アフィリエイト広告を利用しています
ファン
検索
<< 2022年02月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28          
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
ヨリちゃんさんの画像
ヨリちゃん
プロフィール

広告

posted by fanblog

2019年07月25日

遅れて来たケインズ主義「現代貨幣理論(MMT)」は、米国で実験すべきだ




 論考・コラム・レポート 税・社会保障改革 July 18, 2019 連載コラム「税の交差点」第64回


 遅れて来たケインズ主義 「現代貨幣理論(MMT)」は、米国で実験すべきだ


 7月16日、ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授が来日し、「現代貨幣理論(Modern Monetary Theory、以下MMT)に付いて講演した。

 MMT では、政府と中央銀行の統合勘定を前提とするので、政府の国債発行残高の内日銀保有分は帳消しと観念する。その上で政府の借金は国民の資産の拡大と云う事で、政府は緊縮財政を行う必要は無く、民間経済に貯蓄の余剰(カネ余り)がある限り、赤字を出す様な経済政策が望ましい・・・と云うものである。金融政策の有効性を否定し、全ては財政政策だと言って居る。

 米国製の目新しい経済理論には目が無い日本のマスコミは、ここぞとばかりに報道した。便乗する国土強靭化を主張する安倍政権元ブレーンも参加して居た。消費増税が選挙の争点と為る中「増税は必要無い」と云う彼女の主張は大きな注目を浴びた。
 彼女は「日本で実験済み、これだけ財政赤字を拡大してもインフレが起き無いのは、MMTが正しい事を証明して居る」「インフレに為りそうに為ったら増税すれば好い」とも発言して居た。

 筆者の印象は、フリーランチは無いと批判されたラッファーカーブや、減税すれば人々の勤労意欲が上がり税収も増えると言ったブードウーエコノミクス、最近では、ヘリコプターマネー・シムズ論の類だ、と云うものである。
 積極的財政政策を唄う点は、ケインズ主義と似て居るが、財政赤字は継続可能で赤字は貨幣の発行で埋めれば良いと云う点で異なって居る。又、継続的な政策と云う点で、ヘリコプターマネーともニュアンスが異なる。筆者の感じた違和感、問題点は次の通りである。

 先ず「インフレが生じ始めたら増税すれば好い」と云うが、インフレは一旦始まると容易には沈静化出来無い。我が国のリフレ派を代表する日銀審議委員ですら「インフレが制御出来無く為る」として反対して居る。

 「『インフレが深刻に為った場合には増税する』と云うトリガー条項を決めて置けば好い」とも発言して居る(7月18日付日経朝刊)が、我が国憲法が採る租税法律主義を知ら無い戯言だ。(米国には租税法律主義は無い)
 土地バブル時代に土地神話の根絶を狙った地価税が導入されたのは、土地基本法が制定された1989年から何と3年後の1992年である。税制調査会での議論、法律の策定、衆参両院での国会審議等で時間が掛かり、土地バブルが崩壊してからの導入と為った結果、急激なバブル崩壊に繋がった。

 財政政策として彼女が主張するのは公共事業である。これも1990年代の我が国の経験を知ら無い空想的な議論だ。
 バブル崩壊後に120兆円規模の減税と公共事業の拡大が、景気対策と云う名目で行われたが、未だデフレ脱却すら出来て居ない。効果や効率を考えずに行われた公共事業は、景気浮揚効果を持たず、維持・補修に四苦八苦して居ると云うのが現状だ。


7-25-1.png


 図表は、我が国一般会計の歳出・歳入の推移を描いたものだが、そのギャップ(所謂ワニの口)は、バブル崩壊後とリーマンショック後に大きく開いて居る。これは景気対策としての公共事業の追加(歳出の拡大)と減税(歳入の減少)が行われた為で、結果として景気は回復せず、ワニの口は益々拡大した。

 何れにしてもMMTは、米国特有の状況下での話で、我が国とは事情や背景の異なるものだ。実験するのなら、以下の理由から、米国で行うべきだ。

 第1に、米国では大統領選挙が始まって居り、民主党の候補者の多くは大きな政府を標榜して居る。彼等の公約である学生ローンの債務棒引き、完備されて居ない医療保険制度の構築等に必要な財源を正当化する為には、目新しい理論が必要だ。それをMMTに求めて居る。医療制度が、曲がり為りにも完備されて居る我が国とは大きく事情が異なる。

 第2に、トランプ側にも事情がある。公約だったラストベルトへのインフラ投資は財源不足からとん挫して居る。更に大規模な減税を行った事から、大幅な財政赤字の懸念が生じて居る。「財政赤字はそれ程大きな問題では無い」と言いたい事情がある。

 何れにしても、金融政策より財政政策・公共事業を優先させる「遅れて来たケインズ政策」は、人手が足り無くてボトルネックと為って居る我が国には全く当て嵌まら無い。打ち出の小づちからバラ撒かれる財源で公共事業を行なえば、一時的には潤ってもスグサマその維持コストが便益を上回ると云う状況が生じ、公共投資の乗数効果はマイナスに為ってしまう。
 我が国のリフレ派ですら反対して居るので議論の価値は無い、とも言えるが、実験を行うなら、米国で行って欲しい。


             7-25-2.jpg

                森信茂樹 氏

 東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授

 1950年生まれ。法学博士。1973年京都大学卒業後大蔵省(現財務省)入省。財務省では主に税制分野を経験。その間ソ連、米国、英国に勤務。大阪大学、東京大学、プリンストン大学で教鞭を執り、財務総合政策研究所長を経て退官。
 (一社)ジャパン・タックス・インスティチュートを運営する一方、日本有数の政策シンクタンク、東京財団政策研究所で「税・社会保障調査会」を立ち上げ、税・財政や社会保障の政策提言を行っている。著書に、『日本の税制 どこが問題か』(岩波書店)『税で日本はよみがえる』(日経新聞出版)や、GAFAの税負担問題やデジタル経済における税のあり方を徹底追究した『デジタル経済と税』(同)など。



(サムネイル:Stephanie Kelton, Professor of Economics and Public Policy, College of Arts and Sciences at Stony Brook University (May 2019))


この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/9002459
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。