2018年09月06日
人魚姫 / ソーサラー
人魚の姫は波間に揺れながら、運命の出会いを待っていた。
彼女は夢見ていた。自分の望みが満たされる瞬間を。
だが時として、運命は自ら引き寄せなくてはならない。
やがて一艘の船が現れた。姫がちらりと尾びれを見せると、
大きな魚と思ってか、美しい王子が甲板へ見物に出てきた。
その瞳を見て人魚の姫は悟った。彼こそ己の運命であると。
不意に大きな嵐が船を襲った。船員達は海に投げ出され、
マストは折れ、周囲には船体の残骸と水死体が浮かぶ。
気を失った王子を抱えたまま、人魚の姫はその光景に涙した。
不運な事故、嵐に響く悲鳴。出会いにぴったりの舞台装置。
かくて人魚の姫は運命を手にし、自らの望む悲恋を紡ぐ。
なんと痛ましい悲劇――船を嵐の方へ誘導した甲斐があった。
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