2008年09月25日
償い
人間って哀しいね
この「償い」という唄は、1982年に発売されたさださんの7枚目のアルバム「夢の轍(わだち)」に収録された曲です。先年に発売された「うつろひ」を最後にしばらくさださんのアルバムは買っていません。さださんには申し訳ないのですが、貸しレコード(1982年当時は、まだCDが出回っていませんでした(T_T))をカセットに録音して聴いていました。
「極光(オーロラ)」「人買」「前夜(ニッポニア・ニッポン)」「退職の日」を収録したこのアルバムは、僕にとって曲単体ではなくアルバムとして聴きたい作品の一つです。
このアルバムを聴いた当時、僕はまだ高校生でした。しかし、この「償い」という曲を初めて聴いた時の印象は、今まで僕が聴いてきた曲とは全く違う・・・なにか身に迫る緊張感があったことを今でも憶えています。
暗い・・という感じとは違う・・・「重い」といった感じでしょうか?
それまでの曲の中にも同じような感覚の曲はありました。しかし、この曲の重さはそれとは違っていました。なんというか・・・耳を塞ぎたいというか?・・そう、何故かは解らないのですが、無性に怖かったのだと思います。
その後、大きなトラックに乗るようになってから、さだファンの友達とこの曲について酒を呑みながら話したことがあります。彼はその時「なんか引っかかるよね」と言いました。僕も同感で、「どうしてだと思う?」といった話をしたと思います。
その時、彼がぽつりと言った一言
「人間って哀しいね」ってところかなぁ・・。
そう、まさしく僕もそうだったのです。
旦那さんを死なせてしまったという「償い」の気持ちを「仕送り」の形にして毎月郵便局へ通うゆうちゃん。人に「貯金が趣味のしみったれた奴」と云われようとも笑いながらも一人郵便局へと通う。
事故から7年が過ぎた後、被害者の奥さんから便りが届く
「もう仕送りは止めてください。それよりどうか、あなたの人生を元に戻してあげて欲しい」
そして「人間って哀しいね」の叫び(唄の中では叫んではいません)。
でも、叫んでいるようなイメージが僕にはあります。
−歌詩引用−
「人間って哀しいね、だってみんな優しい。それが傷つけあって庇いあって・・・。」
悲しいのは、『事故を起こしてしまった哀しみ・人を殺してしまった哀しみ・愛する亭主を殺された哀しみ・自分の中にある罪が消えない哀しみ・人の罪を許せない哀しみ・時間が経ってしまう哀しみ・それぞれが人間である哀しみ』
交通事故を起こすと行政・刑事・民事として裁かれます。行政は免許取り消し、刑事は懲役、そして民事は賠償責任。もちろん、社会的な制裁として職を無くすということもあるでしょう。しかし、人としての償いはその限りではありません。決して許される罪は無いのだと思います。
さださんの唄う「償い」は、人が人を許すという究極を唄っているのだと思います。
この唄は一度、世田谷三軒茶屋駅ホーム傷害致死事件の公判中に裁判長が引用したことで話題となったことがあります。裁判長もさださんの唄を聴いていたんですね(^^♪
しかし、もし加害者にまたは被害者になったとしたら・・・この唄の「ゆうちゃん」のような償いが僕に出来るのかどうか?そして、被害者の奥さんが言ったような「あなたの人生を・・・」という言葉を掛けるだけの勇気が持つことが出来るだろうか?
この唄は、人間としての業を理解した上で、僕達に「どうする?」という言葉を突きつけているのだと思います。普段、当たり前のように車を走らせ、人と話し、夢を語っている僕達ですが、いざ人を傷つけてしまったときに、逃げずに罪を償えるのか?
最近、「手紙」という日本映画を観ました。まさしくこの「償い」の世界だと思いました。
「当たり前に暮らせる毎日」がどれほどありがたいものか?今でもこの曲を聴く度に考えさせられています。
−09.2.17 追記−
▼YouTube動画【キミハ・ブレイクで放送された「償い」の動画】
キミハ・ブレイク 「償い」1/2
キミハ・ブレイク 「償い」2/2
キミハ・ブレイク 「償い」1/2
キミハ・ブレイク 「償い」2/2
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