2022年04月24日
【呪術廻戦】第1話「未練」
死滅回游の術式崩壊に伴い、数日前まで結界に閉ざされていた街に人々が戻り始めていた。行政と土木業者、そしてボランティアの人々が一致団結しながら、街中の至るところに散らばっている瓦礫を撤去したり、倒壊しかけている橋や建物を安全柵で囲っている光景が見受けられた。
乙骨 憂太と烏鷺 亨子(うろ たかこ)は、まさに街を破壊して瓦礫を撒き散らした張本人としてその場に居合わせるのは気が引けたのか、少し離れた河原から人々の様子を眺めていた。
「まだ、帰らないんですか?石流さんは”満腹だ”と言って帰りましたけど…」
「うるさいな、私の勝手だろう」
「でもまぁ、良かったです」
「何がだ?」
「いや、素直に服を着てくれて。やはり、”縛り”だったんですか?」
「縛りとまでは言わんがな、己の鍛えた肉体と術式以外は戦いの場に持ち込まないという、私なりの決意の証しだ」
「そうですか。烏鷺さんも石流さんも、潔い人で助かりましたよ」
「甘いな、私を殺さなかった事を後で悔いるがいいさ…」
そう強がってはみたものの、烏鷺は乙骨が自分に止めを刺さなかった事に心から安堵していた。それはまるで、小さな子供が癇癪を起こして泣きながら父親に向かって行ったものの、強く大きな手で制された時のような”反省する時間”を与えてくれる措置のように感じられた。
(乙骨よ、おまえは一体、何者なのだ??年端のゆかぬ少年の顔立ちの中に、圧倒的な強者の瞳を携えて…)
「あっ、そうだ!暫く帰らないつもりなら、僕や仲間を手伝ってもらえませんか?」
一昨日、命のやり取りをした事などまるで忘れてしまったかのように、乙骨は烏鷺の眼を覗き込むようにして言った。
「おい、調子に乗るな!そんな事をして、私に何の得がある!?」
「えっ、得もなにも、死滅回游の術式が破綻した今こそ、羂索を倒す絶好のチャンスでしょう?僕なんかを殺すより、そっちの方が遥かに達成感があると思うんですけど」
「まぁ、それはそうだな…分かった、協力しよう」
「ありがとうございます!!良かった、これは心強いぞ」
そう言って微笑んだ乙骨の横顔にハッと目を奪われた烏鷺は、自身の胸中に複雑に絡んだ感情の糸に困惑した。一昨日、三者同時の領域展開が破砕した直後に、間髪入れずに自分をゴキブリ呪霊に向けて蹴り落とした男は、確かに”殺すべき敵”として自分を見ていた筈だ。
ところが、今、目の前に居る男は、まるで自分を”仲間”だと認識しているかのように笑顔を見せている。はたして、これは自分を懐柔して後々まで利用する為の罠なのか、はたまた、人格を認めた上で今度こそ悔いを残さず成仏できるように、導こうとしているのか…
「そうそう、話は変わりますけど…その服、とっても似合ってますよ。快活なお姉さんて感じで、すごく素敵です」
「なっ!?ば、バカな事を言うな!!このぉ…女誑しめ!!」
「ええっ!!それ言われるの二度目ですよ!?なんで、そうなるかなぁ…」
思わず紅潮してしまった頬を乙骨に見られないように、烏鷺は慌てて身体を捻り、顔を背けた。
第2話「視線」≫
乙骨 憂太と烏鷺 亨子(うろ たかこ)は、まさに街を破壊して瓦礫を撒き散らした張本人としてその場に居合わせるのは気が引けたのか、少し離れた河原から人々の様子を眺めていた。
「まだ、帰らないんですか?石流さんは”満腹だ”と言って帰りましたけど…」
「うるさいな、私の勝手だろう」
「でもまぁ、良かったです」
「何がだ?」
「いや、素直に服を着てくれて。やはり、”縛り”だったんですか?」
「縛りとまでは言わんがな、己の鍛えた肉体と術式以外は戦いの場に持ち込まないという、私なりの決意の証しだ」
「そうですか。烏鷺さんも石流さんも、潔い人で助かりましたよ」
「甘いな、私を殺さなかった事を後で悔いるがいいさ…」
そう強がってはみたものの、烏鷺は乙骨が自分に止めを刺さなかった事に心から安堵していた。それはまるで、小さな子供が癇癪を起こして泣きながら父親に向かって行ったものの、強く大きな手で制された時のような”反省する時間”を与えてくれる措置のように感じられた。
(乙骨よ、おまえは一体、何者なのだ??年端のゆかぬ少年の顔立ちの中に、圧倒的な強者の瞳を携えて…)
「あっ、そうだ!暫く帰らないつもりなら、僕や仲間を手伝ってもらえませんか?」
一昨日、命のやり取りをした事などまるで忘れてしまったかのように、乙骨は烏鷺の眼を覗き込むようにして言った。
「おい、調子に乗るな!そんな事をして、私に何の得がある!?」
「えっ、得もなにも、死滅回游の術式が破綻した今こそ、羂索を倒す絶好のチャンスでしょう?僕なんかを殺すより、そっちの方が遥かに達成感があると思うんですけど」
「まぁ、それはそうだな…分かった、協力しよう」
「ありがとうございます!!良かった、これは心強いぞ」
そう言って微笑んだ乙骨の横顔にハッと目を奪われた烏鷺は、自身の胸中に複雑に絡んだ感情の糸に困惑した。一昨日、三者同時の領域展開が破砕した直後に、間髪入れずに自分をゴキブリ呪霊に向けて蹴り落とした男は、確かに”殺すべき敵”として自分を見ていた筈だ。
ところが、今、目の前に居る男は、まるで自分を”仲間”だと認識しているかのように笑顔を見せている。はたして、これは自分を懐柔して後々まで利用する為の罠なのか、はたまた、人格を認めた上で今度こそ悔いを残さず成仏できるように、導こうとしているのか…
「そうそう、話は変わりますけど…その服、とっても似合ってますよ。快活なお姉さんて感じで、すごく素敵です」
「なっ!?ば、バカな事を言うな!!このぉ…女誑しめ!!」
「ええっ!!それ言われるの二度目ですよ!?なんで、そうなるかなぁ…」
思わず紅潮してしまった頬を乙骨に見られないように、烏鷺は慌てて身体を捻り、顔を背けた。
第2話「視線」≫
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これは「あにまん掲示板」で『乙骨×亨子のCPスレ』というスレッドを見かけて、思わず触発されて書きました。
https://bbs.animanch.com/board/557123/
確かに、烏鷺 亨子って典型的なツンデレ姐さんて感じですよね。そういうキャラって大抵は年下の天然ボケ男にハマってしまうのが定番だと思うんですが、そう考えると乙骨とのカップリングはまさにドンピシャです。これは盲点でしたww