線型変換(基底とは新しい座標系の単位格子ベクトルです)
たとえば次のような対角成分の等しい行列による変換を考えてみましょう。
これを少し変形すると
のような形にできますね。ベクトル a = (3, 1) と b = (1, 3) による線型結合の形になっています。 (x, y) は任意の点ですから、「 x-y座標上のあらゆる点が a と b の線型結合の上に乗りますよ」ということです。つまり (X, Y) は a と b によって作られる格子で表される新しい座標ということになります。任意の点ではわかりにくいかもしれませんので、(1, 1) と (2, 2) を試しに変換してみます:
これを図示すると下のようになります。
(1, 1), (2, 2) はそれぞれ x-y 座標系では (4, 4), (8, 8) に移っているわけですが、X-Y 座標ではやはり (1, 1), (2, 2) と表されます。ただし、その格子単位は a と b の長さになっているのです。このように解釈すると、 2 行 2 列の行列は 2 次元ベクトルを2つ横に並べたものと考えることができます。そしてこの2つのベクトルを基底とよびます(つまり 新しい座標系の単位格子ベクトル です)。
以上のことを踏まえると、行列計算にある程度習熟したら(これはとても大切なことで無意識にできるようにならないといけません)、少し面倒かもしれませんが、行列をベクトルに分解し、実際に紙にベクトルで作った格子を書いてみて、「どういうふうに変換されたのかな?」と確認することを繰り返してみてください。適当な行列を選んで10回ぐらいやってみると、線型変換の本質が必ず「見えて」きます。
これまで何度も取り扱ってきた回転行列による線型変換を「線型結合」の視点で見直してみます。回転行列 Rθ による変換を次のように書き表します:
ベクトル a = (cosθ, sinθ) は円周上の点ですね。
cos(θ + 90°) = - sinθ
sin(θ + 90°) = cosθ
sin(θ + 90°) = cosθ
ですから、ベクトル b = (- sinθ, cosθ) もやはり円周上の点で、 a を反時計回りに 90°回転させたベクトルです。 a と b の内積をとってみると、
となり直交していることがわかります。また、
|a| = 1, |b| = 1
もすぐに計算できます。つまり、回転行列 Rθ は座標を反時計回りに回転させ、格子の長さと角度は不変に保ちます。たとえば回転行列で単位ベクトル (1, 1) を変換すると下図のようになります:
水色の単位ベクトル e は変換によって a + b と表されますから(赤色ベクトル)、回転した直交座標で (1, 1) と表されます。しつこいようですが、ベクトル (j, k) を線型変換したとき、元の x-y 座標系ではその座標を変えてしまいますが、新しい座標ではそのまま (j, k) となります。