2018年09月15日
人魚姫 / 怠熊のミンストレル
その雄熊は死に瀕していた。苛立つ心のままに暴力を振るい弱者を虐げることで全てを解決してきた。ある時、雄熊は大怪我で倒れてしまう。自業自得だった。そこに雌熊が現れた。
雌熊は愚かだった。どれだけ拒まれても食料を運び、血の滲む傷口にできる限りの手当てを施し続けた。いつしか雄熊はその姿に観念し、感謝の言葉をかけるようになった。
二頭の旅は幸せだった。ようやく授かった新たな生命、膨らんだお腹を見て、父親になることを改めて実感した。不慣れな手つきでお腹を撫でると、雌能は優しく微笑み返した。
新たな命が産まれた。その命を抱き上げると、雄熊は思わず涙を流した。雌熊もまた涙を流し、彼らを抱きしめた。産まれた子がどんな能になるのか、この時は知る由もなかった。
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