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2020年06月30日

イニシエーション・ラブ 乾くるみ 文春文庫

ネタバレ厳禁の作品だと聞いていたので、最初からかなり構えて読み始めた。物語の舞台はトレンディドラマが流行った頃なので、自分が学生の頃にもかぶっていて楽しく読めた。ただ、最後のどんでん返しでは「ん?」という感じでピンとこなかった。で、最後の用語解説(これが秀逸。だけど先に読んじゃダメ)を読むとじわじわと「あー、こういうことだったのかあ。ん? ということは?……あああ、恐っ!!」と来る。以前読んだ「葉桜の季節に君を想うということ」は、読み終えた途端にばっさりやられたと思ったが、この作品は読み終わってからなまくら刀でぶすぶすやられる感じ。作者のニヤニヤ顔が目に浮かぶ。いやー、人って恐いですねえ。

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かたみ歌 朱川湊人 新潮文庫

日本が高度経済成長に沸く昭和40年代の、東京の下町にあるアカシア商店街で起こる不思議なことについて語った連作小説。

この頃は、そこらじゅうで古い日本と新しい日本が混ざっていた。テレビが白黒からカラーになり、自動洗濯機が普及し、ダイアル式電話機が各家庭に行き渡った。その一方、街には異界との通り道が残っていた。この物語は、その異界との通り道のことを描いている。

いくつかの謎が提出され、それらが最後に解決される。かといって、これをミステリーと言っていいかどうか。昭和40年代を知っている人にとっては、優しくも悲しい、そして懐かしく思う物語。あの頃は、すぐ隣に異界があることをみんな知ってたんだよなあ。

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君たちに明日はない 垣根涼介 新潮文庫

軽く読めるけど、文章がうまいのでアクセントが各所にきいていて読んだ感がきちんとある。主人公がリストラ代行会社の社員で、リストラのための面接を中心に物語が進むという、アイデア一発勝負みたいなものだけど、殊更に面接に出掛ける会社の暗部をえぐったりしないところが好感が持てる。あくまでも真面目に、人の人生が交差するところを見つめる。重いも軽いもなく。一見ライトで無責任なような視点だけど、現代にはこういう視点が必要だね。

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東京島 桐野夏生 新潮文庫

決して難解でもないし、とっつきも悪くない。文体が読みにくいわけでもないのに、いやに時間がかかった。なんだろう、この感じ。

清子と隆の夫婦は世界一周クルーズの途中で遭難し無人島に漂着する。その後日本人の若者たちや中国人たちが流れ着いてくるが、島に女性は清子ただひとり。やがて清子は女王として君臨する。

読み進めるうちに妙な感覚を覚えるのが時間がかかった理由かもしれない。そうか、この物語は神話なんだ、と思った途端に、物語中で清子が住民の一人であるオラガに島の神話を書き残すように言う。そうか、島は母体であり島の中は胎内なんだ、と思った途端に、妊娠した清子が、島の意思で子供を生むとか言い出す。なんで全部種明かししちゃうかなあ。もしかしたらこれが仕掛けなのかもしれないが、だとすると読書の楽しみを奪ってないか?だいたい、登場人物がみんな一言多いんだよなあ。もっと不親切な方が物語に深みが出ると思うんだけど。

とはいえ、綴られる言葉は現代詩のように強いし、ストーリー展開もめまぐるしい。十分に面白いんだけどなあ。これが相性ってやつかなあ。うーむ。

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シャドウ 道尾秀介 創元推理文庫

最初からミステリーだとわかっていたので、いろいろ疑いつつ読み進めていったが、やっぱり騙された。根が素直だからなあ(笑)。

意外な犯人、二転三転するラストなど、言うまでもなく良質の本格ミステリー。結果として「いい話」になってしまっているが、いやいや文芸作品じゃないし、という作者の思いが透けて見えるようで好感が持てる。実際にはありもしない人の暗部を、露悪趣味のようにさらけ出すだけで成立している作品に比べれば誠実だ。

エンタテインメントってこういうことだよね。

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頭脳対決!棋士VS.コンピュータ 田中徹 難波美帆 新潮文庫

ちょっと色合いの違うものを。

2010年10月11日、女流棋士とコンピュータの歴史的対局が行われた。将棋ソフト最強の「あから2010」を迎え撃つのは女流王将清水市代。コンピュータ圧倒的有利の下馬評の中、清水はどのような勝負を展開するのか。

圧巻なサイエンス・ルポルタージュ、もしくはヒューマン・ドキュメンタリー。

ボードゲームのシミュレーターはコンピュータの黎明期から存在し、ハードとソフトの発達に伴って発展してきた。その中で、IBMの開発したチェス・シミュレーター「ディープ・ブルー」が世界チャンピオンに勝利してしまう。チェスよりも複雑なゲーム展開を持つ将棋のシミュレーターも、プロのトップ棋士に勝利することを夢見るようになる。

緊張感溢れる対局の中で、清水はコンピュータソフト「あから」との一体感を感じる。相手は感情を持たないコンピュータのはずなのに。

コンピュータ・サイエンスの手軽な入門書であり、「知能とは」という問いかけによる哲学と科学の架け橋であり、勝負事を描くルポルタージュとして面白い。「将棋」「人工知能」「鉄腕アトム」などのワードに引っかかる人なら読んで損はないよ。

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るり姉 椰月美智子 双葉文庫

イノセンスな人たちによるイノセンスな物語。だが、なんだろう、この居心地の良さと悪さの同居は。…と考えながら読んでいて、はたと気付いた。これはサザエさんの世界観だ。しかもアニメ版の。

漫画版のサザエさんは、世相を反映したブラックなところもあるものだが(もともと新聞漫画だからね)、アニメ版のサザエさんにはそういう毒がない。言い換えれば登場人物が見事にステレオタイプのキャラクターを演じきっているわけだ。例えば、マスオが青春期に太宰治にかぶれて(これはありそう(笑))自殺未遂をおこして居たたまれなくなって故郷を後にしようが、ワカメの下の弟が池にはまって死んだ時にそばにいながら見捨てたことがカツオのトラウマになっていようが、そんなことはサザエさんの世界観には必要がない。

るり姉が登場する。物語が進むにつれてるり姉の過去も明らかにされてゆくが、それが本質的にキャラクターに影響を与えることはない。また、主要な登場人物がるり姉の夫であるカイカイを除いて全て女性であるという特異な状況にあるにも関わらず、皆がまるでテレビの前の視聴者の期待を裏切ることを恐れるかのように自らのキャラクターを演じきっている。そして、その裏側を読み取ることを禁止しているのが居心地の悪さの原因だ。

まあ、ストレートに家族小説や青春小説として読めば面白いと思います。だって、サザエさんってやっぱり面白いもん(笑)。

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ツナグ 辻村深月 新潮文庫

一回だけ使者(ツナグ)を通して死者に会うことができるという使者システム。古来伝承されてきたが具体的なことは何もわからない。あなたにこのシステムを利用できる機会が訪れたとしたら。

あからさまに生と死を扱う物語かというと、ちょっと違う。この物語の中では生と死は交換可能なものではない。死も象徴的ではあるが、あくまでも描かれるのは生だ。非常に健康的だ。それに加えて、構成がうまい。連作の最初のタイトルが「アイドルの心得」である。お洒落だ。そして最後のタイトルが「使者の心得」。読む前から準備がしやすい。結果的に読みやすい。ちょっとしたミステリーっぽい仕掛けもありつつ、最終的に家族を描くところなんかも流行りを外していない。なかなか狡猾な作者だ。

上手い作者の掌の上で、巧妙な作品をそうとは意識せずに読むのは、幸せな読書体験だ。

堅苦しくも難しくもなくホロッとくるところもあるので、誰にでも楽しめると思います。

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私を知らないで 白河三兎 集英社文庫

設定やストーリー展開に無理があるわりにはすんなり読める。それは誰もが考えたことがあるからだろう。私は何?自分と他者との境界って?

子供にとって最初に出会う他者は親だ。他者である親との差異を認識することによって自分を個化してゆく。学校というのは、その子供たちが親ではない他者と出会う場だ。子供同士のお互いの差異の認識や、親との関係によって自分を獲得した者としての連帯感、それらを通して社会性を身に付けていく。

この物語は、自分を獲得しそこなった中学生の物語だ。なので、悲しくも清々しい。自分を獲得しそこなったことを特権的に振る舞うのではなく、傷として静かに抱えている。

残念なのは、ラストで最終的に他者によって救済されてしまったことだ。自分でなんとかするしかないのに。誰も救いの手なんか差しのべてくれない。最終章がなければもっと余韻を残したはずなのに。残念。

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もいちどあなたにあいたいな 新井素子 新潮文庫

新井素子文体健在。改めてこの文体の発明はスゴかったんだな、と思う。少女や少年だけでなく大人、それも病的ともいえる大人の心情もこの文体で描けるとは。

ただ、物語自体はヘビー。もちろんSFとしての仕掛けはあるのでそれを推進力にして読み続けれるんだけど、登場人物がみんなちょっとずつ狂っている。そして、物語が終結した後で、もしかして登場人物が集団ヒステリー状態になって嘘の結末をでっち上げているんじゃないかと思ってしまうほど後味が悪い。

まあでも、これが新井素子の作風だったな、と思い出した。きっとこれからも、新井素子は変わらず新井素子なんだろうなあ。

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なかなかやん
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