2021年12月24日
お役所仕事 膨らむ耕作放棄地の戦犯は誰だ?
お役所仕事 膨らむ耕作放棄地の戦犯は誰だ?
12/23(木) 12:31配信 12-23-12
Ольга Симонова/gettyimages 12-23-13
「富山県と同じ位の面積の耕作放棄地」
〜コレは、メディアが耕作放棄地に付いて取り上げる際の決まり文句だ。全国で農地の荒廃が進み大変だと言いたい様だが、実の処耕作放棄地の問題には、国に依る自作自演の面も在る。戦後一貫して農地の造成を続けて来たからだ〜 山口亮子
61年で113万ヘクタール農地を造成
WEDGE Infinity(ウェッジ) 12-23-14
耕作放棄地は2015年時点で約42万3,000f在り、富山県と同じ位の面積に為る。現在はモッと増えて居る筈だが、国が5年毎の農林業センサスで、20年から〔耕作放棄地を調査対象から外した〕為把握出来無く為ってしまった。耕作放棄地は病虫害や鳥獣害の温床に為り得るので、増加は望ましく無いとは云え致し方無い処が在る。
中山間地を訪れて周囲を見渡せば、目に入って来る山の多くが元は農地だったりする。スギやヒノキの林に為って居る斜面に分け入ると、過つて棚田が在った痕跡の石垣が残って居る。何十年も前に耕作放棄されたコレ等の棚田を、復旧させ無ければと思う人が居るだろうか?
全国で増え続ける耕作放棄地の中には、最早耕作する必要性の無いもの・ソモソモ開墾された当初から必要性の薄かったものが少なからず混じって居る。
現に、今に至る迄農地の造成はズッと続いて居る。20年に新たに拡張された耕地面積は0.8万f・21年は0.7万fだ。0.7万fは、東京ドーム凡そ1,500個分に当たる。
国は戦後の食糧難を受けて農地の造成を進め、ピークだった1971年に拡張した面積は5万6,000fに達した。その実、既に食料生産は過剰基調に陥って居て、コメの生産量を調整する〔減反政策〕も同時期に始まって居る。が、水田の拡張コソ止まったものの畑の造成は続いた。
事業の計画が立てられた頃と社会情勢が大きく変わったにも関わらず、干拓や浅海開発・山を切り拓いての造成等を行う〔国営農地開発事業〕は継続された。
1961〜2021年に造成された農地は113万fに上る。コレは、現在の耕作放棄地の面積の3倍近い。耕作放棄地の増加に〔国の農地開発〕が拍車を掛けたのは間違い無い。
国の造成農地が数年で耕作放棄地に
農地開発事業で生まれた農地には、セイタカアワダチソウ初め雑草を生い茂らせて居る所が珍しく無い。取り敢えず農地を作ったものの、殆ど耕作され無いママ耕作放棄地に為って居る。ソモソモ作る必要の無かった農地が耕作放棄されたに過ぎ無いのに、国から耕作放棄地の〔解消〕を求められ頭を抱えて居る自治体すら在る。
農地開発の費用対効果の悪さは、会計検査院や総務省等が指摘して来た。中には、造成後に転用され農地で無く為った所迄在る。造成直後の土地は基本的に瘦せて居て直ぐに作物が育つ状態では無く、入植者は土造りから始め無ければ為ら無い。
何時に為ったら収益が得られるか分から無い土地を耕作するより、手っ取り早く農地転用で荒稼ぎしたいと考える人間が居ても、責める事は出来無いだろう。
尚、国が造成した農地は、特に良好な営農条件を備えて居ると見做される。その為、私的に転用する・・・詰まり家を建てたり商業施設を建てたりする事は出来無い。転用出来るのは、公共事業詰まり・・・道路や公園と云った公共施設を整備する場合だ。
勢い地元の有力者を巻き込み、公共事業誘致の為の政治工作が始まったりして「農地を農地として使う」と云う本来の目的は打っチャラれる。
「食料の安定供給の確保・多面的機能の発揮を図って行く為には、今後とも国内農業の基盤である農地を確保して行く必要(がある)」
農水省は、耕作放棄地の発生を防止すべき理由をこう説明して居る(荒廃農地の現状と対策 令和3年11月より)が、早晩耕作され無く為る農地を作り続け〔耕作放棄地問題〕を膨らませたのは、農水省自身に他なら無い。
農業者が負担しない農地整備に多額の予算
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数億から数百億円と云う巨費を投じる農地開発は、作った農地が役に立た無くても〔土建業が潤う為〕地元からの要望が強い。流石に農地の造成は減って居るものの、土木工事を伴う農地の整備には今も多額の予算が付く。
例えば2022年度の〔農地整備関係予算等〕の概算要求額は 1,608億8,000万円だ。この内〔農地中間管理機構関連農地整備事業〕は、細切れな農地をまとめて広くする〔区画整理〕だけで無く〔農用地造成〕も対象にして居る。予算額は680億4,500万円。
整備されて居ない農地は借り手が見付から無いから、農地中間管理機構が借り入れて居る農地を、農業者の費用負担無しに基盤整備すると云う。
受益者の負担が一切無く、全て公費で賄われると云う枠組み自体、如何なものか。只、それ以上に曲者なのは、この事業の実施要件で在る。
要件の一つが「事業実施地域の収益性が事業完了後5年以内(果樹等は10年以内)に20%以上向上」なのだ。例え平場で在っても達成は容易で無い筈だが、中山間地と為ると可成り難度が高い。
中山間地で基盤整備する対象は、一部に果樹園や畑も在るにせよ大半が水田に為る。事業を経て高付加価値化を実現すると為ると、コメ以外の作物を増やさ無ければ為ら無い。と為ると、野菜・花卉(かき)・果樹と云った園芸作物を作ら無ければ為ら無い。
しかし、園芸作物はコメ・ムギ・ダイズと云った面積当たりの収益性が低い一方で機械化されて居る土地利用型作物と違い、面積当たりの収益性は高いが概して手間が掛かる。
中山間地の特徴は、1枚の農地が狭く人手が少無いと云う事だ。この事業を使って農地1枚を広げれば、土地利用型作物を作る場合の作業効率は良く為る。が、事業要件で在る〔収益性が20%以上向上〕を満たすには、収益性の高い園芸作物を選ばざるを得ない。
・・・そうでは在るけれども、園芸作物の繁忙期に必要な人手を集めるのは難しい。詰まる処、この事業は中山間地に於いて絵に描いた餅に終わる可能性が高いのだ。
また耕作放棄地を生み出す懸念も
尚、農水省農村振興局に問い合わせた処「事業実施前より収益性を上げられず、条件を満たす事が出来無かった処で、事業費の返還を求められる事は無い」と云う。〔農業の生産性向上〕〔農家の所得向上〕と云った聞こえの良い言葉で予算を獲得したとも見える。
この事業により新たな農地を造成し、それに伴って耕作放棄地が生まれ様として居る地域も在る。条件の良い農地が整備される為、農業者が既存の条件不利地での耕作を辞めて新たな農地に移るのだそうだ。農業経営として考えれば、合理的な選択と云える。
だが、農水省は耕作放棄地の発生自体が宜しく無いと云うスタンスなので、一体如何考えるのだろうか。矛盾と負の遺産を抱えたママ農地造成は続いて行く様だ。
取材 文章 山口亮子
【管理人のひとこと】
中央官庁・多くの官僚の仕事・・・を思い遣られてしまう問題である。前例主義・遣っ付け仕事・遣った感・・・役所がそれだけを満たす為の単に〔予算消化〕だけの作業の連続。これを誰かが質すと、役所の某セクションの不正と存在感を否定する事に為り・・・廻り回って自分の存在迄を否定する事に繋がる恐れが在る。
コレは、官庁だけで無く大きい組織にも共通する問題で、だから誰もが理解し納得着くでこの不正・無駄を続けざるを無得なく為ってしまう。
大企業の不正もこの様な理由によって誰もが〔悪い〕と知りつつ前例に従わざるを得なく為る。これは〔組織の存在第一〕の人間の習性と云えよう。
これを外から見て不正義だと思い質すには、それは自分を否定し犠牲を被る覚悟する大きな決断が必要だ。だから、多くの人は前例の悪に嵌ってしまう。自分の将来・家族の将来を考えると一体何人の人間が不正を質せるだろうか?
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