夫婦はおまんまを食べるときはお膳を挟んで差し向えって歌の文句が在るだろ
ところがね、あそこの夫婦はご膳を退かして傍によって、
「あなたぁ」って色っぽい声を出すんだよ
それが短命の元だよ
女将さんがご飯をよそってご亭主に出す
ご亭主がそれを受取ろうとしてほっと手を出す
指と指とが触る、手と手が触れる
ひょっと前を見ると振るいつきたくなる女がいる
・・・短命だよ
指が触ると?
それってもしかして指に毒が?
あのね、
白魚のようなきれいな指だろ
突きたての餅みたいに柔らかい手だろ
その指と手が触り、ひょっと前を見ると綺麗な女だろ
・・・短命でしょ
そこに来ると分からないんですよ
お前は大人なんだから頭を使って考えなさい
いいかい?
例えばだよ寒い冬場、夫婦でこたつに当たっているだろ
まわりに出誰も居ない
何かのはずみに手が触り、指が触り
・・ね、短命でしょ
こたつでのぼせるのかい
どうして分からないんだ
お前さんも所帯を持ちたての時を考えてごらんよ
誰も居ない時に指だけで済むかい?
手だけで済むかい?
そこらじゅう触るだろ
指だけじゃないの・・・
手だけじゃないの・・・・
それは短命だぁ
・
って冗談じゃないよ
こっちは祟りだと怯えていたのに
こんなこと言っている場合じゃなかった
棚のこと用が在って駆けずり回ってたんだ
これから家に戻っておまんま食べて棚に手伝いに行かいといけないんだ
お手間を取らせてすみませんでした。
驚いたね
寿命縮めるほど触ることないのにね
考えてみると暫く触ってないな
・
今帰ったよ
何処のたくってんだよ!
棚の事で駆けずり回ってたんだ
お腹すいたらおまんまにしてくれ
おまんまも無いもんだよ
時分時(じぶんどき)に帰ってこないんだから
勝手によそってお上がりよ
ちょっとよそってくれても良いじゃないか
うるさいね
人使いが荒い割には金使いは細かいくせに
お鉢の蓋なんかこうやたら開くんじゃないか
茶碗としゃもじを持ってね
よそったって盛りが多いの少ないの言うくせに
なんだって私の事を使わないと損みたいな感じで
まったくもう
ほら!!
こんな山盛りにして仏前飯じゃねぇぞ
・・・けど指が触ったね
指が触って、手が触ってひょっと前を見ると
・・・・俺は長生きだ
私は世の中にこんな訳の分からない話は無いと思ってるんだ
そう思うでしょ
何がだよ
表の質屋
伊勢谷の若旦那が三度死んだよ
八さん
そんな馬鹿な話は無い
人間が一度死んでまた死ぬかい
筋道を立てて話してごらん
言いますけどね
伊勢谷の旦那は遠の昔に亡くなったんだよ
後に残ったのは女将さんと家付きの一人娘さんだ
外に嫁出すことが出来ないから養子を迎えたんだけど
その養子が良い男でね
錦絵から抜け出た良い男なんだよ
・
この養子と家付きの娘が仲が良い
これに安心したわけではないけれども女将さんもお亡くなりになった
夫婦二人っきりで仲が良い
しかしね養子の顔色が悪くなってきた
青白い顔になったなとおもったら床について十日くらいで目を瞑った
・
葬式万端済ましたら親類が集まって、
まだ後家を通すには若いと言う訳で
二人目養子を迎えた
前の養子に懲りたのか丈夫一点張り
体なんかずんぐりむっくりして色なんか真っ黒け
顔なんか看板についてるってだけだ
・
娘さんって言っても今は女将さんだ
仲が良いんだよ
しかしねこの養子やろうの顔もだんだん悪くなってきた
前の養子は白かったから一目でわかったけど、
二人目の養子は顔が黒いから近くで見てはじめて分かった
妙な顔をしているなぁと思ったら床について十日経つか経たないかの内に死んじゃったんだ
で三人目に迎え入れた養子が昨日死んだんだ
これで伊勢谷の若旦那が三度死んだってことになるでしょ
そう言ってくれれば分かるけれども
いきなり飛び込んできて三度死んだって言うから
一人の人間が三度死んだっと思うでしょうが
・
じゃ何かい?八さん
伊勢谷に来る養子がみんなお亡くなりになる
そうなんだよ
あっしは弱ってるんだよ
別にお前が弱ることないだろう
養子に頼まれたわけじゃないだろ
そうなんですけど
その晩ね、みんな集まって厭味(いやみ)を言わないといけないんだよ
変わった家だね
厭味を言うのかい
この度はって
それは悔やみだよ
亡くなった人に厭味を言ってどうする
そうだよ、そのみだよ
来たって言うのはねご隠居さんに新しい悔やみを教えて貰おうと思って
悔やみに新しいも古いも無いよ
前にやったんだろ
前の通りで良いよ
同じでいいのか?
最初はどうやったんだ?
さてこの度は、、、
「この度は」は悔やみの決まりきった言葉だね
その後は?
ごちそう様です
・・・なんだい
いやね、この度はって頭を下げてね
ひょっと上げたらごちそうがいっぱい並んでいたからね
お前さんは食べ物に悔やみに行ったのかい
二度目は?
二度目はちょっと調子を変えようと思って腹の底から声を変えてね
さてこの度は
お前さんを見直した
良い声が出てるね
その後は?
ごちそう様です
同じじゃないか
八さんの前だけど悔やみと言う物は、相手に分からないように
口の中でごにょごにょ言っていれば良いんだよ
その分からないところが分からないから来たんでしょ
一番肝心な事はお辞儀の仕方だよ
見る人が見たらその人の気持ちが分かると言うよ
丁寧にお辞儀をしたら手を膝の上に置いて、相手の顔を見るような見ないような感じで
さて、この度はこちら様の・・・ご察し・・申し・・・
こんな感じでやってみなさい
これは面白いや
これ、悔やみを笑いながらやっていたら張ったり倒されるよ
でもまだ分からないんだよ
今度は何が分からないんだ
よく昔から良い事をしたらいい報いが在る
悪い事をしたら悪い報いが在るって言うよ
伊勢谷の旦那って人は大層できた人で、第一に商売が質屋で人に恨みを買っちゃいけないって言うんで町内の付き合いも進んでやっていた人だ。
・
この人の娘さんも出来て人で、長屋の女将さんが子供の物を持って質に入れに来る
子供の物のだから大した物は無いけれども嫌な顔しないで銭を貸して、
後でその家にこっそり品物を返してやったという位、気の優しい方だ
そこへ来る養子がみんな死んでしまうのはどういう事なんだ?
祟りかね??
祟りという事ではないけれども、娘と言っても今は女将さんかね
歳はお幾つだね
三十三だよ
では何かい伊勢谷の女将さんは美人かい?
あのね、ものすごく美人だよ
歳も二十七、八ぐらいに見える
そうかぁなるほどな
女将さんの歳が三十三で美人という事がご亭主は短命の元だな
なんです湯麺(たんめん)?
湯麺じゃない短い命で短命だ
長い命は拉麺(らーめん)かい
長い命は長命だよ
分からない話だな
女将さんが美人だったら頑張って働こうって思うじゃないか
どうして短命なんです
夫婦二人っきりだろ
隠居思い出した
世帯を持ちたて時は、夫婦はおまんまを食べるときはお膳を挟んで差し向えって歌の文句が在るだろ
ところがね、あそこの夫婦はご膳を退かして傍によって、
「あなたぁ」って色っぽい声を出すんだよ
それが短命の元だよ
女将さんがご飯をよそってご亭主に出す
ご亭主がそれを受取ろうとしてほっと手を出す
指と指とが触る、手と手が触れる
ひょっと前を見ると振るいつきたくなる女がいる
・・・短命だよ
指が触ると?
それってもしかして指に毒が?
あのね、
白魚のようなきれいな指だろ
突きたての餅みたいに柔らかい手だろ
その指と手が触り、ひょっと前を見ると綺麗な女だろ
・・・短命でしょ
そこに来ると分からないんですよ
お前は大人なんだから頭を使って考えなさい
いいかい?
例えばだよ寒い冬場、夫婦でこたつに当たっているだろ
まわりに出誰も居ない
何かのはずみに手が触り、指が触り
・・ね、短命でしょ
こたつでのぼせるのかい
どうして分からないんだ
お前さんも所帯を持ちたての時を考えてごらんよ
誰も居ない時に指だけで済むかい?
手だけで済むかい?
そこらじゅう触るだろ
指だけじゃないの・・・
手だけじゃないの・・・・
それは短命だぁ
・
って冗談じゃないよ
こっちは祟りだと怯えていたのに
こんなこと言っている場合じゃなかった
棚のこと用が在って駆けずり回ってたんだ
これから家に戻っておまんま食べて棚に手伝いに行かいといけないんだ
お手間を取らせてすみませんでした。
驚いたね
寿命縮めるほど触ることないのにね
考えてみると暫く触ってないな
・
今帰ったよ
何処のたくってんだよ!
棚の事で駆けずり回ってたんだ
お腹すいたらおまんまにしてくれ
おまんまも無いもんだよ
時分時(じぶんどき)に帰ってこないんだから
勝手によそってお上がりよ
ちょっとよそってくれても良いじゃないか
うるさいね
人使いが荒い割には金使いは細かいくせに
お鉢の蓋なんかこうやたら開くんじゃないか
茶碗としゃもじを持ってね
よそったって盛りが多いの少ないの言うくせに
なんだって私の事を使わないと損みたいな感じで
まったくもう
ほら!!
こんな山盛りにして仏前飯じゃねぇぞ
・・・けど指が触ったね
指が触って、手が触ってひょっと前を見ると
・・・・俺は長生きだ
2017年10月28日
そば清(そばせい)
江戸は大変平和な時代でして、賭け事も盛んになりました。
酒賭けといってどのくらい飲めるかを競ったりもしました。
しかし酒賭けと言っても飲んだ人が寝てしまい面白くない
そのうちに醤油賭けが流行りました。
一升をぐっと飲んでそのまま百両の賞金を貰って・・・・
その時に話題になりまして醤油を飲んで百両貰って
お亡くなりになったという事で馬鹿の番付の筆頭となり
暫くは一位の座から落ちなかったそうです。
・
一つ考えが出てきて風呂に入るとある程度、塩分が抜けて助かると
それを防ごうと町内の湯屋を貸し切りにした者もおりました。
凄まじい執念ですね
そういう風潮もあり、そば賭けも流行りまして、
何枚食べれますか?
十枚くらいでしょう
賭けましょう
おう!賭けだよ
そば屋も心得ておりますのでなるべく軟らかめに茹でます
そして言った枚数を食べましたら掛け金を貰える仕組みです。
おぉ見事だね、負けましたよ
また明日ってことが江戸中に流行り始めまして
どんなそば屋に行きましても賭けそばが見られました。
その時分のお話です。
見ましたか今の人
この頃見るようになりましたが見事な食べっぷりでしたな
箸を持ってそばをとって汁につけるかつけないかのうちにすっと
そばの方から口に中に入っていく
どうです?
そば賭けしませんか?
そうですね
あの人面白そうな人だ
最初は小手試しでいつも十枚をきれいに食べて行きますので
そうですねぇ二十枚と倍でいきましょう
一分というのはどうですか
そうですか
みんなで一分、乗りましょう
じゃ明日今自分にその客が
どぉ〜も
ちょっといいですか
なんですか?
貴方名前は何て言うの?
清(せい)と言います。
へぇ男で珍しいな
昨日までのそばの食べ口を見ていたら見事でね
どうですかそば賭けにお付き合い願いませんか?
どうも、そば賭けで御座いますか
どのくらい
いつも十、食べていますから二十
二十で一分というのはいかがでしょう?
あぁ一分ね
これは痛いですな
でも皆さんと顔つなぎで御座いますので
一分差し上げることになりますがよろしくお願いします。
やりますか?
親方、賭けだよ
そば二十
へい!
心得ておりますから
ありがとうございます。
いやいや
・
・
そばっていう物はね
・
・
・
すみません食べたらどかしてください
恐れ入ります
・
・
腹の具合でしてな
そばの香りが一段とよろしくって
・
あぁなるほど
・
・
これは結構ですね
今幾つ行きました?
十五?
・
・
十八
・
これで二十
あぁ食べられました
どうも体の調子で御座いますな
本当に食べたんですね
それじゃ一分
すみませんですね
心ならずもいただきまして
皆さま失礼いたしました
どぉ〜も
なんなんだよ
十食べた時と同じじゃないか
ちくしょう
明日は三十ですよ
三十で一両です皆さんやりますか?
それでは今時分ね
博打と言う物は取られたら取り返したくなる
あいつは三十なんか食べれるものかと熱くなってしまいます
明くる日が来ますと
どぉ〜も
昨夜私はあの人の夢を見たんだよ
「どぉ〜も」と言われて自分がツゥーっと口に入っていく夢でしたよ
・
あなたは昨日はよく寝られたでしょ
昨日は二十で賭けをして軽かった
それで今日は三十で一両
どうですか?
三十ですか・・・
えぇまぁね体の調子ですのでね
どうなりますかねぇ
しかし昨日いただいたのですからお釣りを付けて返すということで
やりましょう
やる!
親方、三十だよ
体の調子ですので皆さん手際よくどかしてください
・
・
うん、今日は良いですね
・
あなたはどかしたらすぐに置くんですよ
・
私はそばはね
そばの講釈はいいんだよ
幾つ行きました?
え?二十
二十五?
・
二十六?
・
二十九
あと一枚だよ
そうですか
体の調子と言うものは面白いものでしてね
・
あぁ
・
では一両頂戴していきます
どぉ〜も
・・・・なんだよあれは
化け物ですよ
・・・何あなた笑ってるんです?
だってあなた方知ってるの?
いえ、知らないです
あの人はね、おそばの清さん
通称そば清って呼ばれる人でね
そばの賭けて家を二件建てた人ですよ
普段は四十くらいの賭けをしている人でね
それを二十だの三十だのっていうから向こうは嬉しいですよ
おそばの清さん
本当に憎いねぇ
それは「どぉ〜も、食べられますかなぁ」って
それを聞いたらね
どうしましょうかね
・
五十で行きましょう
えぇっと五両でいきましょう
負い目ですよ
貴方知っていますよね?
・・四十ちょっとの賭けをいつもやっていて五十をやったことが無い
良し!
五十で五両乗る?
明日は取り返してやるから待ってろよ
そんな事は、清さんは知りませんから
良い鴨が見つかったと思い
どぉ〜も
いらっしゃい
ここへ座りなさい
・
あなたはおそばの清さん
通称そば清さんって言うんですってね
・・・分かりましたか
分かりましたじゃない
普段の四十の賭けしてるのに二十だの三十だのって良く取れますね
今日は五十で五両
どうです?
清さんは考えた
普段は四十ちょっとの賭けでやっていて五十はやったことが無い
四十五までは行くけどあとの五枚はどうなるかな
五両は大金ですから
今日は脇でちょっと食べてしまいまして
また改めまして
と言って逃げた
その清さんが旅に出まして信州を旅している途中道に迷った
困ったなと思うと上から、ウワバミが口を開けておりまして
あぁこれで俺は飲み込まれてしまうと思っていたら脇で猟師が鉄砲を抱えて構えている
猟師とウワバミどっちが勝つんだろう
ドン!!!と撃つのとウワバミが飛びついたのが僅かな違い
あっと言う間に猟師がウワバミに頭を咥えられて丸呑みにされてしまった
ウワバミは噂では聞いたことあるけど、
人を呑むのは初めて見た、恐ろしいもんだな
丸呑みして苦しがっているけど、どうするんだろう
苦しがっていたウワバミが赤い草を舐めると
大きいお腹が元に戻っていく
そのまま藪の中に
ウワバミは恐ろしい事を知ってるな
あの草を舐めたらお腹の人間がいなくなっちゃった
消化を助けるんだ
そうだ!
あの草を摘んで、そば賭けをしたらいくらでも食べられるよ
苦しくなったらあの草を舐めれば良いんだ
この草を摘んで紙入れに入れて江戸にもどってきた
どぉ〜も
また来た
懐かしいね
何ですか信州を旅したんですってね
向こうは本場だ、良いそばを食べて来たんでしょ
それがね
そばは結構なんですが汁がいけません
向こうのそばで江戸の汁を食べたら旨いだろうと思います
よくそんなことを聞きますな
だいぶ腕を上げたでしょ
賭けそばをやりますか?
帰って来てすぐやりますか
五十で五両
六十で十両はどうでしょう?
六十、、、、
皆さん六十で十両です
こうなりましたら私一人の手に負えない
皆さんの考えを聞きまして
そうだ、ご隠居さんを呼ばないとうるさいんだよ
・
あぁご隠居さん
六十で十両なんです
私が全部持つ
全部はいけない
そこに座って
それでは出来ましたね
親方、六十ですからね
へい、よろしゅう御座います。
そば屋も自信が無ければこんなこと出来ません。
こしらえたらすっと出てくる
それを清さんは
ツゥー
・
・
・
・
早いねぇ
口の中に入っていく
どんどん食べてるね
こっちに十づつ並べて
十、二十、三十、四十、、、もう五十越してるのか
五十三
・
五十四
・
・
五十五
・
・
・
五十六、、、、
もう駄目でしょ
清さん謝って十両を出した方が良いですよ
もうそれ以上は無理
あぁ・・・・・
あと幾つです?
そうですか
・
・
うぅ
・
うぐ
・
お願いが御座います
なんです
外の風に当たりたいんですか
風に当たったら後、十食べます
はぁ風に当たりたい
どうします?
風ぐらい当たらしてあげましょう
動けない?
みんなそばなんですから
よいしょっと、この辺で良いですか
すみません
障子を閉めてください
・
・
ペロペロ
何か舐めているよ
薬じゃないか
駄目ですよ
あそこまで行ったら薬なんて効きませんよ
清さん駄目だよ
悪あがきしないでみんなに謝ってしまいなさい
清さん?
・
逃げられるわけないよ
清さん開けるよ
・
清さん、どうしたの?
・
おい、みんな見ろよ
これをご覧よ
障子を開けると清さんが居なくって
そばが羽織を着ていました
酒賭けといってどのくらい飲めるかを競ったりもしました。
しかし酒賭けと言っても飲んだ人が寝てしまい面白くない
そのうちに醤油賭けが流行りました。
一升をぐっと飲んでそのまま百両の賞金を貰って・・・・
その時に話題になりまして醤油を飲んで百両貰って
お亡くなりになったという事で馬鹿の番付の筆頭となり
暫くは一位の座から落ちなかったそうです。
・
一つ考えが出てきて風呂に入るとある程度、塩分が抜けて助かると
それを防ごうと町内の湯屋を貸し切りにした者もおりました。
凄まじい執念ですね
そういう風潮もあり、そば賭けも流行りまして、
何枚食べれますか?
十枚くらいでしょう
賭けましょう
おう!賭けだよ
そば屋も心得ておりますのでなるべく軟らかめに茹でます
そして言った枚数を食べましたら掛け金を貰える仕組みです。
おぉ見事だね、負けましたよ
また明日ってことが江戸中に流行り始めまして
どんなそば屋に行きましても賭けそばが見られました。
その時分のお話です。
見ましたか今の人
この頃見るようになりましたが見事な食べっぷりでしたな
箸を持ってそばをとって汁につけるかつけないかのうちにすっと
そばの方から口に中に入っていく
どうです?
そば賭けしませんか?
そうですね
あの人面白そうな人だ
最初は小手試しでいつも十枚をきれいに食べて行きますので
そうですねぇ二十枚と倍でいきましょう
一分というのはどうですか
そうですか
みんなで一分、乗りましょう
じゃ明日今自分にその客が
どぉ〜も
ちょっといいですか
なんですか?
貴方名前は何て言うの?
清(せい)と言います。
へぇ男で珍しいな
昨日までのそばの食べ口を見ていたら見事でね
どうですかそば賭けにお付き合い願いませんか?
どうも、そば賭けで御座いますか
どのくらい
いつも十、食べていますから二十
二十で一分というのはいかがでしょう?
あぁ一分ね
これは痛いですな
でも皆さんと顔つなぎで御座いますので
一分差し上げることになりますがよろしくお願いします。
やりますか?
親方、賭けだよ
そば二十
へい!
心得ておりますから
ありがとうございます。
いやいや
・
・
そばっていう物はね
・
・
・
すみません食べたらどかしてください
恐れ入ります
・
・
腹の具合でしてな
そばの香りが一段とよろしくって
・
あぁなるほど
・
・
これは結構ですね
今幾つ行きました?
十五?
・
・
十八
・
これで二十
あぁ食べられました
どうも体の調子で御座いますな
本当に食べたんですね
それじゃ一分
すみませんですね
心ならずもいただきまして
皆さま失礼いたしました
どぉ〜も
なんなんだよ
十食べた時と同じじゃないか
ちくしょう
明日は三十ですよ
三十で一両です皆さんやりますか?
それでは今時分ね
博打と言う物は取られたら取り返したくなる
あいつは三十なんか食べれるものかと熱くなってしまいます
明くる日が来ますと
どぉ〜も
昨夜私はあの人の夢を見たんだよ
「どぉ〜も」と言われて自分がツゥーっと口に入っていく夢でしたよ
・
あなたは昨日はよく寝られたでしょ
昨日は二十で賭けをして軽かった
それで今日は三十で一両
どうですか?
三十ですか・・・
えぇまぁね体の調子ですのでね
どうなりますかねぇ
しかし昨日いただいたのですからお釣りを付けて返すということで
やりましょう
やる!
親方、三十だよ
体の調子ですので皆さん手際よくどかしてください
・
・
うん、今日は良いですね
・
あなたはどかしたらすぐに置くんですよ
・
私はそばはね
そばの講釈はいいんだよ
幾つ行きました?
え?二十
二十五?
・
二十六?
・
二十九
あと一枚だよ
そうですか
体の調子と言うものは面白いものでしてね
・
あぁ
・
では一両頂戴していきます
どぉ〜も
・・・・なんだよあれは
化け物ですよ
・・・何あなた笑ってるんです?
だってあなた方知ってるの?
いえ、知らないです
あの人はね、おそばの清さん
通称そば清って呼ばれる人でね
そばの賭けて家を二件建てた人ですよ
普段は四十くらいの賭けをしている人でね
それを二十だの三十だのっていうから向こうは嬉しいですよ
おそばの清さん
本当に憎いねぇ
それは「どぉ〜も、食べられますかなぁ」って
それを聞いたらね
どうしましょうかね
・
五十で行きましょう
えぇっと五両でいきましょう
負い目ですよ
貴方知っていますよね?
・・四十ちょっとの賭けをいつもやっていて五十をやったことが無い
良し!
五十で五両乗る?
明日は取り返してやるから待ってろよ
そんな事は、清さんは知りませんから
良い鴨が見つかったと思い
どぉ〜も
いらっしゃい
ここへ座りなさい
・
あなたはおそばの清さん
通称そば清さんって言うんですってね
・・・分かりましたか
分かりましたじゃない
普段の四十の賭けしてるのに二十だの三十だのって良く取れますね
今日は五十で五両
どうです?
清さんは考えた
普段は四十ちょっとの賭けでやっていて五十はやったことが無い
四十五までは行くけどあとの五枚はどうなるかな
五両は大金ですから
今日は脇でちょっと食べてしまいまして
また改めまして
と言って逃げた
その清さんが旅に出まして信州を旅している途中道に迷った
困ったなと思うと上から、ウワバミが口を開けておりまして
あぁこれで俺は飲み込まれてしまうと思っていたら脇で猟師が鉄砲を抱えて構えている
猟師とウワバミどっちが勝つんだろう
ドン!!!と撃つのとウワバミが飛びついたのが僅かな違い
あっと言う間に猟師がウワバミに頭を咥えられて丸呑みにされてしまった
ウワバミは噂では聞いたことあるけど、
人を呑むのは初めて見た、恐ろしいもんだな
丸呑みして苦しがっているけど、どうするんだろう
苦しがっていたウワバミが赤い草を舐めると
大きいお腹が元に戻っていく
そのまま藪の中に
ウワバミは恐ろしい事を知ってるな
あの草を舐めたらお腹の人間がいなくなっちゃった
消化を助けるんだ
そうだ!
あの草を摘んで、そば賭けをしたらいくらでも食べられるよ
苦しくなったらあの草を舐めれば良いんだ
この草を摘んで紙入れに入れて江戸にもどってきた
どぉ〜も
また来た
懐かしいね
何ですか信州を旅したんですってね
向こうは本場だ、良いそばを食べて来たんでしょ
それがね
そばは結構なんですが汁がいけません
向こうのそばで江戸の汁を食べたら旨いだろうと思います
よくそんなことを聞きますな
だいぶ腕を上げたでしょ
賭けそばをやりますか?
帰って来てすぐやりますか
五十で五両
六十で十両はどうでしょう?
六十、、、、
皆さん六十で十両です
こうなりましたら私一人の手に負えない
皆さんの考えを聞きまして
そうだ、ご隠居さんを呼ばないとうるさいんだよ
・
あぁご隠居さん
六十で十両なんです
私が全部持つ
全部はいけない
そこに座って
それでは出来ましたね
親方、六十ですからね
へい、よろしゅう御座います。
そば屋も自信が無ければこんなこと出来ません。
こしらえたらすっと出てくる
それを清さんは
ツゥー
・
・
・
・
早いねぇ
口の中に入っていく
どんどん食べてるね
こっちに十づつ並べて
十、二十、三十、四十、、、もう五十越してるのか
五十三
・
五十四
・
・
五十五
・
・
・
五十六、、、、
もう駄目でしょ
清さん謝って十両を出した方が良いですよ
もうそれ以上は無理
あぁ・・・・・
あと幾つです?
そうですか
・
・
うぅ
・
うぐ
・
お願いが御座います
なんです
外の風に当たりたいんですか
風に当たったら後、十食べます
はぁ風に当たりたい
どうします?
風ぐらい当たらしてあげましょう
動けない?
みんなそばなんですから
よいしょっと、この辺で良いですか
すみません
障子を閉めてください
・
・
ペロペロ
何か舐めているよ
薬じゃないか
駄目ですよ
あそこまで行ったら薬なんて効きませんよ
清さん駄目だよ
悪あがきしないでみんなに謝ってしまいなさい
清さん?
・
逃げられるわけないよ
清さん開けるよ
・
清さん、どうしたの?
・
おい、みんな見ろよ
これをご覧よ
障子を開けると清さんが居なくって
そばが羽織を着ていました
2017年10月26日
七両二分
昔から間男は七両二分と値が決まり。
浮気がバレてしまい、示談金ということになりますと
七両二分と相場が決まっていたそうです
この野郎!!
とんでもねえ野郎だ!
ぶっ殺してやる!
勘弁してくれよ・・・
熊さん、出来心なんだ
何が出来心だ!
人の女に手を付けやがって!
殺してやる!
今日が初めてなんだ
一回目なんだよ
数の問題じゃねぇよ
どうしてくれよう
い、いゃ、ちょ、ちょっと待ってくれよ
何とか示談にしてくれよ
けっ、腰抜けめ
示談金は昔からの決めて七両二分だ
七両二分って言うけどそんな大金払えないよ
三両にまけてくれないかなぁ
間男代をケチろうっていうのか?
しょうがねぇ
とっとと、持ってこい!
すぐに支度してくるから、
困っちゃったなぁ
魔が差したんだね、、、
でも三両っても、大金だ
嬶(かかあ)にはなんて言おう
・
・
今帰った
どうしたんだ青い顔して?
あのすまないけど、黙って三両用意してくれないか?
あのね、うちだって苦しんだよ
何も言わずに三両なんて大金用意できませんよ
何に使うんだい?
あ、のね。
勘弁しておくれよ。
実はね・・・・・、
うん、うん、
・
・
え?!お前さんが?
誰とだい?
・
熊さんの女将さんと?
呆れたね、同じ長屋じゃないか
まったく、何を考えてるんだよ
・
それで、熊さんが三両よこせって
いつからなんだい?
今日が初めてなんだよ
あっそう
今日が初めて、、、一回三両かい?
じゃ熊さんに差し引き六両貰っておいで
浮気がバレてしまい、示談金ということになりますと
七両二分と相場が決まっていたそうです
この野郎!!
とんでもねえ野郎だ!
ぶっ殺してやる!
勘弁してくれよ・・・
熊さん、出来心なんだ
何が出来心だ!
人の女に手を付けやがって!
殺してやる!
今日が初めてなんだ
一回目なんだよ
数の問題じゃねぇよ
どうしてくれよう
い、いゃ、ちょ、ちょっと待ってくれよ
何とか示談にしてくれよ
けっ、腰抜けめ
示談金は昔からの決めて七両二分だ
七両二分って言うけどそんな大金払えないよ
三両にまけてくれないかなぁ
間男代をケチろうっていうのか?
しょうがねぇ
とっとと、持ってこい!
すぐに支度してくるから、
困っちゃったなぁ
魔が差したんだね、、、
でも三両っても、大金だ
嬶(かかあ)にはなんて言おう
・
・
今帰った
どうしたんだ青い顔して?
あのすまないけど、黙って三両用意してくれないか?
あのね、うちだって苦しんだよ
何も言わずに三両なんて大金用意できませんよ
何に使うんだい?
あ、のね。
勘弁しておくれよ。
実はね・・・・・、
うん、うん、
・
・
え?!お前さんが?
誰とだい?
・
熊さんの女将さんと?
呆れたね、同じ長屋じゃないか
まったく、何を考えてるんだよ
・
それで、熊さんが三両よこせって
いつからなんだい?
今日が初めてなんだよ
あっそう
今日が初めて、、、一回三両かい?
じゃ熊さんに差し引き六両貰っておいで
2017年10月23日
こいし
2017年10月22日
子ほめ
こんにちは
おぉ八さんお前か、どうした?
今、辰さんに会ったらご隠居さんの所に行けば
タダの酒が呑めるって言われましてね
すみませんな、御馳走になります。
あぁ違う違う
親類が灘(なだ)にいてな
そこから蔵出しの酒を送ってきてくれるんだよ
タダじゃない灘の酒だ
そうか、タダの酒じゃないのか
まぁ良いや呑ませろ
お前ね、人の家の上がり込んできてお酒の一杯でもご馳走になるのに
そんな胸を張って威張ってるやつが在るか?
そういう時は愛想が大事だぞ
お世辞の一つでも言えないのか?
世辞っていうとどういう?
まぁ相手を褒めて持ち上げるんだよ
そうだな、お前が歩いていると向こうから久しぶりの人に会う
その時になんて言う?
そうだな、、、まだ生きていたのか
それがいけないんだよ
こういう塩梅でやってごらん
・
これはこれは暫くお会いになりませんでしたがどちらかにお出かけでしたか
先様が南方へって仰ったら、なるほど道理でお顔が黒くなりましたねっと言うと
自分の顔が黒くなったって聞いたら心配になるよ
そうしたら、いやもともとあなたは色が白いのですから
故郷の水で良く洗ってごらんなさい。また元通りに白くなるでしょうっと
一遍黒いと落としておいて、また元通り白くなると持ち上げるだ
前よりも器量が上がったように聞こえるでしょう
へぇそうですかね
まぁあっしだったらそんなに喜ばないけどな
そういう人もいるだろうけどな・・・
喜ばない人にはどうするんだ
そういう時は奥の手が在ってな歳を聞くのが良い
失礼ですがお幾つになりましたか?先様が四十五ぐらいと仰ったら、
四十五ですか若く見えます。どうみても厄そこそこでございます。
男の厄は四十二だ。三つばかり歳を若く見るんだ。
これが世辞ってもんだ
あぁなるほど
これはね喜ぶかもね
でも往来をうまく四十五の人が歩いて来ればいいけどね
四十五ばかり歩いでないでしょう
それはそうだよ
臨機応変やるんだよ
例えば五十くらいの人が歩いて来たら四十五、六くらいと言えばいい
六十は?
五十五、六だろ
七十は?
六十五、六で良いだろ
八十は?
七十五、六
九十は?
八十五、六
百は?
お前ね、百になる人がそこらへんをひょこひょこ歩いてないよ
隠居さんね
友達の竹の所に子供が生まれたんだよ
みんなでお祝いを持ってったんだけど取られっぱなしじゃ悔しいよ
赤ん坊のほめ方を教えてくれないかな
赤ん坊をほめるのか?
例えばこうだな、さて竹さんこれがあなたのお子さんですか
いや難しいと言うのはね、赤ん坊をほめても本人には分からない
赤ん坊をほめるようにして実は親をほめてあげるんだ
・
竹さんこれがあなたのお子さんで御座いますか、
道理でお顔が福々しい
この額が広いところと鼻筋がすっと通ったところなどが竹さんそっくりだ。
目元が涼しいところ口元が引き締まった所は女将さんにそっくりですね
総体を見まわしますと先年お亡くなりになりました
ご隠居さんにそっくりでご長命の相がお在りですね。
私もこういうお子さんにあやかりたいものだっとな
何のことか分からない
でもそんなことを言えば一杯呑ませるか?
呑ませるか分からないが少なくとも悪い気にはならないだろう
そうですか
行って来ます
なるほど、酒には在りつけなかったけど世辞を教わった
誰か知っている人に会わないかな
・
・
向こうから来たのは伊勢谷の番頭さんだ
こんにちは
おや、誰かと思ったら町内一の色男じゃないですか
どちらへ
向こうの方が上手いな
・
どうも番頭さんしばらくお目にかかりませんでした
よせよ、昨日湯屋で会ったじゃないか
そうだ、湯屋で会っちゃった
昨夜湯屋で会う前まではしばらく
変な挨拶だな
そうだな、最近は房総の方に行ってたんだ
房総・・・房総な、南方でした
南方って言うほどじゃないけどな
まぁ温かいところだよ
番頭さん、道理で顔の色が黒くなりました
吐き捨てるように言うなよ
黒い?
真っ黒
でも気にすることはありません
あなたはもともと黒いんですから
故郷の水で良く洗ってごらんなさい
元々通り黒くなるでしょう
・・・どうです嬉しいでしょう
全然嬉しくない
それは駄目だな
そうそう歳を聞けばいいんだ
失礼ですが番頭お幾つになりました?
よせよ、往来の真ん中で歳を聞くなよ
私は四十だ
四十にしては若く見えます
どう見ても厄そこそこ・・・あれ?
そんなこと言って番頭さん本当は四十五でしょ?
なぜ?
今、今日だけ四十五にしてよ
なれないでしょ
なれるよ
世辞を言いたいんだよ
そう?ほめてくれるなら良いけど
私は四十五だよ
四十五にしてはお若く見えますね
それはそうだよ
だって私は四十なんだから
そんな余計なこと言わないで幾つに見えるって聞いてよ
幾つに見える
どう見ても厄そこそこ
二つ余計だよ!
怒って行っちゃった
大人は駄目だな
子供にしようっと
おう竹居るか?
八公じゃないかどうした?
聞いたぜ
子供が生まれて弱ってるんだって
弱ってない
祝ってるんだ
あっ祝ってるのか俺は祝取られて弱ってる
変なこと言うなよ
返すよ
返さなくっていいよ
お前のガキをほめに来たんだ
乱暴者のお前がな
まぁ上がってくれよ
屏風の向こうに寝てるから
この屏風の向こうか
おぉ居たね
・
本当だ
竹さん大きいな
そうだろ、みんな大きいってほめてくれるんだ
御産婆さんもそう言ってた
でかいなぁ
ガキの時分から苦労させるなよ
白髪だらけで皺くちゃじゃないか
それおじいさんが昼寝してるんだよ
じいさんかこれ
赤ん坊が老けてるからおかしいと思った
ガキは?
横で毛布にくるまってる
うわぁスゲー小せぇ
これ育つかな?
だんだん大きくなるんだよ
竹さん、お前これ茹でた?
赤ん坊を茹でるわけないだろ
でも真っ赤だぞ
赤いから赤ん坊って言うんだ
生意気そうな面をしてるね
あら、可愛いな
このやろう
竹さん、この子お人形さんみたいだね
嬉しいこと言ってくれるね
そんなに可愛いか
そうじゃないんだ
お腹押すと音がするんだよ
おい!!死んじゃうよ!!!
この手は紅葉みたいな手をしてるな
そこで止めといておくれよ
それは嬉しかった
でもその後を言うとしくじるから何も言うな
いや大丈夫だよ
でも末にはろくな者にはならないだろうな
それが駄目なんだよ
でも分かるのか?
こんなに小さい手をして俺から祝を取りやがって
変な事を言うなよ
返すよ
返さなくってもいいよ
時に竹さん
なんだよ
口調が変わったな
こちらはあなたのお子さんですか?
・・・・改まって聞くなよ
俺の子だって信じたいよ
道理でお顔が福袋じゃなくって福々しい
この額の、、額が出っ張ったところ鼻が寝そべってあぐらかいた所
お前にそっくりだな
目元が落ち込んで、口元に締まりがないところは女将さんにそっくりだ
総体を見まわしますと先年お亡くなりなりましたおじいさんに似て
お前はさっきおじいさん見ただろ
あっそうだ生きてるんだっけ
私もこういうお子さんに蚊帳つりたい、首つりたいっと
はぁ・・・嬉しい?
ほめてくれないなら帰れよ!
怒られたね
奥の手が在った
竹さん、このお子さんはお幾つになりました
何しに来たんだ
生まれて今日で七日目
始めに言っておくが初七日じゃないぞ
お七夜、数えで一つだ
この子が一つ
大層お若く見えますな
やってられないよ
馬鹿馬鹿しくって
どのくらいに見えるか聞いてくれよ
・・・どのくらいに見える
どう見ても半分です
おぉ八さんお前か、どうした?
今、辰さんに会ったらご隠居さんの所に行けば
タダの酒が呑めるって言われましてね
すみませんな、御馳走になります。
あぁ違う違う
親類が灘(なだ)にいてな
そこから蔵出しの酒を送ってきてくれるんだよ
タダじゃない灘の酒だ
そうか、タダの酒じゃないのか
まぁ良いや呑ませろ
お前ね、人の家の上がり込んできてお酒の一杯でもご馳走になるのに
そんな胸を張って威張ってるやつが在るか?
そういう時は愛想が大事だぞ
お世辞の一つでも言えないのか?
世辞っていうとどういう?
まぁ相手を褒めて持ち上げるんだよ
そうだな、お前が歩いていると向こうから久しぶりの人に会う
その時になんて言う?
そうだな、、、まだ生きていたのか
それがいけないんだよ
こういう塩梅でやってごらん
・
これはこれは暫くお会いになりませんでしたがどちらかにお出かけでしたか
先様が南方へって仰ったら、なるほど道理でお顔が黒くなりましたねっと言うと
自分の顔が黒くなったって聞いたら心配になるよ
そうしたら、いやもともとあなたは色が白いのですから
故郷の水で良く洗ってごらんなさい。また元通りに白くなるでしょうっと
一遍黒いと落としておいて、また元通り白くなると持ち上げるだ
前よりも器量が上がったように聞こえるでしょう
へぇそうですかね
まぁあっしだったらそんなに喜ばないけどな
そういう人もいるだろうけどな・・・
喜ばない人にはどうするんだ
そういう時は奥の手が在ってな歳を聞くのが良い
失礼ですがお幾つになりましたか?先様が四十五ぐらいと仰ったら、
四十五ですか若く見えます。どうみても厄そこそこでございます。
男の厄は四十二だ。三つばかり歳を若く見るんだ。
これが世辞ってもんだ
あぁなるほど
これはね喜ぶかもね
でも往来をうまく四十五の人が歩いて来ればいいけどね
四十五ばかり歩いでないでしょう
それはそうだよ
臨機応変やるんだよ
例えば五十くらいの人が歩いて来たら四十五、六くらいと言えばいい
六十は?
五十五、六だろ
七十は?
六十五、六で良いだろ
八十は?
七十五、六
九十は?
八十五、六
百は?
お前ね、百になる人がそこらへんをひょこひょこ歩いてないよ
隠居さんね
友達の竹の所に子供が生まれたんだよ
みんなでお祝いを持ってったんだけど取られっぱなしじゃ悔しいよ
赤ん坊のほめ方を教えてくれないかな
赤ん坊をほめるのか?
例えばこうだな、さて竹さんこれがあなたのお子さんですか
いや難しいと言うのはね、赤ん坊をほめても本人には分からない
赤ん坊をほめるようにして実は親をほめてあげるんだ
・
竹さんこれがあなたのお子さんで御座いますか、
道理でお顔が福々しい
この額が広いところと鼻筋がすっと通ったところなどが竹さんそっくりだ。
目元が涼しいところ口元が引き締まった所は女将さんにそっくりですね
総体を見まわしますと先年お亡くなりになりました
ご隠居さんにそっくりでご長命の相がお在りですね。
私もこういうお子さんにあやかりたいものだっとな
何のことか分からない
でもそんなことを言えば一杯呑ませるか?
呑ませるか分からないが少なくとも悪い気にはならないだろう
そうですか
行って来ます
なるほど、酒には在りつけなかったけど世辞を教わった
誰か知っている人に会わないかな
・
・
向こうから来たのは伊勢谷の番頭さんだ
こんにちは
おや、誰かと思ったら町内一の色男じゃないですか
どちらへ
向こうの方が上手いな
・
どうも番頭さんしばらくお目にかかりませんでした
よせよ、昨日湯屋で会ったじゃないか
そうだ、湯屋で会っちゃった
昨夜湯屋で会う前まではしばらく
変な挨拶だな
そうだな、最近は房総の方に行ってたんだ
房総・・・房総な、南方でした
南方って言うほどじゃないけどな
まぁ温かいところだよ
番頭さん、道理で顔の色が黒くなりました
吐き捨てるように言うなよ
黒い?
真っ黒
でも気にすることはありません
あなたはもともと黒いんですから
故郷の水で良く洗ってごらんなさい
元々通り黒くなるでしょう
・・・どうです嬉しいでしょう
全然嬉しくない
それは駄目だな
そうそう歳を聞けばいいんだ
失礼ですが番頭お幾つになりました?
よせよ、往来の真ん中で歳を聞くなよ
私は四十だ
四十にしては若く見えます
どう見ても厄そこそこ・・・あれ?
そんなこと言って番頭さん本当は四十五でしょ?
なぜ?
今、今日だけ四十五にしてよ
なれないでしょ
なれるよ
世辞を言いたいんだよ
そう?ほめてくれるなら良いけど
私は四十五だよ
四十五にしてはお若く見えますね
それはそうだよ
だって私は四十なんだから
そんな余計なこと言わないで幾つに見えるって聞いてよ
幾つに見える
どう見ても厄そこそこ
二つ余計だよ!
怒って行っちゃった
大人は駄目だな
子供にしようっと
おう竹居るか?
八公じゃないかどうした?
聞いたぜ
子供が生まれて弱ってるんだって
弱ってない
祝ってるんだ
あっ祝ってるのか俺は祝取られて弱ってる
変なこと言うなよ
返すよ
返さなくっていいよ
お前のガキをほめに来たんだ
乱暴者のお前がな
まぁ上がってくれよ
屏風の向こうに寝てるから
この屏風の向こうか
おぉ居たね
・
本当だ
竹さん大きいな
そうだろ、みんな大きいってほめてくれるんだ
御産婆さんもそう言ってた
でかいなぁ
ガキの時分から苦労させるなよ
白髪だらけで皺くちゃじゃないか
それおじいさんが昼寝してるんだよ
じいさんかこれ
赤ん坊が老けてるからおかしいと思った
ガキは?
横で毛布にくるまってる
うわぁスゲー小せぇ
これ育つかな?
だんだん大きくなるんだよ
竹さん、お前これ茹でた?
赤ん坊を茹でるわけないだろ
でも真っ赤だぞ
赤いから赤ん坊って言うんだ
生意気そうな面をしてるね
あら、可愛いな
このやろう
竹さん、この子お人形さんみたいだね
嬉しいこと言ってくれるね
そんなに可愛いか
そうじゃないんだ
お腹押すと音がするんだよ
おい!!死んじゃうよ!!!
この手は紅葉みたいな手をしてるな
そこで止めといておくれよ
それは嬉しかった
でもその後を言うとしくじるから何も言うな
いや大丈夫だよ
でも末にはろくな者にはならないだろうな
それが駄目なんだよ
でも分かるのか?
こんなに小さい手をして俺から祝を取りやがって
変な事を言うなよ
返すよ
返さなくってもいいよ
時に竹さん
なんだよ
口調が変わったな
こちらはあなたのお子さんですか?
・・・・改まって聞くなよ
俺の子だって信じたいよ
道理でお顔が福袋じゃなくって福々しい
この額の、、額が出っ張ったところ鼻が寝そべってあぐらかいた所
お前にそっくりだな
目元が落ち込んで、口元に締まりがないところは女将さんにそっくりだ
総体を見まわしますと先年お亡くなりなりましたおじいさんに似て
お前はさっきおじいさん見ただろ
あっそうだ生きてるんだっけ
私もこういうお子さんに蚊帳つりたい、首つりたいっと
はぁ・・・嬉しい?
ほめてくれないなら帰れよ!
怒られたね
奥の手が在った
竹さん、このお子さんはお幾つになりました
何しに来たんだ
生まれて今日で七日目
始めに言っておくが初七日じゃないぞ
お七夜、数えで一つだ
この子が一つ
大層お若く見えますな
やってられないよ
馬鹿馬鹿しくって
どのくらいに見えるか聞いてくれよ
・・・どのくらいに見える
どう見ても半分です
新潮落語倶楽部 1 柳家喬太郎 子ほめ/喜劇駅前結社/家見舞/寿司屋水滸伝 [ 柳家喬太郎 ]
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2017年10月20日
へっつい幽霊
この分だととてもしょうがねぇと思っていたら
わずかな銭でトントンと値が出てきやがった
大儲けしちゃったぜ
だらか博打って止められないなぁ
・
こう懐が温かくなってみるとこれも、下らなく使ったらつまらないな
そうだ、俺の所にも友達が来るけど殺風景でいけないな
良い茶箪笥や箪笥が在ると引き立つものだ
台所もそうだよ良い米櫃やへっついの良いのが在ると引き立つけどな
そうだ、俺の所のへっついは馬鹿に悪いや
あそこでへっついを買って帰るかな
ごめんよ
へい、いらっしゃいまし
へっついを一つ欲しいんだけどな
どうぞご覧くださいまし
そこにあるへっついはいくらだ?
それはどうも、いい出来で御座いまして二両二分で御座います
値も良いんだな
そっちのほうは?
こちらはちょっとお安くなりまして二分二朱
でもちょっと出来が悪すぎるな
おい、そっちに良いへっついが在るじゃないか
これはあつらえだろうな
あぁこれはいけません
なんだい?
買い手が決まっているのか?
そうじゃないんですよ
このへっついばかりはお願いできないんですよ
売らないわけではないんですけどね
これだけのいい出来ですからすぐ買い手が付くのですが二〜三日すると戻させる
こっちも半値で引き取って店に並べておくとまた買い手がつくけどまた戻される
どうも変な噂が立ちましてね
あのへっついには幽霊でるとかなんとか
こっちも気味が悪いのでね壊してしまおうと思っておりまして
そうか
でも気に入ったな
値と相談して貰おうじゃないか
いやぁ、また返されたら困りますので
返しっこないよ
変なへっついなら壊していいなら俺が壊すよ
そうですか
それほどご執心ならただで差し上げますよ
お宅に持ち込みましょう
その代りにお返しになったら困りますからね
タダでくれるのか!
いやぁ返しっこないよ
これはすまないなぁ
お宅は・・・へい、畏まりました。
早速お届けに参りますので
断っておきますけどね、しょっちゅう返される品物ですから
ろくな品物では御座いませんよ
心配するなよ
承知しているよ
ご苦労さん、すまないな
この所に置いてくれよ
あと今使っているへっついは要らないから引き取ってくれ
じゃこれはほんのわずかだけど運び賃だ持ってってくれ
どうもご苦労さん
・
・
これで台所は立派になった
良いへっついだ
・
博打をやれば儲かるし、へっついを買いに行けばタダでくれるし
これで箪笥を買えばお金を付けてくれたりしてな
どうも畳もいけないから明日は畳を入れ替えようか
風呂に入ってくるか
風呂から出ますとお酒を飲み、行灯の下でごろりと横になりました
だけどなんだな
あぁやってへっついをタダでくれるんだからなんか在るんだろうな
幽霊が出るとか何とか言ってたな
へっついに幽霊って・・・
・
・
ぁあなんか嫌な心地だな
・
・
おや?台所がぽぉっと明るくなってきた
なんだ
・
おい出やがった幽霊だ
なるほど出るんだな
恨めしぃ
何?
恨めしぃ
何を言ってやがるんだ
俺はお前に恨みを買った覚えはないぞ!
・・・・ごもっともです
いや、別にあなたに恨みが在って恨めしぃって言った訳ではないんです。
これは幽霊の枕詞でして
お気に障ったらご勘弁してください
なんだよ
愛嬌のある幽霊だな
何だって出てきた
親方、あなたは気丈夫ですな
度胸がありますね
どうして?
私はね
こうやって幽霊になって出ますけど大概の人は
青い火を見ただけでびっくりして腰を抜かしたりするんですよ
私の姿を見た人なんか気を抜かしてしまいます
言いたいことが在るので出てきてるのですがねぇ話をすることが出来ない
親方は私の姿を見ても驚かない
何言ってやがるんだ
まぁ話せば長いのですが
実は私は元左官屋をしておりまして名前を半次と言います
私は三度の飯より博打が大好きなんですよ
おぉそうかい
俺も博打が大好きなんだ
親方、おやめなさい
博打で大豪邸なんか築けませんよ
幽霊に小言なんかされる筋合いはないよ
それでなんだ?
私はね、しょっちゅう土場に出入りしておりまして
家族をはじめ親戚中、みんなから愛想が付かされまして
相手をしてくれなくなりました。
・
わずかばかりの金で百三十両の金が手に入ったですよ
有頂天になってしまったのですが、わずかな銭で百三十両もとれるんだ
これは博打なんかやるもんじゃないなっと思いましてね
私は一人者でしまう所がありません
左官ですからへっついをこしらえまして、そのへっついに百両を塗り込んだんですよ
あとの三十両で飲み食いしてたんですよ
・
でも悪い事って出来ないもんですね
罰ですかね、往来の真ん中で頓死をしっちゃったんですよ
どこの者か分からないっと言うことで下らない所に埋められてしまいました
そうなってみると私も浮かぶこともできません
地獄の沙汰もなんていうけれども、あの百両が在ったらと思いまして
寺に納めて有り難いお経でもあれば私も浮かばれると思いまして
そのことを話そうとして出るのですが皆さん話を聞いてくれません
親方すみませんが、へっついに埋めた百両を出していただけませんか?
そうかぁ、百両の金に気を残りして幽霊として出るんだな
別に出してもいいけどな俺もタダで買った訳じゃないんだ
高い金を払ったんだから、そこの所を分かってほしいな
へへへへ、冗談を言っちゃいけませんよ
親方それタダ貰ったんじゃありませんか
知ってるのか?
知ってますよ
だけど貰えば俺の物じゃないか
壊そうが何をしようが俺のかってだ
どうだ、長い短いの言わない半分の五十両を俺にくれるか
五十両・・親方それはないでしょ
もう少し何とかなりませんか
何言ってるんだ
五十両じゃなかったら俺は壊さないよ
お前がどこに化け出ても俺みたいに話を聞いてくれる奴がいればいいんだけどな
いなければ目をまわされたり、気を失ったりする奴等ばかりでどうすることも出来ないぞ
え!どうだ?
そうですねぇ
親方の仰る通りで半分っこにしますので
よし、分かった
どこだ?
・
・
ここの隅っこの方か?
・
暗くってわからないなぁ
お前が出てくる時に出したあの火の玉で照らしてくれ
そうはいかないんですよ
あれは幽霊の規則で出るときにしか出したらいけないんですよ
何言ってるんだ
もう少しで出るからな
あぁそこです、金づちで強く殴って下さい
・
・
あぁ、出ました!
それです!!
なるほどお前の言う通りだ
出てきた
百両ある、これに気を残して出て来たんだな
えぇこれです
泣くなよ
じゃ約束だから五十両貰うぞ
あとはお前のだから持っていけ
これでねぇ百とまとまっていたらなぁ
五十両じゃ半端ですからな
いまさら何言ってるんだ約束しただろ
約束しましたけどねぇ
どうでしょう
運試しで勝負しませんか?
勝負?
気に入った勝負しようじゃないか
これでねもし私が買ったら親方
幽霊に負けるようじゃ運が無いんです
博打なんかやめてしまいなさい
それもそうだな幽霊に負けるようじゃなぁ
お前の言う通りに博打なんかやめようじゃないか
サイコロはいつだって持ってるんだ
懐かしいですな
親方、ちょっとサイコロを私に振らせてください
やってみな
恐れいります
・
・
丁とでました
・
・
今度は半ですね
・
・
よく目が変わりますね
おい、サイコロを転がすなら手を上に向けて転がせよ
そういう訳にはいかないんですよ
幽霊の決まり事でこの手を上に向けることが出来ないんです
じゃいいか
壺皿がないから湯飲み茶わんでやるぞ
さぁ入れてみるぜ
・
・
良いな?
・
どうだ?入るよ
・
・
さぁどっちに張る
私はね左官の半次って言うくらいですからね
半しか張らないんですよ
半と行きます
じゃ俺は丁だよ
いくら張る?
一両も張るか?
そんなちびちび張っていたんじゃだめですよ
私は明るくなったら帰らなくっちゃ行けないんです
早いところ勝負しないと
五十両全部張ります
五十両張るのか、よし気に入った!
お前は半だな、俺は丁だ
五十両だ、勝負になるからな
良いか?
・
・
勝負
・
・
気の毒だな
五三の丁と出た
はぁ
丁ですか
丁だと思った・・・
おい、幽霊ががっかりするなよ
すまないけどなこれは俺が貰うぞ
へぇ
親方、すまないけどもう一番勝負をお願いします
おい、それはよそうぜ
お前に金が無いのは分かってるんだよ
それは勝負できないだろ
いやぁ私も幽霊
決して足は出しませんよ
わずかな銭でトントンと値が出てきやがった
大儲けしちゃったぜ
だらか博打って止められないなぁ
・
こう懐が温かくなってみるとこれも、下らなく使ったらつまらないな
そうだ、俺の所にも友達が来るけど殺風景でいけないな
良い茶箪笥や箪笥が在ると引き立つものだ
台所もそうだよ良い米櫃やへっついの良いのが在ると引き立つけどな
そうだ、俺の所のへっついは馬鹿に悪いや
あそこでへっついを買って帰るかな
ごめんよ
へい、いらっしゃいまし
へっついを一つ欲しいんだけどな
どうぞご覧くださいまし
そこにあるへっついはいくらだ?
それはどうも、いい出来で御座いまして二両二分で御座います
値も良いんだな
そっちのほうは?
こちらはちょっとお安くなりまして二分二朱
でもちょっと出来が悪すぎるな
おい、そっちに良いへっついが在るじゃないか
これはあつらえだろうな
あぁこれはいけません
なんだい?
買い手が決まっているのか?
そうじゃないんですよ
このへっついばかりはお願いできないんですよ
売らないわけではないんですけどね
これだけのいい出来ですからすぐ買い手が付くのですが二〜三日すると戻させる
こっちも半値で引き取って店に並べておくとまた買い手がつくけどまた戻される
どうも変な噂が立ちましてね
あのへっついには幽霊でるとかなんとか
こっちも気味が悪いのでね壊してしまおうと思っておりまして
そうか
でも気に入ったな
値と相談して貰おうじゃないか
いやぁ、また返されたら困りますので
返しっこないよ
変なへっついなら壊していいなら俺が壊すよ
そうですか
それほどご執心ならただで差し上げますよ
お宅に持ち込みましょう
その代りにお返しになったら困りますからね
タダでくれるのか!
いやぁ返しっこないよ
これはすまないなぁ
お宅は・・・へい、畏まりました。
早速お届けに参りますので
断っておきますけどね、しょっちゅう返される品物ですから
ろくな品物では御座いませんよ
心配するなよ
承知しているよ
ご苦労さん、すまないな
この所に置いてくれよ
あと今使っているへっついは要らないから引き取ってくれ
じゃこれはほんのわずかだけど運び賃だ持ってってくれ
どうもご苦労さん
・
・
これで台所は立派になった
良いへっついだ
・
博打をやれば儲かるし、へっついを買いに行けばタダでくれるし
これで箪笥を買えばお金を付けてくれたりしてな
どうも畳もいけないから明日は畳を入れ替えようか
風呂に入ってくるか
風呂から出ますとお酒を飲み、行灯の下でごろりと横になりました
だけどなんだな
あぁやってへっついをタダでくれるんだからなんか在るんだろうな
幽霊が出るとか何とか言ってたな
へっついに幽霊って・・・
・
・
ぁあなんか嫌な心地だな
・
・
おや?台所がぽぉっと明るくなってきた
なんだ
・
おい出やがった幽霊だ
なるほど出るんだな
恨めしぃ
何?
恨めしぃ
何を言ってやがるんだ
俺はお前に恨みを買った覚えはないぞ!
・・・・ごもっともです
いや、別にあなたに恨みが在って恨めしぃって言った訳ではないんです。
これは幽霊の枕詞でして
お気に障ったらご勘弁してください
なんだよ
愛嬌のある幽霊だな
何だって出てきた
親方、あなたは気丈夫ですな
度胸がありますね
どうして?
私はね
こうやって幽霊になって出ますけど大概の人は
青い火を見ただけでびっくりして腰を抜かしたりするんですよ
私の姿を見た人なんか気を抜かしてしまいます
言いたいことが在るので出てきてるのですがねぇ話をすることが出来ない
親方は私の姿を見ても驚かない
何言ってやがるんだ
まぁ話せば長いのですが
実は私は元左官屋をしておりまして名前を半次と言います
私は三度の飯より博打が大好きなんですよ
おぉそうかい
俺も博打が大好きなんだ
親方、おやめなさい
博打で大豪邸なんか築けませんよ
幽霊に小言なんかされる筋合いはないよ
それでなんだ?
私はね、しょっちゅう土場に出入りしておりまして
家族をはじめ親戚中、みんなから愛想が付かされまして
相手をしてくれなくなりました。
・
わずかばかりの金で百三十両の金が手に入ったですよ
有頂天になってしまったのですが、わずかな銭で百三十両もとれるんだ
これは博打なんかやるもんじゃないなっと思いましてね
私は一人者でしまう所がありません
左官ですからへっついをこしらえまして、そのへっついに百両を塗り込んだんですよ
あとの三十両で飲み食いしてたんですよ
・
でも悪い事って出来ないもんですね
罰ですかね、往来の真ん中で頓死をしっちゃったんですよ
どこの者か分からないっと言うことで下らない所に埋められてしまいました
そうなってみると私も浮かぶこともできません
地獄の沙汰もなんていうけれども、あの百両が在ったらと思いまして
寺に納めて有り難いお経でもあれば私も浮かばれると思いまして
そのことを話そうとして出るのですが皆さん話を聞いてくれません
親方すみませんが、へっついに埋めた百両を出していただけませんか?
そうかぁ、百両の金に気を残りして幽霊として出るんだな
別に出してもいいけどな俺もタダで買った訳じゃないんだ
高い金を払ったんだから、そこの所を分かってほしいな
へへへへ、冗談を言っちゃいけませんよ
親方それタダ貰ったんじゃありませんか
知ってるのか?
知ってますよ
だけど貰えば俺の物じゃないか
壊そうが何をしようが俺のかってだ
どうだ、長い短いの言わない半分の五十両を俺にくれるか
五十両・・親方それはないでしょ
もう少し何とかなりませんか
何言ってるんだ
五十両じゃなかったら俺は壊さないよ
お前がどこに化け出ても俺みたいに話を聞いてくれる奴がいればいいんだけどな
いなければ目をまわされたり、気を失ったりする奴等ばかりでどうすることも出来ないぞ
え!どうだ?
そうですねぇ
親方の仰る通りで半分っこにしますので
よし、分かった
どこだ?
・
・
ここの隅っこの方か?
・
暗くってわからないなぁ
お前が出てくる時に出したあの火の玉で照らしてくれ
そうはいかないんですよ
あれは幽霊の規則で出るときにしか出したらいけないんですよ
何言ってるんだ
もう少しで出るからな
あぁそこです、金づちで強く殴って下さい
・
・
あぁ、出ました!
それです!!
なるほどお前の言う通りだ
出てきた
百両ある、これに気を残して出て来たんだな
えぇこれです
泣くなよ
じゃ約束だから五十両貰うぞ
あとはお前のだから持っていけ
これでねぇ百とまとまっていたらなぁ
五十両じゃ半端ですからな
いまさら何言ってるんだ約束しただろ
約束しましたけどねぇ
どうでしょう
運試しで勝負しませんか?
勝負?
気に入った勝負しようじゃないか
これでねもし私が買ったら親方
幽霊に負けるようじゃ運が無いんです
博打なんかやめてしまいなさい
それもそうだな幽霊に負けるようじゃなぁ
お前の言う通りに博打なんかやめようじゃないか
サイコロはいつだって持ってるんだ
懐かしいですな
親方、ちょっとサイコロを私に振らせてください
やってみな
恐れいります
・
・
丁とでました
・
・
今度は半ですね
・
・
よく目が変わりますね
おい、サイコロを転がすなら手を上に向けて転がせよ
そういう訳にはいかないんですよ
幽霊の決まり事でこの手を上に向けることが出来ないんです
じゃいいか
壺皿がないから湯飲み茶わんでやるぞ
さぁ入れてみるぜ
・
・
良いな?
・
どうだ?入るよ
・
・
さぁどっちに張る
私はね左官の半次って言うくらいですからね
半しか張らないんですよ
半と行きます
じゃ俺は丁だよ
いくら張る?
一両も張るか?
そんなちびちび張っていたんじゃだめですよ
私は明るくなったら帰らなくっちゃ行けないんです
早いところ勝負しないと
五十両全部張ります
五十両張るのか、よし気に入った!
お前は半だな、俺は丁だ
五十両だ、勝負になるからな
良いか?
・
・
勝負
・
・
気の毒だな
五三の丁と出た
はぁ
丁ですか
丁だと思った・・・
おい、幽霊ががっかりするなよ
すまないけどなこれは俺が貰うぞ
へぇ
親方、すまないけどもう一番勝負をお願いします
おい、それはよそうぜ
お前に金が無いのは分かってるんだよ
それは勝負できないだろ
いやぁ私も幽霊
決して足は出しませんよ
志の輔らくごのごらく2 「へっつい幽霊」「雛鍔」 [ 立川志の輔 ]
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2017年10月19日
ろくろっ首
こっちへ入りな
誰だよそこから覗いているは?
・・・なんだ与太郎じゃないか
おじさん
こんにちは
おう、こんにちは
今までなお前のお袋がここに来ていたんだぞ
そうかい
お前のこと言って涙してたぞ
おじさん
俺は女を泣かせるようになったのかな
なに言ってんだ・・・
しっかりしないといけないぞ!
兄貴は嫁を貰ったそうだな
その事なんだけどおじさん
兄貴は嫁さんもらって嫁は兄貴のこと兄貴って言わねぇんだよ
「あなたや」って言うんだよ。あはははは
するとね兄貴はね嫁のことをね「おみつ」って言うんだよ
あなたや。おみつや。あなたや。おみつや。あなたや
うるせぇな、そりゃ夫婦だ
そう言うだろ
でね、、おまんま食べる時
「もう一杯食べようかな」なんて相談してやんの。そうするとね
「お上がんなさいよ」
「でも、よそうかな」
「そんなこと言わないでお上がんなさいよ」
「じゃそうしようかな」ってぎゃはははあ
それを見てね俺はお袋と食べているとぞーっとするんだ
なんだってぞーっとするんだ?
お袋の口を見ると箱庭のトンネルみたいな口している
それはお前を育てるのに苦労して歯が抜けたんだろ
馬鹿野郎、ありがたいと思いなさい
それでね俺は兄貴みたいにお袋を安心させたいんだよ
おぉ偉いな
ばぁさんや、やっぱり歳だな
いくつになった?
あっは、、にじゅうになった
それは二十歳(はたち)って言うんだよ
兄貴のようにって言ったって、兄貴は職人で
腕に職をつけるのはすぐに出来るもんじゃねぇぞ
俺は職人はやだ
商人はもっともっと難しいぞ
商人はいやだよ
お勤めしようって言うのか?
お勤めはいやだよ
じゃどうするんだ?
どうするんだってよ
おじさん・・
兄貴たちはね「おみつや」「あなたや」ってね
何べん言うんだよ
そりゃ夫婦だもんそう言うだろ
だからね、、えへへへぇ
おじさん、おばさんがそこに居るとちょっと恥ずかしいんだ
ったく、相談を持ってきたんだと
お隣にでも行っていなさい
さぁ隣に行ったよ
おじさん他に言っちゃだめだよ
あのね兄貴のようにね。。おかみさんを貰いたい
・・・・おい! ばぁさん!ばぁさん!
やっぱ年頃だな。
かみさんが欲しいんだってよ
与太郎、お前みたいな馬鹿野郎なんてかみさんの貰い手なんてねぇよ
いやーそう言っちまったら話にない
本当に誰もいなかったらお鈴でもいいや
なに?お鈴・・
あれはおめぇの妹だろ
そのほうが内輪で済むだろう
兄弟同士で夫婦になれるか
うちはお父さんとお母さんで夫婦だ
話にならないなこいつは・・・
えっ?何お屋敷に・・
ばあさぁん、そうか上手いこと考えたな
与太郎、養子の口があるがどうだ?
いやぁいけねぇよ・・・
「小糠三合あったら婿に行くな」って言うからなぁ
ど。。っどこでそんな難しいこと聞いてきた??
お前なんぞ、喜んで養子に行かなきゃいけないぞ
麹町のさるお屋敷だ
うわぁい!サルが何匹いるんだ?
猿がいるんじゃねぇ。
あるお屋敷でな・・・。このお嬢様には身がないんだ
居るのは、ばあやが一人。それに奉公人。
お前さんが行けばそこのご主人だ
そのお嫁さんはいくつだ?
人並みのこと言ってやがる
ばぁさんお幾つになりなさる?
・・二十二、あぁ若く見えるな
器量はどうだ??
・・・人並み以上だよ!綺麗な人だ
あぁ!!そうかぁぁあ
俺のことは「あなたや」って言うかな?
そりゃまぁ夫婦だからな
こっちからお願いしやってもかまわないぞ
それじゃ参りましょうか!!!
おいおいおい与太!
どこ行くんだ?!
お屋敷へ
知っているのか?
しらねぇ
馬鹿、、
こっちへ来い、まったく
まぁ座れ
お前に言っておかないといけないことがあってな
このお嬢様には傷があるぞ
お嬢様のお休みになるところには電気も無ければガスも無い
暗やみか
暗闇じゃない、古風なんだな
ぼんぼりがあって、そこに油が入ってぼっーっと・・・
そこお休みなる
・・・夜のなぁ、一二時はまだ何ともないがな
二時の時計が鳴るとな、、、
お嬢様の首が伸びるとぼんぼりの中の油を・・・・
ぶるうわぁぁぁあ!!!!!
ろくろくろくろくろくろくろくろ、、ろくろっ首だ!!!!!!!!
馬鹿野郎!でかい声出すな!
昔から言う因果物だな
ろくろ首だ
おれぁ。。。嫌だよそんなとこには行きたくねぇ
ろくろっ首は勘弁してくれよ
話をするのに首をたぐらないといけない
凧じゃねぇよ
だってお前は夜寝ると何にしても起きないって
お前のお袋が言っていたぞ
そうなんだよ
寝ちゃうと隣で火事があっても知らない
じゃあ大丈夫だろ
寝ているうちに元通りに首が戻る
本当に寝ているうちに首が戻るね??
それじゃ参りましょうか
縁というの物は不思議なもので吉日を選んで婿になる日が決まりました。
無事式が終わって、ごろりと横になる、
いくら馬鹿でも寝床が変わると寝苦しく
あぁそうかお婿さんに来たんだ
いい女だな。えへ隣で寝ているよ
肩にを手をかけようとするっと途端に!
二時の時計の金が鳴り始め、首が突然伸び始めました
驚いたのは与太郎
だぁぁああああああ!!!!!!
おじさんおじさんおじさんおじさん!!!!!!ドンドンドンドンドン
馬鹿野郎だな
何だって言うんだよ?
のっのののの、、、伸び始めました!!!
こっちに入れ、扉しめて
近所でびっくりするだろ
伸びましたって言ってあるだろ?
あるって言っても初日から伸びるなんて
初日も二日もねぇよ
お前なぁ・・・・帰ってきたところをみると
相手方に申し訳なくおじさんは腹を切らないといけないぞ!
おじさんの腹だから切っておくれ
何言ってやがる
お前どうするつもりだ?
どうするって俺はお袋のところに戻ります
お袋のところに行くって言ってもなぁ
与太郎が初めての縁談がまとまって今頃お前がどうしているかって
お前の安否を首をながぁ〜くして待っている
えええええ!!
うちのお袋もろくろっ首になったのか・・・
誰だよそこから覗いているは?
・・・なんだ与太郎じゃないか
おじさん
こんにちは
おう、こんにちは
今までなお前のお袋がここに来ていたんだぞ
そうかい
お前のこと言って涙してたぞ
おじさん
俺は女を泣かせるようになったのかな
なに言ってんだ・・・
しっかりしないといけないぞ!
兄貴は嫁を貰ったそうだな
その事なんだけどおじさん
兄貴は嫁さんもらって嫁は兄貴のこと兄貴って言わねぇんだよ
「あなたや」って言うんだよ。あはははは
するとね兄貴はね嫁のことをね「おみつ」って言うんだよ
あなたや。おみつや。あなたや。おみつや。あなたや
うるせぇな、そりゃ夫婦だ
そう言うだろ
でね、、おまんま食べる時
「もう一杯食べようかな」なんて相談してやんの。そうするとね
「お上がんなさいよ」
「でも、よそうかな」
「そんなこと言わないでお上がんなさいよ」
「じゃそうしようかな」ってぎゃはははあ
それを見てね俺はお袋と食べているとぞーっとするんだ
なんだってぞーっとするんだ?
お袋の口を見ると箱庭のトンネルみたいな口している
それはお前を育てるのに苦労して歯が抜けたんだろ
馬鹿野郎、ありがたいと思いなさい
それでね俺は兄貴みたいにお袋を安心させたいんだよ
おぉ偉いな
ばぁさんや、やっぱり歳だな
いくつになった?
あっは、、にじゅうになった
それは二十歳(はたち)って言うんだよ
兄貴のようにって言ったって、兄貴は職人で
腕に職をつけるのはすぐに出来るもんじゃねぇぞ
俺は職人はやだ
商人はもっともっと難しいぞ
商人はいやだよ
お勤めしようって言うのか?
お勤めはいやだよ
じゃどうするんだ?
どうするんだってよ
おじさん・・
兄貴たちはね「おみつや」「あなたや」ってね
何べん言うんだよ
そりゃ夫婦だもんそう言うだろ
だからね、、えへへへぇ
おじさん、おばさんがそこに居るとちょっと恥ずかしいんだ
ったく、相談を持ってきたんだと
お隣にでも行っていなさい
さぁ隣に行ったよ
おじさん他に言っちゃだめだよ
あのね兄貴のようにね。。おかみさんを貰いたい
・・・・おい! ばぁさん!ばぁさん!
やっぱ年頃だな。
かみさんが欲しいんだってよ
与太郎、お前みたいな馬鹿野郎なんてかみさんの貰い手なんてねぇよ
いやーそう言っちまったら話にない
本当に誰もいなかったらお鈴でもいいや
なに?お鈴・・
あれはおめぇの妹だろ
そのほうが内輪で済むだろう
兄弟同士で夫婦になれるか
うちはお父さんとお母さんで夫婦だ
話にならないなこいつは・・・
えっ?何お屋敷に・・
ばあさぁん、そうか上手いこと考えたな
与太郎、養子の口があるがどうだ?
いやぁいけねぇよ・・・
「小糠三合あったら婿に行くな」って言うからなぁ
ど。。っどこでそんな難しいこと聞いてきた??
お前なんぞ、喜んで養子に行かなきゃいけないぞ
麹町のさるお屋敷だ
うわぁい!サルが何匹いるんだ?
猿がいるんじゃねぇ。
あるお屋敷でな・・・。このお嬢様には身がないんだ
居るのは、ばあやが一人。それに奉公人。
お前さんが行けばそこのご主人だ
そのお嫁さんはいくつだ?
人並みのこと言ってやがる
ばぁさんお幾つになりなさる?
・・二十二、あぁ若く見えるな
器量はどうだ??
・・・人並み以上だよ!綺麗な人だ
あぁ!!そうかぁぁあ
俺のことは「あなたや」って言うかな?
そりゃまぁ夫婦だからな
こっちからお願いしやってもかまわないぞ
それじゃ参りましょうか!!!
おいおいおい与太!
どこ行くんだ?!
お屋敷へ
知っているのか?
しらねぇ
馬鹿、、
こっちへ来い、まったく
まぁ座れ
お前に言っておかないといけないことがあってな
このお嬢様には傷があるぞ
お嬢様のお休みになるところには電気も無ければガスも無い
暗やみか
暗闇じゃない、古風なんだな
ぼんぼりがあって、そこに油が入ってぼっーっと・・・
そこお休みなる
・・・夜のなぁ、一二時はまだ何ともないがな
二時の時計が鳴るとな、、、
お嬢様の首が伸びるとぼんぼりの中の油を・・・・
ぶるうわぁぁぁあ!!!!!
ろくろくろくろくろくろくろくろ、、ろくろっ首だ!!!!!!!!
馬鹿野郎!でかい声出すな!
昔から言う因果物だな
ろくろ首だ
おれぁ。。。嫌だよそんなとこには行きたくねぇ
ろくろっ首は勘弁してくれよ
話をするのに首をたぐらないといけない
凧じゃねぇよ
だってお前は夜寝ると何にしても起きないって
お前のお袋が言っていたぞ
そうなんだよ
寝ちゃうと隣で火事があっても知らない
じゃあ大丈夫だろ
寝ているうちに元通りに首が戻る
本当に寝ているうちに首が戻るね??
それじゃ参りましょうか
縁というの物は不思議なもので吉日を選んで婿になる日が決まりました。
無事式が終わって、ごろりと横になる、
いくら馬鹿でも寝床が変わると寝苦しく
あぁそうかお婿さんに来たんだ
いい女だな。えへ隣で寝ているよ
肩にを手をかけようとするっと途端に!
二時の時計の金が鳴り始め、首が突然伸び始めました
驚いたのは与太郎
だぁぁああああああ!!!!!!
おじさんおじさんおじさんおじさん!!!!!!ドンドンドンドンドン
馬鹿野郎だな
何だって言うんだよ?
のっのののの、、、伸び始めました!!!
こっちに入れ、扉しめて
近所でびっくりするだろ
伸びましたって言ってあるだろ?
あるって言っても初日から伸びるなんて
初日も二日もねぇよ
お前なぁ・・・・帰ってきたところをみると
相手方に申し訳なくおじさんは腹を切らないといけないぞ!
おじさんの腹だから切っておくれ
何言ってやがる
お前どうするつもりだ?
どうするって俺はお袋のところに戻ります
お袋のところに行くって言ってもなぁ
与太郎が初めての縁談がまとまって今頃お前がどうしているかって
お前の安否を首をながぁ〜くして待っている
えええええ!!
うちのお袋もろくろっ首になったのか・・・
2017年10月16日
杭か、泥棒か?
ちょいとお前さん起きてくれよ
なんだい?
なんだいじゃないよ
泥棒が入ったようだよ
泥棒が、どこへ?
裏の方から
あぁ裏は開けてあったからな
台所でガタガタいってるよ
う〜ん、台所でか、
まぁ別に取られるものなんて無いんだからほっとけよ
そういう訳にはいかないでしょ
それにお勝手の物を取られたら不便だし困るよ
ネズミじゃないか?
ネズミじゃないよ
ネズミだろ
これを聞いた泥棒もしょうがないから
ちゅーちゅー
ちゅーちゅー
ほら、ネズミが鳴いているよ
ネズミだって
ネズミじゃないよもっと大きい音だったよ
猫かな?
にゃーあ、にゃーおう
ほら猫だよ
猫よりもっと大きい音だったよ
犬かな?
わん、わん、わん
ほら犬だよ
いえいえ、もっともっと大きい音だったよ
馬かな?
ヒィヒーン
違いますよ、もっと大きい音でしたよ
牛かな?
モーオ、モー
牛どころじゃないですよ、もっと大きかったです
キリンかな?
・・・・・・・・
泥棒先生はキリンの鳴きまねは出来ない
ばたばたっと裏から逃げ出して
ほら泥棒だ!!
庭に飛び出して、塀を乗り越えようとしたが高くって越すことが出来なかった
庭をぐるぐるしていたら小さな池が目に入った
この池に飛び込むと首だけだすと
おい、泥棒は池に飛び込んだようだ
暗くってわからない
あの松の枝が下がった在り、あれは杭(くい)かな?泥棒かな?
棒か何か探る物は無いか?
あぁそれを持ってきてくれ
これは杭か?!泥棒か?!杭か?!泥棒か?!
そう言われながら泥棒先生は殴られて切なくなってしまい
クイー、クイー・・・
なんだい?
なんだいじゃないよ
泥棒が入ったようだよ
泥棒が、どこへ?
裏の方から
あぁ裏は開けてあったからな
台所でガタガタいってるよ
う〜ん、台所でか、
まぁ別に取られるものなんて無いんだからほっとけよ
そういう訳にはいかないでしょ
それにお勝手の物を取られたら不便だし困るよ
ネズミじゃないか?
ネズミじゃないよ
ネズミだろ
これを聞いた泥棒もしょうがないから
ちゅーちゅー
ちゅーちゅー
ほら、ネズミが鳴いているよ
ネズミだって
ネズミじゃないよもっと大きい音だったよ
猫かな?
にゃーあ、にゃーおう
ほら猫だよ
猫よりもっと大きい音だったよ
犬かな?
わん、わん、わん
ほら犬だよ
いえいえ、もっともっと大きい音だったよ
馬かな?
ヒィヒーン
違いますよ、もっと大きい音でしたよ
牛かな?
モーオ、モー
牛どころじゃないですよ、もっと大きかったです
キリンかな?
・・・・・・・・
泥棒先生はキリンの鳴きまねは出来ない
ばたばたっと裏から逃げ出して
ほら泥棒だ!!
庭に飛び出して、塀を乗り越えようとしたが高くって越すことが出来なかった
庭をぐるぐるしていたら小さな池が目に入った
この池に飛び込むと首だけだすと
おい、泥棒は池に飛び込んだようだ
暗くってわからない
あの松の枝が下がった在り、あれは杭(くい)かな?泥棒かな?
棒か何か探る物は無いか?
あぁそれを持ってきてくれ
これは杭か?!泥棒か?!杭か?!泥棒か?!
そう言われながら泥棒先生は殴られて切なくなってしまい
クイー、クイー・・・
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タグ:泥棒
2017年10月15日
粗忽長屋(そこつながや)
何だよこれ?
凄い人だかりだね
・
ちょっとすみません、これ中は何ですか?
行き倒れだって
え?
いきたおれ・・
見たいなぁ
私も見たいと思っていますがなかなか前に行けなくってね
でもなぁ何とか中に入れないかな
そうですね
見物衆の股ぐらでもくぐって行けば中に行けるんじゃないかな
股ぐらをくぐるか
その手が在ったか
・
ちょっと御免なさいよ
・
・
おっと前に出てきた、、、って何もやってないじゃないか
・
どうも、こんにちは
何だね、この人はそんな所から顔を出したらいけませんよ
あなた達もそうだよ
見た人たちは代わって上げて、なるべく多くの人に見て貰いたい
聞きましたよ
生き倒れ
そうなんですよ
今から始まるんですか?
始まりはしないんだよ
倒れてるんだから
身元が分からなくって弱ってるんですよ
知ってる人か見てくれませんか?
見てもいいの
あら?見っともねぇな
おい、みんな見てるから起きなよ
起きないですよ
その人死んでますから
死んでるの?!
それじゃ死に倒れじゃん
生き倒れって
本当は行(ゆ)き倒れって言うんですよ
どうでもいいんですよ
書付一つ持ってないんで困ってるんです
知っているか見てくれません?
知っている人が死んでるってことが在るわけ・・・
・
・
うん?
・
・
あっ!!!熊の野郎だ!
知っている人ですか
知ってますよ
同じ長屋に住んでいるんです。
仲がいいんです
そうですか!
良かった
良かっただと、この野郎!
人が死んでるんだぞ!
そういう意味じゃないよ
それじゃとって帰って女将に知らせてあげてください
この野郎は独り者なんですよ
それじゃご家族の方は
身寄り便りがねぇんだ
気の毒だな
それじゃ大家さんという事になると思いますがね
いつまでも寝かせておく訳にはいかないんでねぇ
あなたは友達なんですよね
この人を引き取っておくれよ
え?あっしが?
こいつを引き取る?
引き取れって言われれば引き取れないわけではないけどな
なんかなぁ後から来たのに上手いこと言って持って行ったなんて言われたらなぁ
痛くもない腹を探られてもな
言っていることの意味が分からない
引き取っておくれよ
こうしましょう
ここに当人を連れて来ましょう
え?誰?
いえ、当人を連れて来ましょう
ごめん
分からない
当人って?
だから行き倒れの当人
何のことだ?
この野郎は普段からぼーっとしているんだ
観音様にお参りに誘ったんだけど今日を頭が痛いって
家でぼんやりしていますよ
さっき会ってるのか
じゃ違うよ
この人は昨夜から倒れているんだ
でしょ
ですから当人が来ないと駄目なんですよ
自分で死んだの知らないんですよ
行って来ます
ちょっとあなた!
なにあの人??
まったく世話をかけやがって
・
・
おぉい!熊!!
ドンドン
熊!!!
ドンドン
そそっかしいね、あいつは
ドンドンと戸袋を叩いて
熊の野郎も熊の野郎だ
顔を出してやればいいだろうに
呼んでんだから
・
・
あぁ??熊は俺だ
・
兄貴!そっちじゃない
こっちですよ
大変だ!
どうしたんです?
お前諦めろよ
え?急になんです?
俺はあそこに行ったんだ
どさくさじゃなくって、浅草のえっとあそこ
拝むところ
金毘羅様?
違う違う
あのっ観音様だ
お参り済まして帰ろうとしたら黒山の人だかり
中に入ってみたら行き倒れだよ
え
行き倒れ
あ、そうなんだ
上手くやりましたね
お前も分かってないな
見てくれって言うから見たけど
顔から着物まで同じだよ
諦めろよ
その諦めろと言う意味が分からない
どうしたの?
ここまで言って分からないかな
あのな、お前、今、浅草の観音様のわきで・・・・死んでるよ
・・・・俺が?
嘘だよぉ
だって死んだ気がしないよ
お前は一遍でも死んだことが在るのか?
不勉強でまだ死んだことが無いんだけどね
だったら死んだ気持なんか分からないだろ
昨夜どうしたんだ?
中を冷かして帰ろうとしてさ
馬道に屋台が出ていたんだよ
一杯ひっかけて四、五、まぁ五合は呑んだね
銭払ったまで覚えてるんだけど気が付いたら家に帰ってたんだよ
それが何よりの証拠じゃないか
悪い酒に当たって倒れたんだよ
それを死んだのを忘れて帰って来たんだろ
・・・かな?
だよ!
え、、、そう?
そうだよ
普段から酔っぱらったら気を付けろって言ってるだろ
あぁやっちゃったな
いまさら言ってもしょうがないよ
一緒に行くぞ
どこに?
死骸を引き取りにだよ
誰の?
お前のだよ
俺の?
いや、止そうよぉ
ほっとこうよ
今更これが俺の死骸ですってさぁ
何言ってるんだよ
向こうは困ってるんだから引き取りに行くぞ
これからもある事だから気を付けろよ
おぉみんなお前のことを見てる
・
・
ちょっと御免なさいよ
・
入って来いよ
自分の物だろ胸張って入って来いよ
・
どうも先ほどは
帰って来たよ
行ってみて分かったでしょ
違う人だったでしょ
何しろこいつは普段からぼーっとしてますからね
死んだような気がしないって強情を張ってまして
それから私は噛んで含めるように言い聞かせて連れてきました
・
こっちに来いよ
ちゃんと挨拶をしろ
すみません
悪気が無かったんですよ
なんか昨夜ここで死んだようでして
・・同じような人が増えたよ
あのね、あなたは死んでいないんですよ
いや、ほんとすみません
まぁ見てみて
いやなまじ死に目に会わない方が
何言ってるんだ
自分の死体だろうがいいから見ろよ
そうか
あっちゃぁ〜これは申し訳なかったなぁ
へぇこれが俺か?
そうだよ
俺にしたら面が長くないかな
夜露に当たって伸びたんだろ
そういう事もこともあるよね
ふぅん
・
・
着物の柄も大体同じだね
・
・
俺だ!!
そうだろ!
俺、、浅ましい姿になっちゃって
こんな事なら何か旨い物でも食べておけば良かった
今更言っても始まらないよ
お前は頭を持て俺は足の方を持ってやるから
兄貴すまない
人間どこでどんな災難に会うんだか
困っちゃうなこの人たちは
抱いてみて分からないの?
これはね、あなたじゃないんですよ
何を言ってるんです自分の物じゃないか
文句を入れる筋合いはないよ
でもね、兄貴、俺なんだか分からなくなっちゃった
何がだよ?
抱かれているのは確かに俺だが、抱いている俺はいったい誰だろう?
凄い人だかりだね
・
ちょっとすみません、これ中は何ですか?
行き倒れだって
え?
いきたおれ・・
見たいなぁ
私も見たいと思っていますがなかなか前に行けなくってね
でもなぁ何とか中に入れないかな
そうですね
見物衆の股ぐらでもくぐって行けば中に行けるんじゃないかな
股ぐらをくぐるか
その手が在ったか
・
ちょっと御免なさいよ
・
・
おっと前に出てきた、、、って何もやってないじゃないか
・
どうも、こんにちは
何だね、この人はそんな所から顔を出したらいけませんよ
あなた達もそうだよ
見た人たちは代わって上げて、なるべく多くの人に見て貰いたい
聞きましたよ
生き倒れ
そうなんですよ
今から始まるんですか?
始まりはしないんだよ
倒れてるんだから
身元が分からなくって弱ってるんですよ
知ってる人か見てくれませんか?
見てもいいの
あら?見っともねぇな
おい、みんな見てるから起きなよ
起きないですよ
その人死んでますから
死んでるの?!
それじゃ死に倒れじゃん
生き倒れって
本当は行(ゆ)き倒れって言うんですよ
どうでもいいんですよ
書付一つ持ってないんで困ってるんです
知っているか見てくれません?
知っている人が死んでるってことが在るわけ・・・
・
・
うん?
・
・
あっ!!!熊の野郎だ!
知っている人ですか
知ってますよ
同じ長屋に住んでいるんです。
仲がいいんです
そうですか!
良かった
良かっただと、この野郎!
人が死んでるんだぞ!
そういう意味じゃないよ
それじゃとって帰って女将に知らせてあげてください
この野郎は独り者なんですよ
それじゃご家族の方は
身寄り便りがねぇんだ
気の毒だな
それじゃ大家さんという事になると思いますがね
いつまでも寝かせておく訳にはいかないんでねぇ
あなたは友達なんですよね
この人を引き取っておくれよ
え?あっしが?
こいつを引き取る?
引き取れって言われれば引き取れないわけではないけどな
なんかなぁ後から来たのに上手いこと言って持って行ったなんて言われたらなぁ
痛くもない腹を探られてもな
言っていることの意味が分からない
引き取っておくれよ
こうしましょう
ここに当人を連れて来ましょう
え?誰?
いえ、当人を連れて来ましょう
ごめん
分からない
当人って?
だから行き倒れの当人
何のことだ?
この野郎は普段からぼーっとしているんだ
観音様にお参りに誘ったんだけど今日を頭が痛いって
家でぼんやりしていますよ
さっき会ってるのか
じゃ違うよ
この人は昨夜から倒れているんだ
でしょ
ですから当人が来ないと駄目なんですよ
自分で死んだの知らないんですよ
行って来ます
ちょっとあなた!
なにあの人??
まったく世話をかけやがって
・
・
おぉい!熊!!
ドンドン
熊!!!
ドンドン
そそっかしいね、あいつは
ドンドンと戸袋を叩いて
熊の野郎も熊の野郎だ
顔を出してやればいいだろうに
呼んでんだから
・
・
あぁ??熊は俺だ
・
兄貴!そっちじゃない
こっちですよ
大変だ!
どうしたんです?
お前諦めろよ
え?急になんです?
俺はあそこに行ったんだ
どさくさじゃなくって、浅草のえっとあそこ
拝むところ
金毘羅様?
違う違う
あのっ観音様だ
お参り済まして帰ろうとしたら黒山の人だかり
中に入ってみたら行き倒れだよ
え
行き倒れ
あ、そうなんだ
上手くやりましたね
お前も分かってないな
見てくれって言うから見たけど
顔から着物まで同じだよ
諦めろよ
その諦めろと言う意味が分からない
どうしたの?
ここまで言って分からないかな
あのな、お前、今、浅草の観音様のわきで・・・・死んでるよ
・・・・俺が?
嘘だよぉ
だって死んだ気がしないよ
お前は一遍でも死んだことが在るのか?
不勉強でまだ死んだことが無いんだけどね
だったら死んだ気持なんか分からないだろ
昨夜どうしたんだ?
中を冷かして帰ろうとしてさ
馬道に屋台が出ていたんだよ
一杯ひっかけて四、五、まぁ五合は呑んだね
銭払ったまで覚えてるんだけど気が付いたら家に帰ってたんだよ
それが何よりの証拠じゃないか
悪い酒に当たって倒れたんだよ
それを死んだのを忘れて帰って来たんだろ
・・・かな?
だよ!
え、、、そう?
そうだよ
普段から酔っぱらったら気を付けろって言ってるだろ
あぁやっちゃったな
いまさら言ってもしょうがないよ
一緒に行くぞ
どこに?
死骸を引き取りにだよ
誰の?
お前のだよ
俺の?
いや、止そうよぉ
ほっとこうよ
今更これが俺の死骸ですってさぁ
何言ってるんだよ
向こうは困ってるんだから引き取りに行くぞ
これからもある事だから気を付けろよ
おぉみんなお前のことを見てる
・
・
ちょっと御免なさいよ
・
入って来いよ
自分の物だろ胸張って入って来いよ
・
どうも先ほどは
帰って来たよ
行ってみて分かったでしょ
違う人だったでしょ
何しろこいつは普段からぼーっとしてますからね
死んだような気がしないって強情を張ってまして
それから私は噛んで含めるように言い聞かせて連れてきました
・
こっちに来いよ
ちゃんと挨拶をしろ
すみません
悪気が無かったんですよ
なんか昨夜ここで死んだようでして
・・同じような人が増えたよ
あのね、あなたは死んでいないんですよ
いや、ほんとすみません
まぁ見てみて
いやなまじ死に目に会わない方が
何言ってるんだ
自分の死体だろうがいいから見ろよ
そうか
あっちゃぁ〜これは申し訳なかったなぁ
へぇこれが俺か?
そうだよ
俺にしたら面が長くないかな
夜露に当たって伸びたんだろ
そういう事もこともあるよね
ふぅん
・
・
着物の柄も大体同じだね
・
・
俺だ!!
そうだろ!
俺、、浅ましい姿になっちゃって
こんな事なら何か旨い物でも食べておけば良かった
今更言っても始まらないよ
お前は頭を持て俺は足の方を持ってやるから
兄貴すまない
人間どこでどんな災難に会うんだか
困っちゃうなこの人たちは
抱いてみて分からないの?
これはね、あなたじゃないんですよ
何を言ってるんです自分の物じゃないか
文句を入れる筋合いはないよ
でもね、兄貴、俺なんだか分からなくなっちゃった
何がだよ?
抱かれているのは確かに俺だが、抱いている俺はいったい誰だろう?