母と娘の不思議な絆: 生まれてこのかた50年(まだ49年)改め(になりました)

2010年08月03日

母と娘の不思議な絆

『どうしよう。子供を流産してしまった。
　　　　　　　　　　　　　お母さんには言わないで』

泣きながら目を覚ましたのは、ベニスのホテルのベットの上でした。

その旅行は出発する5日前に、子供を宿していることが解り、
色々考えた末に、決行したヨーロッパ旅行でした。

夫（前）がヨーロッパに長期で出張しており、
その間の休みに、友人と2人で合流し
イタリア、フランス、ベルギー旅行の計画を立てていました。

妊娠したことで、
旅行を逡巡していた私の背中を押したのは
母でした。

『子供が生まれたら、中々行けなくなるから、行ってらっしゃい』と。

ベテランツアコンの学友が一緒だったこともあり、
決行しました。

幸い悪阻も無く、順調に旅行を楽しんでいたのですが、
冒頭のような夢を見て、少しだけ不安でしたが、
フランス、ベルギーと無事に旅行を終え
身重と言うことで、父が成田まで車で迎えに来てくれました。

車中で、旅行の話をしていると
父　：　『イヤー、旅行していた2週間は、意外に早かったな。
　　　　そんな間にも色々な事があるもんだ』と、話し始めたので
私　：　『色々なことって、お母さんに逃げられた？』と冗談で返したら
父　：　『実は、急な腹痛で緊急手術をしたんだ』
私　：　『えっ、何言ってるの？』
父　：　『折角、楽しい旅行をしているのだから、
　　　　　知らせないでと言うので、知らせなかった』と。

突然の父の話に驚きながら、
緊急入院・手術をした日を聞いて、愕然としました。

それは将に、私がベニスで自分が流産し
母には知らせないで、という夢を見ている日だったのです。

しかも、入院してすぐには
痛みの原因がわからず、色々な科を回され
3日後に母が『何でもいいからお腹を切って』
と懇願し、婦人科で手術。
卵巣に癌が見つかったのでした。

その話を友人にしたら、
『卵巣なんて・・・お母様が赤ちゃんを守ってくれたのよ』
と、涙を流して母の痛みを労ってくれました。

成田空港からそのまま、
入院先の病院へ出向き、母を見舞いました。

母の一声は
『どうだった？旅行は楽しかった？』でした。

母は、まだ自分が癌だとは知りませんでした。

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