2017年12月08日
【ホームズ】 「緋色の研究」題名の謎
『緋色の研究』。
コナン・ドイルが1887年に発表した長編小説。
シャーロックホームズシリーズにおける、
記念すべき最初の作品です。
ホームズとワトソンの出会い、
指輪にまつわる奇妙な殺人事件、
引き金となった過去の悲しい出来事‥‥、
緻密な構成のもと物語は進んでいきます。
ところが奇妙なことに、
物語の題名そのものが謎をはらんでいるのです。
なぜなら、ホームズは作品の中で
「緋色」を「研究していない」
からです。
彼はあくまでも犯人の動機や殺害方法、
あるいは犯人そのものを追及したのであって、
途中で色彩についての考察をしたりしません。
一体、「緋色」とは何を意味するのか?
実は、本文中にヒントがあります。
「どうかね、これを緋色の研究とでも
呼ぶことにしては?われわれだって、
少しは芸術的な表現を使ったっていいだろう」
(『緋色の研究』第一部第四章 訳・鮎川信夫)
そう、作中でホームズ自身がこの事件を
「緋色の研究」と命名しているのです。
ではなぜ、ホームズはそう名付けたのか?
ここで、この物語の原題を見てみましょう。
「緋色の研究」
英語: A Study in Scarlet
Study を研究としたのはわかります。
Scarlet、
鍵を握っているのはこの言葉です。
辞書で引いてみましょう。
これでおわかりでしょうか?
ヨーロッパで緋色・scarlet という色が意味するのは、
「罪悪」「地位」、「身分の高さ」。
作中、ホームズが対峙したのは、
まさに罪悪そのものであり、
地位や身分が重きをなすヨーロッパ社会を去って
アメリカに向かった人たちが引き起こした事件でした。
つまりこの物語でホームズが追及したのは、
「緋色という色彩そのもの」ではなく、
「緋色に象徴される社会的事象」
だったのです。
ホームズシリーズの場合、
「ソア橋」や「アベ農園」など
事件の舞台がそのまま題名という場合も多いのですが
今回のように題名そのものが推理を要する、
というパターンも見られますね。
‥‥ということで今回の語呂合わせは
「緋色」
「スカーレット」
「罪」
でいきたいと思います。
「ヒーローが好かれっと、罪」
やはり、ヒーローは孤高の存在でなくては‥‥。
ということで今日は文学作品からの語呂合わせでした!
緋色の研究改版 (新潮文庫) [ アーサー・コナン・ドイル ] 価格:496円 |