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2021年01月03日

チーズはどこへ消えた? (扶桑社BOOKS)

チーズはどこへ消えた? (扶桑社BOOKS)



★★★★
本の概要

世界的なベストセラーとなっているビジネス書。
内容は3つの部分に分かれている。メインの話は2つめの部分。これは劇中劇かつ童話のような形態をとっている。
1つめと3つめの部分については、そのメインたる2つ目の話についてリアリティのある登場人物たちが語り合うという、ちょっと面白い形式になっている。
原書は1998年に出版されている。
感想など

読みやすくそんなに多くない分量なので、すぐに読了した。大切なことが物語風に展開されるため、頭にすっと入りやすかった。
行き詰ったときやそうなりそうなときに恐れずに変化に対応することの大切さや面白さを、シンプルに疑似体験できた。

これは1998年に出版されたので、ちょうど家庭にもPCが急激に普及してきた時期と重なるのかな、と思った。それに類する変化への対応を迫られている登場人物が文中に出ていたというのもあり。

この話自体はとても有用だと思う。
特に日本ではこの種の教訓がもっと広まらないといけないのではないか。日本の労働生産性は、2019年、OECD加盟37カ国中21位だという。その原因の一つは、やはり依然として変化をむやみに嫌ってしまっていることにあるのではないか。

と言いつつ、一方で逆の懸念も感じた。
それは、「とにかくじゃんじゃん変化さえすればいい」、みたいな行き過ぎた思考も増えてしまっているのではないか、という懸念。
この本は、物事を真面目にこなしはするけれど保守的であるがゆえにうまくいっていない、という人々を暗に対象にしているように思う。しかし、そのことを変に解釈してしまい、基本や準備をやらないまま、とにかく変化がカッコいいとかスピーディに変えまくることがすげえんだ、みたいな短絡思考になってしまっている場面もけっこうあるのではないだろうか。それにより、保守的な人はそれに反発してますます保守的になる。そんなストレスフルなサイクルが、少なくとも日本の労働現場では長年繰り広げられてこなかったか?そんな気がすごくする。
この本では直接は言及されていないかもしれないけど、やはり基本は大事だし、バランスや周囲への説明も大事だろう。その上で、踏み込むところは早めに勇気をもって踏み込む。それがこの本の言いたい事のように思う。
登場する小人のホーがヘム自身に気づいて欲しいという態度は、そういう調和も意識してのことなのかもしれない。

ところでこの本を読みながら思い出したのが、NHKの番組「すイエんサー」。
この中のコーナーで、モデルの女子から成るすイエんサーガールズと、理系の大学生が、科学的な工作の課題を時間内で競い合う、というのを何回か見たことがある。すイエんサーガールズは、たいていほぼ直感で手を動かしつつみんなで楽しく盛り上がりながらこなしていくのにくらべ、理系大学生の方はホワイトボードで話し合ったり頭の中で計算や計画をしているうちに時間がなくなり、最終的にすイエんサーガールズの工作品の方が勝つというパターンを何回か目撃した。
これは変化を恐れるなということとは違うかもしれないけど、『チーズはどこへ消えた?』の迷路の中にいるネズミと小人の状況によく似ている気がした。これは、ある一定の状況下では考える前に手を動かせ、習うより慣れろ、考えるな感じろ、みたいな方策の方が有利な場合がある、というもう一つの教訓になっているのかも。この本でそのことが明示されているわけではないけど。

ともかく、変化すべき状況なのにその変化を恐れる自分がいた際には、もう一度読み返してみたい本。

続編もあるみたい。

迷路の外には何がある? ??『チーズはどこへ消えた?』その後の物語 チーズはどこへ消えた? (扶桑社BOOKS)



そういえば、『仕事は楽しいかね』という似た雰囲気の本のことも思い出した。内容もそうだけど、優しげな表紙絵の感じや語り口がこの本を連想させる。

仕事は楽しいかね? (きこ書房)



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