2018年09月11日
人魚姫 / 傲獅のブレイカー
青年は一人きりの小さな家を出て、街の噴水に向かう。楽譜は読めない。けれど青年は耳が良かった。一度聞けば後は奏でるだけ。青年が紡ぐアコーディオンの音色は優しく美しかった。
栗色の髪をした愛らしい少女は常連客だ。この街一番の屋敷で暮らす彼女はいつものように二曲だけ聞くと、少女らしい微笑みを投げかけ立ち去る。青年の日々は清貧だが穏やかだった。
ある日青年は仔猫の声を聞いた。他の人なら聞き逃してしまうほど弱々しい声。青年は一枚しかないシャツで仔猫を包むと急いで家に連れて帰った。それが一人と一匹の出会い。
青年と猫は共に暮らし始めた。青年は猫を大切にし、猫もまた青年によく懐いた。その後不思議と客が増え、青年は豊かになっていく。幸せな日々だった。彼が刑に処されて死ぬまでは。
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