2024年01月18日
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする (だいわ文庫) [ カレン・フェラン ] |
★★★★
本の概要
経営コンサルタントと大企業のマネージャーとして計約30年のキャリアを持つ著者が書いた本。コンサルタントがよく用いてきた様々な経営理論やツール群の問題点を指摘し、代わりに、本当は何が大事なのかを説く。
感想など
タイトルに惹かれて買ってみた。
惹かれた理由は、自分の中に潜む、コンサルタントという職業に対する猜疑心がそのままタイトルに凝縮されているように感じたから。
読んだら期待通り面白かった。訳文もとても読みやすく、おかげで原文の著者に親しみが持てた。
出だしも見事に謝罪から始まるのには、なんだか文学的な趣さえも感じた。
著者自身は若い頃のコンサル仕事への反省はあるものの、実際に「御社をつぶした」わけではないそうで、むしろ元からわりとまともな感覚を持っている模様。
しかしそれでも、「すべての経営コンサルタントを代表してお詫びします」とのこと。その内訳が、本の中に丁寧に書かれている。
私はコンサルタントでも経営層でもない。それでも内容はとても面白く感じられ、痛快な部分も多く、共感できるところも多かった。また、語られている内容は、組織の中で働く人ならば実際の考え方として役立てられるようにも思う。
著者の、既存の理論への知識と理解度、現場での実践経験とフィードバックや観察と思考、そしてその両群から得られた考察と試み、どれもがとても興味深い。
共感の点では、本の序盤から私がかなり共感できたのは、新卒コンサルタントのことだ。
新卒の就職先として近年コンサルタントが人気であると聞いたのはいつだったか。しかし、フルタイムの社会人すらほぼ未経験なのにもかかわらずいきなり、もしくはせいぜい1,2年以内にコンサルタントを自分ができると思う神経に対して、大変失礼ながら長らく疑問を感じてきた。私自身が凡庸以下であるために優秀で志が高い学生の気持ちが分からずにそう感じてしまっているという可能性もけっこうあるのだが、それにしてもそんなに人気というのには、やはりなかなか納得しがたい。会社説明会の内容がよほど良いのだろうか。
もちろん、中には非常に優秀な学生がいて、いきなりそういうことがまともにできてしまう人も中にはいるだろう。また、経験や勉強や修行のためだと割り切ってなろうとする人もいるだろう。それならまだ少しは分かる。
でも、応募する多数の新卒者がそうだとは全然思えない。そういう科目の勉強が得意な人もいるだろうが、実践は科目の勉強とは違う。
この本は、そういったことに対してもずばっと指摘したり、そういうことによって引き起こされてきた問題の事例を挙げているところも魅力だ。
私は実際のコンサルタントを多く知っているわけではない。しかし読みながら、職場にいたそういった人たちや、現場で体験したドンピシャな事例などがそこそこ思い浮かんできて、とても面白かった。
この本で指摘される様々な問題のことをまとめて一言で言い表すなら、「机上の空論」だろう。それを振りかざす人、それに振り回される人。そういう人々が現実や数値化しにくい大事ものを見過ごす代わりに、表面的には説得力のありそうな疑似解決策のようなものに頼り切ってしまうことで、様々な弊害が引き起こされてきたのだろう。
やはり、エンロン事件は代表事例として紹介されている。
とはいえ、コンサルタントや経営理論やそういったツール群の全てが否定されているわけではない。使える理論もあるし、うまく活用すればよいのだと言うことも書かれている。
道具と同様、選び方と使い方が大事ということだろう。
そのために役立ついくつかの表もこの本には掲載されている。「コンサルタントが役に立つとき、役に立たないとき」表、「危険なコンサルタントの見抜き方」表、「正しい理論、まちがった理論」の真偽判定表、コンサル的表現に騙されないようにするための「専門用語を解読する」表など、どれも見やすく、必要なときに見直せば役立ちそうだ。
コンサルタントのここ数十年の歴史もちらっと垣間見ることができたし、読み物としても学習書としても面白かった。
タグ:経営コンサルタント
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posted by myreading at 22:29| 社会・ビジネス --- ビジネス