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2020年06月30日

ツナグ 辻村深月 新潮文庫

一回だけ使者(ツナグ)を通して死者に会うことができるという使者システム。古来伝承されてきたが具体的なことは何もわからない。あなたにこのシステムを利用できる機会が訪れたとしたら。

あからさまに生と死を扱う物語かというと、ちょっと違う。この物語の中では生と死は交換可能なものではない。死も象徴的ではあるが、あくまでも描かれるのは生だ。非常に健康的だ。それに加えて、構成がうまい。連作の最初のタイトルが「アイドルの心得」である。お洒落だ。そして最後のタイトルが「使者の心得」。読む前から準備がしやすい。結果的に読みやすい。ちょっとしたミステリーっぽい仕掛けもありつつ、最終的に家族を描くところなんかも流行りを外していない。なかなか狡猾な作者だ。

上手い作者の掌の上で、巧妙な作品をそうとは意識せずに読むのは、幸せな読書体験だ。

堅苦しくも難しくもなくホロッとくるところもあるので、誰にでも楽しめると思います。

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