田中圭一さんが自身の鬱病体験や他の鬱経験者の鬱抜け体験をまとめたマンガである. 話題になっている.
著者の田中圭一さんの鬱体験がリアル. 無理なのに逃げずに無理を重ねてしまうというところは自分も経験がある. すごいのは田中さんが自分の症状を観察して自分なりの鬱のパターンを発見するところ. 鬱は自らの心の病いなのに罹っている当人にとって未知なので, なぜ? どうして? と自分に問い掛けている患者さんは多いと思う. 自分もその一人だ.
印象に残ったエピソードの一つは, 折晴子 (おりはるこ) さん (仮名) という編集者のかたの体験.
その中では, 彼女が幼い頃に持った, 鬱の根っこになった言葉を語っている.
「自分を引き算する」
何かを巡ってみんなの間で揉め事が起こっているとき, 面倒な事態になっているとき, 自分が我慢をして身を引けば他のみんながハッピーにおさまる. 自分が身を引けばいい. 状況から自分を引き算すればいい. そういう思い.
自分の利益や自分の主張は全部心の中にしまう. 自分の取り分まで全部皆に持っていってもらう. それ以上も全部みんなに与えていいようにしてもらう. 口は挟まない. 自分は黙っていればいい. 自分は無くていい. そういう考え.
これを読んで凹んだ. 沈没しそうになったのだ.
認知療法が控えているのに体が固まってしまった. 仕方無く頓服を飲んだ.
その他にも印象的な言葉やエピソードに溢れている.
回復のために普段から心懸けていて, でもなかなかできていない事柄もさりげなく書いてあったりする.
自分が鬱という病気であることを受け入れること.
朝起きたら自分を褒めること.
休むこと.
自分がやりたいことをやること.
自分を受け入れてくれる場所を探すこと.
いい本である. 未来への希望がもらえる気がする.
ただ自分の場合には, マンガの世界に入り込んでしまって読んだ後けっこう凹んだ. なので読むタイミングには気をつけた方がいいな.
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