今日は、前に予告していたいなづ様の作品「翔儀天使アユミ」をUPしようと思います。
いなづ様から昨日メールをもらいまして、どうやらプロローグとその後の設定が、
異なる不都合があるとのことで、修正版をもらいました。
ということでそれを画像と合わせて載せていきたいと思います。
何度も言いますが、そこまでしてくださったいなづ様、本当にありがとうございます。
それではどうぞ♪
注意! この文章と画像には官能的表現が含まれております。
(ご覧になる方は、自己判断でお願いします。)プロローグ「対決! 歩美対玉王」「なんてことなの…」
聖なるキングジェネラルの力を持ち、悪の権化玉王と戦う翔儀天使・歩美は絶望的な光景に言葉を失った。
これまで数々の玉王との戦いの果てに、ようやっと玉王の本拠地を知った歩美は、同じ翔儀天使としての力を持つ6人の仲間と共に玉王のいる大林塔へと乗り込んでいったのだ。
だが、歩美達が来ることを予測していた玉王は塔の中で罠を張り、歩美達6人を離れ離れにしてしまったのだ。
迫り来る数々の罠、刺客を蹴散らしてようやっと塔のてっぺんにたどり着いた歩美が見たものは、、玉王に跪く6人の仲間たちだった。
元気溌剌で猪突猛進の居車喬、知性溢れる参謀役の桂川圭、双子姉妹の心優しい琴と毒舌家の吟。
いつも苦楽を共にし堅い結束で結ばれた仲間達は、今やその面影すらなく玉王が持つ鎖につながれ虚ろな瞳を玉王に向けている。
「ああ…」
「玉王さま…」
歩美が憧れていた凛々しい先輩の飛天龍華、馬原鶴花までも玉王にしなだれかかって蕩けた笑みを浮かべている。
「ぐふふ、歩美よ、見ての通りお前の仲間は全てわが軍門に下った。
いくら仇敵キングジェネラルの力を持っているといっても所詮は小娘。一対一では俺様の敵ではないわ」
玉王が足元にしなだれかかっている鶴花の髪の毛をぐいとひっぱり、強引に引き寄せてその唇を奪った。
「んっ!んぅ……」
玉王にキスされた鶴花は、うっとりとした顔で玉王の舌を受け入れ、ずるずると卑猥な音を立てて吸っている。
その光景は、共に玉王と戦ってきた歩美には信じられない光景だった。
「せ、先輩!鶴花先輩、だめだ!目を覚まして!正気に戻って!!」」
だが、鶴花はそんな歩美の叫びに応えるどころか、さらに玉王にもたれかかってその口を貪っていた。
「あむっ……、んっ…、ああぁ……玉王様ぁ……」
「ふははは!歩美、何を言っても無駄だ!俺に力を吸い取られたこやつらはもう俺の忠実な下僕。自らの意思すら持たない肉人形よ。
そう、お前が良く知っているこやつもな!」
玉王が持っていた一本の鎖をぐい、と引っ張ると玉王の影から裸に剥かれた一人の少女が出てきた。
「あ…おねえ、ちゃ……」
その姿を見て歩美は息を呑んだ。それは、歩美の妹の兵藤風子だったからだ。
「そんな……ふーこ?!どうして…」
歩美が驚くのも無理は無い。風子は戦士ではない。確かにみんなと一緒にいることは多かったが、たんなる普通の女の子なのだ。
それがなぜ大林塔の、玉王のそばにいるのか。
「俺様を見くびるなよ。お前らがここに来ることは党に察知していたから、お前たちが出るのを見計らって肉人形にこいつを捕らえるよう命令したのだ。
人質にするもよし、肉人形にするもよしと思ったが、少し力を吸ってみたらこれが予想外。しっかりと翔儀天使の資質を持っていたわ。
お前達が来る前に存分に存分に堪能してしまったぞ」
「そんなバカな…、ふーこに天使の力が……」
確かに自分に天使の力が宿ったなら妹である風子にも宿るのは不思議ではない。
だが、いきなりそんなことを言われてもただ歩美は混乱するばかりだった。
「本当にいい妹を持っているな貴様は、ガハハハ!」
玉王は下卑た笑みを浮かべ、風子の頭を乱暴にわしわしと撫であげた。
風子はそれが嬉しいのか、猫のように頭を玉王の脚に擦りつけ至福の笑みを浮かべている。
「おねえちゃぁん…。お姉ちゃんも玉王様の肉人形になっちゃおうよ…。玉王様ってそばにいるだけで、とぉっても気持ちよくなるんだよ…
だから、お姉ちゃんも、はやくぅ…」
「そうだよ歩美。いつまでも玉王様に歯向かってなんかいないで、歩美もボクたちの仲間になろう…」
「今まで知らなかった至福の瞬間が待ってますわよ…」
「歩美さん、早く一緒になりましょう…」
「アユミ、みんな待っているんだよぉ……」
妹が、仲間が、歩美に次々と誘惑の言葉を投げかけてくる。
「うっ…」
その言葉は非常に蠱惑的で、歩美も思わず心が傾きかけるぐらいの強制力があった。しかし、
「私は……、惑わされない!」
手招きをする妹。ヘラヘラと笑う友。痴態を晒す先輩。
それらは全てかつての知人、肉親の皮を被った別人だ。玉王に力を吸われ奴隷に成り果てた肉人形なのだ。
自分に出来ることは一つ。玉王を倒し、吸われた力を元の体に返して元の心を取り戻すことだ、と。
「行くぞ、玉王!」
歩美はぎゅっと握り拳を作り、玉王に一直線に向っていった。手に込めた翔儀天使の力を玉王ただ一点にぶつけるために。だが
「甘いぞ、歩美!!」
他の天使を喰らって強大な力を得ていた玉王は、歩美の突撃を事も無げにかわしてしまった。
「ただ直線的に突っ込むことしか出来ない貴様が、このワシを捕らえられると思ったか!喰らうがいい、走流弾!」
横っ飛びに飛んだ玉王は、構えた掌から一直線に高圧の水弾を放った。
斬撃を空振って体勢の崩れた歩美は避けることも出来ず、玉王の攻撃をまともに喰らってしまった。
「ぐああぁっ!!な、なんで……?!」
全身に激痛が走った歩美だが、歩美の心は痛みよりも驚きで占められていた。
なぜなら、今玉王が放った走流弾は、水を使う喬の持つ技だったからだ。
「驚いたか、歩美」
信じられないといった顔をしている歩美に向って、玉王は不敵な笑みを浮かべていた。
「今の俺はこやつらから力を吸収し、こやつらの技を全て使えることが出来るのだ。ほれ、龍華の龍雷閃!」
続いて玉王の手から十字に蒼雷が放たれ、歩美の傍の地面に大穴を開けた。
「鶴花の突麒麟!」
「きゃあっ!」
蹲る歩美に何本もの炎の矢が直撃し、来ている衣服を切り裂いた。
「双子姉妹の獄門金鎖、煉獄銀鎖じゃあ!」
玉王の気で作られた金色の鎖と銀色の鎖が掌から放たれ、動けない歩美をがんじがらめにした。
「そして、お前の力を吸収すれば、俺は翔儀天使全ての力をこの手にすることが出来るのだ」
完全に身動きが取れなくなった歩美を前に、玉王は舌なめずりをしながら近づいてくる。
「や、やめろぉ…っ!」
その姿に、歩美は身震いがした。
どのようなことをされるかまでは分からない。が、玉王の後ろで悶える7人のかつての仲間たちがその末路を歩美に示していた。
「ぐふふ、お前の味はどんなものなのかなぁ…!」
玉王の手がボウッと発光し、何かを摘むかのような手つきで歩美の胸へと近づく。
そしてそのまま、まるで水にでも浸けるかのようにつぷぷと歩美の体の中に玉王の手が沈んでいった。
「あうっ!」
その瞬間、歩美の体の中に痺れるような快感が走った。
「な、なにこれぇ……!あああぅっ!!」
「グハハハ!心地よかろう。これがワシが持つ力。『反転力』だ!お前達がキングジェネラルに選ばれ、その力をその身に宿したようにワシもお前達に力を注ぐことで忠実な下僕に変える事が出来るのだ。それがキングジェネラルの力を持つものの宿命なのだよ!!
このまま貴様の力を吸い取り心の中身を反転させ、ワシに忠実な肉人形へと変えてくれる!」
これで『詰み』だ!歩美!!」
玉王の勝ち誇った卑しい顔が歩美の視界一杯に広がっている。
不思議と、それまで不快にしか感じなかった玉王の姿が、次第に愛しいものへと変わってきている。
(こ、これが……反転、なの……?!)
それを認めたくは無かった。が、心が感じる玉王への敬慕の念は歩美がどんなに否定しても否応なしに大きくなっていく。
(このまま…このお方の……違う!こいつのいいなりになっちゃうの?!そんなのやだ!絶対にやだ!!
でも、でも…気持ちいい!気持ちいいが止まらない!!)
悔しさと屈辱で歪んでいた歩美の顔が、次第に虚ろで呆けた笑みを浮かべ始めている。悔し涙は嬉し涙へ色を変え、血が流れるほど噛み締めた唇は、悦びに涎を流していた。
「どうだ歩美、心地よさで融けてしまいそうだろう。もっと、もっとよくはなりたくはないか?」
「よく……な、なりたくなんか…なんか、な………」
『よくなりたい』。この単語が出るのを、歩美は残った理性で必至に阻止していた。
これを言ってしまったらもう御終い。身も心も玉王に支配され、忠実の下僕になってしまうのは明白だったからだ。
だが、いつまでも抵抗しきれるものではない。もはや歩美の頭の九割九分は玉王への忠誠心で満たされていた。
ほんの一滴、玉王の力が歩美に注がれるだけで新たなる玉王の下僕が誕生してしまうことだろう。
(も、もう我慢できない……。玉王様の体に思いっきり傅きたい……。ごめんね、みんな…。ふーこ……)
「き、気持ちよくぅ…なり、た……」
歩美が屈服の単語を放ちそうになった、正にその時!
「ぐふっ!!」
歩美の力を全て吸収し尽くそうとしていた玉王が突如胸を抑えて苦しがり、歩美の体から離れていった。
「な、なんだこの力は……。ワ、ワシの中の力と、まるで反発しあっているかのようだ……」
玉王の体は見る見るうちに真っ赤に染まり、あまりの熱さからか地面がぐつぐつと湯立ち始めている。
「ハアッ、ハアッ…?!」
玉王から解放され支配力が消えたのか、歩美は荒い息を吐きながらもなんとか身を起こし玉王の突然の変化を呆然と見ていた。
「なぜだ!翔儀天使全ての力を吸収したはずなのに!翔儀……ハッ!!」
あることに思い至ったのか、玉王は倒れ付している7人の下僕達のほうを振り返った。
向こうに倒れているのは7人。力を吸収したのは8人…。自分が吸い取ったのは翔儀天使の力……
「そ、そうか…。歩美、貴様と妹……、ワシは既に、翔儀天使全ての力を手に入れて……」
「ふーこ、が……?」
なるほど、玉王は風子からも力を吸い取ったといっていた。姉妹だから歩美とまったく同じ資質が風子にあったとしても不思議ではない。
これが他の天使の力ならならよかった。だが、歩美と風子の持つ力はある禁忌をもっていたのだ。それも玉王にしか影響しない禁忌が。
「ワシとしたことが……、何たる不覚……。まさか、『二歩』で破れることになろうとは……」
もう玉王の体は光るくらいに赤く染まっている。
「今回はワシの負けだ…。だが、忘れるな歩美。ワシは、ワシは必ず戻って……グハーッ!!」
ドッカーン!
断末魔の叫びと共に、玉王は派手な音と共に四散して果てた。
と、同時に体から放たれた7つの光が仲間たちに、歩美の中へと戻っていった。
「か…勝てた、の……?」
煙しか残っていない玉王のいた跡を見て、歩美は腰が抜けたようにへなへなと崩れ落ちた。
玉王の最後の言葉が気になったが、今は玉王の脅威を跳ね除けることが出来たことのほうが素直に嬉しい。
「あ、そうだ……。みんなを……痛っ!」
起き上がろうとした歩美の胸に一瞬鋭い痛みが走ったが、歩美は気にするまでもなく倒れている仲間たちの下へと走っていった。
玉王が滅んだことを報告するために。
だが、この時歩美の玉王に貫かれていた胸の部分にどす黒く『玉』の文字が浮かび、すぐに歩美の体に沈んでいくかのように掻き消えていったことに、歩美は気が付いてはいなかった…