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2017年04月10日

狙いはハジメ 古より響く闇の嘶きF (ナオシーさん作・学校の怪談二次創作)




 こんばんは。土斑猫です。
 今回はナオシーさん作・学校の怪談二次創作第八話です。
 お世話になります。

 自分の方は、まだ少し自由な時間がままなりません。
 ナオシーさんに触発されて、ウズウズしているのですがこればかりはなんとも。
 そういう意味でも、ナオシーさんには感謝しています。
 本来なら、更新停止中になるはずのこのブログを支えてくれているのですから。
 本当にありがとうございます。
 復帰出来たら、バリバリ書いてお返ししなくては・・・。
 それでは、お話の方、お楽しみください。



IMG_20170312_0001.jpg




天の川小学校に、けたたましいサイレンが鳴り響き、やってきた救急車にハジメは乗せられ、救急車は、すぐに病院に直行する。

坂田とさつきが、付き添いの為、救急車に同乗していた。

「さっきまで元気に動いていたらしい!」
「原因はなんだ?熱中症か…もしくはアナフィラキシーショックかもしれん!とにかく、人口呼吸を欠かさず続けろ!」

病院に向かう車内は、緊迫に包まれていた。
ユニフォーム姿のまま車内に担ぎ込まれたハジメの口には、今は人口呼吸のマスクがなされている。

ピッ、ピッ、と無機質な機械の音が、彼の命を無慈悲に刻んでゆくようにも聴こえる。

突然倒れたハジメの症状について、救急隊があれこれと協議をするが、百戦錬磨の隊員達でも完全に原因を特定するに至っていない。

「青山!頑張るんだ青山!おまえはそんなに弱くないだろう!」

普段はどこか抜けている担任の坂田も、必死の形相で彼に呼びかけを続ける。しかし、それに彼が応えることはない。

車内に響くサイレンの音、救急隊員のやりとり、坂田の叱咤。

そんな中で、さつきは何をすることも出来ず、ただただ彼の隣に腰を下ろし、苦しむ彼を見ていることしか出来なかった。

これは、おそらく病気の類ではない。

鵺の仕業だ。

睡眠を奪うだけでは、彼は挫けないと判断したのだろうか。その邪悪な力を強め、彼に高熱を発したのかもしれない。

ーー魂のやり取りは、気の持ちようだーー

今、ハジメは混濁する意識の中で、邪悪な力と闘っている。
生きるために、必死に鵺に魂の闘いを挑んでいる。

(ハジメ…。)

何もできない自分が、とても歯がゆかった。


その時、ハジメの右手が寝台から、さつきの目の前にスルリと落ちる。
それに気付いたさつきは、躊躇うことなくその手をとり、ぎゅっと握る。

強く、強く。


「大丈夫だよ、彼は。」

そんなさつきの様子を見た若い隊員が、優しく話しかけた。

「先程の試合のことをチラッと聞いた。この子は大活躍だったらしいじゃないか。強い子だ。きっと助かる。」

それに傍に君がいればね、と笑顔で付け加える。

もちろん、それで何かが解決する訳ではない。しかし、そんな隊員の言葉が、焦りきったさつきの心に、ほんの一筋の光を与えてくれた。




病院に着いたハジメは、すぐに集中治療室に運ばれた。

時を置かずに敬一郎やレオや桃子、また病院から連絡を受けたハジメの父母も駆けつけていた。

「先生、ハジメの…息子の容態は?」

息子の突然の凶報に焦燥を隠せないハジメの母の肩を抱き、ハジメの父親が、妻の代わりに病室前で主治医に息子の病状を伺う。

ハジメの父親は、ハジメに似てよく日焼けし、体格の良い、いかにも大工というような風格のある男性であった。

「申し訳ありません。手を尽くしてはいるのですが…何分、原因がわかっておりません。高熱で意識を失っておりますが、なんの病気なのかが全く分からないのです。」
「そんな…。」

ハジメの母は絶句する。
一方の主治医も高熱の原因が分からず、全くのお手上げのようであった。

「息子は…助かるんでしょうか?」

その問いかけにも、主治医は答えることが出来ず、苦悶の表情を浮かべた。

「とにかく、まずは病気の原因を突き止めることが先決です。幸いにも、息子さんは頑強な身体をお持ちです。きっと病気に打ち勝つ力もある。無論、我々も力を尽くしますので…お二人はお部屋の外でお待ち下さい。」
「…よろしくお願い致します。」

治療室に戻る主治医を見送り、ハジメの両親がさつき達の下へやって来る。

「ごめんなさいね…大変なことに巻き込んでしまって…。」

ハジメの母は、さつき達に謝罪を述べた。
本当は、自分の息子のことで気が気ではないはずなのに、息子の友達を前に気丈に振舞っている。

「いえ、私たちに出来ることがありましたら…。」

年長者の桃子が、代表して答えるが、それ以上のことは何も言えなかった。

「さつきちゃん。」

ハジメの母は、さつきにも声をかける。

「病院までハジメに付き添ってくれたんですってね。先生が教えてくれたわ。ありがとう。」
「いえ…。」

自分は何もできなかったのだ。
ただ、傍で手を握っていただけ。

「大丈夫よ、あの子は日頃から根性は誰にも負けないって豪語してるから。きっとすぐに目を覚ますわ。」

そう言って、ハジメの母はさつきの頭を軽く撫でた。
その手は、とても温かい。

「ああ、あいつはバカだか、体力と根性だけはあるからな。そのうちふらっと起きてくるだろう。」
「おばさん…おじさん…。」

その言葉は、彼らを安心させるため、そして自分達に言い聞かせるつもりでもあったんだろう。
さつきはぐっとスカートの裾を握り閉めた。

「おじさん、おばさん…。ハジメは…ハジメはきっと大丈夫。あいつはそんなに簡単に負けたりしません。きっと、すぐに良くなります。」

すぐに良くなる。

救うんだ、私が。ハジメを。

そう言って泣きそうな笑顔を見せたさつきを、たまらずハジメの母は抱きしめた。

二人のすすり泣きが漏れる。
それを見た敬一郎も、たまらず桃子に抱きつき、堪えていたものを吐き出すようにわんわんと泣いた。

レオも帽子を深くかぶる。

しばらくの間、三人の泣く声が、治療室の前で響き渡った。




その後、ハジメの両親は、同じく付き添いをした担任の坂田の下へと伺った。

病室前に取り残された四人。

その沈黙の中、さつきは立ち上がる。

「さつきちゃん…?」

そんなさつきに、桃子が心配気に声をかける。

もう泣いていない。彼女の表情は、なにかを決意をしたそれであった。

「…あいつを、探さなきゃ。」
「あ、あいつって…まさか!」

レオがゴクリと唾を飲む。
さつきが何を考えているのか分かったのだ。

さつきは、"奴"に挑むつもりだ。

「あいつの所為に違いないんだ…。あいつを倒さなきゃ、何も解決しない…!」

そういうと、さつきは鞄にしまってあった弓矢を取り出す。

この弓矢と、霊眠の呪文で。

そうすれば、ハジメはきっと目を覚ます。

「無理です!そんな簡単にいく訳がない!あの鵺を…僕たちだけで霊眠させるなんて!」
「分かってる…けど、このまま見ているだけなんて出来ない!」

"諦めるのは、ダメだった後だ"

そう、彼は言っていた。

(諦めちゃ、ダメだ!)

天邪鬼から貰い受けた弓矢を、再び強く握り締める。

「そう…ですわね。」

そんなさつきの姿を見て、桃子も立ち上がった。

「こんな時こそ、みんなで力を合わせないと。ハジメさんの言う、"根性"ですわ。」
「桃子ちゃん…。」
「さつきちゃん、一緒に鵺を倒しましょう。」

さつきは桃子へ抱きつく。

本当は、怖くて怖くて仕方ないのだ。
背中はブルブルと小刻みに震えいる。

そんはさつきの背中を桃子はゆっくりとさすった。

桃子はいつものように優しい笑みをたたえているが、その覚悟がレオや敬一郎にも伝わった。

「…お姉ちゃん、僕も一緒に行くよ!ハジメ兄ちゃんを助けなきゃ!」
「敬一郎…。」

小さいながらも、力強く答える弟。
その瞳には、兄だと慕うハジメを救いたいという強い気持ちが映っている。

「…ええい!校内一の心霊研究家たるこの柿の木レオがこんな時に役に立たないでどうするんですか!いいでしょう!天の川小学校の心霊研究同好会の皆さんで力を合わせれば、鬼だろうが蛇だろうが怖くありません!」

その足はガクガクと震えているが。本人はそれを武者震いと言い張るだろう。

「だから入ってないわよ、そんな同好会。」

涙の跡を擦りながら、さつきは少し笑い、釣られて二人も笑う。

きっと、みんながいれば。


「みんな、ありがとう。」





すでに時刻は夕刻を過ぎ、辺りは夜の闇に包まれている。

四人は一度病院を出て、各々準備を行う。


さつきも敬一郎も一度自分の家に戻る。

礼一郎は幸い、仕事に出ていて、今夜は家に帰ってこない。

家中ひっくり返すようにして、敬一郎と共に何か役に立つものはないかと物色する。

(役に立ちそうなもの…役に立ちそうなもの…。)

とは言っても、さつきの家は普通の家であり、さつき自身が女の子。

そうそう武器になりそうなものなどある訳もなく。

諦めかけながらも、さつきは勉強机の引き出しを開く。

(あっ…。)

少し傷んだ赤い表紙の本。
そこにあったものが目に止まり、さつきはそれに手を伸ばす。

(オバケ日記…。)

母、佳倻子の遺した、オバケの霊眠方法が記された日記。

逢魔を封印して以来、そこにあった日記の内容は全て消えてしまい、今もそのままだ。

仮に内容が消えていなくても、鵺のことなど書いていないかもしれない。

それでも、さつきは手に取った日記に軽く頭を乗せる。

(ママ…力を貸して!)

「お姉ちゃん、準備出来たよ!」

敬一郎は、礼一郎のゴルフバッグから、ゴルフクラブを抜き取っていた。
まだその身長に対して長過ぎるくらいのクラブだが、恐らくピアノおばけの時にハジメがそれを持っていたことを思い出したのだろう。

さつきは、礼一郎が時折クラブを大事そうに手入れをしていることを知っていたので、心の中で父に謝った。

「行くよ、敬一郎。」

鞄に日記を入れ、その小さな手を取り家を出る。

二人はレオと桃子が待っている、天の川小学校の新校舎へと向かう。

鵺が見つかるまで、街中を探し回るつもりであったが、さつきは先にめぼしい3つの場所をまず探してしまうつもりであった。

一つは新校舎、今日ハジメが倒れた現場である。
天の川小学校は街のほぼ中心にあたり、ある意味様々な場所に目が行き届く絶好の観察ポイントでもある。

一つは旧校舎。多くのオバケが今も潜んでおり、鵺が身を顰めるにも絶好の場所だと思えた。

そして、もう一つは病院。今ハジメが入院している場所だ。
今までの鵺の行動を見る限り、鵺はサラリーマンの姿して、常にハジメの近くで彼を見ていた気がする。
であるならば、今も病院の側でハジメに毒気を送りつけている可能性は高い。

さつきは最も病院が怪しいと踏んでいた。



「来ましたね。」

すでに校門には、レオと桃子がやって来ていた。
新校舎とはいえ、完全に日が落ち、電気が消えているとやはり不気味なものがある。

レオなどはキャッチャー防具に身を包み、バットを携えて、完全武装している。


まるでピアノおばけを霊眠させた時の格好のそれだ。
その時は、狙われていたのがハジメではなくさつきであったが。


また、レオはどこから持ってきたのか、怪しげなお札を何枚も持っており、それを三人に配分する。

「ネットの通販で手に入れた、破魔の護符です。」


どこまで役に立つかはわからないが、気休め程度にはなるでしょうと、レオは笑った。

確かに無いよりはあったほうがいいかもしれない。

さつきも一枚貰い、ポケットに入れた。


「さあ、鵺を探しましょう。」

桃子が声をかけ、三人は強く頷く。

まずは新校舎から。

さつきたちは忍び込むように校舎に入るが、昼間の試合の喧騒は跡形もなく。
今はひっそりと静まり返っている。

「いるとすれば、やはりこの校庭でしょうか?」

思案するレオ。観客に紛れて、試合を観戦していたのではないか、という論である。

桃子は試合開始前に、特に邪な雰囲気を感じないと言ってはいたが、彼の妖気を隠す力は天邪鬼ですら見破ることが難しいようだ。

直接、目で確かめなければ分からないこともあるかもしれない。

「ねえ、屋上とかはどうかな?あそこからでも試合が観れるよ!」
「ええ、その可能性はありますわね。」

敬一郎の言葉に皆が頷く。

「まずは屋上に行きましょう。あそこなら学校中を見渡せるわ。」

そう言って、さつきたちは屋上へ向かおうとした。




ーーその必要は無いーー



何処からか男の声が、聴こえた。

「なに?誰?!」

突然のことに足を止める四人。
しかし辺りを見渡しても誰もいない。
相変わらず、校舎は夜の帳に包まれている。

「誰も…いませんわね。」

「け、けど今確かに声がしましたね。」

「れ、レオ兄ちゃん、あれ!」

異様な雰囲気の中、何かに気付いた敬一郎が、空を指差す。

空を見ると、彼らの頭上にどろどろと怪しげな黒雲が竜巻のように渦巻いている。

その黒雲の渦が、さつきたちの前にゆっくり立ち降りてくる。

同時に、カッ、と雷が落ちたような強烈な光が、夜の闇を照らす。

「きゃっ!」
「うわぁ!」

四人も思わず一瞬目を瞑る。


ヒョー… ヒョー…


そのすぐ後に、聴こえるあの嘶き。

千年前、時の天皇を苦しめたと言われる、邪悪な嘶きが聴こえる。

それは今までより、よりハッキリと。

その気味の悪さに、満身が総毛立つ感覚が襲う。

ようやく目の慣れたさつきがゆっくり目を開くと、そこにはあの黒スーツに身を包む男性が立っていた。

                               続く

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