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2019年08月11日
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』
歩幅を広げることで認知症が予防できる!
2019年07月17日 16:15
予備軍も含めると患者数が860万人に上る認知症。
その大半を占めるアルツハイマー型認知症は、
いまだに有用な治療法が開発されていない。
そのような中、
歩幅を広げることが認知症の発症を抑制
する上で有用である可能性が示されたという。
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』
を上梓した国立環境研究所主任研究員
(前:東京都健康長寿医療センター研究員)
の谷口優氏に、認知症と歩幅の関係について解説してもらった。
歩幅が狭いままだと認知症リスクが2倍以上に
―まず、この本の基となった研究の概要を教えて下さい。
谷口
体の動きと頭の働きの関係性に注目した一連の研究
では、最初に「歩幅と認知機能の変化」
を調査しました。
対象は、新潟県と群馬県の65歳以上の住民1,000例超で、
それぞれの歩幅を測定して歩幅が
@狭い群
A普通の群
B広い群
―に分け、最長4年間にわたり追跡し、
認知機能の低下との関連を検討しました。
その結果、4年間追跡できた666例のうち
およそ6人に1人で
認知機能の低下が認められました。
この3群を歩幅の広い群を対照として比較すると、
認知機能低下のリスクが
狭い群では3.39倍、
普通の群でも1.22倍に上りました
(J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2012; 67: 796-803)。
次の研究では、延べ6,500例を対象とした、
最長で12年間にわたる大規模な追跡調査データを用いました。
この研究では、加齢が歩幅に与える影響に加え、
歩幅の変化と認知症発症の関係についても調査しました。
その結果、65歳以降では加齢とともに歩幅が狭くなっていくのですが、
3つの異なる軌跡を描くことが分かりました。
歩幅が広い水準で変化する群を対照として、
中程度の歩幅の広さで変化する群と、
歩幅が狭いまま年齢を重ねる群を比較すると、
認知症発症リスクは中程度の群では変わりませんでしたが、
狭いままの群では2.12倍高くなることがわかりました。
この研究結果で興味深かったのは、
歩幅が狭い状態のまま年を重ねると、
年齢や性にかかわらず、
認知症の発症リスクが2倍以上になることでした
(J AM Med Dir Assoc 2017; 18: 192.e13-192.e20)。
―歩調(テンポ)は関係ないのでしょうか。
谷口
歩行速度は、「歩幅」と「歩調」の2つの要素
により決まりますが、
歩調に絞って認知機能低下との関連を調査した
ところ、因果関係は
認められず、
前述のように、歩幅のみの関連が認められました。
―そこで、歩幅を広げて
歩くよう推奨されている
ようですね。
歩幅の目安はどのように考えればよいでしょうか。
谷口
先にご紹介した2つの研究結果から、
私は65cmを目安としています。
これは、
『横断歩道の白線をまたぎ越せる広さ』
に相当します。
ただし、膝や腰に痛みがある人や感覚器に障害がある人にはこの目安は適しません。
そこで、高齢者も含めて広く適用することを考えると、
これまでよりプラス10cm、
体力に自信のない方であればプラス5cmでもよいと思います。
―歩幅を広げることにどのような意味があるのでしょう?
谷口
実践してみると分かりますが、
意識して歩幅を広げて歩くことはなかなか大変で、
いつも以上に下肢や体幹、正しく体を使えている場合には
上肢を含む体全体にこれまで以上の負荷をかける
ことになります。
歩幅を広げるという一見単純な動作は、
@脳と足の間の神経伝達が刺激され脳が活性化する
A日ごろ使っていなかった、大きくて太い筋肉が賦活される
B運動強度が上がるため血液の循環が良くなり、
体の隅々の細胞まで栄養や酸素が届けられるようになる
C血管が刺激され、しなやかになる
D背筋が伸びて姿勢が良くなり、気分が高揚する
―といったさまざまな利点があると考えています。
歩幅を広げる努力により脳内の新たな回路を構築することで認知症の抑制に期待
―認知症患者を減らすのは社会的な課題ですね。
谷口
現在、わが国の認知症患者数は約462万人、
その予備軍である軽度認知障害(MCI)
も含めると約862万人に上ると推計されています。
一般的に、加齢とともに頭の働きは徐々に衰えていきます。
これは、神経細胞(ニューロン)の減少
やシナプスの異常により
脳内のネットワークがうまく機能しなくなることによります。
しかし、ネットワークの一部に異常を来しても、
新たな刺激が加わることにより、
新しい脳内のネットワークの構築が可能になる
と考えられています。
新たな刺激には、
脳トレや中強度の有酸素運動などがありますが、
広い歩幅を維持するという動作にも
脳への刺激効果があると私は考えています。
歩幅を広げることは、一見単純な動作ですが、
脳と足の間では常時複雑な情報のやり取りが行われており、
変化する環境の中で足の運びを一定に保つことが
脳に与える影響は非常に大きいのです。
―今後の目標についてお聞かせ下さい。
谷口
認知症患者の約6割はアルツハイマー型に分類されます。
アルツハイマー型認知症の場合、
正常な状態から約20年という長い期間で少しずつ病態が進行し、
MCIを経て発症に至ると考えられています。
現在のところ、アルツハイマー型認知症を根治する手段はありませんが、
MCIの状態であれば発症を先送りできたり、
正常な状態に戻ると考えられています。
米国の研究では、MCIが認められた集団のうち、
その後認知症を発症したのは約2割で、
そのままMCIにとどまったのは約5割、
約3割は正常に戻ったとの報告があります
(Ann Neurol 2008; 63: 494-506)。
このことから、認知症が発症する前の段階であれば、
認知機能を正常な状態に戻せる可能性があります。
その手段として、私は、誰もがすぐに実行できて長続きしやすい、
「歩幅」に大きな可能性を感じています。
歩幅を広げることによる種々の効果について研究を深め、
その研究の成果として1人でも多くの方の
認知症予防に寄与することができれば嬉しいですね。
歩幅を広げることで認知症が予防できる!
2019年07月17日 16:15
予備軍も含めると患者数が860万人に上る認知症。
その大半を占めるアルツハイマー型認知症は、
いまだに有用な治療法が開発されていない。
そのような中、
歩幅を広げることが認知症の発症を抑制
する上で有用である可能性が示されたという。
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』
を上梓した国立環境研究所主任研究員
(前:東京都健康長寿医療センター研究員)
の谷口優氏に、認知症と歩幅の関係について解説してもらった。
歩幅が狭いままだと認知症リスクが2倍以上に
―まず、この本の基となった研究の概要を教えて下さい。
谷口
体の動きと頭の働きの関係性に注目した一連の研究
では、最初に「歩幅と認知機能の変化」
を調査しました。
対象は、新潟県と群馬県の65歳以上の住民1,000例超で、
それぞれの歩幅を測定して歩幅が
@狭い群
A普通の群
B広い群
―に分け、最長4年間にわたり追跡し、
認知機能の低下との関連を検討しました。
その結果、4年間追跡できた666例のうち
およそ6人に1人で
認知機能の低下が認められました。
この3群を歩幅の広い群を対照として比較すると、
認知機能低下のリスクが
狭い群では3.39倍、
普通の群でも1.22倍に上りました
(J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2012; 67: 796-803)。
次の研究では、延べ6,500例を対象とした、
最長で12年間にわたる大規模な追跡調査データを用いました。
この研究では、加齢が歩幅に与える影響に加え、
歩幅の変化と認知症発症の関係についても調査しました。
その結果、65歳以降では加齢とともに歩幅が狭くなっていくのですが、
3つの異なる軌跡を描くことが分かりました。
歩幅が広い水準で変化する群を対照として、
中程度の歩幅の広さで変化する群と、
歩幅が狭いまま年齢を重ねる群を比較すると、
認知症発症リスクは中程度の群では変わりませんでしたが、
狭いままの群では2.12倍高くなることがわかりました。
この研究結果で興味深かったのは、
歩幅が狭い状態のまま年を重ねると、
年齢や性にかかわらず、
認知症の発症リスクが2倍以上になることでした
(J AM Med Dir Assoc 2017; 18: 192.e13-192.e20)。
―歩調(テンポ)は関係ないのでしょうか。
谷口
歩行速度は、「歩幅」と「歩調」の2つの要素
により決まりますが、
歩調に絞って認知機能低下との関連を調査した
ところ、因果関係は
認められず、
前述のように、歩幅のみの関連が認められました。
―そこで、歩幅を広げて
歩くよう推奨されている
ようですね。
歩幅の目安はどのように考えればよいでしょうか。
谷口
先にご紹介した2つの研究結果から、
私は65cmを目安としています。
これは、
『横断歩道の白線をまたぎ越せる広さ』
に相当します。
ただし、膝や腰に痛みがある人や感覚器に障害がある人にはこの目安は適しません。
そこで、高齢者も含めて広く適用することを考えると、
これまでよりプラス10cm、
体力に自信のない方であればプラス5cmでもよいと思います。
―歩幅を広げることにどのような意味があるのでしょう?
谷口
実践してみると分かりますが、
意識して歩幅を広げて歩くことはなかなか大変で、
いつも以上に下肢や体幹、正しく体を使えている場合には
上肢を含む体全体にこれまで以上の負荷をかける
ことになります。
歩幅を広げるという一見単純な動作は、
@脳と足の間の神経伝達が刺激され脳が活性化する
A日ごろ使っていなかった、大きくて太い筋肉が賦活される
B運動強度が上がるため血液の循環が良くなり、
体の隅々の細胞まで栄養や酸素が届けられるようになる
C血管が刺激され、しなやかになる
D背筋が伸びて姿勢が良くなり、気分が高揚する
―といったさまざまな利点があると考えています。
歩幅を広げる努力により脳内の新たな回路を構築することで認知症の抑制に期待
―認知症患者を減らすのは社会的な課題ですね。
谷口
現在、わが国の認知症患者数は約462万人、
その予備軍である軽度認知障害(MCI)
も含めると約862万人に上ると推計されています。
一般的に、加齢とともに頭の働きは徐々に衰えていきます。
これは、神経細胞(ニューロン)の減少
やシナプスの異常により
脳内のネットワークがうまく機能しなくなることによります。
しかし、ネットワークの一部に異常を来しても、
新たな刺激が加わることにより、
新しい脳内のネットワークの構築が可能になる
と考えられています。
新たな刺激には、
脳トレや中強度の有酸素運動などがありますが、
広い歩幅を維持するという動作にも
脳への刺激効果があると私は考えています。
歩幅を広げることは、一見単純な動作ですが、
脳と足の間では常時複雑な情報のやり取りが行われており、
変化する環境の中で足の運びを一定に保つことが
脳に与える影響は非常に大きいのです。
―今後の目標についてお聞かせ下さい。
谷口
認知症患者の約6割はアルツハイマー型に分類されます。
アルツハイマー型認知症の場合、
正常な状態から約20年という長い期間で少しずつ病態が進行し、
MCIを経て発症に至ると考えられています。
現在のところ、アルツハイマー型認知症を根治する手段はありませんが、
MCIの状態であれば発症を先送りできたり、
正常な状態に戻ると考えられています。
米国の研究では、MCIが認められた集団のうち、
その後認知症を発症したのは約2割で、
そのままMCIにとどまったのは約5割、
約3割は正常に戻ったとの報告があります
(Ann Neurol 2008; 63: 494-506)。
このことから、認知症が発症する前の段階であれば、
認知機能を正常な状態に戻せる可能性があります。
その手段として、私は、誰もがすぐに実行できて長続きしやすい、
「歩幅」に大きな可能性を感じています。
歩幅を広げることによる種々の効果について研究を深め、
その研究の成果として1人でも多くの方の
認知症予防に寄与することができれば嬉しいですね。
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2019年08月10日
「食品の選び方」「食べる順番」が2型糖尿病リスクに影響
(卵、牛乳、豆、鶏、魚、そして豚牛、
根っこ、葉っぱ、海藻、きのこ、豆、芋、果物、
油はオリーブ油、ごま油、しそ油(エゴマ)を食べてください。
食材としての魚、お肉の摂取量は、
必要タンパク量は自分の体重g×2倍
ー50kgの人は約50g×2倍=100g、
手のひら1枚分のお肉と、
手のひら1枚分のお魚を1日に食べてください。
食べる順番はおかずを最初に食べて
10分経ってから、
ご飯、麺、芋を食べてください。)
「食品の選び方」「食べる順番」が2型糖尿病リスクに影響
提供元:HealthDay News 公開日:2019/07/15
「食品の選び方」と「食べる順番」が
2型糖尿病の発症リスクに影響する
ことを示した3件の研究結果が、
米国栄養学会(ASN、6月8〜11日、米ボルチモア)で発表された。
これらの研究では、植物性食品を中心とした食事に改善したり、
ビタミンB2やビタミンB6を多く摂取したりすると
2型糖尿病リスクが低減したほか、
「食べる順番」も同リスクに影響する可能性が示された。
野菜を最初に食べると、
食後血糖値の上昇だけでなく、
食欲増進ホルモンの分泌も抑えられることが分かったという。
一つ目の研究は、前向きコホート研究である。
CARDIA(Coronary Artery Risk Development in Young Adults)
研究に参加した男女2,717人
(平均年齢25歳、約40%が黒人、約60%が女性)
を対象としたもの。
参加者を30年にわたり追跡した結果、
成人早期から中年期にかけて
食事の質に改善がみられた人では、
食事の質がわずかに低下した人
と比べて糖尿病リスクが60%低いことが示された。
研究を率いた米ミネソタ大学ツインシティー校のYuni Choi氏によれば、
「質の高い食事」とは栄養分に富んだ、
植物性食品が中心の食事だという。
今回の研究の対象者で
最も質の高い食事を摂取していた人では、
毎日野菜を4サービング以上、
果物を2サービング、
ナッツまたは種子類を2分の1〜1サービング、
全粒穀物を約2サービング摂取していた
一方、加工肉の摂取量は1サービング未満、
赤肉の摂取量は約1サービングだった。
同氏らは「植物性食品に含まれる多様な栄養素が
糖尿病予防に役立つと考えられる」と述べている。
二つ目の研究は、
3件の大規模観察研究に参加した計20万人の医療従事者
から得られた食事に関するデータを15年間にわたって追跡したもの。
この研究では、ビタミンB2とビタミンB6の摂取量が最も多い人では、
最も少なかった人に比べて2型糖尿病リスクが約10%低いことが分かった。
一方、ビタミンB12については、
全体的な摂取量は2型糖尿病リスクの上昇とは関連しなかったが、
食事からの摂取量が多いと同リスクは11%上昇した。
ただし、サプリメントからの摂取量との関連は認められなかったという。
また、最後の研究では、
中国人の成人16人(ほとんどが男性)を対象に、
一定量の野菜、肉、米が含まれた食事を、
あらかじめ決められた5パターンの順番のいずれかで摂取してもらい、
食後血糖値への影響を比較した。
その結果、野菜または肉を最初に食べると
食後血糖値の急上昇が抑えられることが分かった。
特に、「野菜、肉、米」の順番で
別々に食べると食後血糖値の急上昇が最も抑えられ、
食欲増進ホルモンにも好ましい影響が認められたという。
この研究を実施したグループの一人で
シンガポール臨床科学研究所(SICS)所長のChristiani Henry氏は
「野菜に含まれる食物繊維や他の栄養素により、
食べ物の消化にかかる時間が長くなり、
食後血糖値の急上昇が緩やかになる可能性がある」
と説明。
米を食べるときには、血糖値の上昇を抑えるために
最初に野菜を食べるようにすることが
「シンプルで実践的な方法」
になるのではないかとしている。
専門家の一人で、
米ニューヨーク・プレスビテリアン/ワイルコーネル医療センター
の内分泌科医であるRekha Kumar氏は、
これらの報告を受けて、
「果物や野菜、自然なままの食品を中心とした食事は、
2型糖尿病を管理する上で極めて実践的で取り入れやすい方法だ」
とした上で、
「毎食必ず一皿の半分を植物性の食品が占めるようにするべきだ」
と助言している。
また、食べる順番については、
「野菜や食物繊維が豊富な食品、タンパク質
は消化に長い時間がかかるため、
血糖値の上昇が緩やかになる。
理論的には、食べる順番を変える
ことは体重や食欲のコントロールに影響すると考えられる」
としている。
[2019年6月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay.
根っこ、葉っぱ、海藻、きのこ、豆、芋、果物、
油はオリーブ油、ごま油、しそ油(エゴマ)を食べてください。
食材としての魚、お肉の摂取量は、
必要タンパク量は自分の体重g×2倍
ー50kgの人は約50g×2倍=100g、
手のひら1枚分のお肉と、
手のひら1枚分のお魚を1日に食べてください。
食べる順番はおかずを最初に食べて
10分経ってから、
ご飯、麺、芋を食べてください。)
「食品の選び方」「食べる順番」が2型糖尿病リスクに影響
提供元:HealthDay News 公開日:2019/07/15
「食品の選び方」と「食べる順番」が
2型糖尿病の発症リスクに影響する
ことを示した3件の研究結果が、
米国栄養学会(ASN、6月8〜11日、米ボルチモア)で発表された。
これらの研究では、植物性食品を中心とした食事に改善したり、
ビタミンB2やビタミンB6を多く摂取したりすると
2型糖尿病リスクが低減したほか、
「食べる順番」も同リスクに影響する可能性が示された。
野菜を最初に食べると、
食後血糖値の上昇だけでなく、
食欲増進ホルモンの分泌も抑えられることが分かったという。
一つ目の研究は、前向きコホート研究である。
CARDIA(Coronary Artery Risk Development in Young Adults)
研究に参加した男女2,717人
(平均年齢25歳、約40%が黒人、約60%が女性)
を対象としたもの。
参加者を30年にわたり追跡した結果、
成人早期から中年期にかけて
食事の質に改善がみられた人では、
食事の質がわずかに低下した人
と比べて糖尿病リスクが60%低いことが示された。
研究を率いた米ミネソタ大学ツインシティー校のYuni Choi氏によれば、
「質の高い食事」とは栄養分に富んだ、
植物性食品が中心の食事だという。
今回の研究の対象者で
最も質の高い食事を摂取していた人では、
毎日野菜を4サービング以上、
果物を2サービング、
ナッツまたは種子類を2分の1〜1サービング、
全粒穀物を約2サービング摂取していた
一方、加工肉の摂取量は1サービング未満、
赤肉の摂取量は約1サービングだった。
同氏らは「植物性食品に含まれる多様な栄養素が
糖尿病予防に役立つと考えられる」と述べている。
二つ目の研究は、
3件の大規模観察研究に参加した計20万人の医療従事者
から得られた食事に関するデータを15年間にわたって追跡したもの。
この研究では、ビタミンB2とビタミンB6の摂取量が最も多い人では、
最も少なかった人に比べて2型糖尿病リスクが約10%低いことが分かった。
一方、ビタミンB12については、
全体的な摂取量は2型糖尿病リスクの上昇とは関連しなかったが、
食事からの摂取量が多いと同リスクは11%上昇した。
ただし、サプリメントからの摂取量との関連は認められなかったという。
また、最後の研究では、
中国人の成人16人(ほとんどが男性)を対象に、
一定量の野菜、肉、米が含まれた食事を、
あらかじめ決められた5パターンの順番のいずれかで摂取してもらい、
食後血糖値への影響を比較した。
その結果、野菜または肉を最初に食べると
食後血糖値の急上昇が抑えられることが分かった。
特に、「野菜、肉、米」の順番で
別々に食べると食後血糖値の急上昇が最も抑えられ、
食欲増進ホルモンにも好ましい影響が認められたという。
この研究を実施したグループの一人で
シンガポール臨床科学研究所(SICS)所長のChristiani Henry氏は
「野菜に含まれる食物繊維や他の栄養素により、
食べ物の消化にかかる時間が長くなり、
食後血糖値の急上昇が緩やかになる可能性がある」
と説明。
米を食べるときには、血糖値の上昇を抑えるために
最初に野菜を食べるようにすることが
「シンプルで実践的な方法」
になるのではないかとしている。
専門家の一人で、
米ニューヨーク・プレスビテリアン/ワイルコーネル医療センター
の内分泌科医であるRekha Kumar氏は、
これらの報告を受けて、
「果物や野菜、自然なままの食品を中心とした食事は、
2型糖尿病を管理する上で極めて実践的で取り入れやすい方法だ」
とした上で、
「毎食必ず一皿の半分を植物性の食品が占めるようにするべきだ」
と助言している。
また、食べる順番については、
「野菜や食物繊維が豊富な食品、タンパク質
は消化に長い時間がかかるため、
血糖値の上昇が緩やかになる。
理論的には、食べる順番を変える
ことは体重や食欲のコントロールに影響すると考えられる」
としている。
[2019年6月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay.
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2019年08月09日
「冷房をつけて寝ると体に悪い」はウソだ
「深部体温」が下降するときに夜の眠りが始まる
3〜4時間は冷房をつけて安眠熟睡して夏の寝不足を防いでください
「冷房をつけて寝ると体に悪い」はウソだ
最低でも3時間は部屋を冷やすべき
「冷房が苦手」といって、
就寝時にエアコンを消してしまう人がいる。
だが、それは命を危険にさらす行為だ。
医師で早稲田大学准教授の西多昌規氏は
「熱帯夜であれば一晩中使うことが望ましい。
蒸し暑い環境で寝続けると、
睡眠不足になるだけでなく、
熱中症になるリスクがある」という――。
「昔はエアコンなしでも眠れた」にだまされてはいけない
今年は5月で真夏日を記録したこともあって、
真夏の暑さを気にしている人も多いだろう。
昔と比べて日本の夏は、
確かに暑くなってきている。
2018年に気象庁が公表した
「ヒートアイランド監視報告2017」*によれば、
日本の気温、特に首都圏をはじめとする
都市部の気温は確実に上昇傾向を示しており、
100年前と比べると、
東京の年間平均気温は3.2度上昇したという。
ひと世代前の人が言う
「わたしたちの頃はエアコンなしでも過ごせていた」
という言葉を、鵜呑みにしてはいけない。
このような無知が、
無謀な野外活動や労働による熱中症の多発を招いている。
睡眠も同じであり、
変化しつつある気候の条件に応じた暑熱対策が必要である。
「深部体温」が下降するときに夜の眠りが始まる
蒸し暑いとぐっすり眠れない。
当たり前のことだと思われるだろう。
人間の眠りと体温との関係をある程度知っておく必要
があるので、簡潔に説明したい。
睡眠は体温調節(ここで体温は、深部体温を指す)と深い関係がある。
約24時間周期のなかで、深部体温は夕方に最高値を迎え、
深夜から早朝にかけて最低値をとる。
深部体温が示す夕方のピークを経て下降するときに、
人間の夜の眠りが始まる。
そして深夜の最低値を過ぎて上昇に転じたときが、
覚醒・起床のタイミングとなる。
体温が下降するときに睡眠は生じやすい傾向があり、
眠ることによって代謝活動が休止するためさらに体温低下が促進される。
図が示すように、
内部から外部に熱が放散されるときに、
人間の眠気が増大する(※1)。
この基本原則が、睡眠と暑熱対策を考える際の重要な基礎となる。
放熱は、末梢の皮膚血管が拡張することによって生じる。
赤ちゃんが寝る時に、体表がぽかぽかしてくる現象が、
理解を助ける実例だ。
寝つき始めると、浅い睡眠から深い睡眠へと移行し、
個人差はあるが20〜30分程度で深い睡眠に入る。
深い睡眠(脳波上の所見から、徐波睡眠と呼ばれる)
に入ると、発汗量が増えて体温がさらに低下する.
睡眠から3〜4時間はエアコンを使用したほうがいい
寝室の温度設定の上限は28℃程度だと考える。
エアコン使用の注意点は、
設定温度・時間、エアコンからの気流に分けられる。
低すぎる設定温度は、後述する気流とも関係するが、
体温を過度に奪われる原因となる。
寝苦しさのために途中から中途半端に使うよりは、
就寝前よりオンにして寝やすくしておくなど、
予防的に使用したい。
夜中も30度に迫る熱帯夜が続く場合には、
一晩中、エアコンを使うことが望ましい。
睡眠前半の徐波睡眠は確保したいので、
睡眠前半の約3〜4時間はエアコンを使用したほうがよい。
冷風が直接当たると体調を崩しやすい
エアコンをつけたまま寝ると、
頭痛や身体のだるさなどが生じ、
不調となる人がいる。
原因としては、設定温度が低すぎること、
あるいはエアコンからの冷風が体に当たり
体温を奪われることが挙げられる。
冷風が直接当たらないように、
眠る場所と気流の位置関係には注意したい。
最近のエアコンは、
付けたり消したりするよりも継続的に使用した方が、
電気料金がかからない。
人工知能も装備して、
睡眠中も快適な温度・風向を維持してくれる高機能エアコンもある。
古いエアコンを使っている人は、
「まだ動くから大丈夫」
とは言わずに、
新調してみることも快眠への確実な方法である。
寝具は通気性・吸湿性を意識して選ぶといい
入眠が体温の放熱にかかっているので、
寝具については通気性
という特徴が最も重要と考えられる。
寝具については、好き嫌い、合う合わない、
という好みの個人差が大きい。
体格のがっしりした人は固めを、
華奢な人は柔らかめのマットレスを
選ぶ傾向があるとは言われるが、
しっかりとしたエビデンスは乏しい。
基本を押さえた上で、
自身に合ったものを選ぶのがいちばんである。
*https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/index_himr.html
レポート(PDF)はhttps://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr/h30/index.html
(※1)Krauchi K. : The human sleep-wake cycle reconsidered from a thermoregulatory point of view. Physiol Behav 2007 ;90:236-245.
PRESIDENT Onlineから
https://president.jp/articles/-/29189
西多 昌規(にしだ・まさき)
精神科医 医学博士。早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授。
東京医科歯科大学卒業後、スタンフォード大学医学部客員講師などを経て現職。
『テンパらない技術』(PHP文庫)、
『休む技術』『眠る技術』(ともに、大和書房)など著書多数。
3〜4時間は冷房をつけて安眠熟睡して夏の寝不足を防いでください
「冷房をつけて寝ると体に悪い」はウソだ
最低でも3時間は部屋を冷やすべき
「冷房が苦手」といって、
就寝時にエアコンを消してしまう人がいる。
だが、それは命を危険にさらす行為だ。
医師で早稲田大学准教授の西多昌規氏は
「熱帯夜であれば一晩中使うことが望ましい。
蒸し暑い環境で寝続けると、
睡眠不足になるだけでなく、
熱中症になるリスクがある」という――。
「昔はエアコンなしでも眠れた」にだまされてはいけない
今年は5月で真夏日を記録したこともあって、
真夏の暑さを気にしている人も多いだろう。
昔と比べて日本の夏は、
確かに暑くなってきている。
2018年に気象庁が公表した
「ヒートアイランド監視報告2017」*によれば、
日本の気温、特に首都圏をはじめとする
都市部の気温は確実に上昇傾向を示しており、
100年前と比べると、
東京の年間平均気温は3.2度上昇したという。
ひと世代前の人が言う
「わたしたちの頃はエアコンなしでも過ごせていた」
という言葉を、鵜呑みにしてはいけない。
このような無知が、
無謀な野外活動や労働による熱中症の多発を招いている。
睡眠も同じであり、
変化しつつある気候の条件に応じた暑熱対策が必要である。
「深部体温」が下降するときに夜の眠りが始まる
蒸し暑いとぐっすり眠れない。
当たり前のことだと思われるだろう。
人間の眠りと体温との関係をある程度知っておく必要
があるので、簡潔に説明したい。
睡眠は体温調節(ここで体温は、深部体温を指す)と深い関係がある。
約24時間周期のなかで、深部体温は夕方に最高値を迎え、
深夜から早朝にかけて最低値をとる。
深部体温が示す夕方のピークを経て下降するときに、
人間の夜の眠りが始まる。
そして深夜の最低値を過ぎて上昇に転じたときが、
覚醒・起床のタイミングとなる。
体温が下降するときに睡眠は生じやすい傾向があり、
眠ることによって代謝活動が休止するためさらに体温低下が促進される。
図が示すように、
内部から外部に熱が放散されるときに、
人間の眠気が増大する(※1)。
この基本原則が、睡眠と暑熱対策を考える際の重要な基礎となる。
放熱は、末梢の皮膚血管が拡張することによって生じる。
赤ちゃんが寝る時に、体表がぽかぽかしてくる現象が、
理解を助ける実例だ。
寝つき始めると、浅い睡眠から深い睡眠へと移行し、
個人差はあるが20〜30分程度で深い睡眠に入る。
深い睡眠(脳波上の所見から、徐波睡眠と呼ばれる)
に入ると、発汗量が増えて体温がさらに低下する.
睡眠から3〜4時間はエアコンを使用したほうがいい
寝室の温度設定の上限は28℃程度だと考える。
エアコン使用の注意点は、
設定温度・時間、エアコンからの気流に分けられる。
低すぎる設定温度は、後述する気流とも関係するが、
体温を過度に奪われる原因となる。
寝苦しさのために途中から中途半端に使うよりは、
就寝前よりオンにして寝やすくしておくなど、
予防的に使用したい。
夜中も30度に迫る熱帯夜が続く場合には、
一晩中、エアコンを使うことが望ましい。
睡眠前半の徐波睡眠は確保したいので、
睡眠前半の約3〜4時間はエアコンを使用したほうがよい。
冷風が直接当たると体調を崩しやすい
エアコンをつけたまま寝ると、
頭痛や身体のだるさなどが生じ、
不調となる人がいる。
原因としては、設定温度が低すぎること、
あるいはエアコンからの冷風が体に当たり
体温を奪われることが挙げられる。
冷風が直接当たらないように、
眠る場所と気流の位置関係には注意したい。
最近のエアコンは、
付けたり消したりするよりも継続的に使用した方が、
電気料金がかからない。
人工知能も装備して、
睡眠中も快適な温度・風向を維持してくれる高機能エアコンもある。
古いエアコンを使っている人は、
「まだ動くから大丈夫」
とは言わずに、
新調してみることも快眠への確実な方法である。
寝具は通気性・吸湿性を意識して選ぶといい
入眠が体温の放熱にかかっているので、
寝具については通気性
という特徴が最も重要と考えられる。
寝具については、好き嫌い、合う合わない、
という好みの個人差が大きい。
体格のがっしりした人は固めを、
華奢な人は柔らかめのマットレスを
選ぶ傾向があるとは言われるが、
しっかりとしたエビデンスは乏しい。
基本を押さえた上で、
自身に合ったものを選ぶのがいちばんである。
*https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/index_himr.html
レポート(PDF)はhttps://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr/h30/index.html
(※1)Krauchi K. : The human sleep-wake cycle reconsidered from a thermoregulatory point of view. Physiol Behav 2007 ;90:236-245.
PRESIDENT Onlineから
https://president.jp/articles/-/29189
西多 昌規(にしだ・まさき)
精神科医 医学博士。早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授。
東京医科歯科大学卒業後、スタンフォード大学医学部客員講師などを経て現職。
『テンパらない技術』(PHP文庫)、
『休む技術』『眠る技術』(ともに、大和書房)など著書多数。
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2019年08月08日
砂糖入り飲料、がんのリスク増大/BMJ
(100%果物ジュースはからだにいいと思ってた。
確かに、過量な果糖は代謝できないし、
どの代謝経路に入るかわかっていないから
ほどほどに、ということみたい)
砂糖入り飲料、がんのリスク増大/BMJ
提供元:ケアネット 公開日:2019/07/22
砂糖入り飲料の消費は、
全がんおよび乳がんの
リスクを増加させ、
100%果物ジュースも
全がんのリスクと
関連することが、
フランス・パリ第13大学のEloi Chazelas氏らの調査で明らかとなった。
研究の成果は、BMJ誌
2019年7月10日号に
掲載された。
砂糖入り飲料の消費は
最近10年で世界的に
増加しているという。
砂糖入り飲料と肥満リスクには明確な関連が認め
られ、肥満は多くのがんの
強力なリスク因子とされる。
10万人以上の住民を対象とするフランスのコホート研究
研究グループは、
100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と、
がんのリスク
との関連の評価を目的とする
住民ベースの前向きコホート研究を行った
(フランス保健省などの助成による)。
解析には、フランスで2009年にWebベースで登録が開始された
NutriNet-Santeコホートの2018年までのデータ(10万1,257例)を用いた。
砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料の消費の評価には、
3,300項目の食品および飲料に関して、
参加者の日常的な消費状況が記録されるようデザインされた
反復的24時間食事記録法を用いた。
飲料のタイプごとに、男女別の消費量を
それぞれ4段階に分けて解析した。
主要アウトカムは、
飲料の消費と
全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの関連とした。
競合リスクを考慮し、多変量で補正した
FineとGrayのハザードモデルを用いて評価を行い、
部分分布のハザード比(HR)を算出した。
がん予防における修正可能なリスク因子である可能性
10万1,257例(平均年齢42.2[SD 14.4]歳)のうち、
女性が7万9,724例(78.7%)を占め、
男性は2万1,533例(21.3%)であった。
飲料のタイプ別の割合は、
砂糖入り飲料(100%果物ジュースを除く)が36%、
100%果物ジュースが45%で、
人工甘味料入り飲料は19%だった。
追跡期間中央値5.1年(49万3,884人年)の間に、
2,193例が初発のがんを発症した。
内訳は、
乳がんが693例(閉経前283例、閉経後410例)、
前立腺がんが291例、
大腸がんは166例で、
診断時の平均年齢は58.5±12.0歳だった。
砂糖入り飲料の消費は、
全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.18、
95%信頼区間[CI]:1.10〜1.27、p<0.001)および
乳がん(1.22、1.07〜1.39、p=0.004)のリスクと
有意な関連が認められた。
乳がんは、閉経前(p=0.02)が閉経後(p=0.07)よりも
関連性が明確であったが、
砂糖入り飲料の消費量中央値は、
閉経期(88.2mL/日)のほうが閉経前(43.2mL/日)に比べ多かった。
砂糖入り飲料の消費は、
前立腺がんおよび大腸がんとは関連がなかった。
また、肺がんにも関連は認めなかったが(p=0.1)、
統計学的検出力がきわめて低かった。
人工甘味料入り飲料の消費は、
がんのリスクとは関連しなかったが、
全サンプルに占める消費の割合が相対的に低かった
ことから、統計学的検出力が不十分であった可能性がある。
サブ解析では、
100%果物ジュースの消費は全がん
(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.12、
95%CI:1.03〜1.23、p=0.007)
のリスクと有意な関連を示した。
著者は、
「これらの結果は、
他の大規模な前向き研究で再現性を検証する必要がある」とし、
「欧米諸国で広く消費されている砂糖入り飲料は、
がん予防において除去可能なリスク因子である」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)
原著論文はこちら
Chazelas E, et al. BMJ. 2019;366:l2408
確かに、過量な果糖は代謝できないし、
どの代謝経路に入るかわかっていないから
ほどほどに、ということみたい)
砂糖入り飲料、がんのリスク増大/BMJ
提供元:ケアネット 公開日:2019/07/22
砂糖入り飲料の消費は、
全がんおよび乳がんの
リスクを増加させ、
100%果物ジュースも
全がんのリスクと
関連することが、
フランス・パリ第13大学のEloi Chazelas氏らの調査で明らかとなった。
研究の成果は、BMJ誌
2019年7月10日号に
掲載された。
砂糖入り飲料の消費は
最近10年で世界的に
増加しているという。
砂糖入り飲料と肥満リスクには明確な関連が認め
られ、肥満は多くのがんの
強力なリスク因子とされる。
10万人以上の住民を対象とするフランスのコホート研究
研究グループは、
100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と、
がんのリスク
との関連の評価を目的とする
住民ベースの前向きコホート研究を行った
(フランス保健省などの助成による)。
解析には、フランスで2009年にWebベースで登録が開始された
NutriNet-Santeコホートの2018年までのデータ(10万1,257例)を用いた。
砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料の消費の評価には、
3,300項目の食品および飲料に関して、
参加者の日常的な消費状況が記録されるようデザインされた
反復的24時間食事記録法を用いた。
飲料のタイプごとに、男女別の消費量を
それぞれ4段階に分けて解析した。
主要アウトカムは、
飲料の消費と
全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの関連とした。
競合リスクを考慮し、多変量で補正した
FineとGrayのハザードモデルを用いて評価を行い、
部分分布のハザード比(HR)を算出した。
がん予防における修正可能なリスク因子である可能性
10万1,257例(平均年齢42.2[SD 14.4]歳)のうち、
女性が7万9,724例(78.7%)を占め、
男性は2万1,533例(21.3%)であった。
飲料のタイプ別の割合は、
砂糖入り飲料(100%果物ジュースを除く)が36%、
100%果物ジュースが45%で、
人工甘味料入り飲料は19%だった。
追跡期間中央値5.1年(49万3,884人年)の間に、
2,193例が初発のがんを発症した。
内訳は、
乳がんが693例(閉経前283例、閉経後410例)、
前立腺がんが291例、
大腸がんは166例で、
診断時の平均年齢は58.5±12.0歳だった。
砂糖入り飲料の消費は、
全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.18、
95%信頼区間[CI]:1.10〜1.27、p<0.001)および
乳がん(1.22、1.07〜1.39、p=0.004)のリスクと
有意な関連が認められた。
乳がんは、閉経前(p=0.02)が閉経後(p=0.07)よりも
関連性が明確であったが、
砂糖入り飲料の消費量中央値は、
閉経期(88.2mL/日)のほうが閉経前(43.2mL/日)に比べ多かった。
砂糖入り飲料の消費は、
前立腺がんおよび大腸がんとは関連がなかった。
また、肺がんにも関連は認めなかったが(p=0.1)、
統計学的検出力がきわめて低かった。
人工甘味料入り飲料の消費は、
がんのリスクとは関連しなかったが、
全サンプルに占める消費の割合が相対的に低かった
ことから、統計学的検出力が不十分であった可能性がある。
サブ解析では、
100%果物ジュースの消費は全がん
(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.12、
95%CI:1.03〜1.23、p=0.007)
のリスクと有意な関連を示した。
著者は、
「これらの結果は、
他の大規模な前向き研究で再現性を検証する必要がある」とし、
「欧米諸国で広く消費されている砂糖入り飲料は、
がん予防において除去可能なリスク因子である」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)
原著論文はこちら
Chazelas E, et al. BMJ. 2019;366:l2408
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2019年08月07日
水分摂取と各飲料水の糖質比較
水分摂取と各飲料水の糖分について
【実践型!食事指導スライド】公開日:2018/07/04
水分摂取と各飲料水の糖質比較
これからの時期、水分摂取を意識することが増え、
ペットボトルを購入する機会も多くなりますが、
ここに水分摂取の落とし穴があります。
1日の水分摂取量の目安として、
水分制限がない場合は約1.5〜2.0Lといわれています。
これは、コップ1杯を200mLと換算して、8〜10杯ほどです。
水分には、
「酸素や栄養素を運ぶ働き」
「老廃物を排泄する働き」
「血液を循環させる働き」
「汗として体温を調整する働き」
「体液の性状を一定に保つ働き」
など多くの働きがあります。
朝、起きがけの1杯から始め、こまめな水分摂取が必要です。
夏の時期、
「電解質の多いスポーツドリンクを飲んだほうが良い」
と考えている糖尿病患者さんなどが、
無意識下で清涼飲料水による
糖分の過剰摂取で高血糖や
清涼飲料水ケトーシスを引き起こすケースもあります。
大手2社のスポーツドリンク(ペットボトル500mL)で
清涼飲料水の糖質を比較した場合、
A社は23.5g(94kcalご飯茶碗6分目)、B社は31g(124kcal同3/4杯)でした。
これを1本3gのスティックシュガーで換算すると、
A社は約8本分、B社は約10本分に相当します。
また、最近では、水と間違えてしまうような
清涼飲料水もあります。
これでは、水分を摂取しているつもりで、
糖質を大量に摂取してしまうことになります。
飲料に入っている糖分の問題点は、もう1つあります。
裏の表示を見ると
「果糖ぶどう糖液糖」
「果糖 砂糖」などの表記があります。
果糖(フルクトース)や
ブドウ糖(グルコース)は
単糖類に分類され、
それ以上加水分解されない糖のため、
体内に入るとすぐに腸管から吸収されます。
また、液糖であることでより吸収がされやすくなります。
吸収された糖は、血糖値の急上昇へつながるため、
血糖コントロールへの影響、糖化など、
生活習慣病のリスクが高くなります。
(20年ぐらい前、
中高校生の間にペットボトル症候群といって、
糖尿病発病が増加しました)
また、果糖は、内臓肥満やメタボへの影響が強く、
米国・カリフォルニア大学デービス校のStanhope氏らは
「ヒトにエネルギー比25%のフルクトースを
10週間摂取させると、
内臓脂肪の増加、脂質代謝異常、
インスリン抵抗性の発症が引き起こされる」
と報告しています1)。
さらに、フルクトースはグレリンの抑制作用がなく、
満腹中枢にも働かないため、
その点においても肥満を助長させる大きな要因となります。
空調のきいた室内にいることが多い、
運動などをあまりしないなど、
大量に汗をかくような環境ではない方や、
食事がきちんと食べられている方は、
食事から塩やミネラルが摂れるので、
水、お茶、麦茶(ミネラル含有)などを中心に
水分を摂取してもらいましょう。
まずは清涼飲料水の糖質量の多さを認識してもらうこと、
清涼飲料水に多く含まれる
果糖摂取のリスクを患者さんに認識してもらうことが大切です。
飲み物を買う際には、
原材料名が記載されたラベルの確認を
習慣にするよう伝えることもお勧めします。
参考文献:1) Stanhope KL, et al. J Clin Invest. 2009;119:1322-1334.
浅野 まみこ ( あさの まみこ ) 氏
株式会社エビータ代表取締役・管理栄養士 食生活コンサルタント
[略歴]
総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにて
1万8,000人以上の栄養相談を実施。
その経験を生かし、企業のコンサルティング、レシピ開発など多方面で活躍中。
年間100時間以上の講演を行い、全国をとび回っている。
NHKおはよう日本、TBS「名医のTHE太鼓判」をはじめ、
フジテレビ「ダイバイヤー」の準レギュラーを務めるなど、
メディアや雑誌に多数出演。
飲食店や大手食品会社のヘルシー商品の考案や、
駅弁やコンビニ商品のプロデュースを担当。
「食生活が楽しいと人生が100倍楽しい!」
をモットーに活動をしている。
420名以上の隊員が所属する「栄養士戦隊☆」を主催、
隊長を務める。
夕刊フジ「きょうから実践 外食・コンビニ健康法」
を毎週水曜に連載中。
新著:『血糖値を下げる夜9時からの遅ごはん』(誠文堂新光社)
『「コンビニ食・外食」で健康になる方法』(草思社)
ホームページ:http://e-vita.jp/
公式ブログ:http://ameblo.jp/evita/
【実践型!食事指導スライド】公開日:2018/07/04
水分摂取と各飲料水の糖質比較
これからの時期、水分摂取を意識することが増え、
ペットボトルを購入する機会も多くなりますが、
ここに水分摂取の落とし穴があります。
1日の水分摂取量の目安として、
水分制限がない場合は約1.5〜2.0Lといわれています。
これは、コップ1杯を200mLと換算して、8〜10杯ほどです。
水分には、
「酸素や栄養素を運ぶ働き」
「老廃物を排泄する働き」
「血液を循環させる働き」
「汗として体温を調整する働き」
「体液の性状を一定に保つ働き」
など多くの働きがあります。
朝、起きがけの1杯から始め、こまめな水分摂取が必要です。
夏の時期、
「電解質の多いスポーツドリンクを飲んだほうが良い」
と考えている糖尿病患者さんなどが、
無意識下で清涼飲料水による
糖分の過剰摂取で高血糖や
清涼飲料水ケトーシスを引き起こすケースもあります。
大手2社のスポーツドリンク(ペットボトル500mL)で
清涼飲料水の糖質を比較した場合、
A社は23.5g(94kcalご飯茶碗6分目)、B社は31g(124kcal同3/4杯)でした。
これを1本3gのスティックシュガーで換算すると、
A社は約8本分、B社は約10本分に相当します。
また、最近では、水と間違えてしまうような
清涼飲料水もあります。
これでは、水分を摂取しているつもりで、
糖質を大量に摂取してしまうことになります。
飲料に入っている糖分の問題点は、もう1つあります。
裏の表示を見ると
「果糖ぶどう糖液糖」
「果糖 砂糖」などの表記があります。
果糖(フルクトース)や
ブドウ糖(グルコース)は
単糖類に分類され、
それ以上加水分解されない糖のため、
体内に入るとすぐに腸管から吸収されます。
また、液糖であることでより吸収がされやすくなります。
吸収された糖は、血糖値の急上昇へつながるため、
血糖コントロールへの影響、糖化など、
生活習慣病のリスクが高くなります。
(20年ぐらい前、
中高校生の間にペットボトル症候群といって、
糖尿病発病が増加しました)
また、果糖は、内臓肥満やメタボへの影響が強く、
米国・カリフォルニア大学デービス校のStanhope氏らは
「ヒトにエネルギー比25%のフルクトースを
10週間摂取させると、
内臓脂肪の増加、脂質代謝異常、
インスリン抵抗性の発症が引き起こされる」
と報告しています1)。
さらに、フルクトースはグレリンの抑制作用がなく、
満腹中枢にも働かないため、
その点においても肥満を助長させる大きな要因となります。
空調のきいた室内にいることが多い、
運動などをあまりしないなど、
大量に汗をかくような環境ではない方や、
食事がきちんと食べられている方は、
食事から塩やミネラルが摂れるので、
水、お茶、麦茶(ミネラル含有)などを中心に
水分を摂取してもらいましょう。
まずは清涼飲料水の糖質量の多さを認識してもらうこと、
清涼飲料水に多く含まれる
果糖摂取のリスクを患者さんに認識してもらうことが大切です。
飲み物を買う際には、
原材料名が記載されたラベルの確認を
習慣にするよう伝えることもお勧めします。
参考文献:1) Stanhope KL, et al. J Clin Invest. 2009;119:1322-1334.
浅野 まみこ ( あさの まみこ ) 氏
株式会社エビータ代表取締役・管理栄養士 食生活コンサルタント
[略歴]
総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにて
1万8,000人以上の栄養相談を実施。
その経験を生かし、企業のコンサルティング、レシピ開発など多方面で活躍中。
年間100時間以上の講演を行い、全国をとび回っている。
NHKおはよう日本、TBS「名医のTHE太鼓判」をはじめ、
フジテレビ「ダイバイヤー」の準レギュラーを務めるなど、
メディアや雑誌に多数出演。
飲食店や大手食品会社のヘルシー商品の考案や、
駅弁やコンビニ商品のプロデュースを担当。
「食生活が楽しいと人生が100倍楽しい!」
をモットーに活動をしている。
420名以上の隊員が所属する「栄養士戦隊☆」を主催、
隊長を務める。
夕刊フジ「きょうから実践 外食・コンビニ健康法」
を毎週水曜に連載中。
新著:『血糖値を下げる夜9時からの遅ごはん』(誠文堂新光社)
『「コンビニ食・外食」で健康になる方法』(草思社)
ホームページ:http://e-vita.jp/
公式ブログ:http://ameblo.jp/evita/
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2019年08月06日
覚えておきたい熱中症の基本事項 【救急診療の基礎知識】
(本格的な熱中症のシーズンに突入しました。
下記 記事を一部省略、順番を変えて載せいています)
覚えておきたい熱中症の基本事項
【救急診療の基礎知識】
ケアネット
坂本 壮 ( さかもと そう ) 氏
国保旭中央病院 救命救急科
西伊豆健育会病院 内科
『本当に熱中症か?!』
熱中症は環境因子だけでも十分起こりえますが、
普段であれば自己対応(環境を変える、水分・塩分を摂取する)
ができずに発生した可能性があります。
つまり、熱中症に陥った原因をきちんと検索する必要があります。
とくに非労作性熱中症
(運動・労作業と関係のない、高齢者に多い熱中症です)
の場合には、
尿路感染症や肺炎などの感染症などが
引き金となっているかもしれません。
また、薬剤やクリーゼなども熱中症様症状をとることがあります。
これらの鑑別は病歴をきちんと把握すればおおよそ可能です。
明らかに部屋が暑かった、
当日の朝までは普段どおりであった
などの病歴がわかれば、
感染症や薬剤の影響は考えづらいでしょう。
それに対して、数日前から体調の変化があった場合には、
感染症などの影響も考え対応する必要があります。
初期対応としては以下の2点を意識し、速やかに対応しましょう。
(1)目標体温
深部体温*が39℃を超える高体温の持続は予後不良因子であり、
38℃台になるまでは積極的な冷却処置を行いましょう。
*深部体温
中枢温を正確に反映する部位は腋窩温でも皮膚温でもありません。
最も好ましいのは深部体温(膀胱温、直腸温、食道温)です。
救急外来など初療時には、
直腸温を測定するか、
温度センサー付きバルーンカテーテルを利用し、
膀胱温を測定します。
健康な人の体温の平均値は、腋窩温36.4℃に対して
直腸温37.5℃と約1℃異なると言われていますが、
高体温で発汗している場合や測定方法によって、
腋窩温や皮膚温は容易に変化します
(正しく測定できません)。
熱中症、とくに重症度が高いと判断した症例では、
深部体温を測定する意識をもちましょう。
(2)冷却方法
体表冷却法が一般的です。気化熱を利用します。
ぬるま湯(40〜45℃)を霧吹きを用いて体表にかけ、扇風機などで扇ぎます。
熱中症の予防
熱中症は予防可能です。
起こしてしまった人へは、
治療だけでなく正しい熱中症の知識、
そして周囲の方への啓発・指導を含め、
ポイントを絞って熱中症を起こさないために必要なことを伝えましょう。
「また熱中症の患者か!?」と思うのではなく、
チャンスだと思い、再発予防に努めましょう。
『熱中症の基本的事項を伝授』
熱中症の初期症状、非労作性熱中症に関して伝えましょう。
症状が熱中症によるものであることを
知っておかないと対応できません。
また、熱中症は屋外で起こるものと思っていると、
非労作性熱中症に陥ります。
高齢の方からは
「風通しがいいのでクーラーは使用していません(設置していません)」、
「クーラーは嫌いでね」という台詞をよく聞きますが、
必要性をきちんと説明し、理解してもらうことが大切です。
●熱中症の発生リスク評価を伝授
猛暑が続いていますが、
どの程度危険なのかを認識しなければ、
「大丈夫だろう」と軽視してしまいます。
朝のニュースをテレビやスマホで確認するのもよいですが、
暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)
を確認する癖をもっておきましょう。
熱中症の発生に関与する因子は気温だけではなく、
湿度、風速、日射輻射です。
とくに湿度は大きく影響し、
これらを実際に計測し算出して出てきた数値がWBGTです。
細かなことは割愛しますが、WBGT>28℃になると
熱中症が急増し危険と判断します(表)。
●環境省の熱中症予防情報を伝授
環境省熱中症予防情報サイトでは、
WBGT(暑さ指数)を都道府県、地点別に確認できます。
3日間の予測も併せて確認できるため、
熱中症を予防する立場にある学校の教師や職場の管理者は
必ず確認しておく必要があります。
朝のニュースなどで危険性は日々報道されていますが、
それでもなお発生しているのが熱中症です。
願わくは、自ら確認し意識しておくことが必要と考えます。
「熱中症の危険がある」ということを
事前に意識して対応すれば、
体調の変化に対する対応も迅速に行えるでしょう。
●熱中症? と思った際の対応を伝授
こむら返りや
頭痛、倦怠感などを自覚し、
環境因子から熱中症?
と判断した場合には、
速やかに環境を改善し
(日陰や店舗内など涼しい場所へ移動)、
水分だけでなく塩分を摂取するように勧めましょう。
症状が改善しない場合や、
自身で水分・塩分の摂取が困難な場合には、
時間経過で改善することも多いですが、
症状の増悪、
一人暮らしで経過を診ることができる家族がいない場合には、
病院へ受診するように指示したほうがよいでしょう。
屋内外のリスクを見極め夏を過ごす
7月は熱中症予防強化月間の重点取組期間です
(厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」)。
今年は梅雨明けが遅く、
いきなり真夏日に突入したので、
慣れの期間がありませんでした。
まだまだ暑い日が続きます。
日頃の体調管理を行いつつ、
屋外でのスポーツや作業をする場合には、
リスクを評価し、予防に努め、
屋内で過ごす場合には、
温度・湿度を意識した環境の設定を行い、
夏を乗り切りましょう!
参考文献
1)日本救急医学会熱中症に関する委員会.
熱中症の実態調査-日本救急医学会Heatstroke STUDY 2012最終報告-.
日救急医会誌. 2014;25:846-862.
下記 記事を一部省略、順番を変えて載せいています)
覚えておきたい熱中症の基本事項
【救急診療の基礎知識】
ケアネット
坂本 壮 ( さかもと そう ) 氏
国保旭中央病院 救命救急科
西伊豆健育会病院 内科
『本当に熱中症か?!』
熱中症は環境因子だけでも十分起こりえますが、
普段であれば自己対応(環境を変える、水分・塩分を摂取する)
ができずに発生した可能性があります。
つまり、熱中症に陥った原因をきちんと検索する必要があります。
とくに非労作性熱中症
(運動・労作業と関係のない、高齢者に多い熱中症です)
の場合には、
尿路感染症や肺炎などの感染症などが
引き金となっているかもしれません。
また、薬剤やクリーゼなども熱中症様症状をとることがあります。
これらの鑑別は病歴をきちんと把握すればおおよそ可能です。
明らかに部屋が暑かった、
当日の朝までは普段どおりであった
などの病歴がわかれば、
感染症や薬剤の影響は考えづらいでしょう。
それに対して、数日前から体調の変化があった場合には、
感染症などの影響も考え対応する必要があります。
初期対応としては以下の2点を意識し、速やかに対応しましょう。
(1)目標体温
深部体温*が39℃を超える高体温の持続は予後不良因子であり、
38℃台になるまでは積極的な冷却処置を行いましょう。
*深部体温
中枢温を正確に反映する部位は腋窩温でも皮膚温でもありません。
最も好ましいのは深部体温(膀胱温、直腸温、食道温)です。
救急外来など初療時には、
直腸温を測定するか、
温度センサー付きバルーンカテーテルを利用し、
膀胱温を測定します。
健康な人の体温の平均値は、腋窩温36.4℃に対して
直腸温37.5℃と約1℃異なると言われていますが、
高体温で発汗している場合や測定方法によって、
腋窩温や皮膚温は容易に変化します
(正しく測定できません)。
熱中症、とくに重症度が高いと判断した症例では、
深部体温を測定する意識をもちましょう。
(2)冷却方法
体表冷却法が一般的です。気化熱を利用します。
ぬるま湯(40〜45℃)を霧吹きを用いて体表にかけ、扇風機などで扇ぎます。
熱中症の予防
熱中症は予防可能です。
起こしてしまった人へは、
治療だけでなく正しい熱中症の知識、
そして周囲の方への啓発・指導を含め、
ポイントを絞って熱中症を起こさないために必要なことを伝えましょう。
「また熱中症の患者か!?」と思うのではなく、
チャンスだと思い、再発予防に努めましょう。
『熱中症の基本的事項を伝授』
熱中症の初期症状、非労作性熱中症に関して伝えましょう。
症状が熱中症によるものであることを
知っておかないと対応できません。
また、熱中症は屋外で起こるものと思っていると、
非労作性熱中症に陥ります。
高齢の方からは
「風通しがいいのでクーラーは使用していません(設置していません)」、
「クーラーは嫌いでね」という台詞をよく聞きますが、
必要性をきちんと説明し、理解してもらうことが大切です。
●熱中症の発生リスク評価を伝授
猛暑が続いていますが、
どの程度危険なのかを認識しなければ、
「大丈夫だろう」と軽視してしまいます。
朝のニュースをテレビやスマホで確認するのもよいですが、
暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)
を確認する癖をもっておきましょう。
熱中症の発生に関与する因子は気温だけではなく、
湿度、風速、日射輻射です。
とくに湿度は大きく影響し、
これらを実際に計測し算出して出てきた数値がWBGTです。
細かなことは割愛しますが、WBGT>28℃になると
熱中症が急増し危険と判断します(表)。
●環境省の熱中症予防情報を伝授
環境省熱中症予防情報サイトでは、
WBGT(暑さ指数)を都道府県、地点別に確認できます。
3日間の予測も併せて確認できるため、
熱中症を予防する立場にある学校の教師や職場の管理者は
必ず確認しておく必要があります。
朝のニュースなどで危険性は日々報道されていますが、
それでもなお発生しているのが熱中症です。
願わくは、自ら確認し意識しておくことが必要と考えます。
「熱中症の危険がある」ということを
事前に意識して対応すれば、
体調の変化に対する対応も迅速に行えるでしょう。
●熱中症? と思った際の対応を伝授
こむら返りや
頭痛、倦怠感などを自覚し、
環境因子から熱中症?
と判断した場合には、
速やかに環境を改善し
(日陰や店舗内など涼しい場所へ移動)、
水分だけでなく塩分を摂取するように勧めましょう。
症状が改善しない場合や、
自身で水分・塩分の摂取が困難な場合には、
時間経過で改善することも多いですが、
症状の増悪、
一人暮らしで経過を診ることができる家族がいない場合には、
病院へ受診するように指示したほうがよいでしょう。
屋内外のリスクを見極め夏を過ごす
7月は熱中症予防強化月間の重点取組期間です
(厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」)。
今年は梅雨明けが遅く、
いきなり真夏日に突入したので、
慣れの期間がありませんでした。
まだまだ暑い日が続きます。
日頃の体調管理を行いつつ、
屋外でのスポーツや作業をする場合には、
リスクを評価し、予防に努め、
屋内で過ごす場合には、
温度・湿度を意識した環境の設定を行い、
夏を乗り切りましょう!
参考文献
1)日本救急医学会熱中症に関する委員会.
熱中症の実態調査-日本救急医学会Heatstroke STUDY 2012最終報告-.
日救急医会誌. 2014;25:846-862.
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2019年08月05日
”サイレントキラー”
”サイレントキラー”
高血圧のことを静かに近づく殺人者といいます!
症状はありません。
なので、検診で一番、皆さんが軽視しがちです。
症状が出た時は、取り返しのつかないことが圧倒的です。
実際に旦那さんの脳梗塞を体験したひとの話を聞いてみてください
脳梗塞の後遺症の重さに関係なく、みんなつらい。
そこからスタートしないと、みんなが不幸なんです。
だから家族も「つらい」ってもっと大声で堂々と言っていい。
私ももう、言っていこうと思って。だってほんとに大変なんだもん(笑)。
家族が病に倒れたら、看病に専念すべきなのか。
ライターの三澤慶子さんの夫は50歳で脳梗塞になり、
半身の後遺症が残った。
三澤さんは「しんどいときも仕事はできるなら手放さないほうがいい。
物理的に距離を置ければ、お互いつぶれてしまう危険を回避できる」と語る――。
そんな一家の大黒柱を襲った突然の病と闘病の記録をつづった
『夫が脳で倒れたら』(太田出版)https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4778316665/presidentjp-22
の帯には、
「“献身的”で、なくていい!」
の文字が。
その真意を、著者であり妻の三澤さんに聞いた。
――5年前の冬、旦那さんが脳梗塞になったときの状況を教えてください。
随分前から時々しびれがあって、違和感はあったようです。
でもすぐに症状は収まるし、仕事も忙しいからと病院にかかることはありませんでした。
そうしていよいよ倒れる当日、
彼の中でただならぬ異変が起きているようで、
フラフラしながら
「手がしびれる」
「体がおかしい」
と訴えてきました。
「しびれ」が脳の病気の症状として出る
ことはなんとなく知っていたので、
最悪の事態に備えて「一応、脳神経外科で診てもらおう」
と病院へ向かいました。
MRI検査の結果「脳梗塞」と診断が出ても、
「夫はまだ50歳だし……まさか彼が」という感じで、
信じられませんでした。
今思えば異常な事態を察知していながら、
脳の病気を否定したい一心だったのだと思います。
怖いじゃないですか、脳はヤバいぞと。
「殺してくれ」と言われても冷静に接する
――手や足に加え舌や腸まで、体の右側だけが徐々に動かなくなっていく中(※)、
旦那さんから「殺してくれ」という言葉も飛び出していました。
非常に過酷な状況だったと思いますが、
三澤さんは終始、一定の距離を置きながら冷静に接しているのが印象的です。
※脳梗塞を起こしたのは右半身の筋肉を動かす部分だった。
これは他の夫婦と違うところかもしれませんが、
普段からお互い干渉しないんですよ。
夫は映画評論家で、私はライター。
互いに個人で文筆業をしているので、
「われわれは別の人間である」
という感覚が元から強かったんだと思います。
それに自宅が事務所になっているので、
ほとんど四六時中一緒の空間にいるわけです。
そこで日常的に意識していた、
感情を一歩離して“距離を置く”という行為が、
意外にも対患者スキルとして活きたのかなと。
それでも夫の情緒面での
後遺症の浮き沈みにはどうしても引っ張られました。
あ、“浮き”はないからどこまで“沈む”か、ですね(笑)。
夫の放つネガティブなオーラからなるべく離れねば
という自己防衛意識は働いていましたが、
それでもかなり、心身ともに追い詰められました。
「簡単なメール」も手につかなくなった
夫の発病直後、
子供のサッカーの役員ができなくなった
のはわかりやすい例で、
簡単なメールのやりとりだけなのに、
それがまったく手につかないんです。
息も苦しくなったし、これはまずいなと。
そんなとき、やりかかりの大きな仕事がひとつあって、
それは逆に助けになりました。
夫は会社員じゃないから福利厚生的なものはありません。
これをやっていればとりあえずお金が入るということで、
なにも考えず没頭する時間が持てました。
あと関係あるかどうかはわかりませんが、
夫が入院してから次男の声変わりが一気に進んだんです。
その他にも第二次性徴と思われる変化があって、
父親の病気と不在が影響しているのかも、と思いました。
――“献身的”という本の帯にあったキーワードは、
患者家族が追い詰められないためのメッセージだったのですね。
がんでは、患者家族のことを「第2の患者」と呼ぶそうですね。
とってもいい表現だし、
そう言ってもらえると家族は楽になるんじゃないかな。
妻としては、
「家族に病人を出してしまった」
という負い目からスタートしているんですよね。
そこからリハビリの手伝いやごはん作りなど、
あれもこれもしなきゃいけないことがある。
だけど生活のこともあるから、働きにも出なきゃいけない。
「家族がサポートして当たり前」というプレッシャー
そういえば退院のとき、
塩分量を確かめられる食品成分表を
ご好意でいただいたんですけど、
思わず「ごはんに気をつけなくちゃいけないのはわかってるから、
もうこれ以上持ってこないで!」
とカッとなってしまったんです。
あ、相手にはもちろん言ってませんよ。
介護パンフレットを開けば
「患者は家族がサポートして当たり前」
みたいなイラストや写真がたくさん載っています。
そうした無言のプレッシャーにさらされ続けると、
「やってあげたいけど、あれもこれも無理!」
と悲鳴を上げたくなってしまうんです。
そんな中で夫のズーンとした負のオーラを浴びると、
やっぱり追い詰められます。
実際できることは限られていて、
結局大したことはしていない。
でもなんだかつらい。
どうしてもしんどい。
なんでだろう、なんでだろうって毎日思ってたんですけど、
今ははっきりわかります。
本当につらかったんだって。
介護に疲れ果てた妻たちの「愚痴」
本に書きましたが、
脳梗塞の夫を持つ看護師さんに愚痴られたことがあるんですよ。
その後も何人かの奥さんから
脳卒中(※)の夫の文句を聞かされることがあって、
挙げ句、再発して亡くなったことまで報告されたときは、
さすがに不愉快になりました。
※脳卒中:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作の総称
でも後遺症がどんなかはひとりひとり全く違うので、
家族の感じ方もそれぞれだと考えたら、
他人の私に愚痴を吐き出した奥さんたちは、
みんな、つらくてつらくて限界だったんだと、
後でハッと気がついたんですよね。
それと同時に、この病気の残酷さを感じずにはいられませんでした。
どんなにしんどくても、
家族は「本人に比べたら大したことない」
という思考に陥りがちだし、
世の中的にも家族は支えて当然、
という風潮がある。
そんな中で、「だけど私もつらいんだ」とは言いたくても言えないわけです。
するとこっちもどんどん嫌な人間になってしまう。
それは誰にとっても不幸でしかないですよ。
「つらい」って大声で堂々と言っていい
――患者とその家族は退院後、どうやって生活していくべきなんでしょうか。
これはわが家の経験からですが、
仕事をしていた患者さんは、
後遺症が残っていても
リハビリと並行して仕事復帰できるとなれば、
いち早く復帰できるといいと思います。
もちろん本人にとっても
社会から必要とされることはリハビリの励みになると思うし、
実際、夫が発病前より時間はかかっても
同じクオリティの仕事をできたときは、
とても大きな自信になったようでした。
またパートナーの方も、
私自身が没頭できる仕事があったことで救われたように、
しんどいときでも仕事はできるなら手放さないでおく方が良いと思います。
そうやって物理的に距離を置くことができれば
お互いつぶれてしまう危険を回避できるし、
支える側も病気ではなく
本人を恨んでしまう
悲しすぎる思考に陥らずに済むと思うんです。
三澤 慶子『夫が脳で倒れたら』(太田出版)
家族側は「介護の手が要らないからわが家はまだ大変じゃないほう」とか、
「自立してるからうちはまだマシ」
「本人の方がつらいんだから」
とかって、勝手に苦しさをランク付けして
「こんなこと言っちゃいけない」
と自分を追い込んでしまいがちです。
患者同士でも、
「あの人に比べたら僕のまひなんて」
みたいなマウンティングがある。
「自力で歩けるのに、
こんな泣き言言っちゃいけない」とかね。
後遺症の重さに関係なく、
みんなつらい。
そこからスタートしないと、
みんなが不幸なんです。
だから家族も「つらい」って
もっと大声で堂々と言っていい。
私ももう、言っていこうと思って。
だってほんとに大変なんだもん(笑)。
三澤 慶子(みさわ・けいこ)
ライター
北海道生まれ。SSコミュニケーションズ(現・KADOKAWA)にて
エンタテインメント誌や金融情報誌などの
雑誌編集に携わった後、
映像製作会社を経てフリーランスに。
手がけた脚本に映画『ココニイルコト』
『夜のピクニック』
『天国はまだ遠く』など。
半身にまひを負った夫・轟夕起夫の仕事復帰の際、
片手で出し入れできるビジネスリュックが見つけられなかったことから、
片手仕様リュック「TOKYO BACKTOTE」を発案、
2018年にブランドWA3Bを立ち上げる。
高血圧のことを静かに近づく殺人者といいます!
症状はありません。
なので、検診で一番、皆さんが軽視しがちです。
症状が出た時は、取り返しのつかないことが圧倒的です。
実際に旦那さんの脳梗塞を体験したひとの話を聞いてみてください
脳梗塞の後遺症の重さに関係なく、みんなつらい。
そこからスタートしないと、みんなが不幸なんです。
だから家族も「つらい」ってもっと大声で堂々と言っていい。
私ももう、言っていこうと思って。だってほんとに大変なんだもん(笑)。
家族が病に倒れたら、看病に専念すべきなのか。
ライターの三澤慶子さんの夫は50歳で脳梗塞になり、
半身の後遺症が残った。
三澤さんは「しんどいときも仕事はできるなら手放さないほうがいい。
物理的に距離を置ければ、お互いつぶれてしまう危険を回避できる」と語る――。
そんな一家の大黒柱を襲った突然の病と闘病の記録をつづった
『夫が脳で倒れたら』(太田出版)https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4778316665/presidentjp-22
の帯には、
「“献身的”で、なくていい!」
の文字が。
その真意を、著者であり妻の三澤さんに聞いた。
――5年前の冬、旦那さんが脳梗塞になったときの状況を教えてください。
随分前から時々しびれがあって、違和感はあったようです。
でもすぐに症状は収まるし、仕事も忙しいからと病院にかかることはありませんでした。
そうしていよいよ倒れる当日、
彼の中でただならぬ異変が起きているようで、
フラフラしながら
「手がしびれる」
「体がおかしい」
と訴えてきました。
「しびれ」が脳の病気の症状として出る
ことはなんとなく知っていたので、
最悪の事態に備えて「一応、脳神経外科で診てもらおう」
と病院へ向かいました。
MRI検査の結果「脳梗塞」と診断が出ても、
「夫はまだ50歳だし……まさか彼が」という感じで、
信じられませんでした。
今思えば異常な事態を察知していながら、
脳の病気を否定したい一心だったのだと思います。
怖いじゃないですか、脳はヤバいぞと。
「殺してくれ」と言われても冷静に接する
――手や足に加え舌や腸まで、体の右側だけが徐々に動かなくなっていく中(※)、
旦那さんから「殺してくれ」という言葉も飛び出していました。
非常に過酷な状況だったと思いますが、
三澤さんは終始、一定の距離を置きながら冷静に接しているのが印象的です。
※脳梗塞を起こしたのは右半身の筋肉を動かす部分だった。
これは他の夫婦と違うところかもしれませんが、
普段からお互い干渉しないんですよ。
夫は映画評論家で、私はライター。
互いに個人で文筆業をしているので、
「われわれは別の人間である」
という感覚が元から強かったんだと思います。
それに自宅が事務所になっているので、
ほとんど四六時中一緒の空間にいるわけです。
そこで日常的に意識していた、
感情を一歩離して“距離を置く”という行為が、
意外にも対患者スキルとして活きたのかなと。
それでも夫の情緒面での
後遺症の浮き沈みにはどうしても引っ張られました。
あ、“浮き”はないからどこまで“沈む”か、ですね(笑)。
夫の放つネガティブなオーラからなるべく離れねば
という自己防衛意識は働いていましたが、
それでもかなり、心身ともに追い詰められました。
「簡単なメール」も手につかなくなった
夫の発病直後、
子供のサッカーの役員ができなくなった
のはわかりやすい例で、
簡単なメールのやりとりだけなのに、
それがまったく手につかないんです。
息も苦しくなったし、これはまずいなと。
そんなとき、やりかかりの大きな仕事がひとつあって、
それは逆に助けになりました。
夫は会社員じゃないから福利厚生的なものはありません。
これをやっていればとりあえずお金が入るということで、
なにも考えず没頭する時間が持てました。
あと関係あるかどうかはわかりませんが、
夫が入院してから次男の声変わりが一気に進んだんです。
その他にも第二次性徴と思われる変化があって、
父親の病気と不在が影響しているのかも、と思いました。
――“献身的”という本の帯にあったキーワードは、
患者家族が追い詰められないためのメッセージだったのですね。
がんでは、患者家族のことを「第2の患者」と呼ぶそうですね。
とってもいい表現だし、
そう言ってもらえると家族は楽になるんじゃないかな。
妻としては、
「家族に病人を出してしまった」
という負い目からスタートしているんですよね。
そこからリハビリの手伝いやごはん作りなど、
あれもこれもしなきゃいけないことがある。
だけど生活のこともあるから、働きにも出なきゃいけない。
「家族がサポートして当たり前」というプレッシャー
そういえば退院のとき、
塩分量を確かめられる食品成分表を
ご好意でいただいたんですけど、
思わず「ごはんに気をつけなくちゃいけないのはわかってるから、
もうこれ以上持ってこないで!」
とカッとなってしまったんです。
あ、相手にはもちろん言ってませんよ。
介護パンフレットを開けば
「患者は家族がサポートして当たり前」
みたいなイラストや写真がたくさん載っています。
そうした無言のプレッシャーにさらされ続けると、
「やってあげたいけど、あれもこれも無理!」
と悲鳴を上げたくなってしまうんです。
そんな中で夫のズーンとした負のオーラを浴びると、
やっぱり追い詰められます。
実際できることは限られていて、
結局大したことはしていない。
でもなんだかつらい。
どうしてもしんどい。
なんでだろう、なんでだろうって毎日思ってたんですけど、
今ははっきりわかります。
本当につらかったんだって。
介護に疲れ果てた妻たちの「愚痴」
本に書きましたが、
脳梗塞の夫を持つ看護師さんに愚痴られたことがあるんですよ。
その後も何人かの奥さんから
脳卒中(※)の夫の文句を聞かされることがあって、
挙げ句、再発して亡くなったことまで報告されたときは、
さすがに不愉快になりました。
※脳卒中:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作の総称
でも後遺症がどんなかはひとりひとり全く違うので、
家族の感じ方もそれぞれだと考えたら、
他人の私に愚痴を吐き出した奥さんたちは、
みんな、つらくてつらくて限界だったんだと、
後でハッと気がついたんですよね。
それと同時に、この病気の残酷さを感じずにはいられませんでした。
どんなにしんどくても、
家族は「本人に比べたら大したことない」
という思考に陥りがちだし、
世の中的にも家族は支えて当然、
という風潮がある。
そんな中で、「だけど私もつらいんだ」とは言いたくても言えないわけです。
するとこっちもどんどん嫌な人間になってしまう。
それは誰にとっても不幸でしかないですよ。
「つらい」って大声で堂々と言っていい
――患者とその家族は退院後、どうやって生活していくべきなんでしょうか。
これはわが家の経験からですが、
仕事をしていた患者さんは、
後遺症が残っていても
リハビリと並行して仕事復帰できるとなれば、
いち早く復帰できるといいと思います。
もちろん本人にとっても
社会から必要とされることはリハビリの励みになると思うし、
実際、夫が発病前より時間はかかっても
同じクオリティの仕事をできたときは、
とても大きな自信になったようでした。
またパートナーの方も、
私自身が没頭できる仕事があったことで救われたように、
しんどいときでも仕事はできるなら手放さないでおく方が良いと思います。
そうやって物理的に距離を置くことができれば
お互いつぶれてしまう危険を回避できるし、
支える側も病気ではなく
本人を恨んでしまう
悲しすぎる思考に陥らずに済むと思うんです。
三澤 慶子『夫が脳で倒れたら』(太田出版)
家族側は「介護の手が要らないからわが家はまだ大変じゃないほう」とか、
「自立してるからうちはまだマシ」
「本人の方がつらいんだから」
とかって、勝手に苦しさをランク付けして
「こんなこと言っちゃいけない」
と自分を追い込んでしまいがちです。
患者同士でも、
「あの人に比べたら僕のまひなんて」
みたいなマウンティングがある。
「自力で歩けるのに、
こんな泣き言言っちゃいけない」とかね。
後遺症の重さに関係なく、
みんなつらい。
そこからスタートしないと、
みんなが不幸なんです。
だから家族も「つらい」って
もっと大声で堂々と言っていい。
私ももう、言っていこうと思って。
だってほんとに大変なんだもん(笑)。
三澤 慶子(みさわ・けいこ)
ライター
北海道生まれ。SSコミュニケーションズ(現・KADOKAWA)にて
エンタテインメント誌や金融情報誌などの
雑誌編集に携わった後、
映像製作会社を経てフリーランスに。
手がけた脚本に映画『ココニイルコト』
『夜のピクニック』
『天国はまだ遠く』など。
半身にまひを負った夫・轟夕起夫の仕事復帰の際、
片手で出し入れできるビジネスリュックが見つけられなかったことから、
片手仕様リュック「TOKYO BACKTOTE」を発案、
2018年にブランドWA3Bを立ち上げる。
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2019年08月04日
『のら犬にかまれた時は破傷風予防の注射は必要でしょうか?』
『のら犬にかまれた時は破傷風予防の注射は必要でしょうか?』
5年以内に破傷風を含んだワクチン、
つまりDPT3種混合《ジフテリア、百日咳、破傷風》や
4種混合《DPTとIPV(ポリオ)》を接種してあれば、
あえて今回追加する必要はありません。
咬傷時の破傷風トキソイドだけは保険適応がありますが、
DPT世代なら保険を使わないでDPTでの追加接種のほうが
百日咳の免疫を高められるのでより有効で安全です。
『破傷風予防が必要なのは1968年(昭和43年)以前に生まれた、
今年50歳以上の人のみです』ので間違えないでください。
その世代でも咬傷時の破傷風トキソイドは1回のみで、
1か月後にはDPTで追加するほうが有利です。
国内での咬傷なら狂犬病
ワクチンは通常不要です。
7歳未満はDPT,
それ以上はTdapという破傷風が多めに入ったDPTで1回接種します。
咬傷時の基準で
ハイリスクなら
抗破傷風グロブリン(テタガム)も初回に接種します。
あと、今後犬に咬まれないように
知らない犬が近づいてきたら大声を出さない、
急に走らない、目を合わさないなどの注意が必要です。
5年以内に破傷風を含んだワクチン、
つまりDPT3種混合《ジフテリア、百日咳、破傷風》や
4種混合《DPTとIPV(ポリオ)》を接種してあれば、
あえて今回追加する必要はありません。
咬傷時の破傷風トキソイドだけは保険適応がありますが、
DPT世代なら保険を使わないでDPTでの追加接種のほうが
百日咳の免疫を高められるのでより有効で安全です。
『破傷風予防が必要なのは1968年(昭和43年)以前に生まれた、
今年50歳以上の人のみです』ので間違えないでください。
その世代でも咬傷時の破傷風トキソイドは1回のみで、
1か月後にはDPTで追加するほうが有利です。
国内での咬傷なら狂犬病
ワクチンは通常不要です。
7歳未満はDPT,
それ以上はTdapという破傷風が多めに入ったDPTで1回接種します。
咬傷時の基準で
ハイリスクなら
抗破傷風グロブリン(テタガム)も初回に接種します。
あと、今後犬に咬まれないように
知らない犬が近づいてきたら大声を出さない、
急に走らない、目を合わさないなどの注意が必要です。
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2019年08月03日
メタゲノム・メタボローム解析で、大腸がん発症関連細菌の特定に成功
(便ー腸内細菌ーは雄弁!
個々人の腸内細菌叢の違いにまで踏み込んで
がん予防や治療選択を行う、
Microbiome Based Precision Medicine時代の幕開け
ー食事などの生活習慣との関係を詳細に検討することにより、
科学的根拠を踏まえた新たながん予防・治療、それに付随する産業(食品等)など、
新たな需要の掘り起こしと成長分野を生み出す)
臨床ニュース
メタゲノム・メタボローム解析で、大腸がん発症関連細菌の特定に成功 阪大ほか
QLifePro 医療ニュース2019年6月12日 (水)配信
大阪大学は6月7日、多発ポリープ(腺腫)や大腸がんの患者を対象に、
凍結便を収集し、メタゲノム解析やメタボローム解析を行った結果、
多発ポリープ(腺腫)や非常に早期の大腸がん(粘膜内がん)患者の便中に、
特徴的な細菌や代謝物質を同定したと発表した。
この研究は、同大大学院医学系研究科の谷内田真一教授
(がんゲノム情報学、前国立がん研究センター研究所・ユニット長)、
東京工業大学生命理工学院生命理工学系の山田拓司准教授、
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター ゲノム医科学分野
(国立がん研究センター研究所兼任)の柴田龍弘教授、
慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授らの研究グループによるもの。
研究成果は「Nature Medicine」に掲載されている。
日本人の死因1位であるがんの中でも、最も多いのが大腸がんである。
食事など生活習慣の欧米化が原因と考えられているが、
そのメカニズムは明らかにされていない。
大腸がんは、大腸ポリープ(腺腫)、粘膜内がんを経て
進行がんへと進展する(多段階発がん)。
これまで進行した大腸がんにおいて
関連する細菌はいくつか特定されたが、
進行がんになる前のステージで、
大腸ポリープ(腺腫)や粘膜内がんと関連する
細菌や代謝物質は知られていなかった。
一方で、腸内細菌叢の乱れが
炎症性腸疾患など、
さまざまな疾患と関係することわかってきている。
また、2012年には歯周病の原因菌として知られる
『フソバクテリウム・ヌクレアタム』
が大腸がん患者の便中に
特徴的に多数存在することが報告され、
検証が行われている。
研究グループは、
国立がん研究センター中央病院内視鏡科で
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けた616名の受検者を研究対象とし、
食事などの「生活習慣などに関するアンケート」調査、
凍結便、
大腸内視鏡検査所見などの臨床情報を収集。
東京工業大学や慶應義塾大学先端生命科学研究所と共同で、
凍結便からメタゲノム解析とメタボローム解析を行い、
がんのステージごとに腸内環境の特徴を調査した。
その結果、がんのステージによって
便中に増減している腸内細菌が
大きく異なることが明らかになった。
特に、大腸がんの多段階発がん過程において、
大腸がんと関連する細菌について
大きく2つのパターンにわけることができたという。
第1は、粘膜内がんの病期から増加し、病気の進行とともに上昇する細菌。
多くは『フソバクテリウム・ヌクレアタム』や
『ペプトストレプトコッカス・ストマティス』など、
すでに進行大腸がんで上昇していることが報告されている細菌。
第2は、多発ポリープ(腺腫)や粘膜内がんの病期でのみ上昇している細菌として、
『アトポビウム・パルブルム』や
『アクチノマイセス・オドントリティカス』
が特定され、
これらの細菌が大腸がんの発症初期に関連することが強く示唆された。
一方、ビフィズス菌(善玉細菌)の細菌群は粘膜内がんの病期で減少、
酪酸産生菌(善玉細菌)として知られる
『ラクノスピラ・マルチパラ』や
『ユウバクテリウム・エリゲンス』も、
粘膜内がんの病期から進行大腸がんに至るまで減少していた。
さらにメタボローム解析により、
腸内細菌などによる代謝物質を大腸がんのステージごとに調べたところ、
『腺腫』を有する患者は、
デオキシコール酸という胆汁酸が腸管内に多く、
『粘膜内がん』を有する患者は健常者と比較し、
アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、
フェニルアラニン、チロシン、グリシンが便中に増加していた。
『進行大腸がん』患者では、分枝鎖脂肪酸であるイソ吉草酸が増加していた。
研究グループは、これらの大量のメタゲノム解析と
メタボローム解析のデータを組み合わせ、
腸内細菌、腸内細菌由来遺伝子と腸内代謝物質から、
『粘膜内がん』の患者を
『便で診断する』ための機械学習モデルを作成(特許出願中)した。
このモデルでは、
『フェニルアラニンの合成に関与する遺伝子』や
『デスルホビブリオ・ロングリーチェンシス、サロバクテリウム・ムーレイなどの細菌』、
『ロイシン、バリン、フェニルアラニンなどのアミノ酸』が寄与していた。
また、『進行大腸がん』の患者を『便で診断する』ための機械学習モデルも作成し、
『主に細菌(パルビモナス・ミクラ、ペプトストレプトコッカス・ストマティス、
フソバクテリウム・ヌクレアタム、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス)
が寄与』していることを明らかにした。
今回の研究成果により、
同じ大腸がんでも病気の進行度に伴い、
腸内細菌や腸内代謝物質が大きく異なることが明らかにされた。
加えて、メタゲノム解析とメタボローム解析を用いて、
日本人健常者の腸内環境も解明された。
研究グループは、
「本研究成果により、個々人の腸内細菌叢の違いにまで
踏み込んでがん予防や治療選択を行う、
Microbiome* Based Precision Medicine時代の幕開けになると考えている。
また、食事などの生活習慣との関係を詳細に検討することにより、
科学的根拠を踏まえた新たながん予防・治療、
それに付随する産業(食品等)など、
新たな需要の掘り起こしと成長分野を生み出す潜在性がある」と、述べています。
<脚注>
*-omeをつけると なになにの全てという意味になります。
微生物の”全て”、
「マイクロバイオーム(微生物叢)」
に基づくー
Precision Medicine(遺伝子情報、生活環境や
ライフスタイルにおける個々人の 違いを考慮して
疾病予防や治療を行うという新しい医療)
個々人の腸内細菌叢の違いにまで踏み込んで
がん予防や治療選択を行う、
Microbiome Based Precision Medicine時代の幕開け
ー食事などの生活習慣との関係を詳細に検討することにより、
科学的根拠を踏まえた新たながん予防・治療、それに付随する産業(食品等)など、
新たな需要の掘り起こしと成長分野を生み出す)
臨床ニュース
メタゲノム・メタボローム解析で、大腸がん発症関連細菌の特定に成功 阪大ほか
QLifePro 医療ニュース2019年6月12日 (水)配信
大阪大学は6月7日、多発ポリープ(腺腫)や大腸がんの患者を対象に、
凍結便を収集し、メタゲノム解析やメタボローム解析を行った結果、
多発ポリープ(腺腫)や非常に早期の大腸がん(粘膜内がん)患者の便中に、
特徴的な細菌や代謝物質を同定したと発表した。
この研究は、同大大学院医学系研究科の谷内田真一教授
(がんゲノム情報学、前国立がん研究センター研究所・ユニット長)、
東京工業大学生命理工学院生命理工学系の山田拓司准教授、
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター ゲノム医科学分野
(国立がん研究センター研究所兼任)の柴田龍弘教授、
慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授らの研究グループによるもの。
研究成果は「Nature Medicine」に掲載されている。
日本人の死因1位であるがんの中でも、最も多いのが大腸がんである。
食事など生活習慣の欧米化が原因と考えられているが、
そのメカニズムは明らかにされていない。
大腸がんは、大腸ポリープ(腺腫)、粘膜内がんを経て
進行がんへと進展する(多段階発がん)。
これまで進行した大腸がんにおいて
関連する細菌はいくつか特定されたが、
進行がんになる前のステージで、
大腸ポリープ(腺腫)や粘膜内がんと関連する
細菌や代謝物質は知られていなかった。
一方で、腸内細菌叢の乱れが
炎症性腸疾患など、
さまざまな疾患と関係することわかってきている。
また、2012年には歯周病の原因菌として知られる
『フソバクテリウム・ヌクレアタム』
が大腸がん患者の便中に
特徴的に多数存在することが報告され、
検証が行われている。
研究グループは、
国立がん研究センター中央病院内視鏡科で
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けた616名の受検者を研究対象とし、
食事などの「生活習慣などに関するアンケート」調査、
凍結便、
大腸内視鏡検査所見などの臨床情報を収集。
東京工業大学や慶應義塾大学先端生命科学研究所と共同で、
凍結便からメタゲノム解析とメタボローム解析を行い、
がんのステージごとに腸内環境の特徴を調査した。
その結果、がんのステージによって
便中に増減している腸内細菌が
大きく異なることが明らかになった。
特に、大腸がんの多段階発がん過程において、
大腸がんと関連する細菌について
大きく2つのパターンにわけることができたという。
第1は、粘膜内がんの病期から増加し、病気の進行とともに上昇する細菌。
多くは『フソバクテリウム・ヌクレアタム』や
『ペプトストレプトコッカス・ストマティス』など、
すでに進行大腸がんで上昇していることが報告されている細菌。
第2は、多発ポリープ(腺腫)や粘膜内がんの病期でのみ上昇している細菌として、
『アトポビウム・パルブルム』や
『アクチノマイセス・オドントリティカス』
が特定され、
これらの細菌が大腸がんの発症初期に関連することが強く示唆された。
一方、ビフィズス菌(善玉細菌)の細菌群は粘膜内がんの病期で減少、
酪酸産生菌(善玉細菌)として知られる
『ラクノスピラ・マルチパラ』や
『ユウバクテリウム・エリゲンス』も、
粘膜内がんの病期から進行大腸がんに至るまで減少していた。
さらにメタボローム解析により、
腸内細菌などによる代謝物質を大腸がんのステージごとに調べたところ、
『腺腫』を有する患者は、
デオキシコール酸という胆汁酸が腸管内に多く、
『粘膜内がん』を有する患者は健常者と比較し、
アミノ酸であるイソロイシン、ロイシン、バリン、
フェニルアラニン、チロシン、グリシンが便中に増加していた。
『進行大腸がん』患者では、分枝鎖脂肪酸であるイソ吉草酸が増加していた。
研究グループは、これらの大量のメタゲノム解析と
メタボローム解析のデータを組み合わせ、
腸内細菌、腸内細菌由来遺伝子と腸内代謝物質から、
『粘膜内がん』の患者を
『便で診断する』ための機械学習モデルを作成(特許出願中)した。
このモデルでは、
『フェニルアラニンの合成に関与する遺伝子』や
『デスルホビブリオ・ロングリーチェンシス、サロバクテリウム・ムーレイなどの細菌』、
『ロイシン、バリン、フェニルアラニンなどのアミノ酸』が寄与していた。
また、『進行大腸がん』の患者を『便で診断する』ための機械学習モデルも作成し、
『主に細菌(パルビモナス・ミクラ、ペプトストレプトコッカス・ストマティス、
フソバクテリウム・ヌクレアタム、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス)
が寄与』していることを明らかにした。
今回の研究成果により、
同じ大腸がんでも病気の進行度に伴い、
腸内細菌や腸内代謝物質が大きく異なることが明らかにされた。
加えて、メタゲノム解析とメタボローム解析を用いて、
日本人健常者の腸内環境も解明された。
研究グループは、
「本研究成果により、個々人の腸内細菌叢の違いにまで
踏み込んでがん予防や治療選択を行う、
Microbiome* Based Precision Medicine時代の幕開けになると考えている。
また、食事などの生活習慣との関係を詳細に検討することにより、
科学的根拠を踏まえた新たながん予防・治療、
それに付随する産業(食品等)など、
新たな需要の掘り起こしと成長分野を生み出す潜在性がある」と、述べています。
<脚注>
*-omeをつけると なになにの全てという意味になります。
微生物の”全て”、
「マイクロバイオーム(微生物叢)」
に基づくー
Precision Medicine(遺伝子情報、生活環境や
ライフスタイルにおける個々人の 違いを考慮して
疾病予防や治療を行うという新しい医療)
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2019年08月02日
がん闘病の医師、死を覚悟し抱いた「後悔」
がん闘病の医師、死を覚悟し抱いた「後悔」
キャリア 2019年6月13日 (木) エムスリーキャリア
2006年に34歳で肺がんの手術を受けた
川崎幸病院放射線治療センター長の加藤大基先生。
闘病を通じて、
「仕事だけで死んでしまうのはもったいない」
と考えるようになったそうです。
がんになってから10年以上経過した
現在の仕事観や死生観についてお伺いしました。
検査結果を聞くまでの怖さ
ご自身が患者になってから、
患者さんへの向き合い方で変わったことなどはありますか。
私の場合、術後半年ごとにCTを撮る検査がありました。
がんの大きさは1.5cmくらいでそんなに大きくありませんでしたが、
比較的増殖能の高いタイプだったので、
術後3カ月くらいは再発の不安がずっとありました。
でも、再発するかどうかは誰にも分からないので、
その後は考えないようにしていたんです。
それでも検査前はものすごく緊張するんですよ。
もし再発していた場合、
主治医からそれを伝えられるのが怖かったので、
CTのあとすぐ画像を見られる状態にしてもらっていました。
まず自分で画像をじっくり見て、
再発がないことを確認してから受診していました。
受診時に「再発です」と言われることに対する、
自分なりの防御のようなものですね。
これを患者さんとの関係で普遍化すると、
検査を受けてから結果が出るまでの時間を
なるべく短くしてあげたいという思いに尽きます。
多くの患者さんは、検査の結果がどうだったかを知りたいので、
「体調はどうですか」という話から始めるのではなく、
患者さんが診察室に入ってきたら
まず「問題なかったです」
とお伝えするようになりましたね。
どのくらい生きられるかなんてわからない
病気を経験されて、医師として働く上での考え方の変化はありましたか。
当たり前ですが、闘病中は死がすごく近くなるわけです。
そうすると、仕事だけで死んでしまうのはもったいないと、
ワークライフバランスをもっと強く考えるようになりました。
もちろん仕事は一生懸命やりますが、
オーバーワークになることを避ける努力をしています。
もともと、ワークライフバランスを大切にしたい気持ちはありました。
医師は非効率なこと、
全く専門外のことをさせられることも含めて、
不必要な仕事が結構あると感じています。
がんになるまでは、そういうことも唯々諾々というか、
仕方がないと思いながらやっていました。
しかし病気を経験してからは、
必要でないことは上司に論理的に説明して、談判して、
なくしていく努力を続けることを積極的にやるようになったと感じます。
価値観も変わりましたか。
病気のせいなのか、年齢を重ねたせいなのかわかりませんが、
「自分が幸せに生きることが人生の最大の目的だ」という思いを、
より強く意識するようになったかもしれません。
闘病時は、病気が悪くなれば数年で死んでしまうかもしれない、
とも考えていました。
その経験から、物事を先延ばしにしていると
その先はないかもしれないという気持ちが強くなり、
さまざまなことの優先順位づけが非常に明確になりましたね。
放射線治療医は、がんの患者さんばかり診ます。
中には、若くして亡くなる方も少なくありません。
人生100年時代といえども、
どのくらい生きられるかなんて誰にもわからない。
そんな先のことを考えるより、
まず目の前の幸せをある程度確保して、
できることは前倒しにして取り組んだ方がいいのではないか、
と病気になってみて強く感じました。
同じように病気をされた医師や、
いま闘病中の医師に先生が声をかけるとしたら。
例えば、一口にがんといっても、
がん種やステージ、年齢が違えば
全く異なるものだと考えています。
同じがん種で同じようなステージで見つかった方になら、
自分の経験はある程度参考になるかもしれません。
しかし、違う臓器のがん、非常に進行した状態で見つかった人に
どのような言葉をかけるかといわれたら、
自分ががんを経験したからといって、
十把一絡げには決してできません。
私と同じように完治を目指す手術を受けて、
再発に対する不安を抱えている人の気持ちなら多少は分かりますが、
自分が安易にアドバイスできる立場にいるわけではないと、
自戒の意味をこめて思っています。
じっくり患者さんと向き合っていく
今後のキャリア、ワークライフバランスはどのようにお考えですか。
患者さんと向き合う時間が十分に取れない科や病院が少なくない中、
現職は比較的時間があるため、
じっくりと説明をすることができる環境にあります。
患者さんが希望されれば放射線治療のことに限らず、
病状や他科で出ている薬の話などについても、
しっかり話ができる医師でありたいですね。
偉くなりたい、研究成果を出したい
といった出世欲がそんなに強くないので、
患者さんのところに腰を据えてやっていきたいと考えています。
昔は有給休暇なんて使ったことがありませんでしたが、
最近は取得するようにして、
好きな史跡巡りの旅行などをして息抜きをしています。
そのような環境にあるので、
老後まで待たずに、
ワークライフバランスの実現を図れていると感じていますね。
今のように、自分に無理のないペースで働きながら、
患者さんのために良い医療提供をし続けていけたら、
これ以上のことはないと思っています。
加藤大基(かとう・だいき)
川崎幸病院放射線治療センター センター長
1999年東京大学医学部卒業後、同大医学部附属病院放射線科入局。
国立国際医療研究センター、癌研究会附属病院(現 がん研有明病院)等を経て、
2016年より川崎幸病院放射線治療センター副センター長、
2019年4月より現職。
2006年に肺腺癌(ステージTA)で左肺下葉切除術を受ける。
著書に『東大のがん治療医が癌になって』(ロハスメディア)。
キャリア 2019年6月13日 (木) エムスリーキャリア
2006年に34歳で肺がんの手術を受けた
川崎幸病院放射線治療センター長の加藤大基先生。
闘病を通じて、
「仕事だけで死んでしまうのはもったいない」
と考えるようになったそうです。
がんになってから10年以上経過した
現在の仕事観や死生観についてお伺いしました。
検査結果を聞くまでの怖さ
ご自身が患者になってから、
患者さんへの向き合い方で変わったことなどはありますか。
私の場合、術後半年ごとにCTを撮る検査がありました。
がんの大きさは1.5cmくらいでそんなに大きくありませんでしたが、
比較的増殖能の高いタイプだったので、
術後3カ月くらいは再発の不安がずっとありました。
でも、再発するかどうかは誰にも分からないので、
その後は考えないようにしていたんです。
それでも検査前はものすごく緊張するんですよ。
もし再発していた場合、
主治医からそれを伝えられるのが怖かったので、
CTのあとすぐ画像を見られる状態にしてもらっていました。
まず自分で画像をじっくり見て、
再発がないことを確認してから受診していました。
受診時に「再発です」と言われることに対する、
自分なりの防御のようなものですね。
これを患者さんとの関係で普遍化すると、
検査を受けてから結果が出るまでの時間を
なるべく短くしてあげたいという思いに尽きます。
多くの患者さんは、検査の結果がどうだったかを知りたいので、
「体調はどうですか」という話から始めるのではなく、
患者さんが診察室に入ってきたら
まず「問題なかったです」
とお伝えするようになりましたね。
どのくらい生きられるかなんてわからない
病気を経験されて、医師として働く上での考え方の変化はありましたか。
当たり前ですが、闘病中は死がすごく近くなるわけです。
そうすると、仕事だけで死んでしまうのはもったいないと、
ワークライフバランスをもっと強く考えるようになりました。
もちろん仕事は一生懸命やりますが、
オーバーワークになることを避ける努力をしています。
もともと、ワークライフバランスを大切にしたい気持ちはありました。
医師は非効率なこと、
全く専門外のことをさせられることも含めて、
不必要な仕事が結構あると感じています。
がんになるまでは、そういうことも唯々諾々というか、
仕方がないと思いながらやっていました。
しかし病気を経験してからは、
必要でないことは上司に論理的に説明して、談判して、
なくしていく努力を続けることを積極的にやるようになったと感じます。
価値観も変わりましたか。
病気のせいなのか、年齢を重ねたせいなのかわかりませんが、
「自分が幸せに生きることが人生の最大の目的だ」という思いを、
より強く意識するようになったかもしれません。
闘病時は、病気が悪くなれば数年で死んでしまうかもしれない、
とも考えていました。
その経験から、物事を先延ばしにしていると
その先はないかもしれないという気持ちが強くなり、
さまざまなことの優先順位づけが非常に明確になりましたね。
放射線治療医は、がんの患者さんばかり診ます。
中には、若くして亡くなる方も少なくありません。
人生100年時代といえども、
どのくらい生きられるかなんて誰にもわからない。
そんな先のことを考えるより、
まず目の前の幸せをある程度確保して、
できることは前倒しにして取り組んだ方がいいのではないか、
と病気になってみて強く感じました。
同じように病気をされた医師や、
いま闘病中の医師に先生が声をかけるとしたら。
例えば、一口にがんといっても、
がん種やステージ、年齢が違えば
全く異なるものだと考えています。
同じがん種で同じようなステージで見つかった方になら、
自分の経験はある程度参考になるかもしれません。
しかし、違う臓器のがん、非常に進行した状態で見つかった人に
どのような言葉をかけるかといわれたら、
自分ががんを経験したからといって、
十把一絡げには決してできません。
私と同じように完治を目指す手術を受けて、
再発に対する不安を抱えている人の気持ちなら多少は分かりますが、
自分が安易にアドバイスできる立場にいるわけではないと、
自戒の意味をこめて思っています。
じっくり患者さんと向き合っていく
今後のキャリア、ワークライフバランスはどのようにお考えですか。
患者さんと向き合う時間が十分に取れない科や病院が少なくない中、
現職は比較的時間があるため、
じっくりと説明をすることができる環境にあります。
患者さんが希望されれば放射線治療のことに限らず、
病状や他科で出ている薬の話などについても、
しっかり話ができる医師でありたいですね。
偉くなりたい、研究成果を出したい
といった出世欲がそんなに強くないので、
患者さんのところに腰を据えてやっていきたいと考えています。
昔は有給休暇なんて使ったことがありませんでしたが、
最近は取得するようにして、
好きな史跡巡りの旅行などをして息抜きをしています。
そのような環境にあるので、
老後まで待たずに、
ワークライフバランスの実現を図れていると感じていますね。
今のように、自分に無理のないペースで働きながら、
患者さんのために良い医療提供をし続けていけたら、
これ以上のことはないと思っています。
加藤大基(かとう・だいき)
川崎幸病院放射線治療センター センター長
1999年東京大学医学部卒業後、同大医学部附属病院放射線科入局。
国立国際医療研究センター、癌研究会附属病院(現 がん研有明病院)等を経て、
2016年より川崎幸病院放射線治療センター副センター長、
2019年4月より現職。
2006年に肺腺癌(ステージTA)で左肺下葉切除術を受ける。
著書に『東大のがん治療医が癌になって』(ロハスメディア)。