2019年08月11日
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』
歩幅を広げることで認知症が予防できる!
2019年07月17日 16:15
予備軍も含めると患者数が860万人に上る認知症。
その大半を占めるアルツハイマー型認知症は、
いまだに有用な治療法が開発されていない。
そのような中、
歩幅を広げることが認知症の発症を抑制
する上で有用である可能性が示されたという。
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』
を上梓した国立環境研究所主任研究員
(前:東京都健康長寿医療センター研究員)
の谷口優氏に、認知症と歩幅の関係について解説してもらった。
歩幅が狭いままだと認知症リスクが2倍以上に
―まず、この本の基となった研究の概要を教えて下さい。
谷口
体の動きと頭の働きの関係性に注目した一連の研究
では、最初に「歩幅と認知機能の変化」
を調査しました。
対象は、新潟県と群馬県の65歳以上の住民1,000例超で、
それぞれの歩幅を測定して歩幅が
@狭い群
A普通の群
B広い群
―に分け、最長4年間にわたり追跡し、
認知機能の低下との関連を検討しました。
その結果、4年間追跡できた666例のうち
およそ6人に1人で
認知機能の低下が認められました。
この3群を歩幅の広い群を対照として比較すると、
認知機能低下のリスクが
狭い群では3.39倍、
普通の群でも1.22倍に上りました
(J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2012; 67: 796-803)。
次の研究では、延べ6,500例を対象とした、
最長で12年間にわたる大規模な追跡調査データを用いました。
この研究では、加齢が歩幅に与える影響に加え、
歩幅の変化と認知症発症の関係についても調査しました。
その結果、65歳以降では加齢とともに歩幅が狭くなっていくのですが、
3つの異なる軌跡を描くことが分かりました。
歩幅が広い水準で変化する群を対照として、
中程度の歩幅の広さで変化する群と、
歩幅が狭いまま年齢を重ねる群を比較すると、
認知症発症リスクは中程度の群では変わりませんでしたが、
狭いままの群では2.12倍高くなることがわかりました。
この研究結果で興味深かったのは、
歩幅が狭い状態のまま年を重ねると、
年齢や性にかかわらず、
認知症の発症リスクが2倍以上になることでした
(J AM Med Dir Assoc 2017; 18: 192.e13-192.e20)。
―歩調(テンポ)は関係ないのでしょうか。
谷口
歩行速度は、「歩幅」と「歩調」の2つの要素
により決まりますが、
歩調に絞って認知機能低下との関連を調査した
ところ、因果関係は
認められず、
前述のように、歩幅のみの関連が認められました。
―そこで、歩幅を広げて
歩くよう推奨されている
ようですね。
歩幅の目安はどのように考えればよいでしょうか。
谷口
先にご紹介した2つの研究結果から、
私は65cmを目安としています。
これは、
『横断歩道の白線をまたぎ越せる広さ』
に相当します。
ただし、膝や腰に痛みがある人や感覚器に障害がある人にはこの目安は適しません。
そこで、高齢者も含めて広く適用することを考えると、
これまでよりプラス10cm、
体力に自信のない方であればプラス5cmでもよいと思います。
―歩幅を広げることにどのような意味があるのでしょう?
谷口
実践してみると分かりますが、
意識して歩幅を広げて歩くことはなかなか大変で、
いつも以上に下肢や体幹、正しく体を使えている場合には
上肢を含む体全体にこれまで以上の負荷をかける
ことになります。
歩幅を広げるという一見単純な動作は、
@脳と足の間の神経伝達が刺激され脳が活性化する
A日ごろ使っていなかった、大きくて太い筋肉が賦活される
B運動強度が上がるため血液の循環が良くなり、
体の隅々の細胞まで栄養や酸素が届けられるようになる
C血管が刺激され、しなやかになる
D背筋が伸びて姿勢が良くなり、気分が高揚する
―といったさまざまな利点があると考えています。
歩幅を広げる努力により脳内の新たな回路を構築することで認知症の抑制に期待
―認知症患者を減らすのは社会的な課題ですね。
谷口
現在、わが国の認知症患者数は約462万人、
その予備軍である軽度認知障害(MCI)
も含めると約862万人に上ると推計されています。
一般的に、加齢とともに頭の働きは徐々に衰えていきます。
これは、神経細胞(ニューロン)の減少
やシナプスの異常により
脳内のネットワークがうまく機能しなくなることによります。
しかし、ネットワークの一部に異常を来しても、
新たな刺激が加わることにより、
新しい脳内のネットワークの構築が可能になる
と考えられています。
新たな刺激には、
脳トレや中強度の有酸素運動などがありますが、
広い歩幅を維持するという動作にも
脳への刺激効果があると私は考えています。
歩幅を広げることは、一見単純な動作ですが、
脳と足の間では常時複雑な情報のやり取りが行われており、
変化する環境の中で足の運びを一定に保つことが
脳に与える影響は非常に大きいのです。
―今後の目標についてお聞かせ下さい。
谷口
認知症患者の約6割はアルツハイマー型に分類されます。
アルツハイマー型認知症の場合、
正常な状態から約20年という長い期間で少しずつ病態が進行し、
MCIを経て発症に至ると考えられています。
現在のところ、アルツハイマー型認知症を根治する手段はありませんが、
MCIの状態であれば発症を先送りできたり、
正常な状態に戻ると考えられています。
米国の研究では、MCIが認められた集団のうち、
その後認知症を発症したのは約2割で、
そのままMCIにとどまったのは約5割、
約3割は正常に戻ったとの報告があります
(Ann Neurol 2008; 63: 494-506)。
このことから、認知症が発症する前の段階であれば、
認知機能を正常な状態に戻せる可能性があります。
その手段として、私は、誰もがすぐに実行できて長続きしやすい、
「歩幅」に大きな可能性を感じています。
歩幅を広げることによる種々の効果について研究を深め、
その研究の成果として1人でも多くの方の
認知症予防に寄与することができれば嬉しいですね。
歩幅を広げることで認知症が予防できる!
2019年07月17日 16:15
予備軍も含めると患者数が860万人に上る認知症。
その大半を占めるアルツハイマー型認知症は、
いまだに有用な治療法が開発されていない。
そのような中、
歩幅を広げることが認知症の発症を抑制
する上で有用である可能性が示されたという。
『たった5センチ歩幅を広げるだけで「元気に長生き」できる!』
を上梓した国立環境研究所主任研究員
(前:東京都健康長寿医療センター研究員)
の谷口優氏に、認知症と歩幅の関係について解説してもらった。
歩幅が狭いままだと認知症リスクが2倍以上に
―まず、この本の基となった研究の概要を教えて下さい。
谷口
体の動きと頭の働きの関係性に注目した一連の研究
では、最初に「歩幅と認知機能の変化」
を調査しました。
対象は、新潟県と群馬県の65歳以上の住民1,000例超で、
それぞれの歩幅を測定して歩幅が
@狭い群
A普通の群
B広い群
―に分け、最長4年間にわたり追跡し、
認知機能の低下との関連を検討しました。
その結果、4年間追跡できた666例のうち
およそ6人に1人で
認知機能の低下が認められました。
この3群を歩幅の広い群を対照として比較すると、
認知機能低下のリスクが
狭い群では3.39倍、
普通の群でも1.22倍に上りました
(J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2012; 67: 796-803)。
次の研究では、延べ6,500例を対象とした、
最長で12年間にわたる大規模な追跡調査データを用いました。
この研究では、加齢が歩幅に与える影響に加え、
歩幅の変化と認知症発症の関係についても調査しました。
その結果、65歳以降では加齢とともに歩幅が狭くなっていくのですが、
3つの異なる軌跡を描くことが分かりました。
歩幅が広い水準で変化する群を対照として、
中程度の歩幅の広さで変化する群と、
歩幅が狭いまま年齢を重ねる群を比較すると、
認知症発症リスクは中程度の群では変わりませんでしたが、
狭いままの群では2.12倍高くなることがわかりました。
この研究結果で興味深かったのは、
歩幅が狭い状態のまま年を重ねると、
年齢や性にかかわらず、
認知症の発症リスクが2倍以上になることでした
(J AM Med Dir Assoc 2017; 18: 192.e13-192.e20)。
―歩調(テンポ)は関係ないのでしょうか。
谷口
歩行速度は、「歩幅」と「歩調」の2つの要素
により決まりますが、
歩調に絞って認知機能低下との関連を調査した
ところ、因果関係は
認められず、
前述のように、歩幅のみの関連が認められました。
―そこで、歩幅を広げて
歩くよう推奨されている
ようですね。
歩幅の目安はどのように考えればよいでしょうか。
谷口
先にご紹介した2つの研究結果から、
私は65cmを目安としています。
これは、
『横断歩道の白線をまたぎ越せる広さ』
に相当します。
ただし、膝や腰に痛みがある人や感覚器に障害がある人にはこの目安は適しません。
そこで、高齢者も含めて広く適用することを考えると、
これまでよりプラス10cm、
体力に自信のない方であればプラス5cmでもよいと思います。
―歩幅を広げることにどのような意味があるのでしょう?
谷口
実践してみると分かりますが、
意識して歩幅を広げて歩くことはなかなか大変で、
いつも以上に下肢や体幹、正しく体を使えている場合には
上肢を含む体全体にこれまで以上の負荷をかける
ことになります。
歩幅を広げるという一見単純な動作は、
@脳と足の間の神経伝達が刺激され脳が活性化する
A日ごろ使っていなかった、大きくて太い筋肉が賦活される
B運動強度が上がるため血液の循環が良くなり、
体の隅々の細胞まで栄養や酸素が届けられるようになる
C血管が刺激され、しなやかになる
D背筋が伸びて姿勢が良くなり、気分が高揚する
―といったさまざまな利点があると考えています。
歩幅を広げる努力により脳内の新たな回路を構築することで認知症の抑制に期待
―認知症患者を減らすのは社会的な課題ですね。
谷口
現在、わが国の認知症患者数は約462万人、
その予備軍である軽度認知障害(MCI)
も含めると約862万人に上ると推計されています。
一般的に、加齢とともに頭の働きは徐々に衰えていきます。
これは、神経細胞(ニューロン)の減少
やシナプスの異常により
脳内のネットワークがうまく機能しなくなることによります。
しかし、ネットワークの一部に異常を来しても、
新たな刺激が加わることにより、
新しい脳内のネットワークの構築が可能になる
と考えられています。
新たな刺激には、
脳トレや中強度の有酸素運動などがありますが、
広い歩幅を維持するという動作にも
脳への刺激効果があると私は考えています。
歩幅を広げることは、一見単純な動作ですが、
脳と足の間では常時複雑な情報のやり取りが行われており、
変化する環境の中で足の運びを一定に保つことが
脳に与える影響は非常に大きいのです。
―今後の目標についてお聞かせ下さい。
谷口
認知症患者の約6割はアルツハイマー型に分類されます。
アルツハイマー型認知症の場合、
正常な状態から約20年という長い期間で少しずつ病態が進行し、
MCIを経て発症に至ると考えられています。
現在のところ、アルツハイマー型認知症を根治する手段はありませんが、
MCIの状態であれば発症を先送りできたり、
正常な状態に戻ると考えられています。
米国の研究では、MCIが認められた集団のうち、
その後認知症を発症したのは約2割で、
そのままMCIにとどまったのは約5割、
約3割は正常に戻ったとの報告があります
(Ann Neurol 2008; 63: 494-506)。
このことから、認知症が発症する前の段階であれば、
認知機能を正常な状態に戻せる可能性があります。
その手段として、私は、誰もがすぐに実行できて長続きしやすい、
「歩幅」に大きな可能性を感じています。
歩幅を広げることによる種々の効果について研究を深め、
その研究の成果として1人でも多くの方の
認知症予防に寄与することができれば嬉しいですね。
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