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2020年06月30日

東京島 桐野夏生 新潮文庫

決して難解でもないし、とっつきも悪くない。文体が読みにくいわけでもないのに、いやに時間がかかった。なんだろう、この感じ。

清子と隆の夫婦は世界一周クルーズの途中で遭難し無人島に漂着する。その後日本人の若者たちや中国人たちが流れ着いてくるが、島に女性は清子ただひとり。やがて清子は女王として君臨する。

読み進めるうちに妙な感覚を覚えるのが時間がかかった理由かもしれない。そうか、この物語は神話なんだ、と思った途端に、物語中で清子が住民の一人であるオラガに島の神話を書き残すように言う。そうか、島は母体であり島の中は胎内なんだ、と思った途端に、妊娠した清子が、島の意思で子供を生むとか言い出す。なんで全部種明かししちゃうかなあ。もしかしたらこれが仕掛けなのかもしれないが、だとすると読書の楽しみを奪ってないか?だいたい、登場人物がみんな一言多いんだよなあ。もっと不親切な方が物語に深みが出ると思うんだけど。

とはいえ、綴られる言葉は現代詩のように強いし、ストーリー展開もめまぐるしい。十分に面白いんだけどなあ。これが相性ってやつかなあ。うーむ。

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