2014年01月30日
ガヴァネス(女家庭教師)が主人公の名作
小説投稿サイトの、例えば 『小説家になろう』 などにアップされている小説を見ていると、舞台を中・近世ヨーロッパ風の異世界としているものは多い。
それで、そういう小説のなかには、例えばヴィクトリア時代のイギリスなどをモチーフにしたとおぼしき、執事やらメイドやらがキャラクターとして登場するパターンも多いのである。
やっぱり執事やらメイドやらのいる、ある種貴族的な、というかお金持ち的な生活に対するあこがれというものを、作者も読者も持っているからだろうと思われる。
まあ、それはいいのであるが、そういう類の小説を読んでいて少し不自然に感ずるところがいくつかある。
そのひとつは、その小説中に登場した貴族の家なり、お金持ちの家なりに、子供がいる場合の話である。
子供がいるということで、子供の世話を行う人物がキャラクターとして登場したりするわけである。
そして、その子供の世話をする人物なのであるが、作中では 『メイド』 と呼称され、一般の雑用を行うメイドと職務が未分化であったりして、そして世話をしている対象の子供に向かって敬語をつかったりして、やたら下手にでていたりするパターンが多いようにも見受けられるのである。
このことの何が不自然なのであるか?
私が思うに 『メイド』 が子供の世話をしていたり、その世話人が子供に対してやたら下手にでていたりする小説を書く人というのはおそらく 『ナニー(乳母)』 や 『ガヴァネス(女家庭教師)』 というものを知らないのではないかとも思う。
『ナニー(乳母)』 や 『ガヴァネス(女家庭教師)』というのは、字面を見たまんまに、家庭内での子供の世話をおもな職分とする人のことである。
というわけで、今日は、自分の書く小説中に『ナニー(乳母)』 や 『ガヴァネス(女家庭教師)』を登場させてみたい、ワナビの皆様のために良い資料を紹介しようと思う。
『メアリー・ポピンズ』 のシリーズと
『不機嫌なメアリー・ポピンズ』 という新書である。
そう、あのメアリー・ポピンズは 『ナニー(乳母)』 なのである。
『不機嫌なメアリー・ポピンズ』のほうでも解説されているのであるが、映画ではない原作小説のメアリー・ポピンズは、常に厳格で厳しい人物である。
だいたい不機嫌で、子供が悪いことをすると容赦なく叱り、めったに褒めず、非常に厳格で、下手に出るどころか、むしろ子供たちのほうがメアリー・ポピンズの顔色を窺っているのである。彼女が下手に出ることなどあり得ない。
この時代における子供というものは、未だ人間になりきっていない、人間未満のものとみなされる傾向があって、その人間未満の生き物をしつけることによって、人間にするという役割からして、子供たちに対して高圧的に振る舞うだけの権限を彼女は持っているのである。
貴族、メイド、執事、だけでなく、このような人物を小説中に取り入れることによって、ワナビの皆様の書く小説世界には、よりいっそうの深みが増す……かもしれない。
『ナニー(乳母)』 の資料はメアリー・ポピンズでいいとして 『ガヴァネス(女家庭教師)』 については、『不機嫌なメアリー・ポピンズ』でも多少の解説はあるが、他に、例えば小説などでは、既読のもので良い資料となる本がまだない。
また良いのを見つけたらあらためて紹介しようと思う。
風にのってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫 (2030)) 中古価格 |
不機嫌なメアリー・ポピンズ―イギリス小説と映画から読む「階級」 (平凡社新書) 中古価格 |
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