キスの味

朝、参拝に行く途中、あたりの田はまるで雪が降ったかのように、
一面真っ白だった。
霜が降りていた。

この冬一番の冷え込みだった。
職場へこいでくる自転車のハンドルを持つ手も、
限界ギリギリだった。

昨日、知人の死を知った。
年は、80歳を過ぎていて、老衰だったようだ。

一人暮らしだったが、
きちんとされていて、知的な方だった。
話される声のトーンが少し高くて、
昔はいい所のお嬢様だっただろうなと思わせる方だった。

11月の末にも元気でお話を交わした。
最近、ちょっと姿を見ないけど、
近くに住む娘さんのところへでも、
行っているだろうと思っていた。

私はその知らせを聞いて、
ふと昨日の朝のおばあちゃんを思い出した。

もしかしたら、知人がそのおばあちゃんを通して、
会いに来てくれたのかなと。
今朝はそこにはそのおばあちゃんはいなかった。

胸に広がる悲しみは、また私を勇気づけてくれるのものになるのだろう。

知人に冥福のキス。