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2013年02月18日

隠れ家的名盤!!ドイツ語のメサイア(試聴あり)

錦海湾の五月


b.「牛窓は日本のエーゲ海」って言われるけど、

a.「エーゲ海はギリシアの牛窓」と呼んでくれ、

b.ですけど、錦海湾(きんかいわん)って聞かないっすね、

a.はずれてるからなあ牛窓の中心部から、むかし広い塩田があって、そこはいま荒野なんだけど、海ぞいに名残の堤防が素っ気なくのびてて落ち着くんだ、ぼんやりしたり、釣り人がいたり、海を見たり雲を見たり、おにぎり食べたり、背中かいたり、

b.で、ヘルムート・コッホもあまり聞きませんね、錦海湾なみに、

a.高校一年生の冬休み、父がまだ持ってなかったヘンデルのメサイアが無性に聴きたくなり、

b.あの、ハレルヤコーラスで有名なやつか、

a.なけなしの小遣い握りしめて、表町(おもてちょう)商店街のレコード店へ向かった。けれども無かったんだ、ジャケットのカッコいいカール・リヒター盤が欲しかったけど、

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b.それで仕方なく、冴えないジャケットのヘルムート・コッホ盤にしたのか、

a.どうしても聴きたかったから、引っ込み付かないで、三枚組で6000円くらいしたかなあ、当時としては大出費だったけど、よくも知らない指揮者の三枚組をよくも買ったと思う、

b.でも、これが大当たりか、人生なにが起こるかわからんっすね、冴えないジャケットとは裏腹に、ツモ一発で生涯の伴侶となるレコードにめぐり会えるとは、じゃ、尊敬するクレンペラー盤は、

a.CDの時代になって買ったけど、いちど聴くか聴かないかで、もったいないことをした、

b.つまりこういう事っすか、ヘルムート・コッホも錦海湾も、あまり知られてないけど、そんなひっそりした隅(すみ)っこの方に美味(おい)しい物が隠されてんだと、

a.美味しさの基準はヒトそれぞれだけど、隠れ家(かくれが)的ってことかなあ、大勢で押しかけて行くんじゃなくて、少人数だけど波長の合うヒトは迷わず常連になってしまうような、音楽や風景、


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ふつう英語で歌われるので、ドイツ語は違和感あるかもしれない。なんて長い曲なんだとうたた寝しながら聴きすすめるうちに、とうとうはまってしまった。これが最初のメサイアだったから、ドイツ語も気にならなかったし、古楽器じゃないバロック演奏もまだ当たり前の時代だった。

クレンペラーばりの押しの強さもなく、ただ当たり前に日々の営みを続けていくような淡々とした歩み。じわじわっと魅力がにじみ出してくるような、こういうのをシブい演奏っていうのかなあ。

ちなみにハイドンのオラトリオ「天地創造」がコッホ氏の代表的CDだが、CD化に際して音質劣化したのか、聞くに耐えないディスクを買ってしまったので、オススメに挙げられなくて至極残念。その代わりというか、今は廃盤になっているハイドンの「ネルソン・ミサ」はメサイア同様たいへんオススメ盤なので、再販のさいは是非!


五月の錦海湾



そっ気ない錦海湾の堤防


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