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2019年06月16日

昔の人だって高度な知識を持ってたんだぞ!


 今日、ご紹介したいのは『天地明察』冲方 丁 (著)という本である。

 
 なぜこの本を紹介したかったかというと、

 この本は吉川英治文学新人賞を受賞し、かつ本屋大賞も受賞しているほどの作品であるから、面白さはある程度保証されてるといってもよいくらいで、かつ自分で読んでみても結構面白かった.
 だから当ブログ読者の皆様にご紹介申し上げてもよろしかろう、というそういう一般的な理由もあるのであるが、それ以外にも当ブログの趣旨からして、この本をご紹介する理由があるんである。

 そうして、当ブログはワナビの皆様のために資料本とかオススメ本とかを紹介するブログであるから、それはもちろんワナビ的な視点からの理由になるのである。

 
 全日本のワナビの皆様にとって最もホットなサイトは何か?
 それはもちろん『小説家になろう』という小説投稿サイトであると当ブログは固く信じるものである。
 なぜかといえば小説家になろう経由で実際に小説家になり得た(商業本の出版に成功した)元ワナビ現小説家が100人200人単位でいるからである。


 そして、その小説家になろうのサイトにおいては、異世界トリップ系の小説が人気なのである。

 異世界トリップ系と小説というのは、現代社会で生きている主人公が、何らかの別世界にトリップして、そこで冒険するというような設定のお話のことである。
 小説家になろうのサイトで多いのは、いわゆる「中世ヨーロッパ風」というべき異世界に主人公がトリップする設定である。(中世ヨーロッパといいつつ実際の発展具合は近世ヨーロッパっぽい異世界を舞台にとる作品が多いようである)

 そしてそういうような設定にもさらに細かいジャンル分けがあって、その一つに「NAISEI系」というものがあるんである。


 これはどういうのかというと、現代の知識をもつ人間が、もっと遅れた、それこそ中世ヨーロッパなみの技術・知識水準の異世界にトリップし、現代では一般常識として当たり前になっている、ごく初歩の農業上の知識や公衆衛生上の知識を未開の現地住民にご披露し、その技術・知識格差をもって主人公が社会改革を行い、活躍するというような筋立てである。

 つまり「NAISEI」とは「内政」のことなんである。

 現代社会の知識でもって発展途上の異世界を「内政」する、とそういう意味なのであるね。
 まあ若干設定や展開に無理がある作品も多いので揶揄の意味をこめて?「NAISEI」と表記される由である。

 まあそういう話の筋立てはアリかもしれないと私は思う。

 なんでもそれこそ史実の中世ヨーロッパにおいては、細菌の概念がまだ存在しなかったので『ウ〇コ』がいかに汚いのかがまだよく理解されておらず、子供たちは『ウ〇コ』を若干臭いが楽しい遊び道具と見なしていたとか、水が伝染病を媒介すると信じられていたので、人々はほとんど風呂に入らなかったとか、瀉血が医療行為としてひろく行われていたとか、まあ社会の迷妄というのはあったのである。

 そこに現代の一般的知識を持った人物がトリップすれば、立場をうまく作れば、社会改革を行って現地住民を善導することは可能であろうかと思う。
 その過程にストーリー展開上のヨロコビを見出すことも可能であろう。



……がしかし、である。


 そのような設定の小説作品群のなかには、現代社会出身の主人公を容易に活躍させようとするあまり、現地住民の技術・知識レベルを異様なまでに低く設定する弊がある作品もあるのは事実である。

 私の以前読んだ作品には、現地住民が腐葉土とか肥料とかいう概念を知らず、そのため主人公が施肥によって農作物の収量を増大させて褒められるという展開があった。

 これはちょっと幾らなんでも現地住民ナメ過ぎではなかろうか。
 そもそも草木の灰ですら肥料になるのであって、日本であればその利用は鎌倉時代からあったそうで、そうであればそもそも肥料の概念を現地人が知らないというのは……と、これ以上はもうやめておくが、ネット小説界隈で話題になった『肉の両面焼き』に至っては何をかいわんやである。
 これについても詳述は避けるので詳しくは読者の皆様においてググっていただきたい。



 というわけで、当記事の枕部分が終わり、本題に入るのであるが、
 今回ご紹介する『天地明察』という作品は、簡単なあらすじを言うと、かつての日本では中国から輸入した暦を使っていたのであるが、これがどうもズレてきているようで、新たに暦を作らなければいけないということになり、数学者であり囲碁棋士でもあり天文学者でもある主人公に、その暦の作成という大役が任せられるというようなお話である。

 この作品の主人公や登場人物は実在する歴史上の人物で、つまりはこの作品は歴史小説の一種と言えるだろう。

 作品中に徳川家綱とか水戸光圀とかが登場するので、そのあたりの時代のお話である。
 西暦で言うと1650年代後半あたりから1600年代終わりあたりにかけてくらいになる。


 中世ヨーロッパと言いつつよく見ると近世っぽい作品が多いなろう小説の通例からすると、日本の江戸時代あたりを現実の歴史の参考モデルとするのもちょうど良いように思えるのだがどうだろうか。

 まあそれはともかく、主人公は本職が幕府お抱えの囲碁棋士なのであるが、趣味で算術や暦術などもやるのである。
 ここらあたりの描写も、社会がまだ十分に成熟してないので、色々な分野にそれだけのスペシャリストがいるのでなくて、頭の良い個人が色々な分野を掛け持ちしているわけである。
 つまりレオナルド・ダ・ヴィンチが万能の天才であって、科学者でありつつ画家という文化人でもあったのと同じようなことである。


 そしてそのような、文化人である科学者の社会的な立場とか、そういう彼が江戸城に出仕したら、どういう動きをするのかとか、そういうことも作品に臨場感を持たせるために色々と書いてある。
 実に面白くこれはプロの仕事であると読ませるところである。

 そしてそんな彼が改暦のために、日本全国で天体観測をしまくり、暦を作り直し、日蝕をピタリと当てたりなどするわけである。


 つまり何が言いたいかというと、現地住民には現地住民なりの技術や知識がちゃんとあり、近世に差し掛かった中世というほどのレベルになれば、それもかなりのものであろうと思われるわけである。
 だから現地住民を作品中であまりアホの子のように描写してしまうと、それは作品の瑕になりかねないのでよろしくないのではなかろうかというのが当ブログの主張なわけである。


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2019年03月06日

権力者が看護されるシーンと亡くなるシーンの資料


 実にお久しぶりな更新であるが、今日ご紹介したいのは、

 讃岐典侍日記 (講談社学術文庫 193) 森本元子 著 である。

 
 この本は、堀河天皇という天皇に仕えた女官である、藤原長子という人の日記である。

 讃岐典侍日記は「さぬきのすけにっき」と読む。

 典侍(すけ)というのは、昔の時代の高級女官の官職名である。
 女官なので、だから正式な妃というわけではないが、まあ実質上は天皇の奥さんの一人ということでもあったようである。
 そしてこの典侍の藤原長子さんの親父さんが讃岐守という役職についていたので、讃岐典侍と呼ばれるということであったようである。


 さて、まあそういう諸々はどうでもいいとして、この本のワナビから見た資料的価値ということである。

 この本の何が貴重なのかというと、堀河天皇がご発病なさって、それからひと月ほどをかけて死に至る過程を、もっとも近くで看護した讃岐典侍さんの目線から克明に描いてあるというあたりである。

 なろう小説なんかだとヨーロッパ風ファンタジー世界な作品が多くて、そこに王様とか出てきたりすることも多いのであるが、その王様が病気でなくなるという展開だってそりゃあり得るというものである。

 そういう展開のときに、単に想像で書くか、似たようなシーンが実録されている資料を参考にして書くかで、読者が読んだときに臨場感がだいぶん違ってくるんではなかろうかと思われるのである。
 だからそこらへんワナビ的には実に貴重な資料になろうかと思われるんであるね。


 また、堀河天皇の寝所で、その讃岐典侍の藤原さんが休んでいると、なんか用事があったらしき人がやってくるのであるが、その時に堀河天皇が、ついっと膝を立てて藤原さんを隠してくれたわけである。
 それでそういう堀河天皇の優しさというか思いやりというかそういうのが嬉しいとか書いているんである。
 そこらへん実にリアルで何とも言えない臨場感リアル感でなかろうか。
 これもまたワナビ的には実に資料的価値ありであるね。


 あともう一つ注目ポイントだったのは、この本の作者はつまりは女官という名の側室だから、他に正室の方もいて、それは中宮というか皇后さまなのである。
 それでその中宮様が堀河天皇が病気だからって、お見舞いに来たよ的なことが書いているんである。

 つまりコレは正室 vs 側室のシーンなわけである。

 まあネタばらししておくと、別に正室 vs 側室だからってキャットファイトが勃発したりはしないのである。
 まあ皇居内なので当たり前であろうが。
 
 というかこの讃岐典侍日記には、主人公の中宮に対する嫉妬心とか、そういう類の感情は書かれていない。
 これは、主人公が特に何も感じていなかったのか、それともそういうことをあからさまに書くべきではないと自制していたのかはよく分からないのであるが、そこは色々想像してみるのも良いだろう。

 まあそれはいいとして、本物の側室から見た正室の姿、みたいなものが書かれた資料がここに現存するわけである。
 これもまたワナビ的にはポイント高いと言えるかもしれない。
 まあわずかであっさりした記述なので言うほど参考にならないだろうが。

 そしてまた、そういうワナビ的視点ではない、一般的な視点から言うと、
 夫を病魔で亡くした女性の追慕や悲しみが胸に迫る非常に心を揺さぶる名著ということになるだろうか。
 

 なかなかの名作であると思うので是非とも確保していただきたいと思ふ。
 私が読んだのは講談社学術文庫での版であるが、在庫数がそんなにないようなので、商品リンクは他の出版社からでているものも貼っておく。 

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2017年09月09日

なろう小説的ファンタジー世界で田舎者が都会に出てきて就職するときはどういう流れをたどればよいかがわかる参考資料だよ!


 さて、またしても久々の更新であるが、今日ご紹介したいのは、

『ダルタニャンの生涯―史実の「三銃士」』 (岩波新書) 佐藤 賢一 著 である。

 
 ダルタニャンというのが誰かということについて一応補足しておくと、ダルタニャンというのは、アレクサンドル・デュマという作家の書いた小説の登場人物としてひときわ有名になった人なのである。
 彼は小説の登場人物であるから、架空の、想像上の人物なのかと思いきや、実は実際の歴史に登場する実在の、それもわりと有名な人物でもあるのである。


 ダルタニヤンという人物と三銃士という作品がどのようなものであるが、極めて簡単に説明すると、ダルタニヤンというのは、銃士すなわちマスケット銃兵である。(実際にはマスケット銃が陳腐化する過程で、マスケット銃ではない銃も使われるようになったようではあるが)

 そして銃兵であるが、単なる銃兵であるだけではなくて、馬にも乗れる騎兵でもあって、というのは、ダルタニヤンの所属していた銃士隊というのは、まあ国王やら権力者やらの側近でもあって、何か事があるととりあえず派遣されたりする、近衛部隊というか、便利使いされる部隊というか、そういう立ち位置なのである。

 そしてそういう立ち位置な主人公でであるからして、国王陛下の密命なんか受けちゃったりして、外国までまたにかけて、色々陰謀あり戦闘あり恋もありみたいな一大スペクタクルな作品が書けちゃったりするのである。
 私も作品を読んだことがあるが、このデュマという作者はストーリーテリングというか物語の面白さにおいて、なかなか凄いものがあって、だからこの三銃士もぜひ読んでいただきたいと思うところではある。


 私が思うところ、ファンタジーオンラインゲームに入り込んじゃったよ的な、なろう小説異世界系においては、コンピューターゲームの模倣としての魔法というものが使われるが、これは魔法の矢であれ、ファイヤーボールであれ、要するに意味合いとしては遠距離攻撃の一種なのである。

 この遠距離攻撃の威力をどのように設定するかというのは、なかなかに加減が難しいところで、あまりに威力を大きくし過ぎると第一次世界大戦ばりの、塹壕にこもりまくってひたすら土掘る塹壕戦みたいな世界になってしまい、物語世界としての魅力に欠けることになってしまう。


詳しくは下記のページを参照していただきたい。
リンクはいずれも当ブログの過去ページである

1.兵器・武器と世界観との関係
2.機関銃という恐るべきもの


 とりわけ、この2番目のほうの記事で紹介している書籍は、機関銃の登場がどのように戦場の様子をかえて、戦争からロマンも英雄性も奪い去り、人の考え方まで変えてしまったかということについて書いてある、一線級の名著なので是非とも読んでいただきたいところである。


 それで、魅力ある世界観を構築するためには、適度に威力のある遠距離攻撃としての魔法があるわけであるが、この適度に威力のある遠距離攻撃ってどんなもんかなと考えると、史実ではライフル銃が登場する前の火縄銃とかマスケット銃あたりのものがそれに相当するんでなかろうかなと思うのである。

 そういうわけで、なろう小説をお書きになる皆さんは、この近世ヨーロッパっていうのか、そういう時代の小説、つまり三銃士を是非とも読んでいただきたいと思うのである。

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 さて、話がわりとそれてしまったが、冒頭に紹介した本のことについて述べる。

 要するに三銃士の登場人物の一人について詳しく書いてあるのだが、これがそれだけにとどまらないのである。

 若き日のダルタニヤンさんが田舎から出てきて就職するにあたって、どのようにしたか。
 ぶっちゃければ同郷の人物の縁故に思いっきり頼るのであるが、そういう方法とか、郷土の人間関係が、その当時のパリにおいてどのような意味を持っていたのかとか、そんなことが詳しく書かれている。

 考えてみりゃ人間関係が希薄化したのなんのと言われる今でも縁故採用なんてあるのに、これが昔の時代の田舎の人ら(ダルタニヤンはガスコーニュというフランスの田舎の生まれの人である)の人間関係ともなればその濃さは推して知るべし、わたしだったら絶対に住みたくなかろうと思えるよな気もするというものである。


 だからこの本を読んで参考にして、主人公が都会に出てきて、先に都会に出てきてる有力者のコネを頼りまくってなんとか就職するシーンとか入れれば作品にリアル感マシマシである。


 他にも例えば『売官制』についても色々書かれてある。
 売官というのは、国とかの公の役職がお金で売られていたりする制度のことである。
 今の日本人的な感覚から言えばとんでもないが、昔はそれで普通だったりしたのである。

 例えばナントカ銃士隊隊長になりたいと思えば、その職を持っている人にお金を払って、その地位を買うのである。びっくりである。お金を払えば軍人の士官になれちゃうとかもうね。
 そんで、本人がそういう実際の部隊指揮とか無理じゃん? と思えば銃士隊長代理とかを別に任命して、そいつに指揮を取らせたりするのである。

 王様とかも王様とかで、例えば功績のあった部下に、売って金に換えていいからねって意味合いで、褒章として官職を与えて、もらったほうはその官職を、そのへんのおっさんに売り飛ばしてお金に換金したりするのであった。


 ということは、よく、なろう小説の戦記物なんかで、主人公が戦争で手柄をたてて、段々と出世していくなどというストーリーはありがちであるが、ここを金にものを言わせて、中隊長とか大隊長とかそんくらいの役職をお金でポンと買っちゃって、そこで手柄あげて出世みたいな、そういうストーリーもありなわけである。
 我ながらこのストーリー展開ってわりに斬新じゃなかろうか。



 他にも、そういう公私混同ぎみの時代であったから、財務大臣などは、国家の財政から自分の懐に入れるというより、もう国家の懐が自分の懐状態になってしまって、公金を好きにできるかわりに、戦争にでもなったら、私費を投じてでもなんとかしなきゃならんかったりとか、はえー、と感心するばかりである。


 また他にも、失脚しかかった権力者がどのように地方に一旦逃れてから捲土重来するかとか、
権力ある要人を逮捕するときにどのような手順がとられたかとか、そういう、小説書きとしては、非常にタメになりそうなお話がいっぱい書いてある本なのである。

 久々にかなりのヒットのオススメであるから、是非とも読んでいただきたいのである。

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2017年06月07日

メイドさんのいる社会は晩婚なんですってよ

 さて、ほとんど放置気味になりながらも細々と更新が続いてきた当ブログもついに100回目の更新である。
 100回というとなかなかのものではないか。
 なろう小説でも100話越えというとなかなか「おっ」と思わせるものである。


 さて閑話休題


 今日ご紹介したいのは『イギリス近代史講義』川北 稔(著) である。

 この本を見る限りの個人的な感想であるが、この川北 稔という先生は中々のものである。

 学者先生の本というのは、
 ・まず研究の対象が面白いこと。
 ・それから本の書き方が作品として優れていること。

 この二つの条件を満たさないと面白くない。
 どうでもいいような興味をそそられない研究内容であったり、
 研究の内容自体は面白くても、読ませる書き方ができてないので本としては面白くなかったりするのも多いが、この本はそうではない。

 内容が、面白くかつ読ませる本である。


 この本読んで、ワナビ視点でとりわけ面白く感じたのは、イギリス人のライフステージというか人生の設計についての話だった。

なんでもイギリスにおいては、十代の前半から十代の半ばごろになると、家を出てよその家庭に働きにでる習慣が一般的にあったようであったとのことである。

 つまり若者は外へ奉公に出て、そこで10年かそこら働いて、なにがしかの財産を作り、それから結婚するというような流れになっていたそうである。
 ということは晩婚になるのである。
 さらにもっと言えば、子供が実家で住んで家業を手伝うというというのでなくて、奉公先に出て働き、その奉公先の家の半分家族みたいな、つまり一門ということであるが、一員になってしまうので、当然ながら実家には年老いた両親が残されるかたちになるのである。
 なんだか核家族化した現代日本みたいな話であるね。

 イギリスの歴史では、やたら救貧法とかそういうような法律が頻々と出てくるそうであるが、それは子供が実家に居残って、その居残った子供が親の世話をするという流れがないために生じたものでもあるということである。


 これをワナビ的に具体的に当てはめて言えば、
 イギリスのようにメイドさんが普通にそこらじゅうにいる社会というのは、
 つまり晩婚な社会なのであるということなんである。

 よそで奉公して一人前になって、それから結婚という流れだからである。
 昔の日本みたいに大家族で早婚な社会とはちょっと違うんだということなんである。

 このように、ある社会における普通の人生の流れというのはどのようなものであるか、という思考が、作品の中の登場キャラクターの行動を決定し、世界観に深みをもたらすんである。


 ◆


 あと、もうひとつ気になったところであるが、それは貴族とはなんであるかということについての言及である。

 私が読んだ限りではであるが、
 貴族とは土地の所有をもってする資本家であって、
 後の時代には成功した貿易商や銀行家なども、ジェントルマンとして、貴族階級の一部をなしたとのことである。

 当ブログの過去記事の

『君は英国王の戴冠式の手順を知っているか!』

でも少し書いたことであるが、貴族とはすなわち資本家であるのである。
そして政治家も兼任している。

そして、法的な特権と大資本に守られた金持ち、というのが、貴族の正体なのである。
だから貴族を横暴で暴力的な姿で描くのは事実に即さない面もあるということなのである。

金持ちというとビルゲイツさんでも、孫正義さんでもいいが、そんな人は一見してわかるほど粗暴で暴力的だったりはしない。
 むしろ人当たりがよく礼儀正しかったりするのではなかろうか。

 貴族や金持ちと貧乏人との間には、もちろん格差があるのだけれど、その搾取の構造みたいのがもしあったとしても、それは法律とか社会制度のなかに根深く固定されているのであって、豚みたいな横暴貴族が貧乏人を苛め殺すみたいな描写ももちろん真実の一面ではあるのだが、そればかりに偏るのもおかしいというものである。

 富裕層の上位1%が世界の富の半分を持っているなどとよく言われるところであるが、
 そこに何らかの搾取や不道徳な要素があるのかないのかは私にはよくわからない。

 ただ、そのような富の偏在は鞭を振り回すような、分かりやすい暴力によって担保されているのではないというのは事実であろう。

 そうであれば、自作品に登場する貴族の姿というのもいくらか再考の余地があるのではないかと思うのである。

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2016年01月19日

『 動力 』無しではやっていけない私たちの生活


 今日おすすめしたいのは『動力物語』富塚 清 (著)である。

 この本は動力というものの定義から始まって、私たちの生活の中にいかに機械動力が入り込んでいるかが述べられる。
そしてしかる後に、蒸気機関と内燃機関の開発と発展の歴史について書かれている。

 なんでこの本をオススメしたいのかというと、私たちの現代的な生活は動力なしにはやっていけず、私たちは『動力』に取り囲まれていて、あまりにそれが当たり前過ぎる状況にあるからだ。
 ということは、動力が無い状態というものを想像できないと言ってもよい。

つまり、

朝起きてエアコンを入れ(エアコン電気モーター)
トイレにいって(トイレの換気扇に電気モーター)
冷蔵庫を開けて(冷蔵庫のコンプレッサーに電気モーター)
目覚まし用のアップテンポなCDをかけ(プレイヤーに電気モーター)
ヨーグルトと牛乳とシリアルを取り出して食べ(その牛乳やらヨーグルトやらシリアルやらを、買ったスーパーに運んできた輸送トラックに内燃機関)
食べ終わったら歯を磨いて顔を洗ってから、パジャマを脱いで洗濯機に投げ入れて(洗濯機に電気モーター)
着替えてから家を出て、通勤のため車に乗り込む(自動車のエンジンに内燃機関)

というかもっと言えば、上にあげた電気モーターを使うようなものには、そもそも発電所での発電用に蒸気タービンという動力が使われているわけである。

 ことほどさように、私たちの生活は文字通りに動力にまみれているんである。


 ということは、逆に言えば、新しい動力が開発されたり、それが洗練されたりするたびに、それが私たちの生活に取り入れられては私たちの生活に大きな影響を与えてきたのだということである。

 例えば、初期のころの実用化された蒸気機関は、鉱山での排水用に用いられたようであるが、これは従来は馬などの畜力とすげかわることになった。
 つまり動力の普及は畜力の価値の低下を意味する。

 それがどういうことかというと、
 例えば、なろう小説でよくあるような 『 中世ヨーロッパ風異世界 』の登場人物がいたとしよう。
 そしてその彼が、立派な堂々たる体躯の馬などの家畜を、いかに貴重なものとして、憧れをもって見ているだろうかということについての理解は、その動力としての畜力の重要性という観点から見なければ真には理解し得ないだろう。

 さらにもっと言えば、動力の発展は、輸送力の向上にダイレクトにつながるので、それは食生活の充実や、戦争の高度化・大規模化につながる。
 近場では生産されていない食材でも、蒸気機関車などで素早く大量に輸送できれば、低廉な価格で売られるようになって、庶民の食卓を豊かにする。
 また食材が蒸気機関車で素早く大量に輸送できるのであれば、軍隊もまた、蒸気機関車で、前線へと素早く大量に輸送出来てしまうということなのである。

『 中世ヨーロッパ風異世界 』 と 私たちの現代的な生活 との違いは、そのかなりの部分が、機械動力の量的質的な違いによっているということができるかもしれない。

つまり世界というものを理解し、作品の世界観を構築するためには、動力とその発展についての理解もまた不可欠であろうと思われるのである。

というわけで『動力とその発展についての理解』を助けてくれるこの本をオススメしたいのである。


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2014年01月14日

チェーザレ・ボルジアの伝記



 昨日は、川原 泉 氏の手になる、
 ヴァレンティーノ公爵 チェーザレ・ボルジアについて扱ったマンガを紹介した。

 マンガだから絵が付いてるわけで、その当時の風景や衣装などのイメージを持つには非常によろしいのであったが、その分だけやはり幾らか薄味になるというか、情報が足りなくなるという感じは否めない。

 というわけで、今日は、その同じチェーザレ・ボルジアについて扱った伝記を紹介しようと思う。

 『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫) 』 である。
 作者は 『ローマ人の物語』シリーズで超有名な塩野 七生 氏である。

 このチェーザレ・ボルジアの本に限らず、この塩野 氏の本は、非常に面白くかつ勉強になる、素晴らしい本ではある。

 が、この人がユリウス・カエサルなりチェーザレ・ボルジアなりの、特定の人物を描くときは、なんというか作中で主人公として取り上げた人物に対する思い入れが強いせいなのか、その主人公となっている人が魅力的に見えすぎるきらいがある。

 人間と言うのはもっと醜い、というか魅力的でない部分も十分に持ち合わせているのではないか、と思えてしまうのである。
 ちょっと中立性に欠ける、ような気がする。と言い換えてもいい。

 というわけでウィキペディアなりで事前に、ネタバレがイヤであれば事後にでも、ある程度情報を得ておくのもいいだろう。

   チェーザレ・ボルジア - Wikipedia

 とまれ、父親こそ教皇で権力があったものの、それ以外には自前の兵力すら大して持てず、自身の有能さ以外にほとんど武器を持たなかった男が、群雄割拠のイタリアに覇を唱えようとした記録である。


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2014年01月13日

ルネッサンスの時代へタイムスリップ


 今日紹介するのは、有名少女漫画家の川原 泉さんの作品である。

 題名は 『バビロンまで何マイル? (白泉社文庫)』 である。

 内容としては、とあることから不思議な指輪を手に入れた高校生二人組が、
 過去の時代へタイムスリップをしてしまうという形式の歴史ものである。

 恐竜の時代、と、ルネッサンス時代の二編が収められている。
 けれども、恐竜時代編は、まあ前座というかウォーミングアップ程度の作品でしかない。

 重要なのは、ルネッサンス時代編のほうである。

 十五世紀末ごろの、分裂し戦国時代状態であったイタリアを舞台に活躍した、
 ヴァレンティーノ公爵 チェーザレ・ボルジアが題材にとられているのである。

 チェーザレ・ボルジアというのは、だから日本でいうところの戦国武将みたいなもので、
 一種の政治的、軍事的天才、乱世の英雄のひとりなのである。

 日本の戦国武将やら中国の武将やらなら、割と日本人にもなじみがあるのだけれども、
 イタリアのそれはそうでもなかったりする。

 しかしチェーザレ・ボルジアというのもなかなか面白い人物なので、この本を入り口にして、お読みになってみられることをオススメする。


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2013年12月31日

国盗り物語



 今日も昨日に引き続いて、司馬遼太郎氏の歴史小説を紹介したいと思う。

 『国盗り物語』である。

 この作品の前半部分は、単なる油売りから豪商へと成り上がり、そこから美濃一国を領するまでに至った斉藤道三の物語となっており、後半部分は織田信長を明智光秀の視点から描くという構成になっている。

 この作品で、とりわけ凄まじいのは斉藤道三が徒手空拳の状態から成り上がっていく過程だろう。

 小説投稿サイトである 『小説家になろう』 でも『成り上がりもの』という部類の小説は多数投稿されているが、これはいうなれば日本有数の作家が書いた成り上がりものということができるだろう。

 が、この作品は、だいぶ以前の資料をもとにして書かれているらしく、斉藤道三に関する最新の歴史理解とは異なっているらしいので、詳しいことはウィキペディア先生にでも聞いておいていただきたい。

斎藤道三−Wikipedia


 で、後半部分は織田信長を中心的な人物として描いているのだが、視点人物として明智光秀が用いられており、主人公の織田信長以上に目立っている。

 教科書で日本史を学ぶだけでは明智光秀と言えば、有能であり、最後には織田信長を裏切った人物という程度の感想しか抱けないが、この本を読んでみれば明智光秀という武将に今まで以上に親しみを感じることができるだろう。

 非常に洗練された、日本有数の歴史小説であるから是非とも読んでいただきたい作品である。


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2013年12月30日

項羽と劉邦

 今日紹介するのは司馬遼太郎の歴史本である。


 題名は 『項羽と劉邦』 である。

 劉邦というのは漢の高祖である。
 中国の王朝は、殷・周・秦・漢・三国志、の順であるから、つまり三国志の時代の前の王朝を作った人の話である。

 三国志の主要人物である劉備は、漢王室の復興を目指して戦っているわけである。
 だから、三国志の時代をテーマにしたゲームやら小説やらを理解するためには、この本を読んでおくと、理解がより深まるだろう。

 武人のなかの武人である項羽。
 本人の能力としてはたいしたことがないが、人あしらいが上手く、人材を揃えた劉邦。

 この二人が、まったく無名の状態から身を起こして、ついに両雄として対決するさまを描いた歴史小説である。

 とても面白く、かつ一般常識としても読んでおいて損はない小説だろう。
 非常にオススメの一冊である。


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2013年12月27日

ガレー船の絶頂期

 その昔、軍船の主流はガレー船だったそうだ。

 ガレー船というのは、船体の左右から櫂が何十本も突き出しているような船のことで、
 櫂がある分だけ、凪のときや、進行方向と風向きが合わないときでも進めるというメリットがある。

 けれども、耐波性が弱かったり、船体側面に櫂がある関係で、大砲の搭載が十分にできなかったり、喫水線を高く取れない、などの理由で、結局のところ帆走軍船に主力の座を明け渡してしまう。


 しかし、しかしである。ガレー船には浪漫があるのだ。

 
 風と船体の姿勢とを読みながら、チェスのようにして行う、
 帆船による海戦にも独特の魅力がある。

 が、しかし、
 風などとは無関係に、額に青筋をたてて櫂を漕ぐ男たちの人力で行う衝角突撃。
 漕ぎ手=戦闘員の、数に任せた白兵戦。
 
 まさしく漢の船である。


 で、今日紹介するのは 『レパントの海戦』 という本である。

 この本は、ガレー船がその絶頂を極めた時代に、ガレー船を大量に使用して行われた海戦について書かれた本で、地中海を舞台に、オスマン・トルコ 対 キリスト教連合軍 の戦いを描いた一大海戦絵巻である。

 作者は 『ローマ人の物語』シリーズで有名な塩野七生さんであるから、面白くないわけがない。
 とてもオススメの一冊である。


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 コーエイというゲームメーカーの大航海時代シリーズの『大航海時代U』とか『大航海時代外伝』などをプレイされた方には、知ってる種類の船や、あるいは航海士として登場したキャラクターなどが登場するので、よりいっそう楽しめるだろう。


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西村紅茶
ワナビ(小説家になりたい人の意)というほどのワナビでもないが、いつかは一冊でいいから自作のネット小説が書籍化になったら嬉しくて心臓麻痺おこすかもしれんと妄想しているヌルいワナビです。 でも書くのはへたくそなんですが……
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