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2022年08月25日
私だけの特捜最前線→30「ビーフシチューを売る刑事!〜おやっさん復帰編は哀しいドラマ」
※このコラムはネタバレがあります。
「おやっさん」こと船村刑事役の大滝秀治氏は、映画「影武者」の撮影のため、特捜最前線を1年間降板していました。その復帰編となったのが、第170話「ビーフシチューを売る刑事!」です。
末期がんの妻を看病するために退職した船村でしたが、妻の死後、娘と二人で上京し、小さなビーフシチューの店を開業しました。店名には亡き妻の名前を記し、静かに第二の人生をおくるつもりだったのです。
自宅謹慎中の叶刑事(夏夕介)が船村の店を訪れるところから、ドラマが始まっていきます。店を手伝う女店員が事件に巻き込まれ、捜査の過程で特命課の面々と船村が再会したのです。
神代課長(二谷英明)は、犯人逮捕のために女店員の協力を得たいと直接頼みます。が、船村は拒否しました。「刑事が怖くなった」と口にする船村ですが、その胸の内は正反対だったのかもしれません。
犯人と女店員は逃亡を図り、特命課が追い詰めるという緊迫した状況を知る船村。「刑事に復帰するのか、しないのか」という葛藤を抱える心理を、煮詰まっていくビーフシチューで見事に描写しています。
船村は、犯人と女店員説得のため、現場に現れます。しかし、懸命の説得もむなしく、船村を撃とうとした犯人は叶に射殺されました。女店員は船村に罵声を浴びせますが、船村には返す言葉もなかったのです。
刑事にとって、事件の解決は全てハッピーエンドばかりではありません。時には、今回のような残酷な結末を迎える場合もあります。おやっさんは、それを承知で特命課への復帰を決意したのでした。
大滝秀治さんが復帰したことで、特命課は神代課長、橘、桜井、紅林、吉野、叶、そして船村という7人体制となり、カンコ(高杉婦警)を含む「不動のメンバー」が以後、約5年間のドラマを作り上げていくのです。
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私だけの特捜最前線→29「地下鉄・連続殺人事件!〜滝刑事、痛恨のボーンヘッドで特命課を去る」
※このコラムはネタバレがあります。出演者は敬称略
特捜最前線の初期のレギュラーだった滝刑事こと桜木健一氏は、わずか1年弱の出演で降板しています。後半は出番も極端に減り、特命課での立ち位置も中途半端なまま終わってしまったという印象です。
警察組織の中で出世することを最大の目標にしていた滝刑事は、念願だった特命課に配属されました。ところが、段々と「人を疑う刑事という仕事」に対して、違和感を覚えていくのです。
地下鉄を舞台にした連続殺人事件では、重要参考人である夫婦の境遇に同情してしまい、いつしか「疑いのある者は徹底して捜査する」という刑事の基本を外れ、「この夫婦は犯人ではない」と勝手に思い込みます。
その思い込みは、やがて見当違いの捜査へと脱線し、夫を本ボシだと断定する特命課の刑事たちと意見が対立。ついには「夫が犯人だったら、俺は刑事を辞める」とまでタンカを切ってしまったのです。
結局、滝は退職へと追い込まれてしまいました。ただ、滝の気持ちは意外とサバサバしていたのかもしれません。見方を変えれば「辞めるためのきっかけが欲しかった」のだろうとも思えます。
それは滝が、飲食店を共同経営するという「次の道」を決めていたことにも表れています。終身雇用が当たり前だった昭和の時代には、異色の考え方だったかもしれませんが、今なら共感できるでしょう。
そして皮肉にも、滝刑事というキャラクターが去ったことにより、特捜最前線はエリート集団による本格的な社会派ドラマとして、刑事ドラマ史に残るような名作を次々と生み出していくことになるのです。
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私だけの特捜最前線→28「再会・容疑者は刑事の妹!〜昭和ならではの時代背景が垣間見れる」
※このコラムはネタバレがあります。出演者は敬称略
今回紹介する「再会・容疑者は刑事の妹!」に登場するのは、殉職した津上刑事(荒木しげる)の妹・トモ子(立枝歩)で、ある事件に巻き込まれ、容疑者として逮捕されてしまうという衝撃のストーリーです。
私だけの特捜最前線→23「殉職II・帰らざる笑顔!〜単なる津上刑事殉職のドラマに終わらせない特捜」
事件の容疑そのものは、特命課の捜査によって潔白が証明されましたが、ホステスの仕事をしていたトモ子は心を閉ざし続けます。そこには、最愛の兄を亡くした悲しみと喪失感があったのです。
昭和という時代背景ならではの演出が、トモ子の「夜中に一人で天気予報を聞いたことがあるの?」というセリフ。電話番号177をかけると、自動音声で天気予報が流れる・・・忘れかけていましたね(苦笑)
トモ子の孤独な姿を印象付けるようなシーンだと思いました。インターネットからSNSと、コミュニケーションツールが身近に増えてきた昨今を思うと、固定電話しかなかった時代が懐かしく感じます。
この作品では、トモ子の身をあれこれ心配する吉野刑事(誠直也)の思いが描かれています。吉野は後輩の津上と親しい仲間でしたし、ひょっとするとトモ子に特別な感情を持っていたのかもしれません。
ただ、これも昭和という古い時代の価値観なのでしょうが、吉野はホステスという仕事を蔑み、辞めるよう説得しています。カタギの仕事をして、いずれ結婚し家庭に入るのが女の幸せだと信じていたのでしょう。
ホステスという仕事の是非はさておき、吉野の個人的な価値観、ひいては古い男の価値観を押し付けるのはどうかなと思います。トモ子が自らの意思で働いているのを尊重することが、今の時代の価値観だと感じました。
ちなみにラストシーンでは、トモ子と吉野が非常にいい雰囲気を作り出しており、このままラブストーリーに発展するかもと期待したのですが、その後トモ子は特捜の準レギュラーにならず、霧散してしまったのです。
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私だけの特捜最前線→27「ああ三河島・ 幻の鯉のぼり!〜国鉄最大級の大惨事をドラマで再現」
※このコラムはネタバレがあります。
ドラマタイトルの「ああ三河島」とは、昭和37年に起きた国鉄(現JR)の三河島事故のことです。三河島駅近くで起きた三重衝突事故で、死者160人を出した国鉄最大級の大惨事でした。
ドラマの放送時からでも、すでに18年が経過していた三河島事故ですが、死者の中に現在でも身元不明の男性が一人おり、ドラマではその男性と周辺の人物にまつわるストーリーが描かれています。
男性は身元を示すものを何も持っていませんでした。その謎について、ドラマでは「現場で瀕死の男性から所持品を奪い取った3人組がいた」と設定。そのうちの一人の男・サクムラ(三上真一郎)が主役です。
事件は、3人組だった一人が殺されるところから始まり、事件のカギを握るのが三河島事故の身元不明男性だったのです。男性には幼い娘がおり、良心の呵責に耐え切れなかったサクムラが娘を引き取って育てていました。
娘はサクムラを兄のように慕い、彼も思いを寄せていました。しかし、自分が3人組の一味であることは、いつか娘に知られてしまう・・・そう思ったサクムラは、真実を手紙にしたためて姿を消そうとしました。
特命課に身柄を確保されたサクムラは、すべてを告白する決意を固めます。紅林刑事(横光克彦)は「真実を知って何になる!また娘を独りぼっちにしようというのですか」と語気を強めてたしなめます。
そして、神代課長(二谷英明)は「これからあなた方がどういう生き方をするかは分からないが、これは、こうした方がいい」と、サクムラの目の前で手紙を燃やしてしまうのです。サクムラは号泣しました。
なぜ、身元不明者の身元が分からなかったのかという謎解きと、血のつながりのない兄と妹との絆、父親を見殺しにした兄の苦悩など、1時間のドラマとは思えないような濃密な内容の作品でした。
ちなみに、三河島事故の発生から今年で60年。奇しくも、事故は私が生まれた数か月後に起きています。もちろん、私自身はリアルタイムで事故のことは知りませんが、なぜか懐かしい思いでドラマを見ていました。
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私だけの特捜最前線→26「復讐I・U〜バリコン爆弾という恐るべき凶器が特命課に・・・」
※このコラムはネタバレがあります。
特捜最前線3周年記念作品として前後編で放送された「復讐T・U」は、人間の動きに反応して、起動装置が作動する「バリコン爆弾」が特命課に送り付けられるというサスペンスで物語が進んでいきます。
バリコン爆弾のスイッチを入れられ、小さな身動きしかできなくなった神代課長(二谷英明)と高杉婦警(関谷ますみ)。神代は犯人の指示通り、部下たちに意味不明な命令を下さざるをえなくなりました。
神代の命令が怪しいと感じる橘刑事(本郷功次郎)や桜井刑事(藤岡弘、)ですが、神代の緊迫した雰囲気を察し、命令通りに動きます。その結果、特命課は5億円強奪の手先にされてしまいました。
後編である復讐Uの冒頭では、神代がバリコン爆弾の不発を狙って、一か八かの賭けに出ます。賭けに勝ち、爆弾不発でピンチを脱した神代や特命課は、犯人と5億円を追って捜査を本格化させていくのです。
時限爆弾のようなタイムリミットをめぐる切迫感とは違い、一瞬のミスや偶然でも爆発の恐れがあるバリコン爆弾を使うという発想は、改めて長坂秀佳脚本のスゴさを感じさせられずにはいられません。
また、バリコン爆弾で「人質」とされた高杉婦警の恐怖と緊張あふれる演技が、視聴者に一体感を持たせ、ドラマを引き締めてくれました。爆弾から解放された時の半狂乱な嗚咽ぶりも素晴らしかったです。
もちろん、二谷英明氏の迫真の演技も強烈に印象に残っています。切迫した状況下でも部下の報告を冷静に聞き、豊富な知識を駆使して危機を脱しました。神代課長の優秀さを際立たせた作品とも言えるでしょう。
ちなみに、犯人役で登場する三ツ木清隆氏は、だいぶ先のことになりますが、特命課に犬養刑事役として登場します。ブランクが空いているので、犬養と犯人がシンクロするようなことはありません(笑)
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2022年08月24日
私だけの特捜最前線→25「完全犯罪・350ヤードの凶弾!〜大物政治家に敢然と立ち向かう橘刑事の執念」
※このコラムはネタバレがあります。
この作品は、巧妙な手段で殺人を実行する大物政治家の姿を冒頭で視聴者に見せ、そのトリックを刑事たちがいかに暴くか、という視点で物語が進められて行きます。主役は橘刑事(本郷功次郎)です。
大物政治家(嵯峨善兵)の側近とも言える政治家が、特命課や大物政治家の目の前で射殺されます。橘は、大物政治家の挙動に不信感を抱き、周辺捜査をしながら状況証拠を集め始めました。
大物政治家は、特命課に乗り込んで神代課長(二谷英明)に圧力をかけてきます。その態度に橘は、大物政治家こそ「犯人」だという確信を持ち、自らのクビをかけて敢然と立ち向かうのです。
神代は、橘に「謹慎」を命じます。が、それは橘が自由に動けるようにするための方便だったのです。橘の持ち味である地道かつ丹念な捜査により、大物政治家の犯罪を匂わせる状況証拠がそろいつつありました。
その間、橘は一時捜査に行き詰まり、本当にクビを覚悟した時もありました。しかし、桜井刑事(藤岡弘、)をはじめ、同僚刑事たちは橘の姿に奮起し、協力を惜しみません。素晴らしいチームワークです。
ドラマを通じて、橘刑事が特命課の支柱的存在であることを示すとともに、とくに若手刑事たちが橘を慕い、心を一つにする姿を描いています。そのチームワークによって、大物政治家のトリックが崩せたのです。
大物政治家には、戦争で人殺しをしていたという過去がありました。そのことに真摯に向き合わず、逆に屈曲した形で彼の人格の中に残ってしまい、些細な理由から殺人を犯す結果になったのです。
ウクライナへのロシア軍侵攻のニュースが連日伝わっています。戦場の最前線では、大物政治家と同じように「人殺し」をさせられている軍人たちがいるという悲しい現実に、怒りを覚えてやみません。
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私だけの特捜最前線→24「警視庁番外刑事!〜夏夕介氏扮する叶旬一刑事の登場編」
※このコラムはネタバレがあります。
津上刑事(荒木しげる)の殉職編の翌週、特命捜査課に早くも新しい顔が登場します。叶旬一刑事(夏夕介)です。その初登場編はなかなかの破天荒ぶりで、最初から個性が際立っていました。
何者かに手製のライフルで狙われる叶。若くして警部補になったほどのエリートですが、平気で暴力を振るうような荒っぽさがあり、所轄署をたらい回しにされてきた札付きでもあります。
捜査に乗り出した神代課長(二谷英明)は、強引に叶を特命課に配属させます。しかし、叶は単独捜査を止めようとしません。やがて叶には、孤児院で育ったという「隠したい過去」があることが判明するのです。
このエピソードでは、叶刑事の本質が見事に描かれています。暴力刑事と陰口を叩かれますが、その相手は権力を振りかざしたり、反社会的な連中だったりで、彼は「弱者を守る」ことに徹していたのです。
そんな叶の本質をいち早く見抜いたのが、なんと高杉婦警(関谷ますみ)だったというのが、いかにも特捜らしい(笑) 吉野刑事(誠直也)なんかは「過去がなんだ!」と怒鳴るくらいですから(苦笑)
吉野といえば、叶刑事を演じる夏夕介氏は、この少し前に「六法全書を抱えた狼!」に犯人役で出演していました。吉野との体当たりの演技が評価され、晴れて特捜のレギュラーに抜擢されたとのことです。
叶刑事はこのあと、特捜最終回までレギュラーとして出演し続けます。夏夕介氏は、残念ながら59歳という若さで亡くなってしまいましたが、映像を通して若き夏氏の雄姿を見続けていきたいと思います。
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私だけの特捜最前線→23「殉職II・帰らざる笑顔!〜単なる津上刑事殉職のドラマに終わらせない特捜」
※このコラムはネタバレがあります。
特捜最前線が他の刑事ドラマと一線を画す特徴として、「刑事を殉職させない」との方向性があったと言われています。500回余の作品で殉職したのは二人だけ。その一人が津上刑事(荒木しげる)だったのです。
人気刑事ドラマだった「太陽にほえろ!」は、若手刑事の殉職をドラマチックに描いていました。殉職回のクライマックスは、事件解決よりも殉職シーンに重点が置かれていたように思われます。
津上刑事殉職編は「殉職I・津上刑事よ永遠に!」「殉職II・帰らざる笑顔!」の前後編で、前編こそ殉職へ向かうカウントダウンのように描かれていますが、後編のストーリーはちょっと違っているのです。
津上刑事は後編の冒頭で殉職してしまいます。しかし、事件は解決したわけではなく、さらに恐るべき事態へと進展していき、津上を失った特命課の刑事たちは焦りからか、冷静な捜査が出来なくなってしまうのです。
そんな刑事たちにヒントを与えてくれたのが、津上の「言葉」でした。前編の様々なシーンで何気なく口走った津上の「言葉」がキーワードとなり、事件解決へと導いていったのです。
殉職をドラマのクライマックスに据えるのではなく、一つの「過程」にとどめ、あくまでも捜査と事件解決を軸にしているところに、特捜最前線らしさを感じます。むろん、津上殉職をドラマチックに描きつつです。
殉職後、たった一人残された津上の妹が、神代課長(二谷英明)に「兄さんを返して!」と泣き叫ぶシーンには胸が痛みました。肉親の悲痛な思いをストレートに表現している演出にも特捜らしさがうかがえます。
神代も以前、娘が事件に巻き込まれて殺されるという経験をしています。その時、「娘さんを殺したのはあんただ!」と糾弾したのが津上でした。妹を見る神代の辛そうな表情が印象的なシーンでもあります。
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私だけの特捜最前線→22「警視庁窓際族!〜長門裕之氏の窓際警視シリーズ第1弾」
※このコラムはネタバレがあります。
神代警視正役の二谷英明氏が怪我で番組を離れた際、ピンチヒッターとして一時特命課を指揮していた蒲生警視(長門裕之)が、セミレギュラーで登場することになった最初の作品です。
吉野刑事(誠直也)らが麻薬の売人を追跡中、ひょんなところで蒲生と再会します。蒲生は所轄署に勤務していますが、いわゆる「窓際族」になっていました。その蒲生と吉野が合同捜査をすることになったのです。
ところが蒲生は、昼間は公園のベンチでごろ寝、夜はスナックで女の子とイチャイチャと、やる気のなさ全開。特命課を指揮していた頃の面影は全くなく、吉野は苛立ちを募らせていくのです。
それでも神代課長は「蒲生から目を離すな」と厳命します。蒲生は一見サボっているように見えて、実は独自に捜査していたことを神代は見抜いていたのです。その鋭い捜査手腕に吉野は感心させられるばかり。
事件解決後、蒲生は花形ポストに栄転されます。特命課に怒鳴り込み、神代に「余計なお世話だ」と食って掛かかる蒲生。その言葉通り、次回登場作では再び「閑職」の身となっていました(笑)
番組としての蒲生警視の位置づけは非常に重要だと思われます。特命課の絶対的リーダーである神代課長に対し、唯一真っ向から物が言える人物だからです。もちろん神代も蒲生には一目も二目も置いていました。
また、エリート集団である特命課のメンバーに対し、在野の立場かつ叩き上げのベテランとして、様々なアドバイスを与えています。まさに名バイプレーヤーと言っていいでしょう。
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私だけの特捜最前線→21「6000万の美談を狩れ!〜真っ向からぶつかり合う橘と桜井」
※このコラムはネタバレがあります。
桜井刑事(藤岡弘、)が復帰してから半年、ナンバー2の橘刑事(本郷功次郎)とはしっくり来なかったようです。その代表的なエピソードが第131話「6000万の美談を狩れ!」でした。
ビルから男性が転落死した事件を巡り、桜井は「自殺」、橘は「強盗殺人」と推理し、真っ向から意見がぶつかり合います。自殺と他殺では、支払われる生命保険金の額が大きく異なるという背景もありました。
現場検証を元に、桜井と橘は自分の主張を繰り返します。桜井は「甘いねえ、それじゃあ捜査はできんぜ」と売り言葉を吐いたのに対し、橘は「誰に向かって口利いているんだ」と激怒するのです。
ここで神代課長(二谷英明)が割って入ります。二人の捜査は詰めが甘いと指摘した上で「もっと突っ込んだ捜査をしてから俺の前に来い」と叱り飛ばし、この場を収めてしまいました。
これは私の推測ですが、「特捜最前線」というドラマを続けていくうえで、橘と桜井のわだかまりの解消は必要不可欠だったとスタッフは考え、このエピソードを入れたのではないかと思います。
桜井が復帰した当時、二谷氏のけがで神代課長は不在でした。不在のまま対立してしまうと、特命課は真っ二つに割れてしまいます。だからこそ、神代課長が仲裁する役目を担う必要があると考えたのでしょう。
さてドラマでは、桜井が新しい証拠を探し出してくれば、橘は証拠の矛盾を見つけ出す−という感じで進んでいき、そうした捜査過程を通して徐々に真実とへ近づき、同時に二人のわだかまりが解けていくのです。
コラムではストーリーの紹介を差し控えておきますが、事件そのものの真相と、それを知った家族の思いがラストに描かれ、「後味の悪い結末」を持ち味とする特捜らしさがうかがえます(苦笑)
このエピソード後、橘と桜井が表立って対立することはなくなり、桜井は橘をナンバー2と認め、絶大な信頼を持つようになるのです。
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