分かりやすい高校数学:確率(番外3)モンティ・ホール問題2
前回 ⇒ 確率(番外2):モンティ・ホール問題1
さて,今回はモンティ・ホール問題の解答を計算する方法です,前回,主観確率と客観確率の違いを説明いたしました.それをちょっとまとめてみましょう.
客観確率:誰の目から見ても明らかな,客観性を持った確率
問題を定めたら,ただ一つだけ決まる
主観確率:考えや信念により定まる,主観性を持った確率
人それぞれで異なっている.
ここで,モンティ・ホール問題は,「解答者の主観確率」を計算するものとなります.ではなぜ,客観確率の計算の問題とならないのでしょうか?それは,客観確率はこの場合存在しないからなんです.客観確率は既に答えが決まってしまっている問題に対して,計算することはできません.答えが決まってるのだから,正解の扉が確率的に変化することはないからです.これをちょっと図で説明してみましょう.
下の図は,モンティ・ホール問題が作られるまでの過程を示しています.過程は@ドアと車,ヤギを用意する→Aモンティがドアセッティング→B解答者選ぶ→Cモンティが外れのドアを開く という四つに分けて考えています.
今,問題が出されている時点というのはCの時点の話です.しかし,正解のドアはすでに,Aの時点で決まってしまいます.そうすると,どのドアが正解であるかという客観確率は,Cの時には考えることができなくなります.「これから,あるドアに正解が入る客観確率」(Aより前の時点での客観確率)は定められるのですが,「すでにドアに正解が入っている客観確率」(A以降の時点での客観確率)は定められないんです.確率の問題じゃなくなっちゃうからですね.
サイコロの例でいえば,「サイコロを振った時に,1が出る客観確率」は1/6ですが,「サイコロを振った後で,それが1であった客観確率」は計算できないのです.でもこの両者は非常に似通っていますから,後者の答えも1/6と考えていいように思いますよね.それを主観確率と呼んでいるわけです.
さて,では主観確率は数学的にどのように計算されるのでしょうか?主観確率も,実は客観確率の考え方に沿って計算します.客観確率の考え方は覚えているでしょうか?そう,無限回の試行をしたときに,その事象が現れる割合で計算されますね.
しかし,それを単純には実行できません.問題となっているCの時点では,既に正解が決まっているわけですから,何万回試してみたって,正解は常に同じドアになります.割合なんか出てきません.そこで,問題が始まる前,つまりドアや車を用意するという時点からさかのぼって,@からCまでの過程を試行します.@の時点では正解のドアは決まってないわけですから,Cまでたどり着いたとき,正解のドアは常に一定ではなくなるわけです.これによって「確率」が計算できるようになるわけです.
さぁ,実際にモンティ・ホール問題を計算してみましょう!これを図で示してみます.
Aの時点までは確率的な分岐がない一本道になります.(正確には,モンティがどのドアに正解を入れるか,という分岐があるのですが,正解を入れたドアをA,不正解のドア二つをB,Cと名づけることで,問題の説明を簡単にしています)
Bの時点で,分岐が現れます.解答者がA,B,Cの三つのドアのうち,どのドアを選択するかですね.これはそれぞれ,1/3の確率で選択されます.
Cの時点では,司会者(モンティ)は必ず不正解のドアを開けます.このとき,不正解のドアが一つしかないなら(つまりは,解答者が不正解のドアを選択していた場合)分岐はありません.しかし,二つある場合(つまりは,解答者が正解のドアを選択していた場合)は,不正解のドアB,Cの中から,それぞれを1/2の確率で選択することになります.
さて,これで問題が出されている状況までたどり着きました.この時,選んだドアに正解が入っている確率はいくつでしょうか?そう,1/6 + 1/6 = 1/3ですね.そして,もう一つのドアが正解である確率は1/3 + 1/3 = 2/3になっています.よって,選んだドアが正解である確率の方が低いので,ドアは変更した方が良いわけです.
ただし注意してほしいのは,この解答が正しくなるのは「司会者(モンティ)が必ず,不正解のドアをあけることを,解答者が知っている」場合に限られます.もし,解答者がそれを知らない場合,確率が変わってしまいます.これは客観確率ではありえないことです.そう,主観確率は,その主観確率を持っている人が「何を聞き,何を知っているか」によって変わってしまうのです.
では次回,「司会者(モンティ)が必ず,不正解のドアをあけることを,解答者が知らない」場合を考えてみたいと思います.
それではー
最初 ⇒ 確率(1)問題設定
さて,今回はモンティ・ホール問題の解答を計算する方法です,前回,主観確率と客観確率の違いを説明いたしました.それをちょっとまとめてみましょう.
客観確率:誰の目から見ても明らかな,客観性を持った確率
問題を定めたら,ただ一つだけ決まる
主観確率:考えや信念により定まる,主観性を持った確率
人それぞれで異なっている.
ここで,モンティ・ホール問題は,「解答者の主観確率」を計算するものとなります.ではなぜ,客観確率の計算の問題とならないのでしょうか?それは,客観確率はこの場合存在しないからなんです.客観確率は既に答えが決まってしまっている問題に対して,計算することはできません.答えが決まってるのだから,正解の扉が確率的に変化することはないからです.これをちょっと図で説明してみましょう.
下の図は,モンティ・ホール問題が作られるまでの過程を示しています.過程は@ドアと車,ヤギを用意する→Aモンティがドアセッティング→B解答者選ぶ→Cモンティが外れのドアを開く という四つに分けて考えています.
今,問題が出されている時点というのはCの時点の話です.しかし,正解のドアはすでに,Aの時点で決まってしまいます.そうすると,どのドアが正解であるかという客観確率は,Cの時には考えることができなくなります.「これから,あるドアに正解が入る客観確率」(Aより前の時点での客観確率)は定められるのですが,「すでにドアに正解が入っている客観確率」(A以降の時点での客観確率)は定められないんです.確率の問題じゃなくなっちゃうからですね.
サイコロの例でいえば,「サイコロを振った時に,1が出る客観確率」は1/6ですが,「サイコロを振った後で,それが1であった客観確率」は計算できないのです.でもこの両者は非常に似通っていますから,後者の答えも1/6と考えていいように思いますよね.それを主観確率と呼んでいるわけです.
さて,では主観確率は数学的にどのように計算されるのでしょうか?主観確率も,実は客観確率の考え方に沿って計算します.客観確率の考え方は覚えているでしょうか?そう,無限回の試行をしたときに,その事象が現れる割合で計算されますね.
しかし,それを単純には実行できません.問題となっているCの時点では,既に正解が決まっているわけですから,何万回試してみたって,正解は常に同じドアになります.割合なんか出てきません.そこで,問題が始まる前,つまりドアや車を用意するという時点からさかのぼって,@からCまでの過程を試行します.@の時点では正解のドアは決まってないわけですから,Cまでたどり着いたとき,正解のドアは常に一定ではなくなるわけです.これによって「確率」が計算できるようになるわけです.
さぁ,実際にモンティ・ホール問題を計算してみましょう!これを図で示してみます.
Aの時点までは確率的な分岐がない一本道になります.(正確には,モンティがどのドアに正解を入れるか,という分岐があるのですが,正解を入れたドアをA,不正解のドア二つをB,Cと名づけることで,問題の説明を簡単にしています)
Bの時点で,分岐が現れます.解答者がA,B,Cの三つのドアのうち,どのドアを選択するかですね.これはそれぞれ,1/3の確率で選択されます.
Cの時点では,司会者(モンティ)は必ず不正解のドアを開けます.このとき,不正解のドアが一つしかないなら(つまりは,解答者が不正解のドアを選択していた場合)分岐はありません.しかし,二つある場合(つまりは,解答者が正解のドアを選択していた場合)は,不正解のドアB,Cの中から,それぞれを1/2の確率で選択することになります.
さて,これで問題が出されている状況までたどり着きました.この時,選んだドアに正解が入っている確率はいくつでしょうか?そう,1/6 + 1/6 = 1/3ですね.そして,もう一つのドアが正解である確率は1/3 + 1/3 = 2/3になっています.よって,選んだドアが正解である確率の方が低いので,ドアは変更した方が良いわけです.
ただし注意してほしいのは,この解答が正しくなるのは「司会者(モンティ)が必ず,不正解のドアをあけることを,解答者が知っている」場合に限られます.もし,解答者がそれを知らない場合,確率が変わってしまいます.これは客観確率ではありえないことです.そう,主観確率は,その主観確率を持っている人が「何を聞き,何を知っているか」によって変わってしまうのです.
では次回,「司会者(モンティ)が必ず,不正解のドアをあけることを,解答者が知らない」場合を考えてみたいと思います.
それではー
最初 ⇒ 確率(1)問題設定
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