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2018年09月17日
人魚姫 / 淫蠍のクレリック
碧眼の少女はかつて暮らしていた城が焼け落ちるのを見た。王である父も、王妃である母も、どちらも死んだ。今や王族で生き延びたのは少女ただ一人であった。
敵国との戦いで国民も家族も失った少女はその青い瞳に炎を灯し、決意する。生きてやる。たとえ泥水をすすり這いつくばろうとも、必ず這い上がってやると。
王家への献上奴隷になるために、手段は選ばなかった。やがて敵国の後宮に入り込んだ少女は、美と知をもってのし上がる。後宮の陰謀し、敵国の王に体を弄られることも、耐えられた。
なぜなら青い瞳の少女には覚悟があった。国を失ったのなら、奪えばいい。老いゆく王を傀儡とし敵国を今は亡き祖国として作り変えるまで、少女の孤独な復讐は続くのだ。
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2018年09月16日
人魚姫 / 餐虎のソーサラー
2018年09月15日
人魚姫 / 怠熊のミンストレル
その雄熊は死に瀕していた。苛立つ心のままに暴力を振るい弱者を虐げることで全てを解決してきた。ある時、雄熊は大怪我で倒れてしまう。自業自得だった。そこに雌熊が現れた。
雌熊は愚かだった。どれだけ拒まれても食料を運び、血の滲む傷口にできる限りの手当てを施し続けた。いつしか雄熊はその姿に観念し、感謝の言葉をかけるようになった。
二頭の旅は幸せだった。ようやく授かった新たな生命、膨らんだお腹を見て、父親になることを改めて実感した。不慣れな手つきでお腹を撫でると、雌能は優しく微笑み返した。
新たな命が産まれた。その命を抱き上げると、雄熊は思わず涙を流した。雌熊もまた涙を流し、彼らを抱きしめた。産まれた子がどんな能になるのか、この時は知る由もなかった。
2018年09月14日
人魚姫 / 慾鴉のパラディン
2018年09月13日
人魚姫 / 嫉蛇のガンナー
少女は田舎の貧しい家庭に生まれた。幼い内に街に出て、工廠での仕事を得た。煤と油にまみれながら、小さな体で屈強な男たちと同じだけの仕事をこなし、給金は全て家族に送った。
化粧も覚えぬ彼女に、声をかける男はいなかった。しかしある日、とある裕福な青年が、懸命に働く彼女を見て恋に落ちた。少女も瞬く間に青年に惹かれていった。初恋だった。
しかし数か月後、青年は別の女と結婚した。白磁のような美しい肌を持つ女だった。少女は自分の煤に汚れた顔が、急に惨めに思えてきた。自分の醜さと、愚かさに怒りが沸き上がった。
少女は生まれ変わった。化粧を覚え、立ち振る舞いを覚え、教養をつけ、気づけば社交界一の美女とまで称えられるほどに成長した。しかし彼女は、後に稀代の悪女と呼ばれる事になる。
2018年09月12日
人魚姫 / 憤狼のクラッシャー
小さな村は狼に怯えていた。毎日のように家畜は喰い殺され、
時には小さな子供までも犠牲になってしまう。
しかし、ある日を境に狼達の襲撃はピタリとやんだ。
不思議に思った村人達は、小雪のちらつく中、恐る恐る
狼の住処である森へと足を踏み入れた。そこには血まみれの
羊と狼の死骸が、数え切れないほど転がっていた。
村への襲撃が止んだのは狼が全滅したからだと知ると、村人達は抱き合って喜んだ。彼らは暮らしの足しにする為に、狼達の死骸から毛皮を剥ぎ、羊達を解体して肉を得た。
何も知らず、知ろうともせず、喜び勇んで狼と羊の死骸を漁る人間達。心が引き裂かれるような決意で招いた終わりが人の手で汚されていく様を、精霊となった狼はじっと見つめていた。
2018年09月11日
人魚姫 / 傲獅のブレイカー
青年は一人きりの小さな家を出て、街の噴水に向かう。楽譜は読めない。けれど青年は耳が良かった。一度聞けば後は奏でるだけ。青年が紡ぐアコーディオンの音色は優しく美しかった。
栗色の髪をした愛らしい少女は常連客だ。この街一番の屋敷で暮らす彼女はいつものように二曲だけ聞くと、少女らしい微笑みを投げかけ立ち去る。青年の日々は清貧だが穏やかだった。
ある日青年は仔猫の声を聞いた。他の人なら聞き逃してしまうほど弱々しい声。青年は一枚しかないシャツで仔猫を包むと急いで家に連れて帰った。それが一人と一匹の出会い。
青年と猫は共に暮らし始めた。青年は猫を大切にし、猫もまた青年によく懐いた。その後不思議と客が増え、青年は豊かになっていく。幸せな日々だった。彼が刑に処されて死ぬまでは。
2018年09月10日
人魚姫 / 鮮魚
人魚姫 / オルタナティブ
本日午前7時45分ごろ、総武本線の新小岩駅構内で人身事故が発生した為、一時運転を見合わせております。お急ぎの方は振替輸送をご利用ください。繰り返します。本日午前……
>@πmania_JP 新小岩で人身事故。まともに見た。吐く。
>@凸boy1978 通勤時間にふざけんなよ。遅延証明書くれ。
>@αchangirl 飛び込んだのは女の人。OLさんっぽい。
新小岩駅で起きた人身事故ですが、所持品などから、はねられたのは都内に勤める女性と判明しました。警察当局は自殺の可能性があるとみて、関係者から事情を聞く方針です。
新小岩駅で起きた人身事故の続報です。女性と同じ会社に勤める男性(40)が逮捕されました。男性は女性と不倫関係にあり、結婚を迫られた為、線路に突き落としたと認めています。切り替え
2018年09月09日
人魚姫 / ハーフナイトメア
恋をして。失って。裏切られて。忘れられて。消えていく。
なんて美しい物語。完成された最高の悲劇。私はその主人公。
うっとり悲しみに浸るうち、ふと――笑い声が聞こえたの。
「ウフフ」……今、笑ったノは誰?これは悲劇ナのよ。
悲劇には涙。笑イなんて「フフフ」、あッてはイケないの。
でも、「アハハ」ああ、まサか、笑っテイるのハ……私?
どウスればイイの。悲しけレバ悲シいホホホほド、私ハ
胸が躍ッテしまウ。私はヒヒヒ悲劇ヲ「喜ンデ」しまウ。
こレジゃ、まルデ、キヒヒ、ヒキき……「喜劇」ダわ!
スベテハ喜劇。アハハ。悲劇モ喜劇。イヒヒ。哀レハ滑稽。
ウフフ。悲シミハ楽シミ。エヘヘ。不幸セハ幸セ。オホホ。
サア、笑ッテ。笑ッテ。笑ッテ。モット……涙ガ出ルマデ。
2018年09月08日
人魚姫 / メイジ
2018年09月07日
人魚姫 / クレリック
人魚(にんぎょ)
上半身は人間、下半身は魚とされる伝説上の生き物。
不吉の象徴、または悲恋の代名詞。
悲恋(ひれん)
叶わぬ恋。相手と決して結ばれる事はない。
主人公が報われぬ恋に身を焦がす物語は、一定の需要がある。
需要(じゅよう)
必要とされ、求められるもの。需要なくして供給はない。
悲哀に満ちた物語は、人が望むからこそ描かれる。
悲哀(ひあい)
哀しく憐れなこと。人は他人を憐れんで心の平穏を保つ。
悲哀なくして平和なし。だから私は悲哀を求めるの。
2018年09月06日
人魚姫 / ソーサラー
人魚の姫は波間に揺れながら、運命の出会いを待っていた。
彼女は夢見ていた。自分の望みが満たされる瞬間を。
だが時として、運命は自ら引き寄せなくてはならない。
やがて一艘の船が現れた。姫がちらりと尾びれを見せると、
大きな魚と思ってか、美しい王子が甲板へ見物に出てきた。
その瞳を見て人魚の姫は悟った。彼こそ己の運命であると。
不意に大きな嵐が船を襲った。船員達は海に投げ出され、
マストは折れ、周囲には船体の残骸と水死体が浮かぶ。
気を失った王子を抱えたまま、人魚の姫はその光景に涙した。
不運な事故、嵐に響く悲鳴。出会いにぴったりの舞台装置。
かくて人魚の姫は運命を手にし、自らの望む悲恋を紡ぐ。
なんと痛ましい悲劇――船を嵐の方へ誘導した甲斐があった。
2018年09月05日
人魚姫 / ミンストレル
ゆらゆら ゆらゆら 青の底
泡となって 漂って
世界の恋を 見守って
幸せな恋 楽しい恋
哀しい恋 恐ろしい恋
恋の姿は たくさんあって
でも 私には
哀しくて 悲しくて 切ない恋が
一番綺麗に見えたのです
幸せなだけの恋なんて いずれ終わって朽ち果てる
悲しい恋だけが ずっと永遠 哀しみだけが 真実の恋
だから――私が それを 与えて あ げ る
2018年09月04日
人魚姫 / パラディン
調査報告1
王妃の身辺調査についての経過報告。王妃は縁故により己が周りを身内で固め、勝手に爵位を与えているとの証言あり。
調査報告2
王妃の身内による財の使い込みは、国家予算に影響を与える規模になりつつある。王はいまだ把握しておられず。
調査報告3
大臣の不審死について、特殊な毒薬が使われたことが確認される。この大臣は王妃一派の弾劾を計画していた模様。
調査報告4
この国の未来は途絶えた。王は王妃に骨抜きにされ、財は私利私欲により奪われた。あの時、王を助けたのが王妃でなければ……