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2022年07月31日

かくして、羂索(けんじゃく)を倒すという共通目的の為に乙骨 憂太との共闘に合意した烏鷺 亨子(うろ たかこ)ではあったが、乙骨の仲間である他の術師達との合流は、この上もなくバツの悪いものとなった。

もちろん、過去の術師の受肉体である事がその最大の理由であったが、同じく受肉体である脹相(ちょうそう)などの場合は羂索の一方的な好奇心と都合によって”生み出された者”であり、自ら進んで契約した烏鷺とは根本的にバックボーンが違う。

さぞや、奇異の目で見られる事になるであろうと思ってはいたが、実際に感じたプレッシャーは予想を遥かに上回るものとなった。

「で、こちらの方が、昨日連絡した時に話した烏鷺 亨子さんです。なにしろ、僕が領域展開まで使いましたからね、実力は折り紙付きですよ!」

「乙骨が領域を使った?そりゃ、凄いな」
「・・・へぇ」
「・・・・・」

ぎこちなく固まった場の雰囲気に気付いていないのは「底抜けのお人好し」で有名な乙骨だけであり、他の者が危惧したのは実力云々の話ではなく、本当に裏切る心配が無いと断言できるほどに利害が一致しているのかという、素性や境遇の問題であった。

さすがと言うべきか、「空を操る術式」を持つ烏鷺本人が空気を察し、乙骨の言質を補足した。

「まず、私の術式は、このように空間を掴んで歪ませるものだ」

そう言いながら、烏鷺は乙骨に自分の術式を開示した時のように、目の前の空間をカーテンのように掴んで引っ張り、自らの身体に纏わせて姿を半分隠してみせた。

「おっ、凄ぇな!!」

「でしょう!?打撃を受け流す事もできるし、滞空もできるし、終いには呪力放出を曲げて投げ返すし、ホントに苦戦しましたよ!!」

「次に、死滅回游に参加した動機だが、私は前の人生で時の権力に利用されて散々な目に遭ってな。羂索が提示した条件をよく確かめもせずに、二つ返事で応じてしまったが…乙骨に敗けた事によって羂索こそが諸悪の源だと理解した次第だ」

「まぁ、そういうわけなんで、皆さんも仲よくしてあげて下さい」

もちろん、乙骨は純粋に褒める意味で言っているし、少なからず関心を示した秤(はかり)にも、とりあえずは猜疑心が無い事は分かったが、禪院 真希や他の者には相変わらず不信感が残り続けている事が察せられた。

「で、秤さんが連れて来たっていう、もう一人の過去の術師は何処に居るんですか?」

「おぅ、鹿紫雲 一(かしも はじめ)な…とりあえず、ソイツの目的は宿儺と戦う事らしくてな、『他の連中と慣れ合うつもりはない』って言ってたから、余計なトラブルを避ける為に東京第二コロニーが在った場所に待機してもらってるわ」

「あっ、そうなんですか。じゃあ、羂索を倒すまでは、むしろ虎杖君を守ってもらう形に持って行きたいですよね」

「あぁ、もちろん、そのつもりだ」
「で…パンダ君の、その姿は??」

乙骨が「味方である」と認識した相手にはトコトン甘い性格なのは周知された事実であるが、逆に「敵である」と認識した相手には他の誰よりも容赦がないという事実も、これまた高専に加盟している術師達にとっては「知っておくべき常識」である。

「身体が小さくなる『モード』なんて、あったっけ??」

いずれは明らかになる事ではあったが、いざ乙骨に直接指摘されたとなると、パンダ本人はもちろん、顛末を知っている秤も内心の焦りを隠す事が難しくなった。

パンダ

「あー、それなんだが…実は、その鹿紫雲って奴にコテンパンに負けちまってな」
「えっ、本当なの!?」

案の定、顔を曇らせて語気を荒げた乙骨を宥めるように、パンダはワザとゆっくりとした口調で説明を続けた。

「あぁ、本当だ。『ゴリラモード』と『お姉ちゃんモード』を両方、破壊されちまってな…なので、俺は実質リタイアだと思ってくれていい。まぁ、鹿紫雲クラスの術師が他にも居るんなら結果は同じだったろうから、あまり気にせんでくれ」

「うーん、そうかぁ…まぁ、本人がそう言うなら仕方ないけど…身体を作り直して元の大きさに戻すとか、できるんだっけ??」

「あぁ、馴染むまで時間は掛かるけど、サイズ自体は元に戻せるから心配すんなって」
「ごめんね、何もできなくて…」

「まーた、憂太の悪い癖が出た。一人で何でもやろうとするなって、いつも言ってるだろ?」
「うん、分かった…」

(どうやら、この連中も決して一枚岩ではないみたいだな。他の者が乙骨に向ける視線と、他の者同士で向け合う視線の色に違いがありすぎる)

視線という事で言えば、烏鷺がこの場に現れた瞬間から熱したナイフのような眼光を向けてきた禪院 真希は当然としても、務めて全体の調和を保とうとしている呪骸のパンダでさえ、視線そのものは決して温かくはなかった。

「だが、その肝心の虎杖が今朝一番で『伏黒と連絡が取れない』と電話してきて以降、こちらから掛けても繋がらないし、向こうからの続報も無い状態だ。事態は急を要すると思う」

絶妙なタイミングで話題を切り替えた秤が、とりあえずはこの場を解散する為にテンポを上げて言葉を続ける。

「俺はすぐに綺羅羅を連れて鹿紫雲と合流し、虎杖を探すぜ。もう一人の100点ホルダーだった、日車って奴の動向も気になるしな」

「分かりました。じゃあ、僕は真希さん、烏鷺さんと一緒に京都の加茂家ですね。まぁ、羂索がそこに居るなら、一気に最終決戦になるかもしれないけど…」

「うっは、強気だな、さすがは特級術師様。じゃあ、気を付けてな!!」
「はい、秤さん達も気を付けて!!」

場を解散した乙骨は、寮に立ち寄って最低限の荷物をまとめながら、なおも真希と共に細かい検討と確認を続けた。

「まさか、加茂家が羂索に乗っ取られてたとは、可能性にすら上がらなかったなぁ…」

「あぁ、確かにな。でも、どっちにしろ憂太は悟の封印解除を待たずに、たとえ一人でも羂索を殺りに行くつもりだったんだろ?」

「もちろん!!元はと言えば、僕が『あの日』に夏油 傑を殺し切れなかったから招いた事態だからね。僕自身の手でキッチリとカタを付けるよ」

「ははっ、さっきの金次じゃないけど、さすがは優太だよ」

この時、真希が乙骨に対して見せた表情が、自分に対するものとは打って変わって柔らかいものに変化した事に、烏鷺は強い苛立ちを覚えた。

「乙骨よ、ちょっといいか?」
「あっ、はい、何ですか!?」

「今、『殺し切れなかった』と言っていた人物、そいつは羂索と何らかの関係性があった術師か?」

「えっと、関係性と言うか…羂索の現在のボディーである『袈裟を着た長髪の男』には会った事ありますか?」

「あぁ、死滅回游が始まる直前に会ったな。私たち『受肉組』が問題なく受肉できているか、確かめに来たみたいだが」

「へぇ、そうだったんですか…で、そのボディーの本来の持ち主が『夏油 傑』という名前の呪詛師だったんですよ。去年、この高専を襲撃しに来たところを僕が応戦したんですけど、トドメを刺せずに逃がしちゃいましてね」

「なるほどな、それで責任を感じていたのか…道理で強いわけだ」

もちろん、羂索の現在の姿が誰の肉体を奪った結果であろうとも、烏鷺にとっては全く関係の無い話であり、質問そのものに大した意味合いはない。

意味があるとすれば、それは真希に対する”牽制”としてであり、案の定、再び表情を強張らせた真希の視線が痛いぐらいに全身に降り注ぐ。

今、乙骨の知り得ぬ水面下で女たちが静かに牙を剥き、爪を研ぎ始めた。

第1話「未練」
 第3話 ≫

posted by at 19:45 | Comment(1) | 呪術廻戦
この記事へのコメント
〜 あとがき 〜

いやぁ、実はワタクシ、「女の闘い」が大好きでしてねぇ…。

「東京喰種:re」の
霧嶋董香 vs. 六月透

「シドニアの騎士」の
白羽衣つむぎ vs. 紅天蛾

等がワタクシ的ベストバウトでしょうか。

男同士の戦いの場合って、大抵は個人なプライドとは別に中長期的な戦略ってのがあって、戦闘中に言葉で心理的な揺さぶりを仕掛けたり、かならずしも決着がつくまで戦わなかったりするんですが…

女同士の場合、意地を丸出しにして問答無用で「ドガガガガッ!!」っと殺り合う、あのスピード感が堪らなく爽快なんですよね。

趣味の合う方、いらっしゃいます?
Posted by 管理人 at 2022年08月05日 22:37
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