2017年10月20日

へっつい幽霊

この分だととてもしょうがねぇと思っていたら
わずかな銭でトントンと値が出てきやがった
大儲けしちゃったぜ
だらか博打って止められないなぁ

こう懐が温かくなってみるとこれも、下らなく使ったらつまらないな
そうだ、俺の所にも友達が来るけど殺風景でいけないな
良い茶箪笥や箪笥が在ると引き立つものだ
台所もそうだよ良い米櫃やへっついの良いのが在ると引き立つけどな
そうだ、俺の所のへっついは馬鹿に悪いや
あそこでへっついを買って帰るかな
ごめんよ

へい、いらっしゃいまし

へっついを一つ欲しいんだけどな

どうぞご覧くださいまし

そこにあるへっついはいくらだ?

それはどうも、いい出来で御座いまして二両二分で御座います

値も良いんだな
そっちのほうは?

こちらはちょっとお安くなりまして二分二朱

でもちょっと出来が悪すぎるな
おい、そっちに良いへっついが在るじゃないか
これはあつらえだろうな

あぁこれはいけません

なんだい?
買い手が決まっているのか?

そうじゃないんですよ
このへっついばかりはお願いできないんですよ
売らないわけではないんですけどね
これだけのいい出来ですからすぐ買い手が付くのですが二〜三日すると戻させる
こっちも半値で引き取って店に並べておくとまた買い手がつくけどまた戻される
どうも変な噂が立ちましてね
あのへっついには幽霊でるとかなんとか
こっちも気味が悪いのでね壊してしまおうと思っておりまして

そうか
でも気に入ったな
値と相談して貰おうじゃないか

いやぁ、また返されたら困りますので

返しっこないよ
変なへっついなら壊していいなら俺が壊すよ

そうですか
それほどご執心ならただで差し上げますよ
お宅に持ち込みましょう
その代りにお返しになったら困りますからね

タダでくれるのか!
いやぁ返しっこないよ
これはすまないなぁ

お宅は・・・へい、畏まりました。
早速お届けに参りますので
断っておきますけどね、しょっちゅう返される品物ですから
ろくな品物では御座いませんよ

心配するなよ
承知しているよ


ご苦労さん、すまないな
この所に置いてくれよ
あと今使っているへっついは要らないから引き取ってくれ
じゃこれはほんのわずかだけど運び賃だ持ってってくれ
どうもご苦労さん


これで台所は立派になった
良いへっついだ

博打をやれば儲かるし、へっついを買いに行けばタダでくれるし
これで箪笥を買えばお金を付けてくれたりしてな
どうも畳もいけないから明日は畳を入れ替えようか
風呂に入ってくるか


風呂から出ますとお酒を飲み、行灯の下でごろりと横になりました

だけどなんだな
あぁやってへっついをタダでくれるんだからなんか在るんだろうな
幽霊が出るとか何とか言ってたな
へっついに幽霊って・・・


ぁあなんか嫌な心地だな


おや?台所がぽぉっと明るくなってきた
なんだ

おい出やがった幽霊だ
なるほど出るんだな

恨めしぃ

何?

恨めしぃ

何を言ってやがるんだ
俺はお前に恨みを買った覚えはないぞ!

・・・・ごもっともです
いや、別にあなたに恨みが在って恨めしぃって言った訳ではないんです。
これは幽霊の枕詞でして
お気に障ったらご勘弁してください

なんだよ
愛嬌のある幽霊だな
何だって出てきた

親方、あなたは気丈夫ですな
度胸がありますね

どうして?

私はね
こうやって幽霊になって出ますけど大概の人は
青い火を見ただけでびっくりして腰を抜かしたりするんですよ
私の姿を見た人なんか気を抜かしてしまいます
言いたいことが在るので出てきてるのですがねぇ話をすることが出来ない
親方は私の姿を見ても驚かない

何言ってやがるんだ

まぁ話せば長いのですが
実は私は元左官屋をしておりまして名前を半次と言います
私は三度の飯より博打が大好きなんですよ

おぉそうかい
俺も博打が大好きなんだ

親方、おやめなさい
博打で大豪邸なんか築けませんよ

幽霊に小言なんかされる筋合いはないよ
それでなんだ?

私はね、しょっちゅう土場に出入りしておりまして
家族をはじめ親戚中、みんなから愛想が付かされまして
相手をしてくれなくなりました。

わずかばかりの金で百三十両の金が手に入ったですよ
有頂天になってしまったのですが、わずかな銭で百三十両もとれるんだ
これは博打なんかやるもんじゃないなっと思いましてね
私は一人者でしまう所がありません
左官ですからへっついをこしらえまして、そのへっついに百両を塗り込んだんですよ
あとの三十両で飲み食いしてたんですよ

でも悪い事って出来ないもんですね
罰ですかね、往来の真ん中で頓死をしっちゃったんですよ
どこの者か分からないっと言うことで下らない所に埋められてしまいました
そうなってみると私も浮かぶこともできません
地獄の沙汰もなんていうけれども、あの百両が在ったらと思いまして
寺に納めて有り難いお経でもあれば私も浮かばれると思いまして
そのことを話そうとして出るのですが皆さん話を聞いてくれません
親方すみませんが、へっついに埋めた百両を出していただけませんか?

そうかぁ、百両の金に気を残りして幽霊として出るんだな
別に出してもいいけどな俺もタダで買った訳じゃないんだ
高い金を払ったんだから、そこの所を分かってほしいな

へへへへ、冗談を言っちゃいけませんよ
親方それタダ貰ったんじゃありませんか

知ってるのか?

知ってますよ

だけど貰えば俺の物じゃないか
壊そうが何をしようが俺のかってだ
どうだ、長い短いの言わない半分の五十両を俺にくれるか

五十両・・親方それはないでしょ
もう少し何とかなりませんか

何言ってるんだ
五十両じゃなかったら俺は壊さないよ
お前がどこに化け出ても俺みたいに話を聞いてくれる奴がいればいいんだけどな
いなければ目をまわされたり、気を失ったりする奴等ばかりでどうすることも出来ないぞ
え!どうだ?

そうですねぇ
親方の仰る通りで半分っこにしますので

よし、分かった
どこだ?


ここの隅っこの方か?

暗くってわからないなぁ
お前が出てくる時に出したあの火の玉で照らしてくれ

そうはいかないんですよ
あれは幽霊の規則で出るときにしか出したらいけないんですよ

何言ってるんだ
もう少しで出るからな

あぁそこです、金づちで強く殴って下さい


あぁ、出ました!
それです!!

なるほどお前の言う通りだ
出てきた
百両ある、これに気を残して出て来たんだな

えぇこれです

泣くなよ
じゃ約束だから五十両貰うぞ
あとはお前のだから持っていけ

これでねぇ百とまとまっていたらなぁ
五十両じゃ半端ですからな

いまさら何言ってるんだ約束しただろ

約束しましたけどねぇ
どうでしょう
運試しで勝負しませんか?

勝負?
気に入った勝負しようじゃないか

これでねもし私が買ったら親方
幽霊に負けるようじゃ運が無いんです
博打なんかやめてしまいなさい

それもそうだな幽霊に負けるようじゃなぁ
お前の言う通りに博打なんかやめようじゃないか
サイコロはいつだって持ってるんだ

懐かしいですな
親方、ちょっとサイコロを私に振らせてください

やってみな

恐れいります


丁とでました


今度は半ですね


よく目が変わりますね

おい、サイコロを転がすなら手を上に向けて転がせよ

そういう訳にはいかないんですよ
幽霊の決まり事でこの手を上に向けることが出来ないんです

じゃいいか
壺皿がないから湯飲み茶わんでやるぞ
さぁ入れてみるぜ


良いな?

どうだ?入るよ


さぁどっちに張る

私はね左官の半次って言うくらいですからね
半しか張らないんですよ
半と行きます

じゃ俺は丁だよ
いくら張る?
一両も張るか?

そんなちびちび張っていたんじゃだめですよ
私は明るくなったら帰らなくっちゃ行けないんです
早いところ勝負しないと
五十両全部張ります

五十両張るのか、よし気に入った!
お前は半だな、俺は丁だ
五十両だ、勝負になるからな
良いか?


勝負


気の毒だな
五三の丁と出た

はぁ
丁ですか
丁だと思った・・・

おい、幽霊ががっかりするなよ
すまないけどなこれは俺が貰うぞ

へぇ
親方、すまないけどもう一番勝負をお願いします

おい、それはよそうぜ
お前に金が無いのは分かってるんだよ
それは勝負できないだろ

いやぁ私も幽霊
決して足は出しませんよ

志の輔らくごのごらく2 「へっつい幽霊」「雛鍔」 [ 立川志の輔 ]


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2017年10月19日

ろくろっ首

こっちへ入りな
誰だよそこから覗いているは?
・・・なんだ与太郎じゃないか

おじさん
こんにちは

おう、こんにちは
今までなお前のお袋がここに来ていたんだぞ

そうかい

お前のこと言って涙してたぞ

おじさん
俺は女を泣かせるようになったのかな

なに言ってんだ・・・
しっかりしないといけないぞ!
兄貴は嫁を貰ったそうだな

その事なんだけどおじさん
兄貴は嫁さんもらって嫁は兄貴のこと兄貴って言わねぇんだよ
「あなたや」って言うんだよ。あはははは
するとね兄貴はね嫁のことをね「おみつ」って言うんだよ
あなたや。おみつや。あなたや。おみつや。あなたや

うるせぇな、そりゃ夫婦だ
そう言うだろ

でね、、おまんま食べる時
「もう一杯食べようかな」なんて相談してやんの。そうするとね
「お上がんなさいよ」
「でも、よそうかな」
「そんなこと言わないでお上がんなさいよ」
「じゃそうしようかな」ってぎゃはははあ
それを見てね俺はお袋と食べているとぞーっとするんだ

なんだってぞーっとするんだ?

お袋の口を見ると箱庭のトンネルみたいな口している

それはお前を育てるのに苦労して歯が抜けたんだろ
馬鹿野郎、ありがたいと思いなさい

それでね俺は兄貴みたいにお袋を安心させたいんだよ

おぉ偉いな
ばぁさんや、やっぱり歳だな
いくつになった?

あっは、、にじゅうになった

それは二十歳(はたち)って言うんだよ
兄貴のようにって言ったって、兄貴は職人で
腕に職をつけるのはすぐに出来るもんじゃねぇぞ

俺は職人はやだ

商人はもっともっと難しいぞ

商人はいやだよ

お勤めしようって言うのか?

お勤めはいやだよ

じゃどうするんだ?

どうするんだってよ
おじさん・・
兄貴たちはね「おみつや」「あなたや」ってね

何べん言うんだよ
そりゃ夫婦だもんそう言うだろ

だからね、、えへへへぇ
おじさん、おばさんがそこに居るとちょっと恥ずかしいんだ

ったく、相談を持ってきたんだと
お隣にでも行っていなさい

さぁ隣に行ったよ

おじさん他に言っちゃだめだよ
あのね兄貴のようにね。。おかみさんを貰いたい


・・・・おい! ばぁさん!ばぁさん!
やっぱ年頃だな。
かみさんが欲しいんだってよ
与太郎、お前みたいな馬鹿野郎なんてかみさんの貰い手なんてねぇよ

いやーそう言っちまったら話にない
本当に誰もいなかったらお鈴でもいいや

なに?お鈴・・
あれはおめぇの妹だろ

そのほうが内輪で済むだろう

兄弟同士で夫婦になれるか

うちはお父さんとお母さんで夫婦だ

話にならないなこいつは・・・
えっ?何お屋敷に・・
ばあさぁん、そうか上手いこと考えたな
与太郎、養子の口があるがどうだ?

いやぁいけねぇよ・・・
「小糠三合あったら婿に行くな」って言うからなぁ

ど。。っどこでそんな難しいこと聞いてきた??
お前なんぞ、喜んで養子に行かなきゃいけないぞ
麹町のさるお屋敷だ

うわぁい!サルが何匹いるんだ?

猿がいるんじゃねぇ。
あるお屋敷でな・・・。このお嬢様には身がないんだ
居るのは、ばあやが一人。それに奉公人。
お前さんが行けばそこのご主人だ

そのお嫁さんはいくつだ?

人並みのこと言ってやがる
ばぁさんお幾つになりなさる?
・・二十二、あぁ若く見えるな

器量はどうだ??

・・・人並み以上だよ!綺麗な人だ

あぁ!!そうかぁぁあ
俺のことは「あなたや」って言うかな?

そりゃまぁ夫婦だからな
こっちからお願いしやってもかまわないぞ

それじゃ参りましょうか!!!


おいおいおい与太!
どこ行くんだ?!

お屋敷へ

知っているのか?

しらねぇ

馬鹿、、
こっちへ来い、まったく
まぁ座れ

お前に言っておかないといけないことがあってな
このお嬢様には傷があるぞ
お嬢様のお休みになるところには電気も無ければガスも無い

暗やみか

暗闇じゃない、古風なんだな
ぼんぼりがあって、そこに油が入ってぼっーっと・・・
そこお休みなる

・・・夜のなぁ、一二時はまだ何ともないがな
二時の時計が鳴るとな、、、
お嬢様の首が伸びるとぼんぼりの中の油を・・・・

ぶるうわぁぁぁあ!!!!!
ろくろくろくろくろくろくろくろ、、ろくろっ首だ!!!!!!!!

馬鹿野郎!でかい声出すな!
昔から言う因果物だな
ろくろ首だ

おれぁ。。。嫌だよそんなとこには行きたくねぇ
ろくろっ首は勘弁してくれよ
話をするのに首をたぐらないといけない

凧じゃねぇよ
だってお前は夜寝ると何にしても起きないって
お前のお袋が言っていたぞ

そうなんだよ
寝ちゃうと隣で火事があっても知らない

じゃあ大丈夫だろ
寝ているうちに元通りに首が戻る

本当に寝ているうちに首が戻るね??
それじゃ参りましょうか



縁というの物は不思議なもので吉日を選んで婿になる日が決まりました。
無事式が終わって、ごろりと横になる、
いくら馬鹿でも寝床が変わると寝苦しく


あぁそうかお婿さんに来たんだ
いい女だな。えへ隣で寝ているよ

肩にを手をかけようとするっと途端に!
二時の時計の金が鳴り始め、首が突然伸び始めました
驚いたのは与太郎


だぁぁああああああ!!!!!!
おじさんおじさんおじさんおじさん!!!!!!ドンドンドンドンドン

馬鹿野郎だな
何だって言うんだよ?

のっのののの、、、伸び始めました!!!

こっちに入れ、扉しめて
近所でびっくりするだろ
伸びましたって言ってあるだろ?

あるって言っても初日から伸びるなんて

初日も二日もねぇよ
お前なぁ・・・・帰ってきたところをみると
相手方に申し訳なくおじさんは腹を切らないといけないぞ!

おじさんの腹だから切っておくれ

何言ってやがる
お前どうするつもりだ?

どうするって俺はお袋のところに戻ります

お袋のところに行くって言ってもなぁ
与太郎が初めての縁談がまとまって今頃お前がどうしているかって
お前の安否を首をながぁ〜くして待っている

えええええ!!
うちのお袋もろくろっ首になったのか・・・

立川談志「ひとり会」落語CD全集 第九集::「ろくろっ首」「淀五郎」 [ 立川談志 ]




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2017年10月16日

杭か、泥棒か?

ちょいとお前さん起きてくれよ

なんだい?

なんだいじゃないよ
泥棒が入ったようだよ

泥棒が、どこへ?

裏の方から

あぁ裏は開けてあったからな

台所でガタガタいってるよ

う〜ん、台所でか、
まぁ別に取られるものなんて無いんだからほっとけよ

そういう訳にはいかないでしょ
それにお勝手の物を取られたら不便だし困るよ

ネズミじゃないか?

ネズミじゃないよ

ネズミだろ


これを聞いた泥棒もしょうがないから

ちゅーちゅー
  ちゅーちゅー

ほら、ネズミが鳴いているよ
ネズミだって

ネズミじゃないよもっと大きい音だったよ

猫かな?

にゃーあ、にゃーおう

ほら猫だよ

猫よりもっと大きい音だったよ

犬かな?

わん、わん、わん

ほら犬だよ

いえいえ、もっともっと大きい音だったよ

馬かな?

ヒィヒーン

違いますよ、もっと大きい音でしたよ

牛かな?

モーオ、モー

牛どころじゃないですよ、もっと大きかったです

キリンかな?

・・・・・・・・


泥棒先生はキリンの鳴きまねは出来ない
ばたばたっと裏から逃げ出して

ほら泥棒だ!!


庭に飛び出して、塀を乗り越えようとしたが高くって越すことが出来なかった
庭をぐるぐるしていたら小さな池が目に入った
この池に飛び込むと首だけだすと


おい、泥棒は池に飛び込んだようだ
暗くってわからない
あの松の枝が下がった在り、あれは杭(くい)かな?泥棒かな?
棒か何か探る物は無いか?
あぁそれを持ってきてくれ
これは杭か?!泥棒か?!杭か?!泥棒か?!


そう言われながら泥棒先生は殴られて切なくなってしまい


クイー、クイー・・・

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2017年10月15日

粗忽長屋(そこつながや)

何だよこれ?
凄い人だかりだね

ちょっとすみません、これ中は何ですか?

行き倒れだって

え?
いきたおれ・・
見たいなぁ

私も見たいと思っていますがなかなか前に行けなくってね

でもなぁ何とか中に入れないかな

そうですね
見物衆の股ぐらでもくぐって行けば中に行けるんじゃないかな

股ぐらをくぐるか
その手が在ったか

ちょっと御免なさいよ


おっと前に出てきた、、、って何もやってないじゃないか

どうも、こんにちは

何だね、この人はそんな所から顔を出したらいけませんよ
あなた達もそうだよ
見た人たちは代わって上げて、なるべく多くの人に見て貰いたい

聞きましたよ
生き倒れ

そうなんですよ

今から始まるんですか?

始まりはしないんだよ
倒れてるんだから
身元が分からなくって弱ってるんですよ
知ってる人か見てくれませんか?

見てもいいの
あら?見っともねぇな
おい、みんな見てるから起きなよ

起きないですよ
その人死んでますから

死んでるの?!
それじゃ死に倒れじゃん
生き倒れって

本当は行(ゆ)き倒れって言うんですよ
どうでもいいんですよ
書付一つ持ってないんで困ってるんです
知っているか見てくれません?

知っている人が死んでるってことが在るわけ・・・


うん?


あっ!!!熊の野郎だ!

知っている人ですか

知ってますよ
同じ長屋に住んでいるんです。
仲がいいんです

そうですか!
良かった

良かっただと、この野郎!
人が死んでるんだぞ!

そういう意味じゃないよ
それじゃとって帰って女将に知らせてあげてください

この野郎は独り者なんですよ

それじゃご家族の方は

身寄り便りがねぇんだ

気の毒だな
それじゃ大家さんという事になると思いますがね
いつまでも寝かせておく訳にはいかないんでねぇ
あなたは友達なんですよね
この人を引き取っておくれよ

え?あっしが?
こいつを引き取る?
引き取れって言われれば引き取れないわけではないけどな
なんかなぁ後から来たのに上手いこと言って持って行ったなんて言われたらなぁ
痛くもない腹を探られてもな

言っていることの意味が分からない
引き取っておくれよ

こうしましょう
ここに当人を連れて来ましょう

え?誰?

いえ、当人を連れて来ましょう

ごめん
分からない
当人って?

だから行き倒れの当人

何のことだ?

この野郎は普段からぼーっとしているんだ
観音様にお参りに誘ったんだけど今日を頭が痛いって
家でぼんやりしていますよ

さっき会ってるのか
じゃ違うよ
この人は昨夜から倒れているんだ

でしょ
ですから当人が来ないと駄目なんですよ
自分で死んだの知らないんですよ
行って来ます

ちょっとあなた!
なにあの人??



まったく世話をかけやがって


おぉい!熊!!
ドンドン

熊!!!
 ドンドン


そそっかしいね、あいつは
ドンドンと戸袋を叩いて
熊の野郎も熊の野郎だ
顔を出してやればいいだろうに
呼んでんだから


あぁ??熊は俺だ

兄貴!そっちじゃない
こっちですよ

大変だ!

どうしたんです?

お前諦めろよ

え?急になんです?

俺はあそこに行ったんだ
どさくさじゃなくって、浅草のえっとあそこ
拝むところ

金毘羅様?

違う違う
あのっ観音様だ
お参り済まして帰ろうとしたら黒山の人だかり
中に入ってみたら行き倒れだよ



行き倒れ

あ、そうなんだ
上手くやりましたね

お前も分かってないな
見てくれって言うから見たけど
顔から着物まで同じだよ
諦めろよ

その諦めろと言う意味が分からない
どうしたの?

ここまで言って分からないかな
あのな、お前、今、浅草の観音様のわきで・・・・死んでるよ

・・・・俺が?
嘘だよぉ
だって死んだ気がしないよ

お前は一遍でも死んだことが在るのか?

不勉強でまだ死んだことが無いんだけどね

だったら死んだ気持なんか分からないだろ
昨夜どうしたんだ?

中を冷かして帰ろうとしてさ
馬道に屋台が出ていたんだよ
一杯ひっかけて四、五、まぁ五合は呑んだね
銭払ったまで覚えてるんだけど気が付いたら家に帰ってたんだよ

それが何よりの証拠じゃないか
悪い酒に当たって倒れたんだよ
それを死んだのを忘れて帰って来たんだろ

・・・かな?

だよ!

え、、、そう?

そうだよ
普段から酔っぱらったら気を付けろって言ってるだろ

あぁやっちゃったな

いまさら言ってもしょうがないよ
一緒に行くぞ

どこに?

死骸を引き取りにだよ

誰の?

お前のだよ

俺の?
いや、止そうよぉ
ほっとこうよ
今更これが俺の死骸ですってさぁ

何言ってるんだよ
向こうは困ってるんだから引き取りに行くぞ
これからもある事だから気を付けろよ



おぉみんなお前のことを見てる


ちょっと御免なさいよ

入って来いよ
自分の物だろ胸張って入って来いよ

どうも先ほどは

帰って来たよ
行ってみて分かったでしょ
違う人だったでしょ

何しろこいつは普段からぼーっとしてますからね
死んだような気がしないって強情を張ってまして
それから私は噛んで含めるように言い聞かせて連れてきました

こっちに来いよ
ちゃんと挨拶をしろ

すみません
悪気が無かったんですよ
なんか昨夜ここで死んだようでして

・・同じような人が増えたよ
あのね、あなたは死んでいないんですよ

いや、ほんとすみません

まぁ見てみて

いやなまじ死に目に会わない方が

何言ってるんだ
自分の死体だろうがいいから見ろよ

そうか
あっちゃぁ〜これは申し訳なかったなぁ
へぇこれが俺か?

そうだよ

俺にしたら面が長くないかな

夜露に当たって伸びたんだろ

そういう事もこともあるよね
ふぅん


着物の柄も大体同じだね


俺だ!!

そうだろ!

俺、、浅ましい姿になっちゃって
こんな事なら何か旨い物でも食べておけば良かった

今更言っても始まらないよ
お前は頭を持て俺は足の方を持ってやるから

兄貴すまない
人間どこでどんな災難に会うんだか

困っちゃうなこの人たちは
抱いてみて分からないの?
これはね、あなたじゃないんですよ

何を言ってるんです自分の物じゃないか
文句を入れる筋合いはないよ
でもね、兄貴、俺なんだか分からなくなっちゃった

何がだよ?

抱かれているのは確かに俺だが、抱いている俺はいったい誰だろう?

林家たい平 落語集 たい平落語 粗忽長屋/干物箱 [ 林家たい平 ]



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2017年10月13日

追っかける

おう、走ってどうした?

さっきスリにあったんだ

へぇ、町内一足が速いお前でも追いつかないのか?
スリはどっちに逃げたんだ?

後から追っかけてくる



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2017年10月11日

二人癖

私に何か用って言うのは?

ご隠居さん知恵を借りようと思ってね

私はそんな知者ではないが何だな

私の友達の建具屋の半公を知っていましょう

あぁ建具屋の半次郎さん

えぇあいつは二言目にはつまらねぇ、つまらねぇって言うのが癖なんです。
聞いていて嫌な気分になるから、やめろって言ったんだ
そうしたら俺はいいけどお前にだって癖があるという
私は酒飲みでしょ
二言目には一杯飲めるって言うのが私の癖なんです。

お互いに評判の良くないからやめようじゃないかと
普通ではやまないから手拍子三つピタリとやめたんだ
新たにやったものは百円ずつの罰金と決めて来たんです。
あいつは落ち着いていてなかなか言いそうになんです。
先に取られるのは癪に障るんだ。
奴につまらないって言わせる工夫は御座いますかね

ほぉお、なかなか面白い事を言ってきたな
成程、ちょっといいことがある
その恰好では具合が悪い
汚いと言っては失礼だが仕事袢纏(はんてん)を裏返して手にちょっと糠を付けていく
これが道具だから忘れないように
それで向こうの半さんの家に慌ただしく行く

お前に話すのは初めてだが田舎に親類がある
そこから大根を百本ばかり送ってきた
これを漬け込んでしまおうと思うんだがあいにく一斗樽が無い醤油樽ばかりだ
百本って言っても細い大根でもかさがある
醤油樽なんてわずかなものだ、どう考えたってこれはつまらない

上手い事考えましたね
醤油樽に漬け込む、これはつまろうか?これはつまらない
誰だって言いますよ
どうも、ありがとうございます。
百円とれますので甘味は買ってきますのでお茶のご用意をお願いいたします。

宇治だけは私の方で用意いたしましょう
それではしっかりやっておいで


当人は大喜び。恰好はご隠居さんの言った通りにし、
手の先だけでは物足りないだろうと思い頭から糠を浴びてしまいました


おい居るか?

誰だ?
なんだ勝さんじゃないか

お前に話すの初めてなんだが田舎に親類がいる

へぇ永の付き合いだが田舎に親類がいるのは初めて聞いたよ

そうなんだよ、俺も初めて聞いた、、、って何か言うんじゃないよ
ここはトントンっていく所なんだからな
そこから大根を百本送ってよこしてきた

おぉしめたな
俺の所に半分くれ

黙って聞いてくれ
漬けようと思うんだがあいにく一斗樽がねぇ
醤油樽しかないんだが百本の大根がつまろうかな

何を言っているんだ。
考えてごらんよ
細い大根が百本って言ったらかさがある
醤油樽なんてわずかばかり、どう考えたって百本の大根はつ



この野郎上手く考えて来たな

どうだ?
つまろうか?

駄目だ

駄目だじゃ、、、
駄目なんだが、、、
つまろうか?

余るよ

余らないように上手く詰めるんだ

箍(たが)がはじけちゃう

百本だよ・・・

泣き面するな、ご苦労さん
お茶でも入れよう遊んでいきな
あ、お密や下駄を出してくれ

どっかに行くのか?

なに横町のうなぎ屋の開業式よ
伊勢六の若段に誘われてな
これから行ってくる

しめた一杯飲めるな

ありがとう

え?

飲めるって

あぁわわわ

もう言っちゃったよ

今のは五十円にまけてくれ

しみったれな事を言うな
約束だからな
下駄出さなくっても良いよ、行かないから

うなぎ屋で一杯・・・

嘘だよ

嘘?
ひどいよぉ今のは
大根が

もう駄目だよ
出直しておいで

さようなら


どこで間違えたんだ?


ただいま

おぉ早かったな
お茶の支度が出来ております

駄目なんだよ
お茶はいけないんです
トントントンって言ったんです
どうだつまろうか?って言ったら向こうがグズグズ言って
どう考えても百本の大根はつ・・・・って言ったきり後が出てこないんです。
駄目だって、余るって、うんと詰めたら箍がはじけるって、強情な野郎ですよ
それでどっかに行こうとしてますから、聞いたら若旦那と一緒にうなぎ屋に行くってもんだからしめた一杯飲めるって、、とられちゃった
とられたのを取り返したいんだ。
もう一つ考えて頂きたい

私も味方、身びいき
お前さんがとられてしまうとわしも残念だ
もう一つもしやと思って考えてはあるんだが
半さんは将棋は好きか?

将棋は三度の飯よりすきだ

それは好都合だ
お前さんは、、、
そうかまるっきり知らないでは困るがそれぐらい知っていれば大丈夫

将棋を指すのではない、詰め将棋だ
向こうに行くと悟られるから、半さんが来るのを待ちなさい
玄関に盤を置いて、並び方は私が教えてあげます。
手には金銀と歩三枚だ。他の駒を持っちゃいけないよ
二、三度声をかけられても黙っている
これは夢中になっている様子を相手に見せる
何をしているんだと聞くでしょう
王を都詰めにする詰め将棋、
雑誌の懸賞金に出ていたって言うと本当だと思うでしょう
お前に分かるはずがない貸なって必ず言うでしょう
向こうに盤と駒を貸して、暫くたってからつまろうか?って聞きなさい
本当は詰まないと言うが、口癖でつまらないと言うでしょう
好きなものには心奪われる
しっかりやっておいで

ありがとうございます。
今度は大丈夫でございます。
それと将棋盤を貸してください。

駒をなくさないようにな
並び方を教えてあげましょう


遅いな、まだ来ない
いつも来るんだけど何をしてるんだ?

おう勝さんいるか?
風呂に一緒に行こう

二、三度は聞こえないふり

なんか言ってるなぁ
居るんだろ?開けるぞ

表で怒鳴ってみっともねぇじゃねぇか
なんだ、盤に向かって珍しいな
詰め将棋か面白いな
何かに出ていたのか?

これはね雑誌に出ていた懸賞金付きなんだ

どこに駒を打つの
あぁ駄目だよそんな所は
お前には一生考えても分からないよ
ちょっと貸しなよ

あぁっと、そうだなぁ

つまろうかね

まだ考えてもいないんだよ
馬鹿だな


えっとここに打つとこう逃げて

どうだ、ここに金が効いている

こう打つと

つまろうかね?

えっとここにこう打つと




つまろうか?

うぅ〜〜ん

唸ってる
もう一息だな
つまろうかね?

これは駄目だ
俺にはつまらねぇ

言いやがった!!

飛びかかって来やがった
待ってくれ、俺が一生懸命考えていたら・・・
上手い!これは駒が取れない
へぇよほど将棋の上手い人が考えたんだな
お前の考えじゃないな、誰の考えにしろ敵ながらあっぱれだ
金銀歩三枚で王を都詰めとはなぁ

おい百円、百円くれよ

逃げも隠れもしないよ
良く出来てるなぁ
決めは百円だな

百円だ

あんまりにも出来がいい
二百円やろうかな

二百円!
ありがたい一杯飲める

おっと、差し引いとくよ


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2017年10月09日

一眼国

おはようございます

おう、おはよう

どうも昨晩は厄介になりまして有難うございます。

なぁに、またこっちに来たらね六部さん泊めるよ
私はさんざん親に不幸をさせたからお前さん方の面倒を見るんだよ
来たら泊まってご飯でも食べて行っておくれ

どうも有難うございます。

しかし六部さんは方々歩いているから珍しい者を見やしないかね
私の方見世物をやっていてね
でも最近のお客は見世物が見慣れてしまって刺激が足りないんだ

左様でございますな
あまり在りませんなぁ

なんか無いかな
私はね、ネタが欲しいんだ
こういう者が在るって聞いたらそこに行って人間を買って来て
動物でもいいんだ
足がないのに駆け出すとか、臍でものを食べるとか
変わってれば見世物になるんだよ

さぁあまりそういう者はみませんな

方々歩いているんだから何か無いのか

ありませんなぁ

お前だってうちに泊まるんじゃないか
私の方はお前を泊める義理は無いよ
けどうちに泊めるんだから

そう言われましても

そうか無ければしょうがないね
え?あぁお茶なんか入れなくってもいいよ
御飯もいいんだ帰ってもらうんだから

そう御腹立ちでは困ります
そう言えばこんなことが御座いましてな

どんなこと?

ちょっと凄いことで

そうかい
お茶を早く入れな
御飯はまだ用意できないのか?
どういう事なんだい?

私が江戸から東へ三日ばかり参りまして日が暮れてしまい
宿をとることが出来ないと思って居りました
ある森の中へ入って一服吸って居ましたら後ろの方から
「おじさん、おじさん」と声がしました
何だろうと思ってひょいっと振り返ってみますと五歳か六歳くらいの女の子
傍にかけて来たからかわいい子だなと思い顔を見ますと
一つ眼なんです
真ん中に眼が一つしかない

私はゾォーっとしましてそこを夢中になって駆け出してようやく町に出まして
宿を取りましたが当分の間は一つ眼の女の子の顔が眼に焼き付いて離れなかった
寝てもうなされてしまう始末でして

おぉ!!一つ眼か!良いね!
見世物にするといい金になるな
江戸から東へ三日行くと森になるのか

ちょっと幾らか包んでこの六部さんへお渡しな
またこっちに来たら寄んなさいよ
いつでも世話しますからね


支度をしまして六部さんが言った通り江戸から東へ東へ三日ばかり歩きましたが
一つ眼の子供に出会わない


あの六部のやろう
人が怒ったものだから出鱈眼を言いやがったな
三日も歩いたのに全然合わないじゃないか
あぁ損したな


あれ、あそこに森が在る


おじさん、、、おじさん

振り返ってみると五歳か六歳くらいの女の子がいました
良く顔を見ると眼が一つしかない
あっ!っと思い飛びついて駆け出すと
女の子が声の限り泣き出した
急いで駆け出すとブーっと法螺の音がする
お百姓たちは鍬(くわ)をもって「この人さらいめ!!!」

道が不案内であっという間につかまってしまった

不定野郎だ!こん畜生め!

ぼこぼこにされた挙句縛られてしまった
奉行所にて調べという事になる

おい、その方は小国はどこだ?
貴様はなぜ子供を黙ってさらう
さらわれた親の心配は一通りではない
子供が欲しいなら親に訳を言ってもらわないんだ
不届き至極な奴め

申し訳ございません


顔を上げて見たらお奉行は一つ眼

(おや、お奉行だけでなくまわりの家来もみんな一つ眼だ
一つ眼ばかりだな、、一つ眼の国だ)

面を上げろ

へい


うん??!!
こやつは眼が二つある!
おい眼が二つあるぞ!みんな見ろ!珍しいな
余りに珍しいから調べは後回しにしてこの方を見世物にだそう



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2017年10月08日

手と足の喧嘩

手と足が喧嘩というお話があります


おい手!

なんだい足

いま表を歩いてきてお前より俺の方がぐっと疲れている
家に帰って座るとたんに俺の上に乗ってくるってどういう了見だ!
置き場を変えろ!

あはははは!
生意気言うな手と足では貫録が違う
人様に物を上げるときだって貰うときだって手で貰ったりやったりする
足じゃできめい!
神仏を拝むときだって手で拝むんだ足で拝んでみろ罰が当たる
そんな身の程を知らないことを言ってると力を入れて押すぞ!

押さなくたっていいよ・・・

押したからってどうしたんだ

バシッ!!


おっ殴ったな!覚えてろよ!!

しょせん足だ!
何もできめい!!

今度風呂に入ったらその手で俺を洗わせてやる!


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2017年09月28日

目黒のサンマ

これ金弥、金弥を居らぬか

お呼びで御座いますか?

うむ今日は良い天気であるな

はっ、秋晴れとはこの事か存じます

かような上天気の折に屋敷内居っては誠に無粋である
何処ぞに出かけようと思うがどうじゃ?

はっ、それは誠に結構で御座います。

遠乗りを致そう

はっ、遠乗りは武術鍛錬の為にも誠に宜しい事で御座います。

うむ、いずれに参ろうかのう

下屋敷にもほど遠からぬ目黒あたりが如何かと心得まするが

おぉ目黒、以前も参ったことがあった
良いところじゃ
然らば目黒に参ろう
馬を引け!

はっ

ひらり馬上の人となりますとパッパカパッパカ
殿様が出かけたと聞いて家臣がそれはいけないと急いで追いかけていく


遠乗りも疲れるものだなぁ

遅れて家臣団も追いつくと

その方たちに尋ねるが戦場にて馬を射られてらどうする?

はっ、その場合は徒歩にて戦います

うむ
足は鍛えておかなければいけないぞ

御意に御座います。

向こうを見ろ、小高い丘がある
あそこの上に松の木が在るから、その方どもとかけ比べする
いいか?後れを取るなよ

家来も畏まって御座候
駄々っ子を遊ばせているようなもので
しかし中には要領が良くないものがお殿様の前に出ようとすると


これ、なぜ余の前に出る

は?いえ、駆け比べでして

たわけ者、家来が主人の前に出るやつがおるか
控えておれ!

これでは前に出ることが出来ない

やはりその方は余にはかなわないな

恐れ入りました。

空腹を覚えた
弁当をこれにもて

恐れながら火急な為、弁当を持参しておりません

そうか・・・
弁当は無い・・・
左様か
左様であるか・・・

なぜ弁当を持ってこないんだと言うと家臣の中から責任を取るものが出てくる
小さいころからそのような事を言ってはいけませんよと教えられております。
我慢をしたのですが余計にお腹がすいてくる
主従で松の根方に腰を下ろして秋の空をぼんやりと眺めている
空に鳶が飛んでいるのを見て

これ金弥、あの鳥は弁当を食したのであろうか?

御いたわしい、御いたわしゅう御座います。

主従でがっかりしていると少し離れた農家でサンマを焼いている
ちょうど時期ですから脂がのったサンマ、匂いと煙がすごい
お殿様の鼻に入って


これ金弥この異なる匂いは何じゃ?

異なる香り?
あ、サンマで御座います

サンマとは何じゃ?

下魚でして高貴なお方が口には合いません

黙れ!何を言っておる
いったん戦場に出てこれは食べれる、これは食せんなどと言っておられるか
サンマをこれへ
苦しゅうない目通り許す

家来者達も匂いを頼りに農家を見つけ出して

おぉ焼いておるな

申し訳ございません
すぐに消しますので

消さなくてよい
どのくらいあるかな?
殿のがサンマを召したい

そうでございましたか
町に出ましたら安く売っておりましたので二十匹御座います

悪いな全てくれ、飯はどうだ?
一升炊いておるか
そうかそれもそっくり頂こう
これは少ないがお礼だ

いやぁ、小判なんぞ出されましてもお釣りが

みんなその方にやる

そう致しましたらもう一遍、町に出ましてサンマを・・・

いやいやこれだけで十分だ

農家の人も喜びまして、焼きたてのサンマをふちの欠けたお皿に乗っけまして、
大根おろしをつけて悪い醤油では御座いますがジューッとかけましてお殿様の前へ

金弥、これは食して大事ないか?

天下に美味で御座いますぞ

左様か

もぐもぐ


もぐもぐ

これは美味である!!!!!


美味しいでしょうね
運動してお腹がすいているなか、焼きたての脂がのったサンマを初めて食べたんですからまずい訳がない

代わりを持て!

二十匹のサンマを全て食してしまった

あぁ、美味であったぞ
その方たちには骨をつかわす
金弥、余はかように美味しい魚があることを存ぜぬであった
館に帰ったら三度三度サンマを食す

恐れながら申し上げます。
ここでサンマを食したことはご内聞に御座います。

余がサンマを食したらいかんのか?

サンマは下魚
もし館にてサンマを食したと知られたら責任を取るものが御座います。

そうか、その方たちに迷惑をかけるのであるならば余は口外致さん


ご機嫌麗しく帰ってくると、あぁサンマは旨かったなと思う
しゃべってもいけないと言われると寝ても覚めてもサンマ


これ金弥、また目黒に行きたいの

目黒は風光明媚な所にて

風光はどうでもよい
あの時食した、長やかなる、黒い魚

ご内聞に御座います。

分かっておる。余は口外致さん
サンマの事は言わん!



四、五日経ってからお客様として親類方においでになった
御大名はそんな生活をしておりますから楽しみはお料理のご注文
お殿様も知っておりますのでその日が来るのを指折り数えておりした。
当日になるとそわそわしております。

恐れながらお料理の御名を承りたく

余はサンマであるぞ

はっ



お客様のお料理をサンマだと

お殿様がサンマを知っているわけない

いやでも、サンマと言っていました。

お前は粗忽だから聞き間違えたのであろう
もう一回聞いて参れ


恐れながらお料理の御名をもう今一度

分からぬ奴だな、サンマだ
黒き長やかき魚であるぞ

はっ


聞いて参りました。
やはりサンマで御座いました。
黒き長やかき魚とおっしゃっておりましたので間違いありません

へぇ、どこでサンマを・・・
用意していない、まぁそうであろうな
直ぐに仕入れて参れ!

早馬で当時の日本橋にあります魚河岸で極上のサンマを仕入れて参りました。
しかしこんな脂ののったサンマを出してお殿様の体に障ったらどうする?
首になるかな?
脂を抜いてしまえっと言うことで蒸器にかけて脂を全て抜いてしまった
ばっさばっさのサンマの出来上がり
また小骨が在りますので、目のいい職人が毛抜きで一本一本抜いた
だらしのないぐちゃぐちゃのサンマになってしまった
焼く訳にはいかないからお椀に入れて出した
お殿様の方は目黒で食べたサンマを思い描いておりましたところにお椀が出てきた


これ、これはサンマか?

御意。サンマで御座います。


蓋を取るとかすかにサンマの香り

おぉサンマである
そちも堅固で何よりである

もぐもぐ


これ即答を許す
このサンマは何処で仕入れた?

日本橋の魚河岸で御座います。

魚河岸、、それはいかん
サンマは目黒に限るぞ


昭和の名人 古典落語名演集 三代目三遊亭金馬 三::居酒屋/高田の馬場/目黒のさんま [ 三遊亭金馬[三代目] ]


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