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2020年07月02日
チルドレン 伊坂幸太郎 講談社文庫
テンポの良い会話文ですいすいと読めるが、中身はしっかりとしたミステリー。私立探偵が登場するわけでもなく、殺人事件も起こらないが、日常の違和感を盲目の人物永瀬が解明していく。というと、永瀬が主人公のようだが、主人公は別にいる。ストーリーテラーとしての人物、探偵としての人物、全てを影響下に置く主人公としての人物。それらが、寄木細工のように色々な形を作り出す。
いやー、伊坂幸太郎って、本当に上手いですね。
価格:726円 |
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酔いがさめたら、うちに帰ろう。 鴨志田穣 講談社文庫
アルコール依存症は病気だ。もちろん、本人の自業自得でもある。ただ、そこまでして酒に逃げなくてはならない人は、壮絶な人生を経験している。だからこその、アル中なのだ。
作品は、アルコール病棟の人間模様を描くとともに、作者本人の心象を軽い文体で綴る。それぞれに壮絶な人生を歩んできた人たちが、一時の宿として集う病棟で、作者は様々な事を想う。
アル中作品としては、中島らもの「今夜、すべてのバーで」と、吾妻ひでおの「失踪日記」がダントツだと思っていたし、今も思っているが、この作品もそのひとつに入れよう。
これは、面白いです。特に、酒を控えようと思ってる人には効果てきめん(笑)。
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昨夜のカレー、明日のパン 木皿泉 河出文庫
テツコは、夫の一樹に25歳の若さで先立たれてからも、一樹の父のギフと暮らしている。義父だからギフ。忘れなくてもいいものもあるはずだ、そんな思いを共にテツコとギフは毎日を暮らす。それでも、月日は流れていく。忘れた方がいいのか、忘れなければならないのか。今はいない愛するものが、柔らかく優しく包まれてゆく。
誰でも、愛するものを失った経験はあるだろう。親だったり配偶者だったりペットだったり大事にしていたぬいぐるみだったり。なかなか実感がわかないのも本当だし、時が忘れさせてくれるというのも本当だ。だけど、存在は忘れることができても美しい記憶は残る。そして、その記憶が生きてゆく糧になる。
人の人生って、そんな風にいろいろな記憶が折り重なって続いているんだろうな。
そんな事を思う本です。
価格:660円 |
魔王 伊坂幸太郎 講談社文庫
正直言って、面白いかどうかよくわからない。いかようにでも解釈できる物語が、重層的に展開するが、陳腐なファンタジー小説のように多元宇宙を行ったり来たりするものではない。この世界のありようは、ただそこにあるそのままで、人がそれを認識すると多面的、重層的になる。認識する人によって、多様に認識される。
小説家は、この世界のありようを認識して綴るのだから、伊坂幸太郎は、「なんかいろいろなことがあるけど、大事なことって、もっと単純に言えることなんじゃないかなあ」と思っているのかもしれない。
価格:770円 |
2020年06月30日
流星ワゴン 重松清 講談社文庫
父親と息子という距離感は微妙だ。息子側からしてみると、ある瞬間から父親はこの世の中のダメなものの代表になる。子供の時には、親しみを持ち、尊敬さえしていたにも関わらず。たぶん父親から息子への距離は変わりないのに、息子から父親への距離は広がるばかりだ。そして、邂逅することは、おそらくは無い。
亡くなった父親と、正面から向き合うことを避けてきた私は、揺さぶられた。そして、もっと早く抱えなければならなかった思いを、改めて突きつけられた。ただ、その思いの重さに涙しない程度には大人になっている。
まったく、「ほっこり」どころではない。この本は、我々の世代が読むべき本だ。
価格:803円 |
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罪の声 塩田武士 講談社文庫
さよならドビュッシー 中山七里 宝島社文庫
グラスホッパー 伊坂幸太郎 角川文庫
相変わらず、会話文が上手い。チャンドラーと北方謙三を混ぜて、若干の村上春樹をふりかけたような会話文は、その全てが伏線のようにも見える。
ミステリーのようでもあり、ハードボイルドのようでもあり、家族小説のようでもあり、純文学のようでもある。伊坂幸太郎としか言いようがない。
わりと人が死んでいくので、死ぬ小説が好きじゃない人にはキツイかもしれない。でも、凄惨ではなく爽やかなのは、やはり伊坂幸太郎の力量なんだろうなあ。
価格:649円 |
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重力ピエロ 伊坂幸太郎 新潮文庫
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何冊目かの伊坂幸太郎。一作一作の作風が違うところに、引き出しが多いなあ、と思う。しかし、同じ事を角度を変えて描いているだけという気もする。伊坂作品お馴染みの「覚悟はあるのか」というセリフが出てくると、ニヤッとしてしまう。
なかなか読み進まないし、何を言いたいのかよくわからないし、相変わらず会話文は上手くて楽しいけど、ふわふわして捉えどころがない。これが新しい文学だと言われればそうかもしれないし、単なるアメリカミニマリズムの亜流と言われれば、そうかもしれない。しかし、読み味は伊坂幸太郎でしかない。「駄作のありえない作家 伊坂幸太郎」だ。
この作家、これからどうなっていくんだろう。衝撃の問題作とか書いてくれないかな。
価格:781円 |
【中古】 重力ピエロ /加瀬亮,岡田将生,小日向文世,森淳一(監督),伊坂幸太郎(原作),渡辺善太郎(音楽) 【中古】afb 価格:980円 |
ぼくのフェラーリ 坂元純 講談社文庫
なかなかに複雑な家庭環境を持つ主人公和也と、親とその親の世代の物語。全体に淡々しい優しさが満ち溢れている。人は元来、優しさでできていると言わんばかりだ。
深みはないけれども、語り口が軽くてすっきり読めるし、ほっこりしたい人におすすめ。
【中古】 ぼくのフェラーリ 講談社文庫/坂元純【著】 【中古】afb 価格:110円 |