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2020年02月01日

書評−資産を作るための株式投資 資産を残すための株式投資



久しぶりの株式本書評で長いタイトルですが、石川臨太郎氏の遺作です。
石川氏の投資本は,私も何度か読み参考にしていました。そして最近又新刊
を出したという事で楽しみにしていましたが、よもやそれが彼の遺作になっ
ているとは思いもしませんでした。まだ60代という若さで、末期のガンだっ
たそうです。

彼の投資手法は典型的な中長期バリュー投資で、私も基本的には同じで、彼
のスタイルは大変参考になりました。彼も本書の中で書いていますが、自分
の手法を決めるに際して、時間軸に関してはデイトレから長期投資までいろ
いろあるが、自分で実際にやってみてしっくりするものを選ぶという意見に
、異論はありません。

本書は以下の3部から構成されています。
@ 資産を作るための株式投資
A 資産を残すための株式投資
B これからの世代に書き残しておきたいこと

@Aについては真っ当なバリュー投資とそれによって得た資産の活用法で、
多くの人に参考になると思いますので、ぜひ読んで勉強して下さい。

私がこの本で特に紹介したい部分は第3部の第2章「株式投資は簡単ではな
いけれどすばらしい。たくさんの宝物を与えてくれる」です。この宝物は
全部で11節からなっていますが、どの1節を取っても珠玉の名言で、ある程
度の投資経験者ならうなずく事ばかりです。

株式投資により資産を増やす事ができた。己を知ることができた。悪しきプ
ライドを捨てることができた。リスクの管理ができるようになった。感情の
コントロールが身についた。コントロールできないものがある事を知った。
ストレスとの付き合い方が身についた。敗北とは何かを知った。失敗と成功
について学べた。克己心を高めることができた。最後の株式投資は人生より
もやさしいと知ったについては、私は未だその境地にはなっていませんが、
究極のレベルになるとそう感じるのかも知れません。いずれにしても石川氏
にとって、株式投資は人生そのものであったという事だと思います。

何の道でもそうですが、1つの事を突き詰めていくと人生そのものにぶち当
たるのかも知れません。そういう意味でもこの本は、単なる投資本という捉
え方ではなく、人生の指南書として読むへきかも知れません。彼もまだまだ
やりたい事は山ほどあったでしょう。そういう残り少ない時間の中でこの本
を上梓した、そのどうしても伝えたかった気持ちを汲み取りたいと思います。
それでは又。

資産を作るための株式投資 資産を遺すための株式投資 ――余命宣告を受けた「バリュー投資家」の人生最後の教え




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posted by norch at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評

2020年01月16日

書評−我が家のヒミツ



久しぶりに良質の短編小説集を、耽読させていただきました。その本は
奥田英朗氏の「我が家のヒミツ」です。奥田さんの本は「空中ブランコ」
等で、いつもその変態的な登場人物で楽しませていただいておりましたが
、今回の我が家のヒミツは、70代になった私にとって、とても重いテー
マを含んだ短編集でした。奥田さんの小説の素晴らしいところは、このよ
うな重いものも含んだ題材にも拘らず、読後感がとてもすっきりしている
事です。

目次は
   @ 虫歯とピアニスト
   A 正雄の秋
   B アンナの十二月
   C 手紙に乗せて
   D 妊婦と隣人
   E 妻と選挙
となっています。

ある意味で誰にでも起こりうるテーマですが、その顛末が、いかにも奥田
さんらしい展開で、大いに楽しめます。

内容は読んでのお楽しみですが、私が特に感動したのは、AとCとEです。
「正雄の秋」は同期の河島に次期局長職を奪われてしまった主人公の植村
正雄が社内での噂や、閑職に追い込まれる事、本人に何と言葉をかければ
良いのか等で悶々と思い苦しむ。自分のほうが実績を上げているとの自負
もあり、正直この人事には納得できず、河島を妬む。

そんな中会社から有休消化の為の休暇を提案され、妻の美穂の希望もあり、
二泊三日の四国への温泉旅行に出かける。その途中で同期河島の親父さんが
亡くなったとの訃報。いろいろと考えるところはあったが、自分の父の葬儀
にも河島が参加してくれた事もあり、旅行途中から夫婦で河島の実家に向か
う。

河島の育った地域や、親戚の方々の話などもあり、河島は親戚中の希望であ
り、重い期待を背負って頑張って来た事も理解できた。段々と河島に対する
妬みの気持ちも消え、心から河島に弔いの言葉をかけることができた。

「手紙に乗せて」は53歳の若さで脳梗塞で亡くなった妻の思い出から回復
出来ず、うつ症状となり、食事も出来ずに体調を崩し弱っていく父親。その
様子を息子若林亨の会社の上司石田部長が心に留め、自分の妻も同じく若く
して亡くなった時の経験と心情を手紙に認め、息子に託す。その手紙を読ん
だ父親も同様に石田部長に手紙を託すが。同年代の妻を亡くした男同士の心
の交流が胸に沁みる。

最後の「妻と選挙」。直木賞作家の大塚康夫の妻が突然、市議会議員選挙へ
の立候補宣言。驚きの康夫は妻の気まぐれと放任していたが、どんどん話が
具体的になり、立候補する事になってしまった。当初は応援にも消極的であ
った康夫だが、妻の懸命の選挙活動と挫折に黙っていられなくなり、直木賞
作家としての知名度を生かして、苦手だった応援演説もしてしまう。妻の知
名度も徐々に上がり遂に選挙当日を迎えるが、なかなか当確マークが出て来
ない。選挙を通じ一体となれた家族の運命は?

タイトル通りどの家族もいろいろな問題を抱えているわけですが、夫々の家
庭のテーマ(ヒミツ)によって、更に固い家族の絆を実現していく物語です。
それでは又。

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posted by norch at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評

2020年01月01日

書評−スマホを落としただけなのに



今回の小説は志駕晃氏のものですが、とても小説上の架空の話などではなくて、
実際にいつ起きても可笑しくないというか、その一部は実際に起きている事件
でもある。

良く便利さとリスクは比例すると云われるが全くその通りで、株取引などはリ
ターンとリスがクは1対1だが、スマホに関して言えば、1対5以上かもしれない危
険性を孕んでいる。この作品を読んで、私はしみじみガラケーで良かったと思っ
たくらいである。私は昔からスマホのセキュリティを信じていなかったので、便
利とは思ったものの使わなかったが、正に現在のスマホはポータブルコンピュー
ターと化し、その情報量の多さと失くした時の危険性は図り知れない。

さて話を内容に戻すが、様々な事件は主人公の稲葉麻美の彼氏富田誠が、自分の
スマホをタクシーに忘れ、それを拾った男に麻美が富田と間違えて電話するとこ
ろから始まった。富田のスマホは返却されたのだが、そのスマホの全ての情報は、
拾い主の男に盗まれてしまう。

時を同じくして神奈川県の山中で、山菜取りをしに来た女性により地中に埋められ
た遺体が発見される。神奈川県警刑事部の毒島と加賀谷が事件を追うが、一向に
被害者の身元が判明しない。しかもほぼ同じ場所から更に3つの遺体が見つかり、
この遺体の身元も不明という事で、事件は混迷の度を増していく。

一方麻美は親友加奈子の勧めもあり、今まであまり興味のなかったフェイスブック
に、のめり込んでいく。フェイスブックに投稿するうちに友達承認も増え、ある日
富田と同じ会社の小柳という男からコメントがあり、最初はまめに返事をしていた
が、だんだんプライベートに踏み込んで来るようになったので、どうしたものかと
悩むようになって行く。

実はこの小柳こそ富田のスマホの拾い主の成り済ましで、盗んだ富田の個人情報から
、富田の人間関係は基より、麻美やそれを取り巻く情報を全て引っ張り出し、麻美を
手に入れたい一心で、仕掛けて来たのであった。さて麻美のこれからの運命は如何に
は本書を読んでのお楽しみという事ですが、この後も話が二転、三転、四転と転がっ
て行って、最後まではらはらさせられます。

この小説を読んで、もちろんストーリーも大変面白いのですが、それ以上に、本当に
スマホを落とした時の恐怖感が、甦ってきます。初めにも云いましたが、私はスマホ
のセキュリティをあまり信じておりませんので、ネットは自宅パソコンで、電話と一
部のメールはガラケーで、支払いはクレカとそれに付随した電子マネーと現金でとい
う風にしてますので、カードを失くした時に対応するくらいで、あらゆる自分の個人
情報が一度に盗まれるという事は、パソコンをクラッチキングてもされない限りあり
ませんが、スマホをお持ちの方は、それなりの覚悟が必要かもしれません。
それでは又。

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43年勤めた会社を退職し、趣味でやっていた株式投資三昧の毎日。そんなに贅沢し美食したわけでもないのに、50歳から痛風予備軍と高血圧症。長年の医者通いにうんざりし、医療費節約も兼ねて、薬の個人輸入を始める。
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