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2022年10月06日

私だけの特捜最前線→55「バラの花殺人事件!〜映画のワンシーンを演出した見事なラスト」

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※このコラムはネタバレがあります。

この回の主役は、おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)ですが、事件の主役となるのは、元俳優の老人(岩城力也)です。元俳優は、船村が若いころ感銘した映画の主人公だったという設定でした。

胸にバラの花を捧げられた被害者

チンピラが殺され、胸にバラの花が一輪置かれていたというシーンから始まります。チンピラから子供を助けた女性が、執拗に付きまとわれた挙句、乱暴されそうになったため、とっさに殺してしまったと疑われます。

ドラマの前半は、女性を疑う所轄署と、女性の身の潔白を証明しようという船村という構図で進んでいきます。やがて第2の事件が発生。この被害者も胸にバラの花が置かれていたのを見て、船村はふと思い出します。

それは「薔薇の復讐」という映画で、船村は刑事になりたての頃に見たといいます。映画のストーリーに似た展開を見せる二つの事件。主人公を演じた元俳優の姿を目撃した船村は、元俳優の消息を探し当てます。

そして第3の事件が発生し、元俳優の動機を特命課が解明します。映画のラストから居所を推理した他の刑事たちとは別に、船村は一人撮影所へと向かいます。そこに元俳優が姿を現したのでした。

船村は「バカなことをしたものだ」と、映画の刑事と同じセリフを吐きます。すると元俳優は「俺がやらなかったら、誰がやるんです?」と返します。船村は映画のラストシーンを自ら演じ、元俳優を逮捕したのでした。

奥が深い長坂秀佳脚本

このドラマが秀逸だと思うのは、事件現場や女性が子供を助けたシーンに、元俳優が姿を現してのにもかかわらず、まるでエキストラの一人であるかのように何気なく映しているところです。

船村が映画のことを思い出してから、徐々に元俳優の存在を目立たせていき、事件の核心へと向かっていく演出は見事の一言。しかも、女性の勇気ある行動が、彼の動機につながっていくよう仕立てているのです。

さらに、元俳優役に岩城力也さんを起用したアイデアも素晴らしいです。岩城さんは、端役で何度も特捜最前線に出演しているので、前半部で画面に映し出されたとしても、視聴者は先入観を持って見ることはありません。

船村と元俳優のラストシーンのセリフも、その前に元俳優の部屋で、船村がセリフを回想している場面で聞かせておくことで、「バカなことをしたものだ」という言葉が、唐突な印象を与えないようにしています。

さすがは長坂秀佳脚本と言わしめるような、奥が深いドラマだと思います。もちろん、大滝秀治さん、岩城力也さんの名演技が、脚本と演出の見事さを支えていることは言うまでもありません。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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