松野博一官房長官(60)は23日に施行された同性婚カップルや性的少数派の理解を促す「LGBT理解増進法」に関し、女性用トイレなどで混乱が生じかねない不安の声などに言及した。同法は6月16日に参議院で賛成多数で正式に可決。成立まで7年かかった同法をめぐっては、性的少数者たちから「理解を広める法律ではなくて差別を助長しかねない」と指摘されている。
政府は性的少数者からの意見に耳を傾けながら内閣府に担当の部署を設け、理解を進める基本政策を行う方針だという。
しかし女性の性自認を主張する男性が、女性用トイレを利用すると「女性や女児の安全が脅かされるのではないか」と不安視されている。
松野氏は会見で「ご指摘の男性が女性と自称して女子トイレなどの行為については、現行法において適切に対応されるものと承知しています」と語った。
同法の目的は、すべての国民が性的指向または性自認にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向または性自認を理由とする差別の解消などの推進に関する基本的な事項などが定義されている。
罰則がないことに松野氏は「あくまでも理念法だ。施行によって従来の取り扱いが変わるものではない」と説明した。
一方、司法に詳しい立憲議員は松野氏の対応に「政府は法律の成立前にLGBT理解増進法施行についての指針を示し、国民に分かりやすく伝えるべきでした」と批判した上で「企業や学校などでの混乱を避けるための指針は、性的少数者や自治体の担当者が深く関わることが重要になってきます」と訴えた。
通常国会閉会直前に成立された同法をめぐっては、岸田政権のおひざ元の自民党内からも拙速な法制化に「現場が混乱する」と批判されている。