高校・大学生のための整数の理論と演習 [河田直樹/現代数学社]
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大学入試ではよく整数を扱った問題が出題されますね。そして入試の中でも非常に難易度の高い分野です(個人的には最難問に属すると感じています)。三角関数や微分積分などの分野に比べると、解法の取っ掛かりを見つけることが難しいのです。演習問題を繰り返し解くことである程度の解法パターンを習得することもできますが、難関大クラスだとそれだけでは通用しないことも多々あります。
これほど大学入試で頻出しているにも関わらず、不思議なことに高校のカリキュラムには整数論という分野が存在しません。したがって、本書のような高校生向けの整数論の入門書はとても貴重なのです。
整数論を系統的に学ぶことによって、整数を扱うときの思考法が自然と身につきます。そうすることによって、ある種の「ひらめき」が要求されるように見える整数問題でも案外自然と解けてしまう場合が多いのです。
入門書であるとはいっても、初学者にとっては歯応えのある内容が揃っています:
・1次不定方程式
・連分数
・合同式
・指数・原始根・標数
・平方剰余
最初のうちは四苦八苦して挫折しそうになるかもしれませんが、その感覚は多分に「新しい概念や用語に慣れていない」ことに起因すると思います。微分積分を学び始めた頃は「極限値」を上手く扱えなかったのと同じような感覚です。紙で計算する手間を惜しまずに、慌てず丁寧に理解するようにすれば、そのうち頭が慣れてきて理論の全体像を把握できるようになります。
本書の後半には 150 題の演習問題が載っているので、この1冊があれば入試対策としても十分です。古本なら 1506 円(税込)ですから、コストパフォーマンスは決して悪くないと思います。
【補足@ 数学オリンピックの問題】
本書の終わりのほうに数学オリンピックの問題も用意されています。
このクラスの問題であっても、整数論をしっかり学んでいれば、意外とすんなり解けてしまうものもあります。腕に覚えのある人はぜひ挑戦してみてください。
【補足A プログラミングを学びたい人にもお勧め】
整数論の考え方や記号法などは、プログラミングと非常によく似た構造をもっています。物事を論理的に詰めようとすると似たような言語構造に辿り着くということかもしれません。したがって C++ や VBA などの機械言語を学ぼうとしている人はぜひ本書を読んで論理的思考力を鍛え抜いてみてください。将来的に決して無駄にはならないと思います。