2018年07月16日
アムウェイに誘われた話。その1
「アムウィやろうよ!」
んなこといきなり言われても……。
事の発端は、去年の秋だったか、大学時代の友人から、実に5、6年ぶりに連絡が来たことだ。
友人と呼べる人間は、周りにはほとんどいなかった。
顔を合わすのは仕事に関係ある人ばかり。同僚もいないし、先輩も後輩もいない。
いるのは上司と、アルバイトだけ。
そんな状況だから、旧友のほうから連絡が来たら小躍りもするさ。さみしいんだもの。
しかも異性。
いや、大学時代も異性として意識したことは、あまりなかった相手だ。
そういう劣情は、ほかの女子に比べれば、それほど生まれなかった。
しかし、嬉しいものは嬉しい。
異性からの食事の誘いなんて、もう何年も受けてないのだから
これがもし、学生時代少しでも気があったような相手なら、今僕はどうなっているかわからない。
で、ホイホイ食事の約束をした。
ちょうどその日は、もう一つの予定があった。
何か月か前に、勤務先のアルバイト学生と、ノリで行った相席居酒屋で知り合った変な女が主催する
バーベキュー大会。
そのバーベキュー大会の終わりに、旧友と会う予定となった。
偶然の重なり。タイミング。
飲みに出かけるなんて月に1度あるかないかみたいな生活のなかで、偶然イベントが重なった。
まるで、リア充なスケジュールだが、基本週1しか休みがない仕事柄、そういうイベントは、一日に凝縮せざるを得ない状況だった。
貴重な休みは、いろいろやることもあるし、すっぽり空いていたその日にイベントを詰め込んだのだ。
で、まず、そのバーベキューのほうだが、その中身はなんてことないただのバーベキューだった。
なんていうか、うん、ほんとになんてことない。ただ暇な若者たちが集まるイベント。
その相席居酒屋で知り合った女性は、そういうイベントを主催するのが趣味なのかなんなのか、意図はよくわからないのだが、定期的にイベントを催している、サークルか何かのメンバーだった。
最初はむしろ、こっちがマルチまがいな連中なんじゃねぇかと、訝しげに参加していたのだが
拍子抜けするほど、悪意のない、純真な出会いの場を提供するものだった。
これには肩透かしをくらったが、なんでも人を疑うのはよくないな。などと酒も入って、気分がよくなり
大学時代の旧友に会うのも、テンションが上がっていた。今日はいい日だなんて。
こんなに、仕事と関係ない人間と関わるのは久しぶりだった。
毎日、毎日、仕事。そんな日々だったから。浮かれていた。
そして夕刻、旧友と落ち合い、適当な飲食店で食事をした。
最初は他愛ない話、学生時代のあいつはいまどうしてるとか、そんな話。
で、ふと、今日はなにしてたの?みたいな話題になり
僕は、事の顛末を話した。よくわからない女性の誘いに面白そうだったから乗ってみたというだけの話。
そこで、失言。
「いやぁ、正直、アムウェイとかの勧誘かと思ったよ。全然そんなことなかったけどね。」
旧友の表情が変わった。いや、普通に笑い飛ばすとこじゃないここ?
なんでここで、ピンポイントでアムウェイって言葉を使ったのかと言えば
先述のアルバイト学生、こいつが最近よく、アムウェイに勧誘されてるって話を聞いていたからだ。
彼は、まだ20代前半のやりたい盛りとでもいうか、性欲に忠実で、かなりディープに出会い系サイトを活用してセックスをしている男だった。
そんな彼が、出会い系サイトで知り合った女に、結構アムウェイをやってる人間がいて、よく勧誘を受けているという話をしていたからだ。
だから今回のバーベキューもそういう集まりなんじゃないのか?って話をしていたのだ。
結果的にそれは杞憂に終わったわけだが。
というわけで、不用意にアムウェイという言葉を使ってしまったのだが、もちろん、笑い話になると思っていたのだ、その言葉を聞くまでは
「え?私もアムウェイやってるけど?」
凍り付いた。懐かしい話とか、くだらない話で作ってきた空気が一変。理外の氷点下。
「ふくすけって、アムウェイにどんな印象持ってる?」
これ、アムウェイに勧誘する人が最初に使う常套句らしい。
そういうことか、そうだよな。急に、連絡来て、おかしな話だ。
そんな理由でもなきゃ、誘わない。そんな5年も連絡をとってなかった学生時代の知り合いを。
そして、僕は正直に答えた。
「マルチ商法。」
「あー、やっぱりそうだよね。私も最初はそうだった。」
実は、こういう返しが来ることは、なんとなく予想がついていた。
例のアルバイト学生から、事前にある程度、アムウェイ情報を聞いていたからだ。
曰く、アムウェイをやってる人間っていうのは、アムウェイを幸せになれる方法だと本気で思っている。
だから、引きずりこんでやろうとか、そういうことは全く考えてなくて
本当に、これはあなたのためを思って誘っているんだよ。っていうことを、本当に、本気で言ってくるのだそうだ。
そう、その旧友も本気だ。本気でアムウェイで幸せになれると思っている。
だから、別にやましい気持ちは一切ないから、何を言われても、当然、怒ったりはしない。
で、そこから少し、アムウェイのすばらしさを語られたはずだが
もうこの辺りから、まともに思考は働いていない。
別に、だますつもりなんて微塵もないのだろうが
浮かれていた自分が愚かしくなった。
下手したら、一方的に好意を寄せられてるんじゃないだろうかなんて思っていた浅はかな自分を殴りたかった。
が、その日は別段、勧誘を受けたわけでもない。
その旧友自身も、「アムウェイに誘おうと思って連絡したわけじゃないから。」ときっぱり。
心の中で、絶対嘘だろ。と思いつつも、言葉にはせず、適当に会話を流して解散。
呆然とした。
よくある話だ。昔の知り合いから久々に連絡がきたと思ったら、宗教やマルチの勧誘なんて。
よくある話。が、まさか本当に、自分にもやってくるとは……
それからもちょくちょく、その旧友からの誘いはあったものの
適当に理由をつけてのらりくらりと躱す日々が続いた。
しかし、訪れる。圧倒的転機。アムウェイ世界へ一歩足を踏み入れる転機が……
〜つづく〜
んなこといきなり言われても……。
事の発端は、去年の秋だったか、大学時代の友人から、実に5、6年ぶりに連絡が来たことだ。
友人と呼べる人間は、周りにはほとんどいなかった。
顔を合わすのは仕事に関係ある人ばかり。同僚もいないし、先輩も後輩もいない。
いるのは上司と、アルバイトだけ。
そんな状況だから、旧友のほうから連絡が来たら小躍りもするさ。さみしいんだもの。
しかも異性。
いや、大学時代も異性として意識したことは、あまりなかった相手だ。
そういう劣情は、ほかの女子に比べれば、それほど生まれなかった。
しかし、嬉しいものは嬉しい。
異性からの食事の誘いなんて、もう何年も受けてないのだから
これがもし、学生時代少しでも気があったような相手なら、今僕はどうなっているかわからない。
で、ホイホイ食事の約束をした。
ちょうどその日は、もう一つの予定があった。
何か月か前に、勤務先のアルバイト学生と、ノリで行った相席居酒屋で知り合った変な女が主催する
バーベキュー大会。
そのバーベキュー大会の終わりに、旧友と会う予定となった。
偶然の重なり。タイミング。
飲みに出かけるなんて月に1度あるかないかみたいな生活のなかで、偶然イベントが重なった。
まるで、リア充なスケジュールだが、基本週1しか休みがない仕事柄、そういうイベントは、一日に凝縮せざるを得ない状況だった。
貴重な休みは、いろいろやることもあるし、すっぽり空いていたその日にイベントを詰め込んだのだ。
で、まず、そのバーベキューのほうだが、その中身はなんてことないただのバーベキューだった。
なんていうか、うん、ほんとになんてことない。ただ暇な若者たちが集まるイベント。
その相席居酒屋で知り合った女性は、そういうイベントを主催するのが趣味なのかなんなのか、意図はよくわからないのだが、定期的にイベントを催している、サークルか何かのメンバーだった。
最初はむしろ、こっちがマルチまがいな連中なんじゃねぇかと、訝しげに参加していたのだが
拍子抜けするほど、悪意のない、純真な出会いの場を提供するものだった。
これには肩透かしをくらったが、なんでも人を疑うのはよくないな。などと酒も入って、気分がよくなり
大学時代の旧友に会うのも、テンションが上がっていた。今日はいい日だなんて。
こんなに、仕事と関係ない人間と関わるのは久しぶりだった。
毎日、毎日、仕事。そんな日々だったから。浮かれていた。
そして夕刻、旧友と落ち合い、適当な飲食店で食事をした。
最初は他愛ない話、学生時代のあいつはいまどうしてるとか、そんな話。
で、ふと、今日はなにしてたの?みたいな話題になり
僕は、事の顛末を話した。よくわからない女性の誘いに面白そうだったから乗ってみたというだけの話。
そこで、失言。
「いやぁ、正直、アムウェイとかの勧誘かと思ったよ。全然そんなことなかったけどね。」
旧友の表情が変わった。いや、普通に笑い飛ばすとこじゃないここ?
なんでここで、ピンポイントでアムウェイって言葉を使ったのかと言えば
先述のアルバイト学生、こいつが最近よく、アムウェイに勧誘されてるって話を聞いていたからだ。
彼は、まだ20代前半のやりたい盛りとでもいうか、性欲に忠実で、かなりディープに出会い系サイトを活用してセックスをしている男だった。
そんな彼が、出会い系サイトで知り合った女に、結構アムウェイをやってる人間がいて、よく勧誘を受けているという話をしていたからだ。
だから今回のバーベキューもそういう集まりなんじゃないのか?って話をしていたのだ。
結果的にそれは杞憂に終わったわけだが。
というわけで、不用意にアムウェイという言葉を使ってしまったのだが、もちろん、笑い話になると思っていたのだ、その言葉を聞くまでは
「え?私もアムウェイやってるけど?」
凍り付いた。懐かしい話とか、くだらない話で作ってきた空気が一変。理外の氷点下。
「ふくすけって、アムウェイにどんな印象持ってる?」
これ、アムウェイに勧誘する人が最初に使う常套句らしい。
そういうことか、そうだよな。急に、連絡来て、おかしな話だ。
そんな理由でもなきゃ、誘わない。そんな5年も連絡をとってなかった学生時代の知り合いを。
そして、僕は正直に答えた。
「マルチ商法。」
「あー、やっぱりそうだよね。私も最初はそうだった。」
実は、こういう返しが来ることは、なんとなく予想がついていた。
例のアルバイト学生から、事前にある程度、アムウェイ情報を聞いていたからだ。
曰く、アムウェイをやってる人間っていうのは、アムウェイを幸せになれる方法だと本気で思っている。
だから、引きずりこんでやろうとか、そういうことは全く考えてなくて
本当に、これはあなたのためを思って誘っているんだよ。っていうことを、本当に、本気で言ってくるのだそうだ。
そう、その旧友も本気だ。本気でアムウェイで幸せになれると思っている。
だから、別にやましい気持ちは一切ないから、何を言われても、当然、怒ったりはしない。
で、そこから少し、アムウェイのすばらしさを語られたはずだが
もうこの辺りから、まともに思考は働いていない。
別に、だますつもりなんて微塵もないのだろうが
浮かれていた自分が愚かしくなった。
下手したら、一方的に好意を寄せられてるんじゃないだろうかなんて思っていた浅はかな自分を殴りたかった。
が、その日は別段、勧誘を受けたわけでもない。
その旧友自身も、「アムウェイに誘おうと思って連絡したわけじゃないから。」ときっぱり。
心の中で、絶対嘘だろ。と思いつつも、言葉にはせず、適当に会話を流して解散。
呆然とした。
よくある話だ。昔の知り合いから久々に連絡がきたと思ったら、宗教やマルチの勧誘なんて。
よくある話。が、まさか本当に、自分にもやってくるとは……
それからもちょくちょく、その旧友からの誘いはあったものの
適当に理由をつけてのらりくらりと躱す日々が続いた。
しかし、訪れる。圧倒的転機。アムウェイ世界へ一歩足を踏み入れる転機が……
〜つづく〜
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